EP.30 十連ビンタをされてしまいした
「さて、分かってると思うが貴様ら五人は破門だ」
師範が突如そんな事を言い出す。まあ当然だろう。他の道場の娘を誘拐したんだから。
「え? そんな……」
「ビオサーラを攫ったのがまずかったのですか?」
「それだけは……」
雑魚五人が真っ青な顔して、お魚さんのように口をパクパクさせながら言う。
「他の道場の娘を攫ったのも問題だし、その娘の服を引き破ったのも更に大問題だ」
え? そんな事をしたの? そう言えばビオサーラの服が変わっている。
「……見たかった」
ボソっと口に出てしまった。
「てめぇ殺すぞ」
「ナターシャさんに言い付けるわよ」
「ごめんなさい」
だって見たいもんは、見たい。ナターシャより大きいんだぞ。下着姿だけで三回分のオカズになりそうだ。とは、本人には言えないな。
「全部言ってるじゃねぇか! やっぱ殺すっ!!」
「うんざりよっ!!」
「だが、そこまでなら、辰の道場に詫びに行き許されるなら、それで終いにしただろう。しかし、それ以上の失態を貴様らはした。今の試合は最後の機会だったのに不意にしたな」
尚も続く師範の言葉。
「負けた事がですか?」
「そんなものは、関係無い。道場通しの交流を禁止にしてるのは話しただろう? そして、この道場に入るなら辰の道場で学んだ事を忘れろと言った筈だ」
そんなに道場同士の交流はダメなのか。辰の道場と寅の道場だけの話ではないのだな。って言うか、ビオサーラの攫って、更に服を引き裂いた事以上に重罪なのか? いやいや、この国おかしいだろ。
………………………………それにしても見たかった。
「まだ言いやがるか」
「どこまでもうんざいりなアークね」
「なのに貴様らは、先程の試合で龍気を使用した。まぁシュテンは使用する前にやられていたが……貴様ら全員同罪だ! 即刻道場から出て行け」
馬鹿五人は意気消沈し出て行った。
「辰の道場の師範の娘……いや、ビオサーラよ。すまなかった」
師範が頭を下げる。
「もう良いわよ。こうして何も問題なかったのだから」
「そうは行かぬ。近々辰の道場の師範にも詫びに行こう」
そうして俺は、骨根とビオサーラと共に子の道場を出た。そこで丁度ナターシャが到着した。これで転移魔法で、さっさとガラハット町に帰れるな。と、思ったがそう簡単にいかなかった。何故なら……、
「ナターシャさん、ちょっと聞いてよ。アークったら、うんざいりなのよ」
「何があったんだい?」
ちょ! まさか本当にチクるのか。
「私、子の道場の破門になった門下生に服を引き破れたんだけど」
「それは大変だったねぇ」
そう言って、ビオサーラをそっと抱き締め、背中をポンポン優しく叩く。
やめてー!! それ以上言わないでーー!!
「それを聞いたアークが、見たかった見たかったって言いまくったんだよ。ほんとうんざりよね?」
俺の心の絶叫も空しく全てを言われる。ピタっと背中を叩いて手が止まり、桃色の双眸が俺を睨む。怖い怖い怖い!!
「アークっ!!」
ペッシーンっ! ペッシーンっ! ペッシーンっ!
往復半の三連続ビンタを食らってしまった。ニヤニヤしている骨根がウザい。
「しかも、下着姿だけで三回抜けるってよ」
更に付け足す骨根。マジでうっぜー!!
「そうかい。アークはあたいの胸じゃ小さいと言いたいのかい?」
ニコニコしながら言って来る。が、目が全く笑っていない。怖い怖い怖い。
「そ、ソンナコトナイヨー」
嘘は言っていない。大きいものは全て良いのだから。
ペッシーンっ! ペッシーンっ! ペッシーンっ! ペッシーンっ! ペッシーンっ! ペッシーンっ! ペッシーンっ!
合計十発のビンタを食らい挙句の果てには……、
「<転移魔法>」
俺だけ置いて行かれた。
勘弁してくれーーーーー!!! ここまで来るのに魔力使いまくったんだぞ。しかも子の道場では、回復魔法を使ったし、それに慣れない龍気のせいで疲れたし。
俺、泣いて良いよね? マジで泣いて良いよね?
疲れていたので、ガラハット町に歩いて行き夜に到着する事になった。途中出くわした魔獣を八つ当たりのように狩ったのも遅くなった理由だ。
で、更に帰ると……、
「あ、帰ったのかい? そんなにビオサーラの胸が見たくて帰って来たのかい?」
「巨乳しか興味がない変態アーク。気持ち悪いので、視界に入らないでください」
「そんなに大きい方が良いのか? 我はこんなにも主様を想っているのに」
「うんざりだから、帰って来ないでよ」
「ざまぁ!!」
女性陣にシラ~とした冷たい視線を送られる。そして、骨根がウザい。そんな中、ファーレが慰めるようにポンポンと羽根で俺を叩く。
「主上、成熟すれば妾の胸は大きくなるでしょう。いくらでも触っても良いですぞ」
いや、神獣のを触ってもね……。と言うか、大きくなるってどう言う事? 鳥だよね? 鳥に胸なんてあるのかよ!?
「良いもん。今日はビオサーラをオカズにして……」
そう言い掛けた瞬間、炎刃魔法が飛んで来た。魔法名破棄かよ!? 骨根めー!! 俺は小刀で斬り飛ばし、事なきを得た。
「てめぇ、やっぱ殺す」
「スカル、それはダメさぁ。アークを殺して良いのは、あたいさぁ」
怖い怖い怖い!! 再び桃色の双眸に睨まれる。
「冗談の通じない連中だな」
「冗談でも言わないで欲しいわ。うんざりよ!!」
「セクハラアークですしね」
「我は、オカズと言わず……」
「それは結構!」
「何故だぁ!? せめて最後まで言わ……」
「もぐ……」
「むぐっ!!」
残念妹妖精だけは、簡単に黙るんだけどな。
「分かった分かった。今日は、キアラの羽根を飽きるまで撫でたら、大人しく寝るよ」
「鬼ですかっ!?」
テンプレの如くキアラが目を剥く。
と言うか、真面目な話疲れた。俺はベッドにそのまま倒れて即座に眠ってしまう。
「寝やがった」
「仕方ないさぁ。スカル達を助ける為に無理をしたさぁ」
「お人好しなんだか、ただのエッチな人なんだか分からないわね」
「これは、ただの大馬鹿野郎だっつーんだ」
「ウチも、それには同意です」
「それが主様の良いとこなのだ」
「そうだねぇ」
「うんざりするくらい訳分からないけどね」
「主上、良い夢を」
「アーク、お疲れ様。ゆっくり休むと良いさぁ」
「ありがとうね、アーク」
「癪だが、礼くらいしてやるぜ」
「おやすみなさい。大馬鹿アーク」
「おやすみなのだ。主様よ」
当然、皆の会話は、俺には聞こえていなかった。