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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十五章 スイースレン公国の腐敗
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EP.08 親善試合をやっていました

 -1663――――月陸歴1516年10月8日



「これより全学園の生徒と騎士団との親善試合を行います。審判は不肖私、騎士団長ジャリレック=サマンが務めます」


 久々に(ファミリア)を覗いたら面白い事をしてるじゃねぇか。


「最初にルール説明を。使用出来る武器は、刃渡り100cmまでの木剣。盾は制限無し。勝敗は降参させるか戦闘続行不可能に追い込むかになります。また魔法は使用禁止」


 木剣か。沙耶も出るようだけど不利じゃねぇか? 薙刀を使えないしな。


「まずは総合学園からライオス」


 お! 初っ端からライオスか。どれだけ成長したか楽しみだな。


「おい! 無様な試合をするなよ。貴様のせいで俺の成績まで響くのはごめんだからな」

「はい。無様な試合をしないように励みます」


 誰だ? この紫頭。別にライオスが無様な試合をしようが、お前が良い試合をすれば成績が上がるんじゃねの? それともこれ団体戦なのか?

 ライオスの方は大人の対応をしてるじゃねぇか。にしても想像以上に風当たりが強いな。流石は他種族差別の国だ(ライオスは同じ人族だが)。


「尤も最初から貴様等には期待していないがな」

「期待していないのなら、最初から言わなければ良いじゃないのよ」

「ちっ!」


 沙耶が冷めた目で食い付く。対する紫頭はしかめっ面で舌打ちした。いつもこんな調子なのかな? それとなく見守るように言ったけど、あからさま敵愾心を出してどうするんだよ。


「相手をするのは第二師団所属エマーリー=カラセイア。両者構え」


 ライオスが両手持ちで正眼の構えを行う。


「ん? 盾無しか……その構えは、ジパーング聖王国のものか?」


 エマーリーとやら疑問を投げ掛ける。


「はい」

「そうか」

「では、始め!」


 即座にライオスが飛び込む。随分動きが速くなったな。

 しかし、あっさり盾で防がれてしまう。続けてエマーリーが剣を振るう。それを切り返して打ち付ける。

 動きは悪くないんだけど、体格差がなぁ~。大人と子供じゃハンデがあり過ぎる。


「ふん!」

「くっ!」


 シールドバッシュで、ライオスの体勢が崩れる。そして剣が飛んで来るが、体勢が崩れたままなんとかパリィした。

 そんな攻防が暫く続く。なんとか凌いでるが、このまま続けばいずれ追い込まれるぞ。


「これで!」


 やばい! エマーリーが大きく振り被る。


「はぁぁ!」


 避けるどころか踏み込んだぞ。懐に入り躱す。そのまま左手を木剣から外し掌打。


「くっ!」


 クルリと回り体を捻る事で勢いを付けて相手の木剣を弾き飛ばす。そして、首元に剣先を向ける。


「参った」


 勝った。粘り勝ちというのかね。良く凌いだな。成長ぶりが見れた良い試合だった。尤も相手の騎士団の人、手加減してたの丸分かりだ。花を持たせてくれたな。


「続いてハンネル=アルビドソン」


 次は紫頭か。


 ……

 …………

 ………………


 注目すべき点等ないつまらない試合だった。


「プッ!」

「ちっ!」


 うわ! 沙耶の奴、煽ってるな~。今、紫頭を見て吹いたぞ。


「続いてサヤ=ササヤマ」


 沙耶の出番か。ん? 木剣が短いな。脇差を想定しているのか?


「相手をするのは第一師団所属ウザイツア=シュバイツアー。両者構え」


 ウザそうな名前。


「ふん! 女か。つまらん」


 いきなり嘲りかよ。名前通りだな。


「女ですが何か?」

「しかも生意気な」

「それは失礼しました」


 沙耶の言葉に険があるな。怒っちゃった? まああれは怒るな。


「私語は慎むように! では、始め!」

「ふん!」

「なに!?」


 沙耶の奴、いきなり盾投げたぞ。アリなのかよ、それ。


「はっ!」


 距離を詰め短い木剣で斬り掛かる。


「舐めるな。<身体強化(ストレングス)>」


 魔法を使ったぞ、コイツ。


「くっ!」


 沙耶の攻撃は、ウザい奴の身体能力が上がった事であっさり躱され、逆に斬り掛かられる。なんとかバックステップで躱す。そこにシールドバッシュで追撃。なんて汚い奴だ。

 シールドバッシュで当たる瞬間更に下がりダメージを減らす。

 沙耶は俊敏差を利用し、走り込みウザい奴の右を抜けながら、斬り掛かるフリ(・・)をする。


「なに!?」


 剣で防ごうとしたが、沙耶の左手は何も持っていない。何故なら右手に持ち替えたからだ。かなり頭に来てるな。左手で脇差を想定していたのに、それを無視してでも勝ちたいのだろう。

 というか(ファミリア)ごしでも持ち替えたの分かったのにウザい奴は、気付かなかったのかね。


「はっ!」


 振り返りつつ背中に木剣を当てる。


「くっ! 汚い真似ばかり」


 魔法は禁止されているのによく言うよ。


「あら、ごめんなさいね。魔法を使わないと勝てない人にする事ではなかったわね」

「キサマーっ!!!」


 うわ! めっちゃ煽ってるな。


「この! この!」


 もう力任せに振るうだけだ。沙耶は左手に再び持ち替えて冷静に対処する。全て受け流していた。しかも怒りで我を失っており盾を使わない。


「それが騎士の戦い? 無様よ」

「女の貴様が騎士を語るなっ!!」


 どこまで煽るんだ?


「クソ! クソ! 女としても使い物にならないクソガキが調子に乗るな」


 あ~あ。その台詞はダメだろ。沙耶を怒らせるだけだぞ。

 沙耶は今まで受け流していたのにバックステップで躱すと……、


「はっ!」


 軽くしゃがみバネを付けるかのように高く飛ぶ。空中でクルリの一回転しながらウザい奴の背中を打ち付けて後ろに着地


「このーっ!」


 木剣じゃ大したダメージにならず、振り返りながら木剣を振る。他の騎士は花を持たせてくれるので、ここで少し怯んだりフリをする等の行動を取るのだが、コイツはダメだ。


「はっ!」


 そんな力任せで、しかも後ろが見えない状況で振り返る勢いのまま振るっていたので、あっさり弾かれた。ウザい奴の木剣は中空で回転し、明後日の方向に落ちる、


「まだやる?」

「黙れ、小娘が! まだ盾がある」


 シールドバッシュを行う。というか騎士団長の審判は止めないのかね。魔法使った時点で止めるべきだろ。

 沙耶は盾を右手を突き出し素手で掴み弾き飛ばす。うわ! 勝つためにそこまでするか。胸を借りる親善試合じゃなかったのかよ。


「おわっ!」

「はい。盾もなくなったよ」

「煩い!」


 サヤは悠然歩き、ウザイ奴に近寄り無防備になったコイツの首に木剣の切っ先を当てる。


「これでも負けを認めないの?」

「当たり前だ」

「みっともない騎士」

「黙れ!」

「そこまで! 勝者サヤ=ササヤマ」


 やっと審判が止めに入った。今頃かよ。


「待ってくれ、ジャリレック。今の油断してただけだ。もう一度頼む」

「何!? 栄えある騎士が言い訳するのか?」


 審判がウザい奴を睨み付け。


「煩い! 子爵の分際で公爵である私に文句を付けるな」


 逆ギレかよ。


「私は、この親善試合の審判を一任されている。それでも不服があるのか?」

「くっ!」


 毅然と対応する審判に苦虫を嚙み潰したよう顔をするウザい奴。


「そもそも、お前……魔法を使っただろ? これ以上恥を晒すな」


 あ、気付いていたの。


「なら、この女はどうなる? 不正をしただろ。最後の盾をこんな細腕で弾ける訳がない」


 そうだな。あれは沙耶の奴、ムキになっていたからな。


「闘気を使っていたな。だが、先に不正をしたのはウザイツアーの方だろ? それにサヤは、剣を弾くとこまではそんな真似をしていなかった。それなのにお前は何だ? 剣が弾かれた時点で潔く負けを認めるべきだったのではないか?」

「くっ! 小娘、覚えてろよ? この私に恥を掻かせやがって」

「小さい男の小さな事なんて直ぐに忘れるわよ」


 ウザい奴は審判に何も言い返せなくなり、今度は沙耶に八つ当たりする。が、沙耶は嘲笑いそれを切って捨てた。


「私語を慎むように。ウザイツアー、もう戻れ。騎士団をこれ以上汚すな」

「クソ!」

「君もだ、サヤ」

「それは大変失礼しました、ジャリレック様」

「にしても闘気も扱え、独特の剣捌き……今後が楽しみだな。これからも励むように」

「はい」


 沙耶は右手を上から左脇腹の方へ優雅に振り下ろしながら頭を垂れ、慇懃な対応をした。ウザい奴とは全然対応が違うな。相当頭に来ていたのが良くわかる。

 こうしてこのくだらない茶番は終わった。終わってみれば親善試合はつまらなかったな。茶番としか言いようがない。魔法を使わず剣だけ戦うんだもんな。

 学園生活をじっくり描こうと思ったのですが、アークが登場しないので早回しですw

 アーク側では7月20日辺りまででしたが、もう既にそれより先に進みましたね。

 ただこれをすると、生徒達が目立たないのが難点です。中には今後重要な役割をするキャラもいるのですが(汗)

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