EP.21 完成しました
「無二の親友だから」
そう言葉にした瞬間に決した。どうやら完成に至ったようだ。
分子運動の称号を見た時にもしかしたらと思った。しかし、それを本人に言うのは簡単だが、実際に出来るようになるかは難しいと思った。
だから賭けに出た。ローゼインが自ら立ち止まり振り返る事で気付ければ、と。
今、武舞台が青白く光っている。そうなった瞬間、クーデリアが微動だにしなくなった。
あの武舞台の中では、世界が停止している。
その中で唯一動けるのは、これを発動した張本人……即ちローゼインだけだ。
そのローゼインは、ゆっくりクーデリアに向かって歩いて行く。そしてクーデリアの前に辿り着くと力強く抱き締めた。
「……ごめんね、デリア」
そう言って肩代わりの花を捥ぎ取る。
果たして何の『ごめん』だったのか……。
肩代わりの花を奪い取る事への謝罪だったのか……。
俺には違うように思えた。
そうして肩代わりの花を取ると、青白い光は消えローゼインは倒れた。
あれは反則的過ぎる技だからな。きっと消耗が激しいのだろう。
だが、倒れる前に肩代わりの花を取ったので勝ちだ。
「もう……ごめんはわたくしの台詞です」
嘆息するようにクーデリアが呟いてローゼインの腕を肩に回し立ち上がらせると武舞台を降りて行く。
その瞳は先程までの氷の瞳ではなく温かみのある青い瞳だった。
詳しい事は分からない。ローゼインも詳しくエーコに話した訳じゃないから。だけど二人の間にあったわだかまりが溶けたのだろう。
こうして全学園交流試合一日目は終了した。
え? CとDブロックはって? 知ってる奴誰もいないのだから見る価値無し。
二日目、結果を言えばあっさりローゼインはノアに敗れた。
魔眼で停止させられ、肩代わりの花を取られたのだ。
万全なローゼインとの対決なら面白かったかもしれない。何せローゼインも停止の能力を持っているのだから。
しかし、残念ながら消耗し切っていた。足取りがフラフラフラフラしていたのだ。クーデリアの戦いが響いたのだろう。
「……万全な貴女と戦いたかったわ」
そう呟くノアが少し印象的だった。
そして、そのノアだが決勝戦で負けた。相手選手は魔導学園の六年生。なんとテイマーだった。
引き連れた魔獣達を盾に魔眼をかいくぐりノアに勝利した。ちょっと意外な弱点だった。
そもそもノアの力なら、魔獣を絶命出来るのだろうけどしなかった。ルール上は問題ないのだけど。人の魔獣を始末するのは後味が悪いと思ったのだろうか……。
何にしても全学園交流試合は終わった。沙耶は今大会の準優勝者に当たってしまうし、ライオスはローゼインに譲るしくじ運が悪かったしか言いようがないな。
完全燃焼したのはローゼインくらいなものだろう。分子の温度を下げて停止させる氷系の力なのに完全燃焼というのも変な話だが。
その後の学園行事に特記すべき事はない。
なので、毎年の全学園交流試合の結果だけ語ろう。
月陸歴1518年度全学園交流試合
Aブロックで、シード枠となったノアがライオスを破る。
準決勝で万全なローゼインとノアの対決が見れたが、勝者はノアだった。
何故なら、いくら停止させてもノアの視線は、ローゼインを向いたまま。つまり魔眼の効果を発動出来た。
これでクーデリアみたいなスピードがあり、死角から停止させられたら勝ったかもしれない。
で、そのクーデリアはDブロックで沙耶と戦い負けてしまう。沙耶は散々俺と模擬戦したからな。速いだけじゃ勝てないだろう。
そして優勝したのはノアだ。去年勝てなかったテイマーが卒業していたのが幸いした。
ああ、それと沙耶達の学年は三年生になっていたので、もう一枠増えたが第一回戦であっさり負けていた。
月陸歴1519年度全学園交流試合
沙耶がAブロックシードに選ばれ猛威を振るい、Bブロックはローゼイン、Cブロックはクーデリア、Dブロックはライオスがそれぞれ猛威を振るっていた。今回は綺麗に分かれた。
沙耶達の学年で選ばれたもう一枠――興味無いので名前覚えていない――は、去年と同じ人だったが、あっさり負けていた。
準決勝では沙耶がローゼインに負けてしまう。クーデリアとライオスはライオスの勝利。そして優勝したライオスだ。
ローゼインは沙耶との試合で停止の力を使ってしまい疲れ切っていたので負けてしまった。ノアが卒業していたのも大きいな。
月陸歴1520年度全学園交流試合
ライオスが優勝したお陰で一枠増えて――というより優勝者のライオスだけ別枠――、その結果なんとエーコが代表に選ばれた。
そしてこのエーコが大暴れする事になる。まずAブロックのシードに選ばれたローゼインと戦う。
ローゼイン相手には相性的に厳しいかなとは思ったが、あの停止の力は一定範囲。一応武舞台全体はカバー出来るのだが、空はまでは無理だ。なのでエーコは重力魔法で空に逃げて空中から魔法を放ち肩代わりの花を散らした。
次、Bブロックを勝ち上がって来たクーデリアに勝利。まあこれも普段俺と模擬戦してたお陰でスピードに着いて行けた。というかクーデリアは総合学園の連中には不利だよな。全員俺のスピードに慣れているから。所詮速いだけ。
Cブロックシードになったライオスは順当に勝ち進み、同じくDブロックシードとなり勝ち進んだ沙耶と戦い、沙耶の勝利。
二人共ローゼインには勝てないのだけど、ローゼインがどっかで破れるか停止の力を使えば勝機はある。そしてローゼインと当たらなかった沙耶は去年の優勝者であるライオスを下した。
そして決勝戦はエーコと沙耶が当たり、お互い魔法の応酬。エーコは沙耶が近付けないように魔法を連発しMP切れを誘った。結果エーコの勝ち。
一枠増えたお陰で、おこぼれ出場みたいな感じなのに優勝とか凄過ぎだろ。
こうして見るとエーコ以外シード枠は取ったって事だな。尤もエーコは来年シードになるだろうけど。
最初はじっくり書いていたのですが、ダラダラ書いても仕方無いと気付いて省略しました(笑)
エーコ達の三年生以降の全学園交流試合なんて本筋に関係ありませんし
ついでに次の更に次の章のネタバレになってしまい、その章の内容がスッカスッカになりそうでしたので(-_-;)