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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十五章 スイースレン公国の腐敗
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EP.02 編入

 -1838――――月陸歴1516年4月13日



「本日はウルールカ女王国からの留学生が二人来ました」


 そう教壇で切り出すハーフエルフの少女。背中まで伸びる輝く金色のツインテールにした髪に瞳も同じく金色。

 成人してるかしていないかの見た目をしてるが、これでも立派な教師だ。尤もエルフの血が流れているので、見た目通りかどうかは分からないが。


「エーコ=アローラさん、伯爵令嬢。サヤ=ササヤマさん、同じく伯爵令嬢です」

「エーコ=アローラでーす。得意なのは魔法系全般。宜しくねー」

「サヤ=ササヤマよ。得意なのは……特にないわね。正直器用貧乏よ。宜しくお願い致します」


 二人は、挨拶もそこそこに頭を下げる。


「ルリシア先生、あの……」


 机に座る一人の少女が手を挙げる。肩の下辺りまでの水色の髪に同じく水色の瞳で整った容姿をした少女だ。


「はい、エリザベスさん」

「随分時期外れですね」


 そう今は4月13日。本来なら4月2日に入学していないとおかしい。11日遅れでやって来た二人を訝しがる。


「ウルールカ女王国で書類の遅れが出ただけだそうですよ」

「そうでしたか」


 教師の言葉にエリザベスと呼ばれた少女は納得した。


「では、二人共空いてる席に自由に座ってください」


 そう言われ、エーコと沙耶は黒髪に黒色の瞳をした少年に視線を一度送り、その少年が良く見える後ろに並んで座った。

 ちなみにだが沙耶は腰の右側に脇差を携えている。本来は薙刀を背中に背負いたいとこなのだが、学園での決まりで長剣くらいまでの長さの武器までしか帯剣を許可されていない。

 何故なら、このスイースレン総合学園では長物の武器での戦闘は教えていないからだ。

 そう言った長物等の特殊な武器での戦闘は、スイースレン武技学園で専門に教えている。ちなみにもう一つスイースレン魔導学園があるが、こちらは魔法が専門だ。

 尤も二年生以降に行われる全学園交流試合では、どんな武装での出場を許されている。とは言え、学園の授業で習っていない武器を使う者等滅多にいないが。

 制服のスカートは他と違ってロングで、動き易くする為か左側に大きくスリットが入ってる。

 尚、エーコの方は破邪の鉄槌が縮小化出来るので、ボケットに携帯していた。

 また二人共胸にはアークの渡した花の造形をした(ファミリア)を付けている。


「でが、出席を取ります」


 教師が出席簿を開きながら全員に呼び掛ける。


「アイラさん」

「はい」

「ウドマンさん」

「うっす!」

「エリザベスさん」

「はい」

「オルパルトさん」

「はい」

「キキールさん」

「はいですよー」

「クリースティアラ公女殿下」

「ですから、わたくしも普通に呼んでくださいまし」

「失礼しました。クリースティアラさん」

「はい」

「ニーケルさん」


 ………………。


「ニーケルさん?」


 ………………。


「は~……また何ですか?」


 一番前の席で堂々と机に伏せて寝ている者がいた。その者に教師は出席簿の角で殴る。


「いったー!」

「ニーケルさん」


 涙目で起きる居眠りしていた者の抗議をスルーし、再び名前を呼ぶ。


「……はい。……ZZZ」


 返事をすると同時に再び机に伏せ眠りこける。


「毎度毎度……」


 教師は一瞬形の良い眉を吊り上げるが、結局放置する事にした。


「ハンネルさん」

「イエス・ユア・ハイネス!」

「ふざけないでください!」

「はいはい」

「はいは、一度……もう良いです。ヒースクリスさん」

「応ッ!」

「ライオスさん」

「はい」

「あれいたんだ」

「今日も来たんだ」

「字も書けないくせに」


 ヒソヒソと教室がザワめく。その全てがライネスに対しての嘲笑だ。それを後ろから冷めた目で見る沙耶。


「はい、お静かに。続けてリリーナさん」

「あわわわ……あ、はい」

「ルリオさん」

「ふん!」

「ローゼインさん」

「……はい」

「ユミエラさん」

「ふぁい」

「ヨークスさん」

「呼んだ?」

「呼びました」

「何でしょう?」

「出席確認です。いるなら良いです。次はエーコさん」

「はーい」

「サヤさん」

「はい」

「全員いますね」


 その後、授業が恙なく進み、そして休息の時間を迎える。


「何でこの学園に留学して来たの?」

「エーコさん可愛いですね。私と付き合わない?」

「サヤさん、ロングスカート似合うね」

「器用貧乏って言ってたけど、それって色んな事出来るって事なの?」

「胸元の花飾り綺麗だね。それも二人お揃いとか仲が良いんだね」

「魔法はどの属性が得意?」

「どんなパンツ穿いてるの」

「サヤさん、凄い武器を腰に下げてるね。見せてよ」

「何でこの学園を選んだの?」


 エーコと沙耶二人に詰め寄り質問攻めにする。編入生とは最初だけは珍しがられるものだ。

 沙耶は適当に答えつつ教室を俯瞰する。そうするといくつかのグループが見えた。

 少数で固まるグループ。最初に遅い留学を訝しがった水色髪の少女とそれと瓜二つの顔をした少女の二人。一人居眠りをしているニーケルと呼ばれた者。エーコと沙耶に詰め寄る大多数。そして一人ポツンといる黒髪黒目の少年。


「ねぇ、何であの子は一人なの?」


 沙耶はその一人ポツンといる少年を指差しながら聞いてみた。


「ああ。あんな下民は、ほっといて良いよ」

「下民?」

「平民の分際で栄えある我が学園に入って来た身の程知らずだよ」

「リリーナさんを助けたって話だけど、どうせ自作自演だよ」

「そうそう」

「自分で攫っておいて助けたとかってウケるわ」

「そもそも学がないのに、学園に入っても無駄だっての」

「字も書けないしねー」

「あんなのがいても学園の名誉が傷付くだけだって何で分からないのかな?」


 沙耶がちょっと聞いたらボロボロと嘲りの言葉出て来る。エーコと沙耶は、想像以上だと内心げんなりしながら聞いていた。

 その後、ハーフエルフの教師が戻って来る。


「では、魔法の授業を始めます」


 ルリシアと呼ばれた尖った耳が特徴的な教師の声が教室に響く。


「エーコさんとサヤさんは、初回なので、おさらいからしましょう。魔法には属性が沢山あります。しかし我が総合学園では教えているのは七属性までです。それ以上は自主的に学ぶか魔導学園に行くしかありませんね。さてその七属性ですが……はい、リリーナさん」

「ほわわわ……」


 名指しされたエリザベスと瓜二つの少女は慌てた。髪の色や目の色は同じ。違いがあるとすればまず髪の長さ。リリーナは、短く顎の辺りで切り揃えていた。

 他に目元に違いがありエリザベスは少しキツメの印象だが、リリーナは眉が少し八の字で気弱そうだ。


「えっと……炎、風、土、氷、水、雷、癒しです」

「はい、正解。しかしこの中で癒しだけは、二年生から教えます。魔力の扱いに慣れて来ないとなかなか覚えられない魔法ですからね。まぁ人によっては癒しが得意な方もいますので、一概そうだとも言えないのですが。まぁ一般的にはという事ですね。他六属性は、基本属性と呼ばれ尤も覚え易い魔法です」


 そう言って一度区切りエーコに視線を向けた。

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