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EP.34 大英雄が発動しました

「どう言う事ですか?」


 ハッタリックが忌々しいそうに漏らす。


「あんたが気になってるのは、これの事かい? <次元収納魔法ディメンション・ボックス>」


 ナターシャは、次元収納魔法ディメンション・ボックスから、凍結封印した骨根を襲う筈だった五十人を出した。


「ま、まさか……」

「だから、筒抜けだっつったろ」


 骨根を始末しようとした五十人のうち四十人は、パーシヴァル町に向かう途中の道で隠れ潜んでおり、残り十人は、失敗した時の為に町で待ち構えていた。まあそれをハッタリックと、酒場にいた男の会話を盗み聞いていた訳だが。

 俺達はそれを逆手に取った。骨根をパーシヴァル町に向かわせるのは、分かっていたので骨根が来る前に先回りで、五十人を倒したってだけだ。不意打ちする予定が逆にされたなんてお笑い種だな。

 やった事は簡単。ラキアが水魔法で水浸しにして、キアラが雷魔法で気絶させて四十人を一気に殲滅した。その間、俺は町に隠れ潜んでいる十人を始末……まあ全員殺してないけど。

 その後、ラキアが凍結封印し、ナターシャが次元収納魔法ディメンション・ボックスにしまったと言う訳だ。

 骨根には、パーシヴァル町に急いで来るように言っておいた。合流次第ナターシャの転移魔法(テレポート)で、辰の道場に行くと言う作戦で。まあその間、ビオサーラが時間稼ぎを頼んだのだが、あの口説きテクで冷や冷やさせれたぜ。

 ちなみにファーレには転移後、離れるように指示。忸怩たる思いで了承してくれ、現在飛んで離れているとこだ。可哀想だが戦力外。まあそれを言ったら此処にいる全員がハッタリック相手では、厳しいだろうけど。


「そうですか。アークさん達ですか。余計な事をしてくれましたね」

「そりゃどうも」


 状況的に直ぐに察したようだ。


次元収納魔法ディメンション・ボックス


 ナターシャは、凍結封印された五十人をしまう。邪魔になるしね。ハッタリックを排除した後に証言して貰うので、まだ殺す訳には行かない。俺達の戦いに巻き込まれたら簡単に死ぬだろう。そうして戦う準備をするのだが……、


「ならばこちらも……」


 そう言って黒い丸い物体を取り出した。何かの魔道具(アーティファクト)か?

 その黒く丸い物が、ピカーンっと光る。その刹那……、


「如何しました? ハッタリックさん」


 何者かが転移して来た。青白い顔をした三十代前半に見える不気味な男だ。髪の色は老人のように白く肩口で切り揃えられており、目は赤黒い。見てるだけで背中がゾワリゾワリする。

 これジパーング聖王国では、情報屋と名乗り、アルーク教国では、商人って名乗った奴じゃね? 


「う~ん」


 辺りを見回し俺達を見て薄気味悪い笑みを浮かべる。ゾワリゾワリ。見られるだけで不快だ。何なんだ? コイツは。ハッタリックのゾクリとする感じとも違う。それは気持ち悪いだったが、こっちはマジで不快だ。視界に入れたくないくらいに。


「なるほどなるほど。状況はなんとなく分かりました」

「貴方に頼るのは癪ですが、手伝ってくれませんか?」

「構いせんよ。それにしても……」


 俺達を見回しピタっと俺で視線を止める。


「貴方……アークさんですね?」

「なん……だと……!?」


 俺は目を見開いてしまう。俺を知ってるだと?


「ああ、名乗っていませんでしたね。私はアルノワールです」


 薄気味悪い笑みがマジで不快だ。いや、存在そのものが不快だ。それは全員一緒なのか緊張が走っている。と言うか、最悪の事態だ。コイツが来る前にさっさとハッタリックを倒そうと話していたのに、来てしまった。


「アルノワールさん、彼を知っているのですか?」

「ククク……えぇ、まぁ」


 笑いを嚙み殺すかのように言う。そしてまた俺に視線を向ける。


挿絵(By みてみん)


「私の計画を悉く潰してくれましたからね」

「何の事だ?」

「まずは、メハラハクラ王国ですね。ジャイアント・イモリを暴れさせて、あわよくばクルワーゾ騎馬王国との戦争を激化させようとしたのですが……」

「何?」


 あんな初期から、コイツと因縁があったのか。


「ククク……まぁあれは実験的なものなので良いでしょう。その次は、モトムさんを誘導してウルールカ女王国を混乱させようとしたのですが……」


 そこまで言って一度切り、肩を竦め天を仰ぐ。


「失敗させられましたね」


 モトムって、あのロリコン野郎か。コイツの邪魔法に操られていた?


「次に……」


 ニヤニヤしながら続ける。まだあるのかよ。


「スイースレン公国の要人を攫ってジャアーク王国との開戦の口実にする予定でしたが、貴方の関係者によって邪魔されましたね」


 ライオスが助けた要人か。


「因縁があり過ぎませんか?」

「主様よ、ちっと恨まれ過ぎではないか?」


 冷静に言う姉妹だったが、次の言葉で目を剥く。


「あぁ、そう言えば魔獣を隷属させ、進化を促し双子妖精を捕らえようとした事もありましたね」

「何ですって!?」

「我を攫ったのは、貴様の差し金か?」


 コイツ何処まで画策しているんだ? って事は、まさか……、


「スカイドラゴンは……?」

「ククク……。えぇ、ご明察の通り私が放ったものです」


 薄気味悪い笑みを溢し、なんてことないように言う。


「それにしても不思議なのは、ジパーング聖王国とアルーク教国なんですよね」


 やっぱりコイツの差し金か。


「何故あんな簡単に戦争を止められたのか……。そう簡単に暗示は解けないのですけどね」


 そう言ってオーバーに肩を竦める。薄気味悪い。寒気がする。嫌悪感が半端無い。今までの事、全部コイツが関わっているとは……。


「まぁ良いでしょう。せっかくですから障害は、此処で排除しておきましょう」

「スカルだけは、私が始末します。それとビオサーラは俺のモノ(・・)です。貴方は他の連中を」

「えぇ、構いませんよ。まぁそれでも援護くらいはします。後はご自由に。<邪重力魔法(イビル・クラビティ)>」

「ぐっ!」


 体に圧力が掛かる。それはビオサーラを除き全員一緒だった。イビル・グラビティって何だ? ただの重力魔法(グラビティ)じゃないのか? クッソ! 体が潰れる。


 やがて、ビオサーラ以外地べた這いつくばってしまう。


「スカル、貴方は邪魔です」


 いつの間にか、目の前に接近したハッタリックが、骨根の頭を掴み無理矢理立ち上がらせる。


 そして……、


 ズッサーッッ!!


 腹を拳が貫く。


「がはっ!!」

「スカルっ!!」


 ビオサーラの悲痛の叫びが響いた。


 クッソー!! 何も出来ないのか? 


 こんなにも差があるのか。


 敗北が頭に過ぎる。


 だが次の瞬間、頭の中で声が響いた。




《称号 大英雄が発動しました》




 今更おっせーよ! とは思ったが、一気に体が軽くなった。


 この世界は、アルノワール(コイツ)を『世界の敵』認定したようだ。


「エレメント・ランス」


 ナターシャも同じように英雄が発動したのだろう。起き上がり次第、光の矢を放つ。しかし、いつもより、矢に勢いがない。顔も険しい。これは英雄と大英雄の差だろうか?


「立ち上がりますか。<闇防御魔法(ダーク・シールド)>」


 あっさり、光の矢が弾かれる。

 俺は、このアルノワールより、ハッタリックをどうにかしないと、と思い体がそっちに動く。


「行かせませんよ。<邪炎魔法(イビル・ファイヤー)>」


 炎が迸り、ハッタリックとの間に炎の壁が出来る。クッソ! 骨根がヤバいの行けないじゃねぇか。だったら……、


 <縮地>


「<クロス・ファング>」


 ガッキーンっ!!


 闇防御魔法(ダーク・シールド)に、あっさり防がれる。コイツの闇防御魔法(ダーク・シールド)は硬い。


「そこまで動けますか。もしかして勇者……いや、大英雄ですか」


 何か思案するように呟く。そして……、


「ククク……なるほどなるほど。それで、ジパーング聖王国とアルーク教国の戦争を止められたのですね」


 一人勝手に納得される。こっちは意味分からねぇよ。


「<下位稲妻魔法(サンダー)>、<サンダー・クロス・ファングッ!!>」


 ガッキーンッッ!!


 魔法剣にしても防がれる。


「でも、そうなると不思議ですね」

「何が!?」


 反射的に聞いてしまう。


「ここ数十年、世界に危機は何度もなかった筈です。私は、ここ数十年起きた世界の危機を全て把握していますが、貴方はいなかった筈。なのに大英雄を獲得しています」


 コイツは世界の危機を何度も見てる訳だな。一体いくつなんだよ? 三十代前半にしか見えないっつーの。それでここ数十年とか言ってるとか、人族とは思えなくなって来た。今更だが鑑定っと。



 名前:アルノワール

 年齢:三十四歳

 レベル:55

 種族:人族

 職業:魔導士

 HP:4600

 MP:5600

 力:650

 魔力:4500

 体力:1700

 俊敏:1200

 スキル:ナイフ術Lv6、棒術Lv7、炎魔法Lv7、氷魔法Lv5、水魔法Lv8、土魔法Lv6



































 絶対鑑定誤認を持ってるだろ!?

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