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EP.26 骨根達が帰って来ませんでした

 ソウソウは強いな。騎士達相手に模擬戦をしており、次々に打ち破っている。午の道場ってのは、恐らく槍使いの道場なのだろうが、ソウソウの突きは、見えない。正直マジで見ないレベルの連続突きを繰り出す。

 しまいには、三対一でも模擬戦に勝利していた。訓練用の木槍だから、良いものの本物の槍だったら、マジで危険だな。

 カンウーは、攻撃はそこまでもない。見た目通り壁だな。それを崩そうと騎士四人掛かりで訓練していた。

 リンシャンは、実力が分からない。訓練なので、危険な魔法は使えないしな。ただ無詠唱で下位魔法を使っている事から、中位まで確実に持ってると予想に出来る。属性も多才だ。炎に水に氷に雷と色々使う。もしかしたら、他にも属性を持ってるかもしれない。


「武器はどれにする?」


 騎士の者に声を掛けられる。目の前には木製の訓練用の武器が並べられていた。


「うーん。小刀は、ないのか」

「小刀? 随分珍しいのを好むんだな。残念ながらあるのは刀だ」


 刀術なんて持ってないので、使えないわ。


「なら、短剣二振り借りよう」

「じゃあまずアンタの模擬戦は俺がしよう。宜しくな」

「ああ、宜しく」


 そう言って、たった今借りた短剣を捨てた。だって武器を使うような相手じゃないし。


「おいおい、何で捨てるんだよ?」

「これ、俺も訓練しちゃいけないって事はないよな?」

「そりゃまぁな」

「なら、まずは素手で。格闘の訓練したいし。話にならなかったら拾うよ」


 って、言っておこう。相手にならんよなんて言って騎士を怒らせる訳にはいかないし。


「OK。じゃあ始めるぞ」

「ああ」

「はぁぁぁ……」


 単純な特攻だ。まあ木槍なので、それは正解なんだけど。


「何!? 消えた?」

「こっち」


 後ろに回った。


「早いな」


 そう言って木槍を振り回しながら、振り返る。それに合わせて、また後ろに取る。


「残念」

「ぐはっ!」


 背中に掌打をし騎士を吹き飛ばす。

 そうして恙なく騎士の鍛錬をして行く。勿論強者もいるので、苦戦もした。だが、この国のトップレベルの連中は、干支の道場の師範達だ。その者達によって国が守られている。なので、一介の騎士程度では、俺に勝てない。尤も王都を守護する騎士団長となになると勝てないかもしれないが。


「お疲れ」

「そっちも、お疲れ」


 ソウソウに労いの言葉を貰う。小休憩に入ったからだ。


「どうぞ」

「どうも」


 そして侍女が冷たいお茶をくれる。気の利く事で。


「アークは、随分強いな」

「そうか?」

「Aランクに迫る実力があるかもな」

「それは言い過ぎ」


 まああるけど。最初にギルド登録した時にエーコはB、Aの実力があると言われた。そのエーコより強い俺ならAランク相当の実力があってもおかしくはない。


「ただ、何でCランクなんだ?」

「冒険者登録したのは九ヶ月前なんだよ。それに此処数ヵ月は依頼をこなしてなかった」


 ついでにこないだやろうとしたら、トモエに獲物を取られた。


「なるほどな。Aに上がるに実績がいるもんな。実力がある奴でも2、3年は掛かるらしい」

「そっちこそやるな。この国を守護している十二の道場の者達は半端無いわ」

「うちの師範を含め、十二の道場の師範は、化物揃いだしな」

「あの槍の冴えがソウソウ以上となると、マジで敵対とかしたくないわ」


 そう言うと、ソウソウは笑い出す。


「ハハハ……。だが、子の道場には気を付けろ」


 急に真面目な顔で言いだす。


「子がどうしたんだ?」

「ここ数年で入った連中が、ちょっと面倒なんだ」

「面倒?」

「ああ。酒癖悪く、この町で飲んでは暴れているんだ」

「破門にされないのか?」

「明確に犯罪行為をした訳じゃないからな」


 そう言って肩を竦める。


「子の道場か。ちなみにそこって何が得意なんだ?」

「忍術だ」

「げ!」


 もうそれって〇空じゃねぇか。干支だし。空手裏剣とか使わないか?


「どうした?」

「いや、俺の職は忍系なんだよ。なんか同類にされた気分だ」

「ハハハ……。なんだそれは。あそこの古い連中や師範は、問題無いんだから忍系とか関係ないだろ」

「まぁそうだな」


 その後、パーティ戦の訓練等もした。後衛に欠員が出たパーティなので、俺が後衛を引き受けたら驚かれた。まあスピード主体の前衛って言ったしな。が、やった事は回復と風魔手裏剣だけだ。楽させて貰いました。

 そうして夕方にはクエスト終了。たまには別のパーティと組むのも悪くないかもな。他の武器による戦術とか見れたし。特にタンクなんて俺の周りにいなかったしな。


「また機会があったら組もうな、アーク」

「よろ~」

「無論俺も組みたいぜ」

「ああ、機会があったらな」


 そして、ソウソウ達と別れて宿屋に戻った。やがて、夜を迎える。


「遅いな」

「だねぇ」

「デートに夢中になってるのではないか?」

「スカルは、否定しそうですけどね」


 そう骨根達が帰って来ないのだ。買い物をしたがっていたが、夜まで店が開いてるとは思えない。歓楽街なら開いてそうだけど、ビオサーラが行くとは、思えない。

 よって夜には帰って来てもおかしくはなのだが……、


「これは何かあったな」

「確かに遅すぎるしねぇ」

「まさか人攫い?」

「スカルが、遅れを取るとは思えないけどねぇ」


 ナターシャの言う通りだ。骨根が早々に遅れを取るとは、思えない。


「まさかビオサーラが人質に取られた?」

「それはありますね。あのニンゲンは、脆弱で……ひゃぁあ! またですか?」


 いつものように羽根を触りキアラに睨まれる。


「今のは、姉上が悪いのではないか?」


 ラキアは、良く分かってらっしゃる。愚妹のくせに。


「主様よ、何故我が罵られないといけないのだ?」

「そっちのが興奮するだろ?」

「その通りだ」

「で、キアラよ。また『ニンゲン』と言ったな?」

「……すみません。癖で。気を付けます」

「罰として、今晩は羽根イジり二時間の刑」

「鬼ですか!?」


 キアラが目を剥く。


「冗談は、ともかく」

「どこまでが冗談だったのですか?」


 もうこれはスルー。


「扱いが雑になりましたね」

「アーク、(ファミリア)は持たせてないのかい?」

「そうなんだよ。持たせるの忘れてた」


 こうなるなら持たせるべきだった。


「とりあえず、明日の朝までに帰って来なかったら、情報収集だ」

「分かったさぁ」

「分かりました」

「分かったのだ」

「御心のままに」

「子の道場についても聞いて回った方が良いかもな」

「何でだい?」


 ナターシャが、小首を傾げる。


「評判が悪いからだよ。それにビオサーラは、辰の道場の師範の娘だ。道場通し仲が悪いっぽいし」


 基本的に道場を変えるのを許されていないとか言っていた。それでもビオサーラは、骨根には寅の道場のが合うと、通い続けて移籍の交渉をしていたようだけど。


「なるほど。分かったさぁ」

「間抜けアークが(ファミリア)を渡さないのが、悪いのですよ」

「うっさい! 毒舌妖精は、やっぱ羽根イジり三時間の刑な」

「……止めてください。それに増えています」


 思いっきり顔を引き攣らせるキアラだった。

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