表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十五章 スイースレン公国の腐敗
481/563

EP.18 クーデリアと戦いました

「私……私ね、家がちょっとゴタゴタしているの。そのせいで苦労したし辛かった」


 エーコはローゼインの話を黙って聞く。ローゼインのサポートとして、安定作用させる為の人員として面目躍如って感じだな。


「その時に、クーデリアの……デリアの言葉で私は救われた」


 昔を思い出すように儚く笑いながら言うが、直ぐに『でも……』と、苦しそうに吐き出す。


「デリアの家でも色々あったの」


 そのクーデリアは現在、武舞台で戦っている。あれが強いな。というより速い。俺に匹敵する程のスピードだ。相手選手も必死に凌いでるが、時間の問題だろうな。


「それからデリアは人が変わった。私は……あの人を見下すような冷めた目が怖い。それでも私はあの高みに届きたい」


 クーデリアの方に向かって手を伸ばす。


「そして、今度こそ逃げずにデリアと向かい合いたい」


 エーコは黙って聞き、そのまま黙考する。

 安易に『出来るよ』とは言わないのは、エーコの美徳だな。


「あ、ごめんね。要領得なくて。でも、少し落ち着いたわ。ありがとう」


 微笑みながら言う。その笑みは先程までの自嘲気味だったり、儚いものではない。ある種の力強さがある。

 そこでクーデリアの剣先が相手選手の肩代わりの花(アミュレット)に触れる。その瞬間、肩代わりの花(アミュレット)が燃えた。


「終わったようね。言って来る」

「ローゼインさん」


 ローゼインはエーコに振り返る。


「立ち止まってー」

「えっ!?」

「前だけを見ないでー、立ち止まって、振り返ってー。きっと過去も全部ローゼインさんの糧になるからー」


 うん、そうだな。俺がローゼインに抱いた印象は『()()()()()()()()()()』だった。前ばかりを見過ぎている印象。

 だけど、それは本人が気付くべき事だから言わなかったが。しかし、エーコは確り言葉にした。


「うん、ありがとう」


 ローゼインは、ニッコリ笑い歩き出す。真っ直ぐ武舞台に向かう。


挿絵(By みてみん)


「来たよ、デリア」

「……また来たのね」


 冷めた眼差しで、拒絶するように言う。あの青い瞳は凍てつくようだ。氷の瞳と言っても良いだろう。


「来るに決まってるよ」


 不敵に笑うローゼイン。自分に喝を入れているのが伝わるようだ。


「それでは試合開始!」


 クーデリアが、ローゼインの後ろに周り込む。速い。一気に決着を付けようとしてるようだ。

 が、甘いな。ローゼインが一体誰に師事したと思っている?

 俺の小刀を何度も受けたローゼインは、ただ速いだけのスピードに屈する筈がない。

 即座に反応し、振り返ると斬り結ぶ。既に剣には冷気を纏っている。


「くっ!」

「っう!」


 剣を交差し、押し合う。ていうかクーデリアの剣が斬れない……だと??

 それどころかクーデリアの剣の刃が当たった箇所の冷気が剝がされている。丸で炎の魔法剣を使っているかのように。

 しかし、クーデリアの剣は燃えていないし、赤くもなっていない。だというのに冷気を剥いでる。

 並の魔法剣では、ローゼインの分子運動で生み出された冷気にビクともしない。なのに魔法剣をしてる素振りすらないのに、この結果には驚きだ。

 が、ローゼインは最初から知っていたと言わんばかりに無反応。まあ昔からの知り合いっぽいしな。

 何度か打ち合い、一旦距離を取る二人。


「……強くなったのね」


 クーデリアが冷めた青い瞳で、ローゼインを捉え呟く。


「貴女に追い付く為」


 それを燃え滾る赤き眼差しで受け止めるローゼイン。


「……わたくしの事は、ほうっておいてって言ったじゃない」

「ほうっておける訳ないじゃない。だって貴女だけ……」

「もう聞きたくない」


 遮るように言い再び接敵。また剣で斬り結ぶ。このままではローゼインのが不利だな。

 確かにスピードにはなんとか食らい付いている。だが問題はそこじゃない。冷気が剥がされている事だ。

 今のローゼインの唯一の武器とも言えるモノ。剥がされる度に分子運動で、張り直してはいるが、いつまで保つかどうか。


静止世界(スティルネス)


 そう呟くとクーデリアが更にスピードを上げる。あれ二年前の俺のスピードより速いんじゃないか? 匹敵どころか凌駕し始めたぞ。

 徐々にローゼインの腕や足に掠り傷を負うようになる。反応してるが、避けきれていない。

 それに合わせどんどん肩代わりの花(アミュレット)が散り始める。あれが完全に散ったら試合には勝つが勝負に負けてしまう。そんなの本人は納得しないだろう。


「はぁはぁ……」


 やがて、クーデリアが息切れしながら立ち止まる。そのクーデリアの体から湯気が立ち昇る。額から……いや体中から、滝のように汗が流れる。


「<炎玉魔法(ファイヤー・ボール)>」


 熱そうにしているクーデリアに、使い慣れている氷魔法を使う等、愚は犯さないローゼイン。


「はっ!」


 その炎玉魔法(ファイアーボール)を剣で斬り咲く。斬り咲くには本来闘気が必要。しかし、あれは恐らく闘気を使用していない。何故なら斬り咲かれ四散してる訳ではなく剣に吸収されているように見えるからだ。

 炎の魔法剣なら出来るかもしれないが、やはりクーデリアの剣は炎を纏っていない。どんなカラクリをしているのやら。


静止世界(スティルネス)


 再び加速するクーデリア。まずいな。このままだと勝負に負けてしまうな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ