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EP.15 魂強度と言うのを知りました

「いくつか聞いて良いか?」

「答えるか分からんけどな」


 嫌味ったらしい笑みを浮かべる。腹立つ笑みだがスルーしておこう。


「まず無職ってなってるけど、この世界に来たばかりなのか?」

「うーん。二週間くらいかな」

「二週間でレベルがそんなに上がったのか? こっちの世界に来た時にレベル1からスタートで、俺は苦労してるんだけどな」

「あ~それな」


 武は果実水が入ったグラスを振りながら口を開く。


「お前はレベルが存在しない理の世界から来たのか?」

「ああ」

「そうか」


 そう言ってグラスに残った果実水を全部飲み干す。


「世界によってはレベルの概念があるんだよ。此処のようにな。で、他の世界でのレベルをこの世界で引き継いで表示されているだけだ」


 そう言うと新たに果実水を注文する。同じく俺も飲み干し注文した。

 って言うかレベルが異常に高いが他の世界では、上がり易いのだろうか?


「二週間って言ったが何故無職のままなんだ?」

「ん? 職を選べば、それに対応した恩恵を得られるのにって事か?」

「ああ」


 専用スキル習得の他に俺の場合は称号に忍があるので、忍系統にするとステータス上昇の恩恵がある。他にもエーコなら、巫系にする事で、神託が下る。もし巫系を止めたら、それが来なくなる。

 なので、職によってはスキル習得以外にも何かしらの恩恵があるのだ。


「無理だな」


 武が天を仰ぐ。


「は? 何で? レベルが高過ぎて上がらず覚えられないからか?」

「確かに上がり辛いってのはある。が、問題はそこじゃない。俺の魂強度が限界なんだ」

「魂……強度?」

「う~ん。どこから話せば良いかな……」


 そう考え込みながら、新たなに来た果実水のグラスに口を付けた。


「魂とスキルの関係って知ってるか?」

「え~~っと……地球の日本人は魂が疲弊しておらず、異世界で能力獲得が行われる。だったかな?」

「ほ~。そこまで知ってるのか」


 感心の笑みを浮かべる。


「だが、40点だ」

「は?」


 他に何かあるのか?


「魂が渇望しているもの、魂に刻まれた才能が、スキルとして発現する。勿論疲弊していないのが絶対条件だけどな」

「渇望? 才能?」


 え? え? 初めて聞く事だ。意味が分からない。


「まぁ前世の記憶とかって魂に刻まれていたりするんだよ」

「転生者とかがそれか?」

「いや、違う。魂に刻まれた記憶が肉体にも及んだ者が転生者だ。つまり、誰もが魂には何かしらの記憶が刻まれている。尤も初めて肉体を得る言わば新品の魂は別だけどな」

「そうなのか?」

「ああ。だから前世において剣が得意だった者は、剣の才能に目覚める可能性がある。あくまで可能性だがな」

「ちょっと待て。何でお前そんな詳しいんだ? まさかまた気の応用とか、ほざくのか?」

「え? ハハハハ……」


 一瞬目を丸くし大笑いしだす。


「未来の俺はそんな事を言っていたのか?」

「ああ。言いまくっていた」

「そうか。残念ながら気は、そこまで万能じゃねぇ」


 いや、かなり万能だよ。お前の場合は。異常なくらい。


「じゃあ何で?」

「世界によっては、魂の研究が行われているとこもある。それだけだ」

「流石は漂流者(ドリフター)だな」

「好きでなった訳じゃねぇよ」


 武が肩を竦める。

 そう言えばコイツ『元の世界に帰りたければ言う事聞け』って言われて色んな世界行かせれたとか語り天を仰いでいたな。誰が指示してるのか知らんが、不本意なのだろう。転移者の時点で不本意な奴が大半だろうに。コイツは、それ以上にめんどくさい事をさせられているしな


「じゃあ続けるぞ」

「ああ。悪い、話の腰を折った」

「才能ってのは、今の説明で分かったか?」

「ああ」

「だが、まだ半分だ。渇望の方だが、これは前世で強く求めた場合、魂にそれが刻まれ発露する可能性がある」

「強く求めた?」

「例えば『剣が使えれば誰々を守れたのにー』とか、まぁそんな嘆きだな。その想いが強ければ強い程、魂に刻まれる」

「なるほど」


 少し難しい話だが、なんとなく理解出来た。


「つまり、剣の才能がある奴は、前世で剣が得意だったか、剣の腕を強く欲したかの2パターンって事か?」

「両方って事もある。尤も前世で剣が得意だっただろうが、前世で剣の腕を渇望していようが絶対に今世で、それが才能になる訳じゃないけどな」


 再び肩を竦める。


「で、強度ってのは?」

「そこで問題になるのが、魂強度だ。前世での才能にしろ渇望にしろ魂強度が低いと、まず今世で才能にならない」

「えっと……『魂が疲弊していないと能力を獲得出来る』。その疲弊って強度の事か?」

「そうだ」

「それっておかしくない?」


 俺は首を傾げてしまう。


「何が?」

「いや、俺が聞いたのは日本人は、戦争とか争いがないから、魂が疲弊していないって聞いたぞ」

「それが?」

「前世で仮に剣の腕を求めたとしよう。そうなると争いがあったって事だろ? 疲弊してるじゃん。平和な世界で渇望する程、求めるとは思えないし。となると強度とやらが下がり、魂に渇望が刻まれないんじゃないか?」


 まあ平和な日本でも暴力に晒され、力があればと嘆き渇望する事もあるだろう。だけど、戦があるとこにいた方が、きっとそう感じる可能性が高いように思える。尤も想像にしか過ぎないが。


「その塩梅が難しいんだよ。疲弊しきらない程度の争いだった。もしくは、元々の強度が高過ぎて簡単に疲弊しなかったか。魂強度には個人差があるから」

「なるほど」

「まぁ必ずしも発現したスキルが前世に関係してるとは限らないけどな」


 今世で日本と言う魂が疲弊しないとこで生まれたからこそ、前世で疲弊していようが、転移者となった時に何かしらスキルに目覚めるなんて事もあると説明された。逆に前世で疲弊しきって、今世で日本に生まれようが魂強度が回復しきらずにスキルが発現しない事もあるとか。

 そこまで語ると武は、再びグラスに口を付ける。


「で、魂強度が限界ってどう言う事だ?」

「ああ。そう言えばそんな話だったな」


 おい!


「簡単な話だ。魂強度で、最初から限界が決まってるんだよ。俺はもう限界まで鍛えた。それだけだ」


 それだけだって、お前二十二歳だよな? その若さで完全に鍛えたとか、どんだけだよお前。


「そんな簡単に限界まで行くのか?」

「簡単じゃないさ。魂強度が低い奴は、限界値が低いが才能が少なくて能力が上がり辛い。逆に魂強度が高い奴は、多才で能力が上がり易いが限界値が高いからな」


 いや、一般的な話じゃなくてお前の話なんだけどな。突っ込んでも疲れるだけなので、他の事も聞こう。


「他にも聞きたいんだが、お前の装備の自動装着って何だ?」

「<結界魔法(ベルリア)>」


 俺がそう言うと何か魔法を唱え、四角いものが俺達を囲む。


「今のは?」

「特殊結界魔法だな。唱える時に自分が設定したもの以外の出入りを制限出来る」

「何それ。自分が設定したものとか凄過ぎだろ」

「今回は、光の出入りを制限した。あまり周りに見せたくないから」


 光が入らないとなると周りからは中の様子が見えないのだろう。


「なるほど」

「<解除>」


 武はそう呟きながら、右手で何かを払うような仕草をする。すると武の服が一瞬で変わる。道着からジーパンにワイシャツのようなものに。


「<着装>」


 続けてそう呟きながら、右手を右に突き出す。すると再び道着の恰好に戻る。


「まぁこんな感じで、予め設定しておいた動作と言霊で一瞬で着替えられる訳だ。やっぱ道着だと悪目立ちする世界もあるしな」


 まあ例えば日本とかで、道着の恰好していれば、何かのコスプレか? って感じで変な注目をされるだろうな。

 って言うか、便利で良いなそれ。マジで欲しいぞ。


「なるほど。じゃあ最後に聞くけど、?魔法と銀竜の加護ってのは、何で鑑定で見通せない? 内容が全く分からなかったぞ」

「単純にこの世界に対応したものがないんだよ。例えば、この結界魔法(ベルリア)とか。何属性だよって感じだろ?」

「ふーん。じゃあ銀竜の加護ってのは何だ?」

「力の源とでも言っておこう。説明が面倒だし端折るけど、俺の最初の修行は銀竜に気に入られる事からスタートしたんだよ。で、銀竜が加護を与えてくれてから飛躍的に能力が上昇した訳だ」


 大体聞きたい事は聞けた。他にも破壊者(アバドン)とか救世主(ミカエル)を聞きたいけど、これ聞くと言うよりツッコミに近いしな。そんな事をしていたら疲れるだけだ。それじゃなくても魂強度の話で、頭から湯気が出そうだぜ。

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