EP.15 沙耶が大暴れしました
「はっ!」
試合開始早々薙刀で一閃。一撃で沙耶は相手選手の右胸に付けた肩代わりの花を斬り咲いた。
試合はAブロック第三試合だったのだが、あっけない。尚、Aから順番にブロック準決勝まで行われる。つまりA~Dと同時に試合をしないのだ。お陰で沙耶、ライオス、ローゼインと順番に見れるので有難い。
沙耶の制服はロングスカートなので予備動作で足が動くのが見え辛い。今も予備動作が見えなかった。その点は有利かもしれない。尤も予備動作を見て行動出来る強者がいるかどうかは分からんが。
装備については武器は自由。防具は制服が基本となっている。その上には軽鎧等は有りらしい。ライオスとローゼインは、軽鎧を纏っており、沙耶は鎧等は装備していない。が、聖霊の襷で襷掛けをしていた。
ちなみにルールは、肩代わりの花を斬る等をして相手の右胸から散らす事で決する。レオン獣王国の場合は、即死ダメージを肩代わりしてくれ、即死ダメージを与えれば勝ちだったが、学生にそんな危険な事はやらせない。何せあまりにもオーバーダメージが酷いと、そのまま死んでしまう可能性があるからだ。
この肩代わりの花は全てのダメージを肩代わりしてくれ、一定の許容量を超えると消滅すと言ったものなのだが、これをやってしまうと負けになるルールだ。なにせ怪我に繋がるからな。
よってダメージの肩代わりで消滅する前に散らさないといけないって訳だ。学生の競技だけに考えられている。とは言え痛みは確りあるらしい。
試合はどんどん進み……というか沙耶達の試合以外どうでも良い。再び沙耶が戦う時に草を覗く。
第二回戦第二試合で再び沙耶が武舞台に上がる。相手選手は武技学園の五年生らしい。二刀流で剣を構える。
「それでは試合開始!」
「はっ!」
審判の人が合図すると共に速攻で動く沙耶。第一回戦のように一閃。
………………………………とはならず。
相手選手が右手の剣で薙刀を受け流し、左手の剣を突きこむ。
沙耶は瞬時にバックステップで、距離を取り右腰の脇差を抜くと、左手の脇差を下段で構え右手の薙刀を上段で構える。脇差と薙刀の二刀流かよ。長さが違う獲物での二刀流は絶対したくないな、俺は。
「はぁぁぁ!!」
今度は相手選手が踏み込んで来た。右手の剣を振り下ろす。
「はっ!」
それを沙耶が左手の脇差で弾く。下段の構えってカウンターとか受けで良くする構えだしね。そして上段は攻撃の構え。
「ふっ!!」
上段に構えたの右手の薙刀を振り下ろす。が、咄嗟に相手選手が下がる。惜しかったな。今、肩代わりの花に掠ったぞ。
「な、に!?」
相手選手が目を見開く。相手が下がるの合わせて薙刀を投げ付けたからだ。咄嗟にそれを二本の剣を交差するように構え上に向かって弾く。
「笹山流・闘劉の太刀」
太刀って脇差だけどね。まあそんなツッコミは無粋だな。沙耶は脇差による闘気剣の斬撃飛ばしを行う。
「はぁぁぁ……!!」
相手選手は、気合を入れ上に振り上げた剣を振り下ろして前に突き出し闘気剣を防ぐ。
「はっ!」
その隙に沙耶は脇差を鞘に納めながら上に飛び上がり、上に弾かれた薙刀を掴み……、
「<着火魔法>」
薙刀に炎を伝わらせ、魔法薙刀にする。
「笹山流薙刀術・炎刀流」
炎の斬撃を飛ばす。
「くっ!」
咄嗟に避けるが、その炎が目眩ましになり沙耶を一瞬見失い、結果着地と同時に肩代わりの花が斬り咲けた。
怒涛の攻撃だったな。まあ何にしても沙耶は三回戦進出だな。
「サヤさんってあんなに強かったんですね」
それを控室で観戦してたローゼインが冷汗をながら乾いた声でエーコに話し掛ける。控室と言っても外に面してる。野球とかで見る所謂ダッグアウトって奴だ。
そのダッグアウトは、同じ学園の選手達の控室になっている。その全学園交流試合の代表をサポートする人員を一人置いても良いというルールだ。
よってエーコは沙耶とローゼインは、エーコをサポートに置いた。サポートと言ってもやる事は、水やタオルを渡すだけなんだけど。後は戦いで精神が極限状態になるので、安定作用をさせる為に置かしてるとか。
ちなみにライオスにはサポートする者はいない。
「まぁねー」
「でも、エーコさんのがもっと強いのよね?」
「わたし、この大会出れなかったよー」
「魔法を好きに使えれば結果は違ったのでは?」
「何でそう思うのー?」
「サヤさんが何かエーコさんに一定の敬意を払ってるように思えたから」
良く見てるな。
そんなこんなで他の試合は、ほとんど見向きもせずAブロック第三回戦第一試合が始まる頃に草を覗く。
沙耶の相手は今度は魔導学園の三年生か。さてどう戦うか。武技専門の者とは違う人が相手だしな。
「それでは試合開始!!」
「<炎槍魔法>」
開幕動いたのは魔導学園の生徒だ。
「はっ!」
闘気を籠めた薙刀で炎槍魔法を斬り咲く。
「<百炎槍よ、貫け! 百炎槍魔法>」
ほ~。中位の炎魔法である灼熱魔法のレベル後半じゃないと覚えない百炎槍魔法を短縮詠唱で使うか。なかなか優秀だな。
「はっ! はっ! はっ!」
百の炎槍を一つ一つ斬り咲いて行く沙耶。が、手数で間に合わない。
「笹山流・水劉の太刀」
だから太刀じゃないって。脇差だって。まあそれはともかく水魔法を纏った脇差を左手で抜き応戦する。
やがて逆属性で相殺してた事により、辺り水蒸気で満たされ視界が悪くなる。
「笹山流薙刀術・烈火の乱」
炎を纏った薙刀で突きを連打。
「<地壁魔法>」
土魔法である岩の盾でそれを防ぐ。二人とも視界が悪い中で、良く戦っているな。相手は知らんが沙耶は気配察知スキルなんて持ってないのにな。
「<地を響かせる炎よ、巻き起これ、叩き上げろ、噴き上がれ。噴火魔法>」
プシャ~~~と、地面から炎が巻き上がる。これはまた灼熱魔法の終盤レベルの魔法だな。
沙耶は咄嗟に下がる。こんなもん当たったら一堪りもないもんな。
「ならば奥の手だ。<百炎槍よ、百氷槍よ、貫け! <百炎氷魔法>」
え!? 真逆の属性魔法を同時に使ったぞ。流石は魔導学園の生徒だけはあるって感じだな。
百の炎槍と、百の氷槍の計二百の槍が沙耶を襲う。どうする沙耶?