表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
448/563

EP.27 臭い物に蓋をする者達

 時刻は、夕方まで遡る。骨根とビオサーラは、アークが取った宿屋に向かって歩いていた。


「ぅんん!」


 突如ビオサーラの口が塞がれ羽交い絞めにされる。

 当然骨根は、直ぐ様動いた。拳をその下手人に繰り出す。それだけじゃない。骨根を囲むように三人現れた事、下手人の後ろにも一人いる事を把握した。

 ビオサーラに手を出した下手人に一発入れ、回し蹴りで三人を吹き飛ばし――龍気を乗せれば風圧で吹き飛ばせる――、飛び込むように下手人の後ろにいる者を殴り飛ばす。そこまで一瞬で算段を付けた。アークなら『三段攻撃だけに』とか言いそうだ……全くつまらんわ!

 骨根には、アークが使えない索敵気法(さくてきほう)が確り使える。それが龍気だろうが関係ない。


「っ!?」


 しかし、骨根は相手の顔面数mmでピタっと拳を止めた。


「てめぇらは……」

「そうだ。ビオサーラお嬢様に手を出されたくなかったら、大人しくするんだな」

「ちっ!」


 下手人がニタニタしながら言う。それに合わせ他の四人も下卑た笑いをする。

 この五人の男達は、気付ていない。特に気付かないければいけないのは、殴られそうになった下手人だ。なのに骨根の事を全く分かっていない。いや、見たくないものを見ないように。臭い物に蓋をと人間の本質は、そんなものなのかもしれない。それに骨根が大人しくなったので、尚更勘違いしたのかもしれない。

 そうして骨根とビオサーラは、手を後ろ手に縛られ、彼らが取っている宿屋に向かった。


「此処で会ったら100年目……」

「100年も生きてねぇーよ!」


 アークがいればテンプレ小悪党な台詞だなと嘲笑う事を言い、骨根に突っ込まれる。


「っるーせよ!」

「お嬢様に取り入るしか能がない奴がイキがるな!」


 いや、イキってるのはお前らだろと、またまたアークに嘲笑われそうな事を言い骨根を殴り飛ばす。


「くっ!」


 骨根なら索敵気法で、何処に殴られるか瞬時に判断し避けるか、龍気をその箇所に集中する気の重点移動……いや、龍気なので龍気の重点移動を行いダメージ皆無に出来るだろう。

 まぁ名前なんてどうでも良いのだけど。

 しかし、骨根はそれをしない。黙って殴られた。


「ふんぅううんっ!」


 猿ぐつわで、口を塞がれたビオサーラが騒ぐ。

 それから暫く五人は憂さ晴らしをするかのように交代で骨根を殴り続けた。


「さて、メシだな。お嬢様にも食わせてやろう」

「僕も一応着いて行こう」


 そう言って一人ビオサーラに歩み寄る、それにもう一人続く。二人はビオサーラの腕を両側から掴み、部屋を出て行こうとする。


「……お嬢を、何処に連れて行く?」

「黙れ!」

「ごふっ!」


 ビオサーラを連れて行こうとした者を睨み付けるが、他の男にボディブローを食らわされる。


「隣の部屋でメシを食わせるだけだ。安心しろ。お前が大人しくしているなら手は出さねぇよ」


 お前が意識あるうちはな、内心ほくそ笑み鼻の下を伸ばしながらビオサーラの豊かな胸に視線を送った。


「ヒィ」


 その視線を感じビオサーラは、嫌悪感が体中を走る。

 そのままビオサーラは、他の部屋に連れて行かれる。そこで猿ぐつわを外された。


「こんな事をしてただで済むと思っているの!? シュテン、リンホー」


 キィと睨まれ二人の男は、肩を竦めた。


「おー怖い怖い」

「お嬢様に取り入るしか出来ないスカルに何が出来るってんだよ?」

「スカルが優しいからよ。本当なら一瞬で貴方達はやられるわ」


 事実だ。


「有り得ないね」

「ビオサーラお嬢様は、騙されてるんだよ。そろそろ気付いたらどうだ」


 とことん見たくないものは見ない。臭い物に蓋をする。否、気付けないのかもしれない。


「それより、お食事ですよー。あ、手が縛られていては食べれませんねー」


 丁寧口調ではあるが嘲笑うかのように言う。慇懃無礼とはこの事だろうか。スープをスプーンで掬いビオサーラの口元に持って行く。


「食べさせてあげまちゅねー」


 もう完全に馬鹿にしているのは一目瞭然。ついでに先程から『お嬢様』と呼んでいるが皮肉だ。元々は、辰の道場の門下生であった頃は、おどけて言う事はあったが、常にはそんな呼び方はしていなかった。

 もう自分達は、辰の道場の門下生じゃないし、この女に媚びへつらう必要がないと考えているからこそ、そう呼んでいた。当然それを察しているビオサーラは、睨み付けるだけで口に入れない。


「お嬢様は口移しがお望みか」


 下卑た笑いでそんな事を言い出し、ビオサーラの赤い瞳が燃え盛るかのように相手を睨む。

 それだけは許せなかった。もう初めてを捧げる相手は決めているのだから。ましてやそう思える相手が、隣の部屋にいると思ったら尚更だ。

 故にパクリとスプーンを銜えスープを口に流し込む。そして……、


「ぶぅぅ~」


 吐きかける。


「クソ! この甘っ! 優しくしてやれば付け上がりやがって」


 ビリビリビリーーー……っっ!! と、ビオサーラの服を引き破った。


「きゃっ!」


 必死に下着姿を隠そうとするが、後ろ手に縛られているので、それは叶わない。それでも燃えるような赤い瞳が涙目になりながらも、睨み付ける事を止めない。


「へっへっへ! やっぱお嬢様は良い体をしているな。こりゃさっさと美味しく頂くか」

「だな。ほんとデカい乳だよ」


 下卑た笑いをしながら、視線が下着が付けられた胸に行き、舌なめずりを始める。

 屈辱に泣きそうになるが、必死に耐える。その後に起きる事を想像し、嫌悪感が走り身震いをしながらも、それでも必死に耐える。

 耐えるが、それでも涙が一杯に目に貯まり、それが目の前の男達の欲望を更にかき立てる。


「やばいねー。ゾクゾクして来た。ほら見ろよ。大きく育ったぜ」

「俺の息子もだ」


 二人の男は、股間を見せ付けるように腰を前に突き出した。


「うんざりよっ!!」


 ビオサーラが叫んだ瞬間だった。


 ドッゴーンっ!!


 丸で爆撃でもされた轟音が響き、この部屋と隣の部屋と隔てる壁が破壊された。そこには拳を突き出す……、


「スカル!!」


 ……が、いた。

 炎が揺れているかのように相手を睨んでいた赤い瞳が、歓喜するかのように細め涙を溢すビオサーラ。


「お嬢に何してやがるっ!?」


 言うが早いか行動が早いか。一瞬でビオサーラに欲情していた男がのされた。次にベッドにあった毛布を掴みビオサーラに投げる。

 ちなみに後ろ手に縛っていた紐はない。男三人に大人しく殴られながら、索敵気法(さくてきほう)で、ビオサーラの状況の把握に全集中しており、ビオサーラの服が破られたのを感じ取った骨根は、紐を引き千切ったのだ。

 この時点で、好い加減気付けと言いたくなるものだ。どこまでもどこまでも見たくないものは見ない。臭い物に蓋をする。それ故に……、


「て、てめぇ何しやがる!?」

「やろうってのか?」

「まだこっちには三人いるんだぞ」


 一瞬呆けていたが、イキり出す残り三人。


「お嬢に手を出すなら、てめぇらも潰すぞ」

「お前に出来るかよ」

「ビオサーラに取り入る事しかな」

「だが、この二人が先走ったのも事実。俺達はお嬢様には手を出さねぇよ。だから大人しくしておいた方が身の為だぞ」

「ちっ!」


 骨根は舌打ちをし、その場に座り込だ。三人目の者の言葉で大人しくなったのだが、この愚か者共は気付かない。自分より格下と思い込みたいのだ。否、そう思い込んでいるのだ。故に……、


「きゃははは……。さっきの威勢はどうした?」

「やっぱ口だけだな」

「雑魚のくせに調子こくな」


 増長していまう。再び骨根は三人に袋叩きにされてしまうのだった……。

 今更だが、この五人が何者なのかを語っておこう。もう察しを付いてるだろうが、元辰の道場門下生だ。骨根がビオサーラに取り入って師範になろうとしてると、吹き込まれ、それを信じて疑わない愚か者共だ。

 そのように愚かな者達だから、子の道場に移籍しても、上手く行かず荒れてガラハット町で、飲んでは暴れていた。とは言え、破壊活動をしてる訳ではないので、明確に法に触れていない。

 あっても関係無い者への罵詈雑言。日本なら、それだけで警察に連れて行かれる事案なのだが、此処は、日本ではないので、法が緩いのだ。

 そして、骨根とビオサーラを見掛けて衝動的に取り押さえた。まぁ骨根は態と捕まったのだけど。そうして、辰の道場に居た頃の恨みを晴らすかのように骨根を甚振ってる訳だ。実際は憂さ晴らしなのだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ