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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十五章 スイースレン公国の腐敗
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EP.24 アドバーサリー

 -314――――月陸歴1520年7月11日



「公国演奏祭典の参加者に我が学園でアリアさんを推薦したいと思います」

「「「「「おお~~っ!!!」」」」」


 四年生の教室で教師がそう切り出すとクラスで感嘆の声が上がり、拍手喝采が起きる。

 何故なら毎年公国内で優秀な演奏家が参加するものなのだが、学生が選ばれる事は滅多にないからだ。武技、魔導、総合、全ての学園で生徒が選ばれるとしたら十年に一人という倍率だ。

 祭典には公王も聴き来られる。それだけ名誉な事なので、この盛り上がりなのも必然。


「申し訳ございませんわ。少し考えさせて頂けませんか?」


 しかし、当の本人がそれに水を差す。


「……………………そうですか。分かりました。早めに決めてくださいね」

「はい」


 まさかそんな事を言われると思っていなかった教師は、鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をし暫し固まってしまった。貴族は見栄を張るものなので、家の事を考えたら当然出た方が良いし、親からもそうせっつかれるのは自明。なのにアリア本人は乗り気ではなかった。


 その日の放課後、アリアはルナマリアと教室を出ると中庭に向かう。少し待つと一学年上のユミエラがやって来た。


「アリア、ごめん。待たせた?」

「今、来たとこですよ」

「彼氏の待ち合わせですか?」


 ルナマリアが白けた顔で突っ込む。


「何で、ルナマリアがいるの?」

「最近熱いですからね。明日は休日ですし、川に水浴びに行こうってルナちゃんと話していたのですよ。ユミエラも来ます?」

「そうそう」

「アリアの水着…………」

「変な事を考えているなら来なくても良いですよ。むしろ邪魔」


 度々あるが、アリアは普段おっとりと丁寧な喋りをしているが、たまに辛辣になる


「行く行く行く……変な事考えないからさ」

「なら最初から、そう言いなさい」

「でも私、水着ないんだよね。まぁ美少女二人の水着見れるだけで満足だけど」

「…………考えてるじゃない」


 は~っと溜息を吐くアリア。


「冗談だってば」

「そうですか。水着ないんでしたら貸しましょうか?」

「それは嬉しい。それを着なくて良いなら」

「「は?」」

「更に小一時間ぐらい私を放置してくれるなら大喜び。その間、私を探さないで。トイレにいるから」

「引くわー」

「そんな事を言っていたら、誰でも引くわ」


 アリアは顔をしかめながら、ボソリ呟き、ルナマリアもドン引いていた。


「あ、大丈夫ですよ。ユミエラは昔からこんなだから」


 アリアは、一応ルナマリアにフォロー入れる。


「そう。昔からアリアの下着を盗んでトイレで鑑賞していた」

「ギャーっ!!」


 アリアが叫ぶ。いつものユミエラの変態会話には慣れているが、流石に今の卒倒レベル。


「冗談だってばぁ」

「どこまでが冗談なんですか?」

「どこまでだろう?」

「もう来なくて良いです。ルナちゃん、二人で行きましょう」

「そうですね」

「冗談だから許して~」

「あ! じゃあニーケル先輩もお呼び致しましょう」

「にぃにぃも?」


 名案だと言わんばかりの顔だ。


「そう。ユミエラ、それでも来ますか? 先輩にわたくし達の水着姿を見て貰いましょう」

「やめて~~~~!! 男なんか……」

「良いですね! にぃやんも呼びましょう」


 両極端な二人。


「冗談です。そういう訳ですから、ユミエラもあまりふざけた事を言わないくださいまし。むしろ喋るな」

「は~い」

「ざ~んねん」


 とまぁ三人の話がまとまったとこで、ルナマリアが用事があると先に帰って行った。残った二人はゆっくり校門に向かう。


「で、どうしたの?」


 唐突に切り出すユミエラ。


「何がでしょう?」

「私がアリアの事をどれだけ見てると思っているの?」

「ですから何の話でしょうか?」

「どれだけおかずに……」

「余計な事は言わないで良いので本題をお願い致します。キモイ!」

「……はい」


 ユミエラはアリアが少し元気がないのに気付いていた。

 校門を出ると周囲の人が学園の中より減ってるの確認し、小声で話し始める。


「…………公国演奏祭典の参加者に推薦されました」

「あぁ~。で、断ったの?」


 ユミエラは、ほとんど察したようだ。


「いえ、考えさせてくださいと言いました」

「ふ~ん」


 ユミエラは、そこまで聞くと前を歩くとある人物に気付く。そいつに突撃した。


「うわっ!」


 いきなり体当たりをされて驚く前を歩く者……ニーケル。


「何だ? ユミエラか。いきなり何だよ?」

「あんた、これから暇?」

「え? いや……」

「暇だよね?」


 有無を言わせない態度だ。


「ちょっと、先輩に何してるのよ? 先輩、申し訳ございません」


 アリアも慌てて追い掛けて来た。


「あ、アリア。ユミエラは何なんだ?」

「そうですわ。ユミエラ」

「で、暇? 少しだけ付き合いなさい」


 やはり有無を言わせない態度で命令口調。


「分かったよ」


 そうしてニーケルはドナドナ……無理矢理公園に連れて行かれた。


「それで、ユミエラ。どういう事でしょうか?」


 アリアが問うが、ユミエラはあえてスルーしニーケルをキッと睨み、それに怯むニーケル。


「私は、あなた嫌いだ」

「知ってるよ。でも、何で態々改まって?」

「だってそうでしょう? 私はアリアに一目惚れだった。だけど話し掛けるなって言わんばかりのオーラを放っていて、遠くで見てる事しか出来なくて…………なのにあんた簡単に声を掛けて。何が『連弾宜しいでしょうか?』だ」


 ニーケルが目をパチクリさせる。


「え? お前が俺を嫌ってたのって、そんな昔からだったの?」

「そうだよ」

「私はアリアの事が好きであって、あんたの事なんか嫌いだ」

「ユミエラ、さっきから何を言ってるのですか? 先輩も困ってるでしょう?」

「ごめん、アリア。今だけは黙ってて」


 そう言って再びニーケルを睨む。

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