EP.14 アイツはとことんバケモノでした
国境での戦いは、全員捕らえジパーング聖王国軍に引き渡すと、そのまま国境線を越え北を目指す。其処に小さな村があるのは、事前に調べて知っていたので、其処に向かう。ちなみに電磁石で吸い寄せた銃は全てナターシャの次元収納魔法に拝借した。
「これは酷い」
「……まぁあっちの世界では普通だけど、こっちの世界に慣れたからねぇ」
「……………………この村、焼き払って良いですか?」
「主様よ、他のものはないのか?」
「妾もこれはちょっと……」
全員が全員不評だ。一人不穏な事を言ってるがスルーで良いや。で、何が酷いのかと言うとメシだ。
味の超薄いスープに豆が少々に硬いパン。これが3000ギルだぞ。文化の違いから大体ではあるが、日本円換算で3000円だ。
他の国では、1000ギル出せばそれなりの贅沢が出来る。酒を飲みまくっても3000ギル……俺は飲まないけど。
宿屋に入ってまず食堂でメシを注文したらこれだ。これなら泊まりのみにして、ナターシャの転移魔法で、セイラの店で食べた方が遥かに良い。
まあ何処で食べるよりも、セイラの店で食べた方が口に合うのだが、やっぱ現地のものを一応食べておきたいしね。
「量も少ないし、勿体無いから全部我慢して食おう。で、後で転移魔法でセイラの店に行くぞ」
「そうだねぇ」
「ウチもあそこ店のが良いですね」
「あの店のが良いな」
「御心のままに」
セイラの店で口直しをした後、軽く情報を集めた所、アルーク教国は深刻な食糧不足らしい。作物が育たないのだとか。
次の日、チャーチ大教会を目指す為に東に向かう。大教会とは、他の国で言う王都だ。ちなみに王様は、この国では教王と言う。
にしてもこの国も名前が酷い。チャーチを翻訳すると教会になる。つまり教会大教会だ。何だそれ? って感じだな。
それと今、向かっているキリス町もそうだ。クリスマスに喧嘩売ってるのかと言いたくなる名前の町だ。
そうして夕方キリス町に到着した。ああ、メシは全てセイラの店で食べた。いつも村や町でメシを購入し、ナターシャの次元収納魔法に入れて運んでいる。時空師になった事で、時間も停止出来るので、暖かいまま食べられるからな。が、今回はセイラの店で購入――実際はオーナーは俺なので無料――し、持ち運んだ。
で、キリス町で思わぬ人物を見掛けた。何でこんなとこにいるんだ? まあ声を掛けて見るか。
「武? 何でこんなとこに?」
「ん? 誰だあんた」
「は?」
「は? じゃねぇよ。誰だよ?」
「またそのネタか? もう良いよ」
「ネタも何も、あんたの事なんて知らねぇよ」
どう言う事?
「あ~」
もしかして……、
「ちょっと裏技使って十歳くらい若返ったから分からない?」
「若返ったのだとしても、気で分かるってーの。マジであんた誰だ?」
闘気で分かるのか? 骨根じゃないがでたらめだ。これでは野菜人みたいに『この気は〇〇だ』と、同じじゃねぇか。そもそもこいつは闘気を気と呼ぶしな。
「何で分からないんだよ? 治だよ治」
「………………見た目違くねぇ?」
目をスーっと細められる。マジでどうなってるんだ?
「まあ良い。お前が治ってなら聞くが、俺の好きな漫画は?」
前にもあった展開だな。
「カケラの魔人」
「いつの……」
「……時代だよ!? つうか懐いな」
遮って以前に武に言われた事を言ってやる。すると目を丸くした。
「……何故俺が言おうとした事が分かった?」
そして、警戒心バリバリで俺を見て来る。
「前にもしたやり取りだから」
「……分かった。じゃあ適当なメシ……は、不味いから飲み屋でも行くか。そこで詳しく聞く」
やっぱり武も不味いと感じているのか。
「話が長くなりそうだし、あたい達は先に宿に行ってるさぁ」
「分かった」
ナターシャにそう言われたので頷いた。
「それじゃあね。タケル」
「あんたも俺を知っているのか?」
「そうさぁ。何で忘れてるのか知らないけどオサムの事は覚えているようだし、よく話す事だねぇ。アークは、話が終わったら伝心をするんだよ」
そう言ってナターシャは、キアラとラキアを連れて宿屋を探しに行った。ファーレも気を使ったのか、俺の頭からナターシャの頭へ飛んで移動した。
ちなみにだが、ナターシャが俺をオサムと呼ぶ時は治時代の事を差す。
そうして飲み屋にやって来る。とは言え、酒を飲みに来た訳ではないので、飲み屋と言っても茶店だな。
そこで普通に果実水を頼む。味は普通なのだが高い。他の国では200~300ギルなのだが、この国では倍以上の値段はする。マジで食料が深刻な程、ヤバいようだな。
「再会を祝してカンパーイ」
「まだ俺は、狐に包まれたような感覚だけどな」
釈然としないと言った様子で、俺のグラスに合わせる。
「ところで、なんか武も若返ってるような……気のせいかな? 今、いくつ?」
「二十二だな」
「え?」
「何だ?」
俺は一瞬呆けてしまう。
「いや、前に会った時、二十五だと言っていたから」
「ちなみに何処で会った? この世界か?」
「いや、別の世界」
「あ~~~やっと理解出来た。そう言う事か」
得心が行ったと言う感じで頷く。いや、俺は分からんけど。
「一人で納得するなよ」
「つまり俺に取っては、未来でお前に出会うって事だ。お前に取っては過去でもな」
「は? 何で?」
「世界によって時間の流れ違うと言うのは知ってるか?」
「前に会った時にお前に教えられた」
「時に意味分からん時間の流れをしている世界があるんだよ。そのせいで、こう言う訳の分からない再会をしてしまう事があるんだ」
世界によってと言うか、この世界ではだよな?
俺が異世界転移したずっと後に死んだ來が、この世界で転生し、俺より年上になっていたし。今まで感じていたが、この世界の時間の流れがおかしい。他にも1500年前の転移者がセーラー服を知っていたりとか。
「それより、お前マジで治か? 姿が違うんだが、転生者か?」
またその話か。って訳で、かいつまんで説明する。
「なるほどな」
「ところで、お前を鑑定して良いか?」
「え?」
そう聞いたら武が目を丸くした。
「いや、前に会った時……武に取っては未来か。ややこしいな。まあその時に滅茶苦茶強いの良く分かったからな。気になるんだよ」
「まぁ、構わないけど」
「じゃあ鑑定が弾かれないように闘気を抑えててくれ」
「ああ」
物は試しにと思って言ってみたが……『ああ』って出来るのかよ。俺は出来なかったぞ。どこまでも規格外だな。ってな訳で鑑定ッッ!!
名前:タケル=ワタナイ
年齢:二十二歳
レベル:183
種族:人族
職業:無職
HP:15200
MP:1800
力:6200
魔力:1200
体力:5400
俊敏:4200
スキル:拳聖術LvMAX、剣術Lv7、棒術LvMAX、銃術Lv5、真気LvMAX、紅蓮魔法Lv2、光魔法Lv8、幻魔法Lv5、治癒魔法Lv6、?魔法Lv?、空間魔法Lv8、危険察知LvMAX、空間把握(極大)、小世界
称号:ゴブリンスレイヤー、オークスレイヤー、オーガスレイヤー、ビーストスレイヤー、ヒューマンスレイヤー、ドラゴンキラー、デーモンキラー、スピリットスレイヤー、魔族スレイヤー、ゴッドキラー、炎エネ、真気解放、闘神、拳神、調停者、超越者、破壊者、救世主、漂流者、銀竜の加護
装備:無手 (攻撃力4000、俊敏1000)×2
光のマント (防御力2500) 自動防御、自動修復
龍紋の道着 (攻撃力1500、防御力1500、俊敏1000) 自動装着、炎無効、自動修復
龍紋の靴 (攻撃力500、防御力500、俊敏2000) 自動装着、炎無効、自動修復
予備武器:龍剣アポカリプス (攻撃力8000、魔力1000、防御力2000) タケル専用、魔法剣強化、自動修復
外敵を引き千切る者 (攻撃力4000、防御力1000)×2 リサイズ、刀剣収納、炭素弾丸化、自動修復
うわー! うわー! 三度言おう。うわー! 色々ツッコミ所満載過ぎる。
じゃあ一つ一つ行こう。まずレベル高っ!! 次に無職ってのは、この世界に来たばかりなのか? 拳聖術と言うのは、格闘術の上位互換らしい。ケンの剣聖術と同じだな。
炎系上位の紅蓮魔法まで到達してるのは大したものだ。他にも申し訳ない程度に魔法がいくつかある。
他に銃術があるが、これはまあドラ〇もんの空気砲っぽいの使ってたしな。それが外敵を引き千切る者って名の銃なのかな?
で、空間把握が極大。これはまあコイツは闘気による索敵が出来るからだろう。それでも見ると少しビックリする。少しなのはこの後がインパクト強過ぎて霞んでるからだ。ここまでマジで良いとしよう。
はいまず小世界。何だよこれ!? MPを大量に消費するが、小世界を作りそこに対象者を引きずり込む。これ運命の止まった夜に登場した固有結界ですかね?
さて称号だ。どんだけスレイヤーやキラー系持ってるんだよ!? 神殺しまでしてるし。何してるんだか。
次に炎エネってネーミングがダサいが炎魔法に限りMP消費が抑えられる言わば省エネだな。
真気解放と闘神は、まあ良いだろ。アルもこの世界に来ていたら似たようなのがきっとあっただろう称号だ。どっちも闘気の力を引き上げるもので、恐らくこれのお陰で龍気より遥かに強い闘気を扱えるのだろう。
ただ真気解放がスキルではなく称号に組み込まれるのには驚いたけど。恐らくこれは闘気解放の上位互換だろうし。
って言うか、そもそも闘気ではなく真気って上位版なんだろうけど。なんか今まで俺が使っていた闘気が偽物に思えて来るな。
次、拳神。拳だと攻撃力が増すと言うものだ。これのお陰で装備覧に無手なんてものがある。だが、攻撃力高過ぎだろ!?
超越者は、人族の枠を超えた力を得たってだけで、能力が上がる訳ではないらしい。本当にただの飾りの称号だな。まあ得たってだけで異常だけど。
調停者は、バランスを保つような立ち回りをして得た称号らしい。これも能力変化とかない飾りの称号だ。
そして次の二つだ。マジでヤバいのは。
破壊者ってのは、世界を破壊した者が得られる称号。お前何してるの!!!??? マジで名前の通り悪魔だな。能力は破壊力が増すってものだ。どこまでも攻撃的なスキルや称号ばかりあるな。
次に救世主。これは何度も世界の危機を救ったって称号だ。マジでお前何してるの!!!???
破壊したり救ったりと忙しい奴め。ちなみにだが、俺の大英雄の上々位互換だ。英雄、大英雄、勇者って来て、恐らく次は救世主なのだろう。恐らくってのは、この世界において勇者より上は確認されていないからだ。
にしても悪魔と天使の名が両方刻まれているとかマジでおかしいだろ!!!???
最後に漂流者。まあこれは転移者と同じ内容だな。ただ色んな世界を周ったってだけだ。だが、周る中で世界を破壊したんだろ? 何度も言うが何してるんだ!?
次は装備。優秀なものばかり。光のマントはナターシャにあげた物とほとんど同じだ。形状は変化しないけど。尤も自動防御する時だけは、変化するのだろうけど。てか、前にしていたし。
これが上着で、肩の下の肩甲骨からふくらはぎあたりまで垂れている二枚の横幅20cmくらいの透明なマントだな。で、龍紋の道着とやらが、韓国っぽい道着だ。
そして予備武器は背中に背負っている柄が竜が巻き付いたような感じになっている剣。前見た時は収納魔法から取り出していた。
てか、タケル専用って何だよ!? 武しか扱えないのか? もうこれってドラゴン探求の少年勇者の名前を冠したオリハルコンの剣じゃねぇか。
はあ~~~~~~~~疲れた。ツッコミ所多過ぎる。こいつどんだけおかしいんだよ。それに?魔法とか銀竜の加護とかの内容が全然見えん!!
まあそれを総じて……、
「この存在チートがッッ!!」
「それ酷くね!?」