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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十五章 スイースレン公国の腐敗
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EP.03 授業

「エーコさんは魔法が得意と言ってましたが、この七属性のうちどれが使えますか?」

「全部ー」


 『おぉお~』と感嘆の声が教室に漏れる。

 まだ学園に通っていなかった九歳が、複数の属性を扱えるのは珍しいのに全部となれば、普通じゃないのだ。尤もエーコの場合はそれ以外の属性も使えるのだが。


「凄いですね。私も学園に通い始めた頃は五属性だったのですけどね」


 そのルリシアの言葉に更に驚きでどよめく。


「はい、静かに。では、サヤさんは?」

「土以外ですね」


 またまた驚きの声が漏れる。


「器用貧乏と言ってましたが万能型なのですかね?」

「いえ、そんな事は……」


 流石にルリシアもこれには驚いた。ウルールカ女王国から来た留学生が二人揃って多数の属性を使えた事に。それと同時に何故魔導学園に行かなかったんだと疑問に思う。


「魔法を既に習得されているお二人には退屈かもしれませんが、テストに出るので続けますね」


 そう言って黒板に文字を書き始める。

 それをエーコと沙耶は、木札に書き留めて行く。紙は高級なので大抵皆木札だ。エーコ達はお金があるのし紙でも良いのだが、悪目立ちしそうなので木札にしていた。

 黒板の内容は、『〇刃よ、我が前の敵を切り裂け』であった。


「はい、基本魔法の最も初級の詠唱はこれです。これにそれぞれ属性の文字を当てます。例えば炎属性なら、『炎刃よ、我が前の敵を切り裂け』になる訳ですね。この詠唱文を暗記し、何度も繰り返しノートに書き留めるか口にする事で、ふと魔法が頭に思い浮かびます」


 エーコとサヤは実際にはこの方法で習得していない。ウルールカ女王国の書庫で調べて一番最初はこの方法で覚えるとは知ってはいるが。


「他に覚える方法としまして、一つ以上の魔法が使えるようになれば、職業を魔導士系を選べるようになります。その魔導士系を選べば、職業の恩恵で覚えられるかもしれません。まぁいずれにしろこの学園では、基礎で覚えて貰います。勿論個人で職業を選び魔法を習得して貰っても構いません。尤も基礎からやれば必ず覚えられる訳ではありません。何故なら……はい、ローゼインさん」

「人それぞれ得意不得意があるからです」


 ローゼインと呼ばれた赤い髪を首の後ろで結ぶ肩の下辺りで切り揃えており、赤い目をした少女が答えた。


「正解です。仮に不得意であっても、もしかしたら他の希少属性が得意かもしれません」

「基本属性が全部不得意な奴なんていないでしょう」


 ハンネルが野次を飛ばす。紫髪で耳が出る長さに深縁の目をした父の爵位が公爵の少年だ。


「あぁあ、一人字も書けない奴がいましたね。その詠唱文書けないんだから覚えられませんね」


 嘲笑混りに黒髪黒目の少年ライオスを見る。それによりクスクスと忍び笑いが教室に響く。


「関係ないじゃないのよ」

「なんだと?」


 冷めた眼差しをした沙耶がボソっと呟し、ハンネルが食って掛かる。爵位が最上位だけありプライドが高いのだ。


「私は書き留めなくても覚えたけど?」


 ちなみに沙耶は確かに一番最初書き留めいない。書いてある文章を読んで覚えたのだ。尤も星々の(スターライト)世界での話だが。いずれにしろ字が分かったから覚えられたとも言えなくもないが。


「はい、静かに。確かに字が書けなくても暗記し復唱すれば覚えられますね」

「ちっ!」


 ハンネルが舌打ちする。


「それでは、おさらいを終わります。皆さん何度も書き留めください。エーコさんは必要無いでしょうけどテストに出ますので暗記しましょう」

「はーい」

「サヤさんは土属性だけですね」

「はい」

「ライオスさんは、頭の中で何度も復唱しましょう」

「はい」


 その日の授業が全て終わると、ライオスが真っ先に教室を出て行くのを沙耶は確認し、追い掛けようとするが、また囲まれてしまう。

 これは暫く珍しがられてまともに動けないなと、再び内心げんなりとした。


 それから何日か過ぎる。


「「「「「1、2、3、4、5、6、7、8」」」」」


 剣術の授業が行われていた。とは言え、ずっと木剣を振らせられているだけだ。まずは型を覚え筋力を付けろという事で。

 今日も今日とて剣を振り盾を構えるを繰り返す。その際に剣は真向斬り(縦振り)、一文字斬り(横振り)、袈裟斬り、突きの4通りで1セットとしていた。

 それだけをやらされていた授業だが、剣術の教師がいたのが初回だけ。それ以降は実習が続き、今日は珍しく教師がいた。

 見られてるとなると身が引き締まり、真剣に取り組む。まぁ教師がいなくても真面目にやってる者もいるが、大抵は適当にやってしまうのは無理からぬ事。


「ヤメ!」


 教師の言葉に全員、剣を止める。


「よし、では私の相手をして貰おう。最初は……そうだな。ライオス」

「はい」

「好きに打ち込んで来なさい」


 教師は余裕綽々と言って感じで盾も持たず半身を後ろに下げて片手で木剣を構える。対してライオスは持っていた盾を捨てて正面で構える。右手で確り持ち左手を軽く添える感じの両手持ちだ。

 ちなみにだが服装は制服だ。この学園には運動着や訓練着と言ったものがない。しかし、そうなると制服が汚れてしまうと思うだろうが、実はこの制服は魔道具武装アーティファクト・ウエポンなのだ。

 清浄という能力があり、汚れても直ぐに落ちると言ったもの。


「ほ~」


 教師の感嘆の声が漏れる。ライオスの構えに隙がないからだ。


(これはジパーング聖王国の基本の構えか。それも板に入ってる)


「なんだアレ」

「クスクス」

「下品極まりない」

「型も何もあったものじゃない」

「プッ!」


 下卑た笑いをする者達の言葉を聞き思わず沙耶は吹き出してしまった。


「何がおかしい?」


 それに食って掛かる顔を真っ赤にしたハンネル。


「型も何もあったものじゃないって無知だと公言してものじゃないのよ」

「なんだと?」

「中段による正眼の構え。状況に応じて直ぐ様、上段や下段に移行出来る理に叶った両手持ちの基本的な構えじゃないのよ」

「お静かに!」

「始まります」


 その言い合いを止めたのは白っぽい金髪縦ロールしており、腰の辺りまである、茶色の目をした少女のユミエラ。そして、それに続く水色髪の少女であるエリザベスだ。


「さぁ、いつでも来なさい」

「はぁぁ!」


 ライオスが上段から斬り掛かる。が、あっさり弾かれてしまう。


「くっ!」


 それも大人相手だ。教師が軽く弾いただけで体勢を崩す。


「まだ!」

「ほ~」


 それでも踏み込む。

 しかし、やはり大人と子供では差が大きい。どう斬り掛かろうとも、あっさり防がれてしまう。

 それでも踏み込む。

 踏み込み果敢に攻める。それを野次を飛ばしながら見ていた生徒達も食い入るように見だす。


「それでは、こちらからも行こう」


 今まで防ぐだけだった教師が踏み込みライオスに攻撃を加え始める。こうなってしまうと防戦一方。


「はっ!」

「なに!?」


 大きく振り上げ教師の木剣を上に跳ね上げさせる。そして踏み込み突きを行う。


「甘い」


 教師は上に跳ね上がった木剣を瞬時に下ろし、ライオスの木剣に鍔を引っ掛けて止めてしまう。


「なかなかだった」

「ありがとうございます」

「ライオス、君はジパーング聖王国出身か?」

「いえ、両親がそちら出身です」

「では、剣は両親に?」

「はい」


 このやり取りに沙耶は驚く。沙耶が知る限りライオスは、八歳の頃に孤児院にやって来た。

 つまり、それ以前に両親から剣を教わった事になる。八歳まで教わった程度であそこまでの腕を身に付けられるだろうかと。

 前に転生者ではないかと疑ったが、まだそっちのがしっくり来る。尤も沙耶のように年齢を下げていなければだが。

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