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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十五章 スイースレン公国の腐敗
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EP.32 エーコが参戦しました

 師範に頼んで転移屋で早めに飛ばして貰うようにした俺は急いでブリテント騎士王国のパーシヴァル町に向かう。とは言え、師範が渡してくれた融通するようにって手紙を転移屋に渡しても、飛ばしてくれるのに二日、三日掛かる。

 それでも気が急く。何せ沙耶の状況が見えなくなってしまったのだから。沙耶の(ファミリア)が破壊されたとこまでは見ていた。

 あと、ライオスの奴は自分で(ファミリア)を破壊しやがった。大方迷惑を掛けるとかふざけた事を考えやがったのだろうけど。迷惑なら最初から孤児院から出してないっつーの!

 エーコの方は生徒二人のお陰で一命を取り留めた。ローゼインとクーデリアには感謝しないとな。


 その後、エーコは生徒全員を回復させ、元気が良い生徒に町に状況を伝えるようにと言うと、土魔法で壁を作り、その中で着替え始めた。

 制服のお腹の辺りは破れてしまっているし、血で汚れている。いくら清浄があっても洗わないといけないしな。

 それに何よりエーコは怒っている。マジでキレている。いきなり後ろからぶっ刺されたのだから。よって、巫女服に着替え全力で戦う気だ。

 本当は直ぐにでも伝心魔道具(スマートシーバー)で、伝心して沙耶のとこへ行けと言いたいのだが、ローゼインとクーデリアに助けられた手前言えない。


 着替えると魔眼で、魔力の痕跡からクーデリア達を追う。それでも二人は魔法を駆使しつつ、あの痴れ者を追い掛けたならともかく、そうじゃないので魔力の痕跡が薄い。

 どうやらクーデリアのあのスピードが上がった力は、魔力を使うものじゃないらしい。となると闘気かな? なら俺なら追跡出来るかもしれないが……直ぐにそっちに行けないのが痛い。

 だが、運が良い事に攫われたルナマリアとニーケルと出くわす。どうやらニーケルは、妹の危機を察知したらしい。

 で、ニーケルに場所を聞き、エーコは重力魔法(グラビティ)を駆使して現場に到着した。その瞬間……、


「<小隕石魔法(メティオ)>」


 巨大な隕石を痴れ者に落とす。『小』の要素はどこに? 隕石魔法(ミーティア)のように隕石群が落ちて来る訳じゃない一発だけだから『小』?


「のわァ!? なんじゃこりゃ」

「「っ!?」」


 ローゼインとクーデリアも目を剥く。というかクーデリアも巨大な隕石の落下範囲に入ってるんだけど。


「<重力魔法(グラビティ)>」


 重力魔法(グラビティ)で、即座にクーデリアに近寄り、彼女を抱え離脱。

 というか……前全開? しかも着痩せするタイプか。デカい。マジでデカい! DかEはあるだろ。もっと眺めていたい。ブラだけでも十分そそられる。この五年間溜まってるからな~。


「クソがァっ!! 次元斬ッッ!!」


 痴れ者が剣を一振り。するとどういう訳か空間が切断された。その空間にあった隕石が消滅する。あの剣は、空間を支配する魔道具武装アーティファクト・ウエポンか。


「はぁはぁ……」


 恐らくだが、巨大な隕石を消滅させる範囲の空間を斬ったのだ。相当な負荷が来ているだろ。剣を杖替わりに息切れを起こす。


「えーいっ!」


 ドカっ! 


 と、鉄槌で殴り飛ばす。


「がはっ!」


 痴れ者は、吐血しつつ吹き飛び後ろにあった大木に激突した。


「え、エーコ?」

「……エーコさん?」


 ローゼインとクーデリアが、今更ながらエーコが来たのに気付いたのだろう。目を丸くしてエーコを見る。


「大丈夫ー?」


 そう言いつつストレージカードから、エーコの昔の装備である魔導士のローブをクーデリアに投げ渡す。おいコラ! もっとデカいの見ていたかったのに、何余計な事をしてるんだよ。後で説教だな。


「てめぇ!」

「<百氷槍魔法ハンドレッド・アイス・ランス>」


 起き上がろうとした痴れ者に、三つ展開した百氷槍魔法ハンドレッド・アイス・ランス……計三百本の氷の槍を飛ばす。


「ぐぇぐぇぐぇぐぇぐぇぐぇぐぇ……」


 ヒキガエルのような声を上げ全弾食らう。


「クソがァ!」


 って、まだ生きてるのかよ。血だらけなのに立ち上がったし。しかも短距離転移魔法(ワープ)のような挙動で、エーコの目の前に現れる。

 エーコは、左手を腰に回しそこにある小さな錫杖掴む。すると錫杖は大きくなる。それを振りながら……、


「<上位水流魔法(ダイダルウェイブ)>」


 あれ……さっきまで、月光世界(ルナ・ワールド)の魔法だったのに、星々の(スターライト)世界の魔法を使ったな。

 上位水流魔法(ダイダルウェイブ)により大津波が起き、痴れ者が押し流される。


挿絵(By みてみん)


「ガバガバガバガバ……」


 いつもより、勢いが凄い。津波がかなり強烈になっている。なにせあの錫杖は、水魔法強化が付与された魔道具武装アーティファクト・ウエポンである水流の錫杖だ。

 痴れ者は、再び大木に激突。それでもまだ津波が止まらない。ありゃ完全に溺れたな。しかも大木に頭から突っ込んだからなぁ~。


「エーコさん……あんなに強かったの?」

「知らない知らない知らない」


 掠れたような声を出すクーデリアに、ローゼインは首をブンブン横に振る。


「だって、彼女あまり目立ちたがらないから……あまり戦ってるとこ見た事ないのよ!?」

「わたくしもライオスさんが去年優勝したお陰で今年、初出場しただけだと侮っていたわ。なのに優勝するし……もう訳が分からないわ」


 そりゃな……毎年出場してなかったのに、いきなり今年出場すれば侮るし、優勝すれば意味不明だろうな。


「総合学園じゃ不利だから。エーコの場合、魔導学園向きだし……」

「それでー?」

「「はいぃぃ!!」」


 ボソボソ話してる二人にエーコが話し掛けると、背筋をピーンと伸ばした。


「この人、どうするのー? まだ死んでないから、憲兵に突き出すー?」

「……いえ、わたくしの手で殺したいです。宜しいでしょうか?」

「クーデリアの両親の仇なの」


 パっと我に返り自分の手でやりたいと言い出すクーデリアに、口添えするローゼイン。


「そうなんだー。わたしは、やられた分はー、やり返したから良いよー」

「ありがとうござ……」

「それは困りますね」

「「「っ!?」」」


 突如、痴れ者の前に真っ赤な気持ち悪い目をした奴が現れる。青白い顔をした三十代前半に見える不気味な男だ。髪の色は老人のように白い。アイツは……、


「<上位火炎魔法(エクスプロージョン)>」


 ドコドコドコドコドコドコ……っっ!!


 瞬時にエーコは、あっちの世界の魔法を唱え巨大な炎を、ひたすら飛ばす。


「いやいやいや……いきなり攻撃するなんて酷いじゃないですか。エーコさん」

「……アルノワール」

「おや? 私の事を知っていますか。アークさんに聞いたのですか?」


 というか、まだドコドコドコドコと炎を食らっているのに、何故平然と話している?

 やがて炎が止まると闇防御魔法(ダーク・シールド)を張ったアルノワールが現れた。

 上位魔法だぞ。それをあんな盾で防げるのか?


「アークとナターシャお姉ちゃんの仇ー。<上位稲妻魔法(ドラゴ・スパーク)>」


 いや、俺もナターシャも死んでないから。

 とまかくまたあっちの世界の魔法である。龍を模した雷が飛ぶ。咄嗟に放つ場合どうしてもエーコはあっちの世界のを使ってしまうな。


「<短距離転移魔法(ワープ)>」


 痴れ者を掴んだアルノワールは、短距離転移魔法(ワープ)上位稲妻魔法(ドラゴ・スパーク)を避ける。


「なるほどなるほど。外の世界の魔法ですか。通りでアークさんが何者なのか分かりませんでした」


 あちゃー! あいつにヒントを与えてしまったか。それじゃなくてもこっちの事が色々筒抜けだったのに……。

 エーコは、また避けられる恐れがあるので、次の動きを探るかのようにじっと見詰める。


「それから仇と仰いますが、アークさん達を殺していませんよ? むしろやられたのは私の方です」

「でもー、アーク達の邪魔をしたー」

「それは否定出来ませんね」


 首をユルユルと横に振る。もう動き一つ一つが気味悪いな~。


「<百炎槍魔法ハンドレッド・ファイアー・ランス>」


 今度は、百炎槍魔法ハンドレッド・ファイアー・ランスを五つ展開した。これなら数本だけ飛ばして、短距離転移魔法(ワープ)で逃げられても、再度放てるわな。なんせ五百も炎の槍があるのだから。

 それにまた闇防御魔法(ダーク・シールド)を使っても全弾一気に放てば良いだろうし。それでも上位火炎魔法(エクスプロージョン)で、貫けなかったので、効果あるか微妙だけど。


「私は戦う気は、ないんですがね。もう片方も失敗してしまった事ですし」


 もう片方ってタイタンオーガだろうな。コイツ魔獣を操るから。


「煩ーい」

「では……<邪重力魔法(イビル・グラビティ)>」


 エーコが炎の槍を飛ばそうとした瞬間、邪重力魔法(イビル・グラビティ)を唱えられた。エーコ達三人は重力に圧し潰そうとする。だが、あれは悩を騙すだけで、実際には重力が掛かっていない。


「むー!!」

「「っ!?」」


 エーコだけは、なんとか抗う。『称号 英雄』が発動してるな。ただ百炎槍魔法ハンドレッド・ファイアー・ランスは全部消えてしまう。他の二人は地面に這いつくばる。


「貴女も英雄をお持ちですか。ほんと今回は、何なんでしょうかねぇ? 邪魔ばかりされる。それも全員アークさんの関係者」


「やー!」


 バッリーンっ!!


 エーコが鉄槌を振るうとガラスが割れるような音がして、三人に掛かっていた負荷が消えた。


「っ!? 驚きましたね……まさか、その鉄槌に破邪特性があるのですか?」


 アルノワールが目を丸くし驚く。

 そう言えば武がくれたあの破邪の鉄槌って破邪顕聖という効果があったな。


「少しお話をしませんか? 先程も言いましたが、私に戦う気はないんですよ」

「アークとナターシャお姉ちゃんの敵はー、わたしの敵だよー」


 そう言ってアルノワールに突っ込む。


「<邪氷結魔法(イビル・フリージング)>」


 目の前に巨大な氷の壁を出す。とは言えあれも悩を誤認させているだけで、実際にはない。だが、触れると普通に凍傷する。しかも消そうとしても、実際にはないのだから消せないという厄介な特性だ。


「えーい」


 バッリーンっ!!


 が、エーコの鉄槌の前には無意味。ガラスの割れるような音がして、あっさり消える。


「<邪氷結魔法(イビル・フリージング)>」


「えーい」


 バッリーンっ!!


 が、再びあっさり消える。


「<邪氷結魔法(イビル・フリージング)>」


 再び悩を騙す氷の壁を出す。それを三度繰り返す。しかし四度目は……、


「えーい!」


 消えない。エーコは何度か鉄槌で叩くが消えない。どういう事だ?


「破邪特性はMP消費が激しいんですよ。それに貴女、一体どれだけの魔法を使ったのですか?」


 マジか……。エーコが戦いでMP枯渇したのだろ? そんな相手は今までいなかった。

 まああの痴れ者との連戦だったのも影響してるだろうが。


「むーっ!!」


 エーコがアルノワールを睨み付ける。


「これじゃ話も出来ませんね。本当に私に戦う気がないのですよ」


 両手を挙げて丸で降参のポーズをする。エーコと自分の間に巨大な氷の壁を出しておいて抜け抜けと……。まあ正当防衛とも言えなくもないけど。だが、今回の事件の黒幕がコイツなら、やはり敵だ。


「信じられると思うー?」


 アルノワールは、『は~』と溜息を吐くと……、


「では、これだけはアークさんに伝えてください。私は、もう貴方に敵対はしません。出来れば話し合いたい」

「あっそー」

「ですが、話し合いをして頂けなければ、また敵対してしまう、と」


 まあ聞いてるんだけどね。しかも今更どの面下げて話し合いだよ。ふざけんなよ!


「では、これにて」

「待て! 俺様はァ……まだやれる。このクソガキをぶっ殺す」


 もうボロボロの痴れ者が、なんか言ってるよ。というか意識なかったのにもう気付いたのかよ。


「その傷じゃ無理ですよ。強化魔法を解いたら、貴方死にますよ。<転移魔法(テレポート)>」


 そう言って痴れ者を連れて、転移魔法(テレポート)で、どこかに行ってしまった。

アーク視点か、エーコ視点か、三人称視点か迷いましたがアーク視点にしました

アーク視点の場合、余計なくだりを入れなくてはならないので、面倒でしたけど(笑)

エーコ視点なら『想い』縛りなので、『許せない想い』ってサブタイトルだったかもいしれませんね

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