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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十五章 スイースレン公国の腐敗
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EP.12 特訓を開始しました

「ほらほら鈍いぞ。もっと確り走る」

「はいぃぃ!」


 特訓と言えばこれだよね。永遠と走らせる。もうかれこれ一時間は走らせていた。


 ブンブンっ!!


「いや~~」

「ほらほらもっと走らないと」


 ブンブンっ!!


「はぁはぁ……まだ走らないと……はぁはぁ……いけ、ないのです、か?」

「当たり前だ!」


 ブンブンっ!!


「アンタ、鬼よ」


 後からランニングが参加しに来た奴が、何かボソっと言ってるがスルーで良いや。


「おい! 今、身体強化の魔法使っただろ?」


 ブンブンっ!!


「なん……で、はぁはぁ……分かる、んです、か?」

「魔力察知スキル持ってるんだよ。ともかく魔法は禁止したぞ」


 ブンブンっ!!


「はいぃぃ~~」


 もう涙目だ。


「少し加減してあげなさいよ」


 またハエがブンブン煩いな。


「誰がハエよ!? それにブンブンさせてるのアンタでしょうよ!?」

「というか沙耶、本人が望んだ事だぞ。無難にって選択肢を与えたのに」

「そうだけど」


 ブンブンっ!!


「ほらまた遅くなったぞ」

「はいぃぃぃ~」


 ブンブンっ!!


「とりあえずその小刀ブンブン振るの止めて上げなさいよ」

「ペナルティがなければどうずる? 甘えるだろ?」

「そうだけど」

「もう一ヵ月しかないんだぞ」

「……そうだけど」


 沙耶の声がしぼんでいく。反論出来なくなったよだ。


「だから遅い!」


 バシっ!


「っ!!」


 小刀で斬り付ける。とは言え加減した峰打ちだけど。


「罰としてあと二時間走る事」

「ひぃぃぃ~」

「どこまでの鬼なのよ!?」


 とは言ったが残り10分くらいでおしまいにした。エーコと待ち合わせの時間だしな。


「5分休んだら魔法の特訓だ」

「そん……なぁ……」


 ブンブンっ!!


「何か言った?」

「いえ~」

「『サー』はどうした?」

「そんな事、言ってなかったでしょうよ!?」


 また外野の沙耶が煩いな。


「ノー、サー!」

「よし! 休んだな。じゃあ魔法の特訓に移る」

「イエッサー!!」

「じゃあエーコ、あと宜しく」

「分かったー」


 結果から言って話にならなかった。肉体的に疲れ切っており魔力を集中する余裕がなかったのだ。


 カンカンっ!!


「ほら起きろーーーっ!!!!」


 次の日、寮のローゼインの部屋の窓の外で、鍋をカンカン鳴らし叫ぶ。うんなんかテンプレな起こし方だな。本当は部屋に入り布団を剥がしてやりたいのだが、女子寮だからそれは出来ない。


「ふは~……もう少し寝かせて……」

「煩い! ほら起きろ」


 カンカンっ!!


「イエッサーっ!!!」


 数日後、ローゼインは寮の部屋にいなかった。正確には気配がなかった。まあこうなるわな。テンプレだし。

 ってな訳で捜索。気配完知で直ぐ見つかったけど。前まではそんな誰かを特定して感知なんて出来なかったが、今の俺は龍気を扱えるようになり、そのお陰で可能となった。

 ローゼインは、学園近くの森の中で木を背にガクガクブルブル震えている。まあ予想通りだな。


「おはよう。今日は早いだな」

「えっ!? 何で分かったの?」

「俺の最も得意なのが気配を追う事だからな」

「そんな……」


 もはや絶望を通り越して表情が抜け落ちる。全てを諦めた囚人のようだ。まあ魔法を使えば魔力察知でバレ、逃亡すれば気配完知で追跡されたからな。


「ほら朝の駆け込み」

「……イエッサー」


 もう声に覇気がない。さて次の段階に入るかな。


「そもそもさ、一つだけ魔法は禁止してないぞ。むしろそれだけを使うようにって言った筈だけど? それ使って走れば良いじゃん」

「えっ!? どうやって?」

「じゃあお手本を見せよう。<氷道魔法(アイスロード)>」


 足元を凍らせ氷の道を作る魔法だ。が、しかしもう一塩加え自分の足元を少し高くする。そうする事でツルツルと前に滑る。


「……!?」


 ローゼインが目を丸くする。そして徐々に正気が戻って来た。


「……何故もっと早く教えてくれなかったのですか?」

「疲れきってるとこに魔力制御の練習をすれば扱いが上手くなるとエーコが言っていただろ? 最初からやっていたら意味ないんだよ」

「なるほど。では……<氷道魔法(アイスロード)>」


 スッテンっ!


 まあこれまたテンプレ。後ろに転んじゃったよ。というかパンツ丸見えだ。


「いったー」

「今日はそれで走るように」


 ブンブンっ!!


 いつものように小刀の素振りを開始。


「い、イエッサーっ!!」


 スッテンっ!!


 再び転ぶ。


「ふむ。黒はまだ早いんじゃないか?」

「………………どこ見てるんですか?」


 めっちゃ睨まれる。


「どこ見せてるんですか?」


 嫌味ったらしく同じような言い方をする。すると顔を真っ赤にさせつつスカートを抑える。というか睨んで来る時点でスカートを抑えろよ。

 数度失敗したが、途中から出来るようになり、前に滑り今までより格段に速く走れるようになった……まあ滑ってるのであって走ってはいないけど。

 ちなみにだが、疲れ切ってる時に魔法を使えば魔力制御の練習になるとエーコが言っていたのだが、当の本人はそんな事をした事がない。なにせ神童だしな。


「どうだ? 今までよりスムーズに魔法が使えていないか?」

「そうですね」

「魔力制御の練習のお陰だ。だから最初から教えなかったんだよ」

「なるほど」


 まあその後、MP切れで結局普通に走らされるのだけど。さもありなん。

 半月走らせていたし、そろそろ俺との模擬戦も増さないとな。一ヶ月とかマジで日数少な過ぎるわ。そんなんで形になるか微妙なとこだけど。

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