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EP.31 漸く辰の道場に到着しました

 次の日、皆が何故か気を使って休みをくれる。一晩寝たら十分回復したので、辰の道場を目指して旅を再開出来るのだが、せっかくなのでベッドでゴロゴロする事にした。

 で、それから三日目の昼、漸く辰の道場に到着した。なんだかんだあまり時間が経ってない気がする。レオン獣王国から旅立って20日くらいだろうか。季節は7月を迎えており、寒い国なのに暑く感じる。

 そして、辰の道場に足を踏み入れる。そこには、骨根がじじぃじじぃ言ってただけあって六十歳を超えていそうな老人がいた。が、骨根より圧を感じる。それも圧倒的な力だ。龍気レベルがMAXでもおかしないだろう。なんせ龍気心拳と呼ばれる龍気を用いた戦いをする道場なのだから。


「お父様、只今帰りました」


 開口一番にビオサーラがそう言い、師範がいる部屋に入り、目の前に座る。畳の部屋だ。なんとも落ち着くな~。

 そして、骨根や俺達も続きビオサーラの後ろに座る。


「ビオサーラ、三ヶ月も何処に行っていた? 心配していたのだぞ。それに後ろ者は何だ?」


 鋭い視線が飛ぶ。威圧してる訳ではないのに、背中が震えるそんな眼光だ。


「スカルの応援に行っていました」

「そうか。で、スカルよ。此処の敷居を跨いだと言う事は、四位以内に入ったのだな」


 鋭い視線が骨根に向かう。骨根は、どこ吹く風の如く受け流す。


「いいえ。途中四天王に当たり敗退してしまいました」

「何!? ならば何故敷居を跨ぐ?」


 今度は鋭い眼光だけでなく、殺気に龍気を乗せた威圧が飛ぶ。俺に飛ばされた訳じゃないのにビクっと震えてしまう。対する骨根は、じっと耐え師範を見詰める。


「それについて、お話があります」

「ふむ。まずは聞こうではないか」


 ビオサーラは、二度三度と深呼吸をして心落ち着かせてから、再び口を開く。


「実は……………………」

「ハッタリックが? そんな馬鹿な? 何故そう言い切れる?」

「何故なら、その日スカルは、私と一緒にいたからです」

「スカルは、忘れたと言っておったぞ」

「私を庇ったのです。お父様に取って耐え難い事をしておりました」


 真っ直ぐ師範を見詰め言う。


「…………何をしておった?」

「全てが終わったら、お話しします」

「何をするつもりだ?」

「ハッタリックの悪事を暴きます」


 はっきり告げた。


「…………」


 暫し沈黙が続く。師範は、目を瞑り黙考してるようだ。やがて目を開き口を開く。


「……仮にハッタリックが無実だったら?」

「潔く俺様は、出て行ってやる」

「私もあの日、何をしていたのか話し、罰を与えると言うなら、甘んじて受けます」

「ビオサーラは、犯人がハッタリックであろうとなかろうと、あの日何をしていたのか話すのだな?」

「はい、お父様」

「良かろう」


 師範が肩の力を抜いたのか、圧が弱まった。よし! 第一段階は、上手く行った。確りビオサーラが説得出来た。


「つきましては、お父様にも、ほんの少しご協力を」

「ん? 儂に何をさせるのだ?」

「その前にご紹介します」


 そう言ってビオサーラが俺に視線を向けて来た。


「彼は、今年の獣王国武術大会の覇者になったアークです。そして、ジパーング聖王国アルーク教国間の戦争を止め、私を此処まで護衛してくれた者です」

「ほ~」


 目を細め俺を品定めするかのように見て来た。


「なかなかの覇気を感じる。龍気も会得してるようだな」

「龍気は、獣王との親善試合の最中に覚えたのだがな」


 そう言って肩を竦める。


「なのに優勝出来たと?」

「相性や巡り合わせのお陰でな。正直骨根には、勝てる気がしない。もし決勝以外で骨根と当たっていたら、負けていた。勝ったとしても、そこで全ての力を出し切っていただろうな」


 そうあれは巡り合わせが良かった。最初に当たった水の四天王は、水素爆発で撃破。その後、使役魔獣を用いても良いと知り、ファーレの力で炎の四天王を撃破。そして、風の四天王であるライコウは、決勝だからこそ奥の手の電光石火(エレクトリック)が使えた。


「ふむ。驕る事がないとは、見所があるのかもな。で、戦を止めたとは?」

「そのままの意味だ。ジパーング聖王国の聖王と、アルーク教国の教王に働きかけ戦を止めさせた」

「くくく……かーかっかかかか」


 突如師範が大笑いし出した。


「面白い。実に面白い。……ああ、すまない。儂はリューシン。この辰の道場の師範だ。アーク殿だったな? 娘を守り此処まで、連れて来た事感謝する」


 そう言って頭を下げる。にしても龍気心拳の師範がリューシンとか、また名前に引っ張られてる奴だな。


「感謝するなら、骨根だな。俺は骨根に頼まれたから、この依頼を受けた」

「ふむ。そうか……」


 そう言って骨根に視線を向ける。


「破門されたと言うのに、ビオサーラを気に掛けてくれて感謝する」

「じじぃが感謝とか気持ち悪いっつーんだ」


 いつもの如く骨根は、そっぽ向き悪態を付く。


「で、ビオサーラ。儂に彼を紹介してどうするのだ? まさか婿にすると言うのか?」


 何を言ってるのだ? このじじぃは。骨根がめっちゃ睨んでるじゃん。


「え!? ち、違います。アークには、ほら彼女、えっとナターシャさんと言うのですが、彼女がいるので」


 泡を食ったようにナターシャを紹介する。グダグダな紹介だ。


「おっはん!」


 ビオサーラは、咳払いをし落ち着かせ、再び深呼吸して口を開く。


「それで、お父様にも、ご協力して頂きたい事は………………」

「なるほど。あい分かった。その程度で良いなら、協力しよう」


 第二段階、師範の協力取り付け成功。


「師範、スカルが帰って来たのですか?」


 そこで、問題のハッタリックが登場。コイツが元凶か。名前から言って胡散臭いだよな。見た目は爽やかな青年って感じだ。歳は二十代後半くらいか。滑らかな笑みを浮かべている。

 顔は、少し細長い感じだ。フサ~としたサラサラで艶やかな紫の髪を肩の下辺りまで伸ばし、首の後ろで縛っている。そして、瞳は髪と同じで紫だ。


「うむ」

「では、四位以内に?」

「優勝だ」


 骨根が(・・・)とは言っていない。


「そうか! スカル、良くやりましたね。兄弟子として鼻が高いです」

「……ああ」


 そっぽ向いて答える骨根。まあ実際には、優勝どころか四位以内に入っていないのだけど。

 にしても、あの爽やかで滑らかな笑みがゾクリとするな。犯人だと完全に疑ってるせいなのか、どうしても、あの笑顔の裏を考えてしまう。


「それで、彼らは?」

「アーク殿とその仲間達だ。スカルが武術大会で知り合ってな。暫く食客扱いにする」


 アーク達を(・・・・・)食客扱い(・・・・)とは、言っていない。実際は()()()()()()()()食客扱いにすると言ってるのだけど。なんせまだ骨根は、破門にされたままだし。


「そうですか。アークさん、宜しくお願いします。ハッタリックと言います」


 滑らかな笑みを俺に向けて来る。ゾクリゾクリと背中が震える。見れば見る程に胡散臭い笑顔だ。それに慇懃な態度だが、それもまた胡散臭い。もっと言えば気持ち悪い。


「ああ、宜しく」


 こうしてハッタリックを騙す第三段階完了。

 その後、寝泊まり出来る辰の道場の寮に案内される。部屋は門下生一人だけなので、有り余っている。よって一人一部屋となった。にしても畳か。落ち着く。だが、ゆっくりしている場合じゃないな

 俺の部屋に全員集めた。


「では……」

「もう円卓会議ネタはいらないさぁ」


 いきなり、ナターシャに牽制される。なんか少し顔が青白いな。


「さっさと始めるさぁ」

「ナターシャ、どうした? 顔が青いぞ。此処までの旅で疲れたのか?」

「何て言うか……ハッタリックって男が気持ち悪かったのさぁ」


 げんなりしたように言う。ナターシャもそう感じていたのか。


「そうか? 爽やかな青年だったではないか」

「そうですね。スケベアークとは大違いでした」


 キアラとラキアは、あの胡散臭い笑顔を受け入れている感じだ。


「骨根、どう言う事だ?」

「俺様が分かるか。ただ俺様も、向かい合って見ると、アイツがやらかしたって気持ちが薄れて行く」

「私もハッタリックが、そんな事するとは思えないな」


 骨根やビオサーラまでもか。じゃあ何でナターシャは、俺と同じで気持ち悪いと感じるのだろうか。しかもナターシャは、俺以上にそれに当てられ顔を青白くしている。


「ファーレは、どう思った?」

「不快です!」


 ただ一言。それも強めな口調で言った。


「どう言う事だ?」




























「邪の気配を感じます」




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