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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十五章 スイースレン公国の腐敗
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EP.20 completion -side Roseine-

この辺りは何度も何度も描き直しました

が、語彙力がない私では上手く描けませんでしたね(-_-;)

一応この章の山場の一つなので、もっと上手い表現で描きたかったのですが……

 また来たのね。


 彼女の口癖だ。


 だけど、この言葉に今まで色んな感情があった。


 最初の頃は呆れ。


 次は迷惑そうに。


 そしてこの試合では、完全な拒絶。


 だけどそんな拒絶に屈したくなくて私は不敵に笑った。


 何故なら彼女は私の憧れだから――――。


 目指すべき高みだから。


 幼馴染だから。


 恩人だから。


 世界に色を与えてくれた人だから。


 言葉にする陳腐だが、大好きで大切な存在。


 そして――――。




 私の世界は灰色だった。色付いたのは、目の前にいる彼女のお陰。

 あの時から、私の中の時計の針が動きは始めた。そんな彼女のあの温かみがあった青い瞳が、冷めて行ったのが辛かった。

 向かい合いたかったけど……怖かった。

 だけど今なら少しは近付けたかな……?

 あと一歩決定打に欠ける。自分でも分かっている。デリアのがまだ上だ。

 私じゃ勝てない。だけど逃げたくない。もう二度と逃げたくない。

 そう思う相手とこうして向かい合ってると彼女との日々が蘇る。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 打ち合う剣戟。


「はっ!」

「ふっ!」


 私達は、時々剣術の訓練の為に組み手をやっている。


「はぁぁっ!」


 裂帛の如く声を張り上げキメに入る。が、デリアの剣に私の剣が弾かれた。いつも及ばない。デリアは強い。


「もっと立ち止まって良く見て」


 終わると必ず言われる。


「ロゼの真っ直ぐ前だけを見てるのは長所であり短所よ」


 いつもそう言われる。


「確かに貴女の分子運動は凄い。だけど、前ばかりを見て焦り運動が雑になっているわ。もっと精密に振動させる事で、振動剣を生み出してる」


 分かってはいるけどつい焦ってしまう。

 エーコさんにも言われたな。『前だけを見ないでー、立ち止まって、振り返ってー。きっと過去も全部ローゼインさんの糧になるからー』って。

 きっとこの言葉もあったから、試合中にこんな昔の事を思い出したのだろう。

 そうよね。私は前だけを見ていた。

 だから『加速(アクセラレーション)』なんて技を作ってしまった。

 でも、私の称号の本質は――――。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 今なら分かる。

 (せんせい)が何の賭けに出たか教えてくれなかった理由が。

 私自身が気付かないといけなかった事なんだ。

 私自身が気付かなければ真の意味で前に進めない事。


「ねぇ……もうわたくしは、ほうっておいて」

「出来ないわよ!」


 声を張り上げてしまう。


「だって貴女だけなのよ……」


 そう私はこれに気付かなかったから、デリアと向かい合えなかったのかもしれない。


 そう思ったら涙が零れた。


 ごめんね……デリア。


 全ては過去に集約されている。


 私に前に進む意思を与えてくれたのはデリアだ。


 だから……、


「ねぇ……何で一人で抱え込むの?」

「巻き込みたくないからよ」

「巻き込んでよ」

「……出来ないよ」


 デリアは昨日だけを見ている。そして、私は明後日を見ている。


「じゃあ私が勝ったら……剣で私の意思を証明したら…………」


 剣を天に掲げながら言った瞬間、私の周囲の複数の氷の礫が舞い上がる。

 私が分子運動の本質に気付いたから、こんな真似が出来たのだろう。

 まぁこんな真似が出来たところでデリアには全く通じないだろうけど。


「……私も巻き込んで!!」


挿絵(By みてみん)


 無駄だろうけど、せっかく出したものだしデリアに飛ばす………………ああやっぱりあっさり消滅させられた。

 アレはどんな能力か分からないけど、やっぱり凄いなぁ、デリアは。と思ってしまう。

 そんな彼女に憧れ、並び立ちたいと思う。

 だけど、私は二度も逃げたんだ。デリアの両親が殺された日、逃げちゃいけなかった。ちゃんと向かい合わなければいけなかった。

 それに私はあの日を振り払うように前だけ見続けていた。

 昨日があるからこそ今日や明日がある。それなのに明後日ばかりを見ていてはダメだったんだ。

 立ち止まって、振り返って、今一度あの瞬間を胸に刻まないといけなかった。



「何で? 何でそこまでわたくしを……?」



 そんなの決まっている。

 何故なら彼女は私の憧れで、目指すべき高みで、幼馴染で、恩人で、世界に色を与えてくれた人で、大好きで大切な存在。


 そして――――、













          《称号 分子運動が停止者に変化しました》

               












「――――無二の親友だから」

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