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EP.36 リメンバー・ミー -side Skull- その③

 俺様が、学園に行かなくなるのは、そう時間は掛からなかった。それでも魔導都市に居れば自分で調べ、自分で学べるから、大きく苦労しなかった。

 ただ問題は……、


「イスカ、またサボったのね。好い加減学園に来なさい」


 これだよこれ。毎日毎日煩い。


「うっせーなっ! 委員長」

「もうクラス替えして、あんたのクラスの委員長じゃないわ」


 学年が上がったので、そうかもしれないが、俺様はてめぇの名は呼びたくねえ。


「だったら来るなよ」

「あんたが学園にちゃんと来ればね」

「行かねーっつってんだろ」

「あら? 今日はそれ聞いてないけど?」


 ぬけぬけ言いやがる。

 この女は、毎日毎日来てうざい。そもそも男子寮だと言うに気にもせず入って来やがる。バッチリ毎回管理人に鍵を借りやがるし。


「ほら起きてイスカ」

「ふ、は~~…あと24時間……」

「どんな寝言よ……。それ、あと丸一日寝るって事よ?」

「うっせーな! 起きてるよ」


 呆れ混り言うウザったい委員長がまた来やがった。


「イスカ、好い加減学園に来なさい」

「うっせーな、委員長」


 また来た。

 もう何年もこれが続く。と言うか魔導学園は、五年制なので卒業近いだろうにこんなとこ来て良いのかってのーの!


「イスカ、好い加減学園に来なさい」

「うっせーな! ニア」


 ニアが赤い目を丸くし出した。


「ニアって誰?」

「てめぇ以外誰がいるんだ? 毎回毎回委員長じゃないっつってんじゃんかよ」

「私、ビオサーニアだけど?」

「知ってるっつーの。長ったらしーからニアで良いだろ」


 何よりうざいのが、こいつが喋れる度にボヨンボヨンしてる巨大な物体。かなり気になり目が行ってしまう。男の嵯峨は辛いぜ。


「まあ良いわ。ニアってなんか可愛いし」

「本人は、ウザいだけのブスだけどな」

「相変わらず口が悪いわね。そう言うとこうんざいよっ!!」

「そうかよ!」


 叫んでなんかいるから、余計に揺れてるだろ。気になるっつーの。


「ところで何処見てるの?」

「ボインボイン」

「……何で見てるの?」

「見たいから?」

「たまに……というか私が来てると毎回見るよね。いや、学園にいた時からか。……でも、今日はめちゃくちゃ視線を感じるけど?」


 バレてたか。


「俺様はデカいのが好みだからな」

「それは知ってる」

「うっぜー!」

「じゃあ触る?」


 何か訳の分からん事を言い出したぞ。


「いや、良い」

「そうだよねー。イスカって、口ばっかで臆病者だもんね~」


 憎ったらしい笑みをしやがって。


「挑発しやがて、てめぇは、そんなに揉まれたいのか?」

「うん。そして、それを理由に脅して学園に来て貰う」

「バカか! そんな事の為にてめぇの身体売るな」

「はいはい。でも、そんなじっくり見て良いのかな~?」


 何か今日は、めっちゃ絡んで来るな。


「何が?」

「━━━━━王女様」

「何で、あいつの名前が出て来るんだ?」

「イスカには謝らないといけなんだけどさ。イスカの事、調べさせて貰ったわ。ごめんね」

「ん? 別に構わないが何で調べるんだ?」

「そりゃー学園に来させる弱みを見付ける為じゃん」


 ニヤリと笑う。それが謝ってる態度かってんだよ。憎たらしいなぁ。


「『じゃん』ってな……てめぇふざけんなよっ!!」


 何でそこまでして学園に連れて行きたいんだよ、コイツは。


「それで━━━━━王女様とはどうなの?」

「どうなのって何が?」

「━━━━━王女様の為に魔導学園に入学したんでしょう?」


 調べてるっつってったから誤魔化しは効かないだろうな。そう俺様は、それが目的で魔導学園に来た。

 幼馴染のアイツが苦労してるようだし、俺様も力になりたいと思ったからだ。俺様はアイツに救われたから。だが、それだけだ。それ以上でもそれ以下でもねぇ。


「だったら何だよ?」

「好きなんでしょう? なのに私の胸ばかり見て良いのかなーって」


 今コイツ、何っつった? 


「何だって?」

「だから━━━━━王女様の事、好きなんでしょう?」

「はぁ~~~!?」


 何でそうなる? 呆れるしかないわこりゃー。


「何その顔?」

「どっからそんな発想が出て来るんだ? 栄養がボインボインばかりで頭に回ってないだろ? ニア」

「失礼ね。しかもまた口が悪いし。ほんとうんざりよ」

「何で俺様が━━━━━を? 意味が分からん」

「だって━━━━━王女様の為に魔導を勉強してるんだから普通そう思うでしょう? って言うか少しは私の顔見なさいよ。何で今日はずっと胸から視線が外さないの?」

「好きだから?」

「は~……それで━━━━━王女様は?」


 溜息を付き、またふざけた事言いやがる。こんな意味の分からん会話するくらいならボインボインを見てる方がよっぽど有意義だっつーんだ。


「ただの幼馴染。つーか、ニアってほんとバカだろ? やっぱ栄養がボインボインばっかに行ってるな」

「もうーあんた何でそう口が悪いのよ? うんざりって言ってるでっしょう!!」


 少し怒ったせいか更に揺れる揺れる。


「好きだから?」

「今日のあんた何なのよ?」

「そもそもあっちは王族だぞ。仮になんかあったとしてもどうもなんねぇだろうが!」

「へ~あんたでもそんな事、考えるんだ~」


 イラっと来た。


「てめぇさっきからうぜぇな」

「やっと私の顔見た」

「見たら何だよ?」

「胸ばっか見ないで欲しいだけ。それより━━━━━王女様にはそんな感情はないんだ?」

「そうだよっ! 大体誰が好きかさっきから言ってるだろ?」

「えっ!?」


 ニアが眼を丸くした。


「言ってた?」

「もう良いよ。帰れ! うぜぇ」

「あ、もしかして私? 胸が好き、口が悪いの好きと言ってたけど? 私のだから胸が好き、私が好きだから口が悪くなる……っと?」

「そこまで言うなっ! ふん」


 俺様は恥ずかしさのあまり顔をカーっと熱くなり、そっぱ向いた。


「ねぇねぇ……もっとちゃんと言ってよ」


 後ろから突ついて来る。うぜぇ。


「知るか」

「じゃあ今日も学園来てくれないの?」

「ああ」

「そう……じゃあまた来るね」


 残念そうな吐息を感じた。


「もう来るな」

「え~……好きな私の胸を見たいんでしょう?」

「……言わなければ良かったぜ」


 心底そう思ってしまった。今日の俺様はどうにかしてたぜ。そもそもコイツはもう直ぐ卒業して、この魔導都市から去るだろう。


「ごめんごめん。じゃまたね」


 そうしてまた毎日のように来やがる。俺様は学園には行かず、独学で学び続けた。当然俺様は留年し続ける。


「ねぇイスカ、好い加減学園来なさい」

「てめぇ、何で此処にいるんだよ?」

「イスカを迎えに来たから?」

「何で疑問形なんだ? それにてめぇは、もう卒業してるだろ?」

「したかったから? 卒業しても魔導研究はしたいからね。魔導大学に行く事にしたわ」

「そっち系に進んだなら学園にいないだろ? 迎えに来るな」

「何か日課になってるからつい……テヘっ!」


 何がテヘだ。舌出して変な笑いすんな。


「そうだな。うざい女を追っ払う魔導の研究でもしてくれよ」

「うんうん……。それで、その研究の成果を誰に使うのかな~?」


 あ、口元はニヤけてるが目が笑ってない。


「……ボインボインの女」

「そう言うとこ、ほんとうんざりよっ!!」


 コツンっ! と言う音が響く。最近何故か頭を小突かれるようになって来やがった。


「いったーっ! 誰もてめぇとは言ってたいだろ?」

「それより……口の悪い奴を黙らせて、隷属にする魔導でも研究しようかな」

「それ誰だよ?」

「イスカ以外にいる?」

「うっぜー! 帰れ」

「はいはい……じゃまた明日ね」


 そう言ってニアは何故か毎日来る。まぁ実は俺様も内心喜んでいた。小っ恥ずかしくて本人には言えないがな。それに俺様は、もう直ぐ故郷に帰る。俺様の魔導は、満足行くとこまで到達したからな。だから、未練を残したくないし、もう来ないで欲しいと言う相反する思いもあった。


 それから、暫くして故郷の国王直々に手紙が来た。何故国王から? その娘の━━━━━なら幼馴染のような付き合いをしているが、他の王族とは一切会った事が無い。とりあえず封を開け読んだ。

 内容は、もう直ぐ戦争が始まるから、本国に帰還して国の為に戦えだった……。は? 何で俺様にそんな話を振る? 俺様の故郷に徴兵の制度は無かった筈だ。当然無視した。

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