EP.08 エーコが誕生しました
ティーが五芒星の魔法陣を描き始める。
「この中心に立ってこれを読み上げるのよ」
そう言って紙を渡される。
「我、契約を結ばん。我に汝の力を示せ。我が捧ぐは心、雷をも焼き尽くす爆炎を、我に与え賜え? 何だこれは?」
「精霊と契約する為の言霊よ? これでを読み上げる事ができれば魔法を習得できのよ」
《中二文章じゃねぇか!!》
「わかった」
そう言って俺は、魔法陣の中心に立つ。
「<我、契約を結ばん……我に汝の……>」
ドーンっ! と、俺は吹き飛ばされる。
「<防御魔法>」
「くっ!」
俺は、どうやらティーにぶつかったようだ。
「大丈夫?」
「それはこっちの台詞だ! お腹の子に何かあったらどうする!?」
思わず怒鳴ってしまった。
「大丈夫よ。こうなるとわかっていたから、防御魔法を張ったのよ?」
「そうか……で、これは失敗なのか?」
「そうね」
「じゃあ俺は魔法を習得できないのだな?」
「いいえ……」
ティーはかぶりを振り……、
「何度も挑戦すれば何時か習得できるかもしれないし、できないかもしれない」
「何だそれは?」
「精霊は何を見て契約してくれるか、はっきりわかってないのよ。だから、何度も挑戦する気概を見て契約してくれる……かもしれない」
「曖昧だな」
「だから、はっきりわかってないのよ」
「そうか」
再び俺は魔法陣の中心に立つ。
「<我、契約を結ばん……我に汝の力を示せ……我が捧ぐはここ……>」
ドーンっ! 先程より長く言えたが結局吹き飛ばされてしまった。
「頑張って、あなた」
微笑を浮かべそう言って来る。笑うとティーの綺麗さが、更に際立つんだよな。つい見惚れてしまう時がある。
それにティーに言われたら、やる気になってしまうな。不思議なものだ。
《だから、うらやましいんだよ、チクショーー!!!》
再び魔法陣の中心に立つ。
「<我、契約を結ばん……我に汝の力を示せ……我が捧ぐは心、雷をも焼き尽くす爆炎を……我に与え賜えーっ!!>」
最後まで言えると、ぶは~~~~っと、上昇気流が起きる。
「おめでとう。成功よ。下位稲妻魔法を習得したわ」
その後、他の魔法も何度か挑戦して最終的に下位火炎魔法、下位稲妻魔法、下位氷結魔法、下位回復魔法を習得できた。
残念ながら中位系はまったくダメだった。
名前:ダーク
年齢:十五歳
レベル:60
クラス:暗殺者
称号:見殺し者
HP:4300
MP:140
力:440
魔力:80
体力:320
俊敏:1700
スキル:隠密LvMAX、ナイフ使いL5、剣使いLv4、短剣使いLv2、小太刀使いLv7、小刀使いLv7、投擲Lv7、気配察知Lv8、闘気Lv5
エクストラスキル:二刀流、毒耐性、痛覚鈍化、下位火炎魔法、下位稲妻魔法、下位氷結魔法、下位回復魔法
ユニークスキル:愛犬使役
プレイヤー補助スキル:鑑定
《おお! 遂に魔法を習得したか。って、今更なんだよな。しかも下位系じゃあんま役に立たないだろ》
それから七ヶ月後、1月11日に子供が生まれた。
ティーに似て桃色の髪をしている。きっとティーのような美人になるだろうな。
「あなた、名前は決めているの?」
「考えてはいる。ティー」
「何?」
「笑うなよ」
「うん」
「ええ娘に育って欲しいからエーコだ」
「本気で言ってるの?」
呆れた眼差しをされた。
「ああ」
「ははははは……」
思いっきり笑われた。
単純なのはわかってる。だけど、俺はこれしか思い付かなかった。
「気に入らないなら、ティーが決めろ」
つい、拗ねたように言ってしまう。
「ごめんなさいね。一応何でそんな発想になったのか聞かせて」
「俺の手は血で染まってる。だけど子供にはそうならず真っ直ぐに良い子になって貰いたい。だからエーコだ」
本当は子供を抱く資格もないのではないかと思う。それでもティーに惹かれた結果だ。せめて子供は真っ直ぐでいて欲しい。
「わかったわ。それにしましょう」
「良いのか?」
「ええ。貴女はこれからエーコよ。エーコ=アローラ」
《やっぱりダークの娘だったか。説明書に人物紹介でエーコの名前があったんだよな。同じアローラだし何かあるとは、思ったけど。
それにエーコもまた最近実装された新規プレアブルキャラなんだよな。一応鑑定っと》
名前:エーコ=アローラ
年齢:ゼロ歳
レベル:1
クラス:無し
称号:神童
HP:3
MP:40
力:0
魔力:30
体力:0
俊敏:0
ユニークスキル:魔知魔眼
《赤ん坊だけあって、HP力体力俊敏が低いのは、まあ良い。
だけどいきなりユニークスキル持ちかよ! しかも神童ってなんだよ!? MPと魔力もレベル1のくせにおかしいだろ?》
「ワンワンっ!」
「あらあら……ハンターもエーコが見たいのかしら?」
エーコを抱きかかえるとティーがハンターにエーコを見せるようにしゃがむ。
「クゥ~ン」
エーコの頬を舐める。
「妬けてしまうね。何で私には懐かないのかしら?」
ハンターはずっと俺には懐いていた。狩りに外に出れば着いて来て、一緒に狩りを行った。まぁまだ子犬なので大した魔物は狩れないが。
そして、家ではティーにあまり近付かない。エーコがいるお陰でなのか、初めて近寄ったように思える。
「それとあなた。エーコの目を良くみて」
「ん? 色が違うな。オッドアイって奴か?」
左は薄紫、右は赤色の瞳というオッドアイをしている。
「この村で赤系の瞳で生まれて来る者は、魔力が高いと言われているの」
「そう……なのか?」
《へ~~。そんな設定があるのか。てか、ティーは若緑色だから魔力が低いのか》
「ええ。それで、最も魔力が高いと言われているのが、紫色よ」
「左目は薄紫色だな」
「そうなのよ。だからエーコは、もしかしたら凄い才能があるかもよ?」
《確かにあるね。生まれたてでMP魔力が高く、しかもユニークスキル付きだもんな》
「誰に似たんだろうな? その話からするとティーは、若緑色だから魔力なあまり無いようだし」
「それを言わないでよ。気にしてるのよ?」
「ああ、すまない。だが、俺はその瞳が好きだぞ。いつまでも見たくなる」
「ふふふ……ありがとう」
照れたように笑う。
「確かにベッドでは、ジーっと見て来るよね? ああいう時が一番恥ずかしいのよ?」
「知るか。それより何で瞳は似なかったんだろうな」
顔がカーっと熱くなるのを感じ、そっぽ向き話題を戻す。
《いちいちイチャ付くな。イラ付くわ!》
「たぶん先祖返りじゃない?」
「そうなのか」
「ええ」
《先祖返りね。テンプレ設定だな》