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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十五章 スイースレン公国の腐敗
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EP.10 全学園交流試合の代表者が決まりました

 月日はあっという間に流れ、エーコ、沙耶、ライオスは無事二年生に進級した。そしてこの日、全学園交流試合の代表者を決めるクラス総当たり戦が行われた。


「総当たり戦の結果を発表する」


 剣術の教師が口火を切る。

 尚、俺が現在(ファミリア)を覗いているのは、龍気心拳の修行の一環だ。同時に二つ以上の事をしろと言われ、龍気の扱いを学びつつ最近はずっとエーコ達やナターシャ達を(ファミリア)で覗いている。


「サヤ、ライオス、ローゼインだ」


 ほ~。沙耶とライオスの両方が選ばれたか。

 それともう一人、ローゼインって去年親善試合の代表にも選ばれていたな。かなりの実力があるのだろう。ただ去年も思ったけど、こいつなんか影があるんだよな。

 ちなみにだが総当たり戦は、身体強化のみ魔法有り。全学園交流試合では他の魔法の使用も有りなのだが、代表者を選ぶこの試合は、安全性が考慮され身体強化のみとなっていた。それ故にエーコでは厳し過ぎた。

 そして、驚いた事にライオスは全勝した。精霊が使えない上に薙刀も無しとは言え、沙耶に勝ったのだ。尤も辛勝だったが。この一年で相当強くなっていた。

 尚、闘気は使用していた。まあ相手は身体強化の魔法を使用しているので、闘気を使わないと分が悪いしな。一応剣術の教員に許可を貰っていた。

 その沙耶は惜しくも一敗。ローゼインはライオスと沙耶に負けてしまう。エーコも奮戦していたが五敗してしまう。


「クソ! あの下民が全勝とか何かの間違いだ」


 また紫頭が喚いているな、確かハンネルだったか。


「どっちにしろ六敗してるようじゃライオスがいなくても、アンタは選ばれなかったよ」

「煩い!」


 まーた、沙耶が嘲笑い煽ってるな。なんかテンプレ化してるぞ。


 そうして、その日の授業が終わり放課後の事だ。


「ライオスとサヤ、二人とも全学園交流試合への参加おめでとう」

「ありがとうございます」

「ありがとう」


 担任教師のハーフエルフ……確かルリシアと言ったか。ルリシアが二人を祝いお茶で乾杯する。

 っていうか、そのお茶を主役のライオスに淹れさせるのは、どうなのかな?


「二人共、凄い凄い凄い!」

「いえ、運が良かっただけです」

「全勝しておいてよく言うよ」


 ライオスが謙遜するが、沙耶にジトーっと見られる。


「全魔法、全武器解禁なら確実にサヤとエーコには敵わなかったよ」


 確かにな。エーコが魔法解禁にしたら、かなりの猛威を振るっていただろう。余裕で全勝だったかもしれない。沙耶も薙刀が使えればライオスに勝てたかもしれない。更に沙耶の場合は精霊という奥の手もあるからな

 でも本番は、全て解禁なのに代表者を決める総当たり戦は、安全の為とは言え身体強化の魔法しか許されないってのは、釈然としないな。

 確かに強力な魔法で命を取りかねかもしれないけどさ。しかも本番は安全性を考慮された魔道具(アーティファクト)が用意されるらしいし、参加者を決める総当たり戦でも用意してやれよ。


「そうね。エーコには不利な条件だったわね。でも、五敗だけで済んでるなんて凄いわ」

「いいよー、わたしは。そういうので目立ちたくないしー」


 ルリシアの言葉に照れたように笑う。まあエーコは、目立つのを嫌う性格してるからな。全魔法が解禁されていても本気を出さなかったかも。


「二人共、本番は上級生もいるから気を付けてね。ましてや貴方達は二年生だから、ほとんど全員が上級生になってしまうわ」

「「はい」」


 上級生か。確か一つのクラス―― 一学年に一クラスしかない――に4人が代表になるが、二年生だけが3人。三年生~六年生が4人で合計19人。学園は三つなので57人。

 それに加え去年優勝者だった者は別枠で加わり総勢58人による全学園交流試合だったな。となると同学年が2割もいないって事になるのか。


 それから次の日の放課後


「あの……エーコにお願いがあるんだけど」


 エーコに声を掛けられた。沙耶の方をチラっと見つつ。


「なーに? ローゼインさん」

「じゃあ私、先に帰るよ」


 沙耶は恐らく自分がいると話し辛いと思ったのか、そそくさと教室を出ようとした。その沙耶に意味深な視線を送るローゼイン。


「ローゼインさん、本当はサヤさんに相談したいんじゃないのー?」

「えっ!?」


 エーコの言葉に『私も!?』と言わんばかりに驚き振り返る沙耶。


「そうなの?」

「そうなんだけど。……いや、二人にお願いがあるんだけど、状況的にサヤには言い辛いと思って」

「何でよ?」

「とりあえず場所変えて良い?」


 教室では言えない事なのだろう。三人は人気のない校舎裏に向かう。


「二人にお願いしたいのは、私を鍛えて欲しいの。でも、サヤにはちょっと頼み辛いかな」


 ローゼインは遠慮がちに言う。


「あ~私も代表に選ばれたから?」


 得心が行ったという感じで言う沙耶。なるほどね。同じ代表に選ばれた以上、鍛えて貰うのはフェアじゃないと思ったのかね。


「でもー、何で、わたし達二人ー?」

「二人が出身が同じだからなのか知らないけど仲良いってのと、それぞれ武技と魔法が得意に思えたから」


 つまり沙耶からは武技系、エーコから魔法系を教わり鍛えたい訳か。


「でも突然何でよ? 私に言い辛いって事は全学園交流試合に関係してるのよね?」

「えぇ。実は…………どうしても負ける訳にはいかない人がいるの」


 一瞬顔が影に落ちるが、強い意志を感じさせる言葉を放つ。その言葉を聞き沙耶とエーコはお互い顔を見合わす。


「協力したいんだけどー……わたし、誰かに教えるとかした事ないんだよねー」

「私もそうよ。模擬戦の相手をするくらいしか出来ないよ」


 二人が言い辛そうに言う。


「そう……出来る範囲で良いわ。どうしても負ける訳には行かないの。力を貸して」

「これわたし達じゃないとダメかなー? 一応アテがあるよー」

「えっ!?」


 エーコにそんなアテあるのか?


「人に教えられてー、わたし達より強い人を知ってるよー。頼んでみるー?」

「お願い」

「分かったー」


 エーコは収納魔道具(ストレージカード)から伝心魔道具(スマートシーバー)を取り出す。

 え? まさか………………。

 俺の懐で伝心魔道具(スマートシーバー)が鳴る。

 やっぱり。アテって俺かよ。

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