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EP.23 情報屋の次は商人でした

「あの世で自慢して来たか?」

「貴殿らに回復して貰ったお陰で、生憎神の下に召されていない」


 ローマジンを揶揄うように、俺が刻んだ十字の傷を言及すると、生真面目な答えが返って来た。つまらん。


「にしても、本当にただ話しをしに来たのだな」

「最初に、そう言ったじゃんか」

「なら、正面から面会を申し込め。賊のようにコソコソするでない」

「時間掛かるだろうが。それにそもそも、この国でいきなり狙撃されたんだぞ」

「ぬっ!?」


 いきなりではないんだけど。国境での戦に介入したからだ。


「あー、良いだろうか」

「失礼しました。教王猊下」


 今まで放置していた教王が、手を上げ口を開いた。


「先の話は真か?」

「どの話?」

「最強スカプラリオだ」

「ああ。本当だ。証拠を見せよう」


 そう言って伝心魔道具(スマートシーバー)を取り出し伝心を行う。


「あ、聖王?」

『ああ』

「話は着けたぞ」

『感謝する!』

「て言うか、君ら盗むものが違うだろ?」

『何っ!?』

「何故銃より、相手の防具をパクらない?」

『あの修道服がどうした?』


 心底分からないって態度だな。


「優秀な防具を真っ先にパクれって言ってるの。あれがあれば、アルーク教国だけじゃない。他の国からも簡単には攻められないぞ」

『本当か?』

「ああ。協定を結ぶ時に、製法を何が何でも聞き出す事をオススメするね」

『分かった』

「じゃあ賠償の方、宜しく」

『ああ。休戦の使者がアルーク教国から来しだい、謝罪と賠償の使者を送ると約束しよう』


 そこで伝心を切る。


「ってな訳。あとは、交渉次第だろ? せいぜい最強スカプラリオを高く吊るんだな」

「承知した」

「ところで、気になったんだが、俺と同じ事を言った奴いたんじゃないか? 連作障害とか間伐とか。いや、そもそもこの国が何年の歴史があるのか知らないが、文献とかで残っていたんじゃないか?」

「何故だか、それを進言された時に、まともに取り合いもせず切って捨てた。今思えば何故あんな愚かな真似をしたのか分からぬ。文献は無い……いや、待て」


 教王が何かを考え込み出す。


「枢機卿! ペトーロ枢機卿は目覚めたか!?」

「はい! 教王猊下」


 そう言って枢機卿が、執務室に入って来る。ありゃ宰相じゃなかったのか。ていうか、ペトーロってローマ正教の初代法王の名前じゃなかったか?


「確か一部の資料がなくなっていると報告があったな?」

「はい」

「それも作物に関する資料ではないかと予想していなかったか?」

「仰る通りです」

「何それ? 何か作為的なものを感じるな」

「全くだ」


 俺の言葉に教王が同意する。


「それと銃の製法は、どこで手に入れた? 完全にこの国の独自によるものか?」

「いや、青白い顔をした不気味な商人から聞いた」


 え? それってジパーング聖王国に情報を流してた情報屋と同じ奴じゃねぇの?


「難しいかもしれないが、銃の製造を完全に停止した方が良い」

「何!?」


 教王が目を丸くする。


「もしくは、ある程度は、他の国に流した方が良い」

「何故だ?」

「これに人為的なものを感じるからだよ。この国だけが一足先に進むのは良いが、進み過ぎはまずい」


 テンプレ的に。


「どう言う事だ?」

「その商人は、恐らく中途半端に銃の情報をジパーング聖王国に流している。これはお互いに潰し合って、何か利を得ようとしてる可能性がある」

「確かに」

「もしくは、世界大戦に発展させようとしてるとか。魔族絡みと言う線もある」

「馬鹿なっ!! あの者は、人族であったぞ」


 教王が目を剥く。


「鑑定誤認。鑑定を誤認させるようなスキル持ちだったら? もしくは、魔族に味方する人族か、或いは魔族に操られているか」

「うーむ」


 教王が考え込む。


「可能性の問題だけどな。だが、確実に銃の製法や作物関連は人為的に何かを仕掛けられている」

「そう……だね」

「とにかく忠告はしたから、後はそっちで考えてくれ。銃の製造を完全に止めるか、他の国にも製法を流すか」

「分かった。考えておこう」


 後は、この国が考える事だ。

 にしてに、一体どうなってるのやら。その情報屋だか商人だかをとっ捕まえないとな。技術革新の偏りは、それこそ世界の異変なのかもしれない。一体どう言う理由で、この世界が滅ぶのか、まだ分からんが、気に留めておかないとな。


「ところで、外にも仲間がいるようだけど、君達は何人で、このチャーチ大教会に攻めて来たのだい?」

「四人だ」

「……とんでもないな」


 教王が目を丸くする。


「どうかな? 我が国で雇われないかい?」

「ハゲにするつもりはない」

「ハゲ?」

「戯言だ」


 修道士と言えばハゲのイメージだけど、別に騎士修道会の野郎連中はハゲていない。


「残念ながら、他にも仕事を請け負ってるんでね。ブリテント騎士王国に行かないといけない。まあ今回の戦への介入はそのついでだっただけだ」

「それは本当に残念だ」


 そう言って肩を竦める。最初から諦めていたが、ダメ元で聞いたってところだろう。残念がっている様子は無い。

 その後、宿を紹介して貰った。他の国では、ここは王城に泊めてくれるところだろうが、神殿は神に仕える修道士や修道女しか寝泊まりしてはいけないらしい。まあ紹介してくれただけ良いけど。

 そんな訳で、合流して宿の借りた部屋のテーブルを囲む。あ、ちなみにライコウへの伝心は終わらせた。


「やっと終わった~」


 ずず~っとナターシャが淹れてくれたお茶を啜る。


「だねぇ」

「主様にかかれば、あっさりだったではないか」

「いや、今回はラキアとキアラの手柄が大きい」

「そうであろうそうであろう。もっと褒めて良いのだぞ」

「当然です。役立たずアークとは、ウチは違うのです。役立たずアークとは」


 ちょっと褒めてやればこれだ。って言うか、その言い回しって……、


「ザキュウとは違うのだよ。サキュウとは」


 そうそうそれ。それを彷彿する言い回しだよな。ってまたラキアか。何でお前が……ってもう良いや。


「じゃあ明日は、メシアの町に向けて出発だ」

「分かったさぁ」

「分かりました」

「分かったのだ」

「御心のままに」

「で、その後なんだが、悪いがナターシャ一人で、国境を越えて貰う」

「そうなると思ってたさぁ」


 国境越え料金を一人分にする為だ。あくどい? そうだろうそうだろう。ふふふ……。


「アーク、気持ち悪い顔しないでください」

「そこに痺れて憧れてやるのだ」

「貴女の感性は異常です。こんな下品アークに憧れるなんて」


 姉妹が何か口喧嘩してるな。にしても相変わらず姉妖精は、毒舌家だ。


「一人で行くのは構わないさぁ。でも……」


 ナターシャがジトーっと俺を見て来た。


「その間、キアラ達に浮気しないかい?」

「それは絶対に無い。マジ絶対に無い」

「二度も言われた!? 良いではないか!! たまには我と……」

「もぐ……」

「むぐっ!」


 はい、二文字で黙らせました。


「ウチもアークが相手なんて有り得ません。鬼畜外道アークを相手にするくらいなら、セイラと寝た方が1000倍マシと言う……ぅああんっ!」

「あれあれ~? 有り得ないとか言いながら、誘ってるの~? エロい声出しちゃって。淫乱妖精」

「また淫乱妖精ですか? 貴方が羽根を触るからでしょう!? 本当に気持ち悪いので止めてください。外道菌が移り、羽根が腐ってしまいます」

「じゃあ腐らせるか」

「どこまで、鬼畜なんですか!?」


 つうか、外道菌ってなんやねん? しかも外道菌があると羽根が腐るのかよ!?


「冗談はともかく」

「どこまでが、冗談だったのですか!?」


 はい、テンプレですね。


「ってな訳で、アホ妖精姉妹相手に欲情出来ると思ってるのか?」

「だねぇ。アークはあたいだけしか、その気にならないよねぇ」

「いや、それはない。セイラでも、その気になるかもな。最近胸が大きくな……」


 ペッシーンっ!!


 はい、ビンタです。これもテンプレですね。

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