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EP.11 交渉と言う名の予定行動をでした

「貴様、どう見ても密偵向きではないか!? 何故使者なんぞやってる?」


 聖王は、ガリ宰相とデブ摂政と違って堂々としてるな。こう言うとこは、王の器と言えるのだろうか?


「そこは成り行き。それより見るべきとこはそこじゃないだろ」

「ああ、そうだったな。………………転移者。確かにある。それに大英雄……」


 真っ先そこを見ろよ。それに大英雄を口に出すなよ。恥ずかしいじゃねぇか。

 と、そんな事を思っていたら、聖王はガバっと立ち上がりズガズガ俺の方に寄って来て、目の前で跪く。それにビクビクしているがガリ宰相とデブ摂政が続く。

 え? 何!? いきなり何をしてるんだ?


「転移者様とは知らず、大変失礼を。いきなり攻撃した事も含め謝罪します」

「「申し訳ありません!」」

「え? 聖王がそれで良いの? いくら転移者だからって、跪くかな?」


 ナターシャもラキアも目を丸くしてるじゃん。


「我が国は転移者を崇めておりますので」

「いや、普通にして。いきなり態度変わっても気持ち悪い。それに様付けとか背中がムズムズする」

「承知した。転移者殿()!」


 そう言って、元いた場所に戻って行く。


「ところで、良ければ両サイドにいるお二人も見ても良いか?」

「またふてぶてしくなったな。切り替え早っ!!」

「転移者殿の意向に従うのが、我が国教の教え」

「まあ良いや。こっちのナターシャなら良いぞ。だが、こっちの小っこいのはダメだ」


 ラキアが妖精族とバレる。いくら転移者に恭しくしていても、その連れだろうが妖精族には、目の色変えるかもしれないからな。


「分かった。ナターシャ殿ですな」


 そう言ってガラス板みたいな物をナターシャに向けてかざし文字を少しイジる。


「貴女様も転移者でしたか」

「そうさぁ。ただ、あたいは地球の日本からの転移者じゃないから、銃については分からないさぁ」

「他の場所があるのか!? 存じ上げなかった」


 聖王達が目を丸くする。


「まあ俺達は、少し特殊な召喚だったから。だから、俺もこんな髪に目だな」

「なるほど」

「ところで、そんなに転移者を崇めてるなら、自分達で呼べば?」

「そんな事は出来ぬ!」


 聖王が泡を食ったように言い顔をブルブル横に振る。


「転移者を呼び出すのは、転移者の意向に逆らい無理矢理呼ぶと言う事。我が国の国教では、それは禁忌とされています」


 デブ摂政がそう説明した。と言うかこっちも恭しくなった。

 それにしても無理矢理だからダメだとか、他の国と大違いだな。ちょっとジパーング聖王国の好感度が上がったぞ。


「そうなのか。まあその話は良いや。先を続けよう。獣王国の書簡を読んだな? 返答はいかに?」

「………………転移者殿である、貴方の意向には従いたい。だが、現状では無理だ。白金貨10枚も用意する余力がない」


 聖王が申し訳なさそうに語る。


「アルーク教国か」

「そうだ」

「さっき『アルーク教国の者か』と言ったな? あの口ぶりからアルーク教国の銃は、此処より最新なのか?」

「そうだ」

「そんなとことの戦争で劣勢。故に獣人を奴隷にしようとした」

「全てアーク殿の推測通り」

「つまり、アルーク教国と休戦協定を結べれば良いのだな?」

「「「えっ!?」」」


 聖王達が目を丸くし呆けた顔をしだす。


「どうなんだ? 休戦すれば獣王国に賠償金を払うのか?」

「それなら……しかし、何故?」

「俺達の本来の目的は、ブリテント騎士王国に行く事。つまり、此処に来るついでに獣王国の使者を引き受けた。同じくついでに(・・・・)ブリテント騎士王国に向かう途中に通るアルーク教国に働き掛けるだけだ」

「それは有難い。聖王ジャパネット=ジャパン=ジパーングの名において誓おう。アルーク教国との休戦協定を結べた際には直ぐ様、レオン獣王国に謝罪、賠償をしよう。……と言いたいが、即金は難しい」

「それは謝罪の使者が交渉すれば良い。あっちもそこに関して融通効かすと言っていた」

「委細承知した」


 よし! これで話し合いが決着。ふふふ……ブリテント騎士王国に行くついでの依頼で神位鍛冶師に俺の小刀を修復して貰える。これでアルーク教国を止めればジパーング聖王国に恩を売れるぜ。

 元々戦争に介入する予定だった。どっちの味方をするか決めてなかったが、予定通りに事を進めて愛刀の修復とジパーング聖王国への恩売りが出来るとかおいしいぜ。

 これでは、ほぼアルーク教国と友好的にはなれないが、戦争に介入する時点でそれは仕方ない事だ。まあこの後、上手く立ち回れば友好的になるかもしれないが。それは捕らぬ狸の皮算用だな。

 ともかく予定をこなしただけで、これだけのメリットがあるとか、マジヒャッハーって感じだな。ふふふ……。


「アークが悪い顔してるさぁ」

「それが主様だ。そこに痺れて憧れてやるのだ」

「それは分かるさぁ」


 分からんで良いよ。なんか聞こえた気がしたが、まあスルーで良いや。


「あ、そうだ。聖王さ、そんなに転移者を崇めているなら、とある転移者とその連れを暫く賓客として遇してくれない?」

「それは構わぬよ」


 こうして聖王との交渉を終え、宿屋に戻った。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「……と言う訳で、アルーク教国を潰します」

「でたらめだ! どう言う訳だ!?」

「うんざりな事を言わないでよね! 意味分からないわよ!!」


 骨根とビオサーラが目を剥く。まあ説明も何も無しで『と言う訳で』とか何言ってるんだって感じだしな。だが、テンプレはこなしておかないと。


「そのテンプレ、やられる方は最悪だっつーんだ」


 おっと声に出ていたか。


「まあジパーング聖王国との交渉の結果、アルーク教国を止めればレオン獣王国に賠償すると言う話になった。よって、場合によってはアルーク教国を潰す」

「国一つ潰すとか正気じゃねーっつんだよ! でたらめにも程があるぞ」

「でも、まずは国境付近の小競り合いを止める。その後、国に入り中の様子を見る。判断はそれからだな。話し合いで済めば問題無いし、出来る事なら恩を売り友好的にしたい。まあこれは高望みだがな」


 そう言って肩を竦める。


「それは良いが、そんな危険な場所に俺様達も行くのか?」

「あ、骨根達はジパーング聖王国の賓客扱いとなるから、終わるまで待ってて」

「は?」

「え?」


 骨根とビオサーラが鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしだす。


「ともかく城で暫く贅沢三昧! やったね」

「どんな交渉したんだ!? でたらめだ!!」

「もう話の展開にうんざりして来たわ」


 転移者の扱いが、かなり良いから頼んだだけなんだけどね。しかもちゃんと扱いを悪くしたら、タダでは済まないと脅して来た。

 アルーク教国の味方に付き、レオン獣王国をけしかけて、ウルールカ女王国がバックにいるとかハッタリをかまし、三国に囲まれるぞと言って来た。

 俺ってタチ悪い? 細っけー事は良いんだよ!!??


「にしても気に入らないんだよな」

「何がだい?」


 俺のボヤきにナターシャが反応する。


「銃は何処から流された技術なのか? アルーク教国が最初に作ったと言うが、最新の強力なのばかりあるとか。なんか腑に落ちないんだよな」


 あの後、銃について聖王に詳しく聞いた。何でも型落ちした技術をアルーク教国から入手出来たので、火縄銃とマスケット銃っぽいのを作ったとか。

 密偵でも放ったのかな? それにしては何故型落ちした技術しか入手出来なかったのか。その辺りが気になり聞いてみると、密偵ではなく情報屋らしい。つまり国とは関係無い者だ。

 そうなると型落ちした銃の情報を流したってのに何か意図を感じてしまった。例えば、型落ちの銃……つまり火縄銃とかでボロ負けしたら、金をふんだくって最新の銃の情報を流すつもりじゃないかとか。


 それにそもそも何故アルーク教国だけが、最新の銃……それも色々種類があるらしいが、それを作れたのか。

 他の国との競争で一足先にアルーク教国が優秀な銃を作れたとかなら分かる。そうではなく何故アルーク教国が一歩も二歩も……いや、話を聞く限り十歩も先に進めたのか。これにも何か裏で動いている嫌な予感がしてならない。


 で、その情報屋ってのは、どんな奴かと聞けば常に青白い顔をしており不気味な雰囲気があるとか。最初は魔族かと疑って鑑定したが人族だったらしい。

 そして何より素性が分からない事。何処に住んでいる者かも分からず、フラっと国に現れたとか。で、何かと優良な情報を流してくれたとか。

 ちなみに銃の技術が進めばそう簡単に打ち破れない万能の兵器とか吹き込まれたようだ。と言うかそんな不気味な奴を信用するなよ。

 まあともかく銃に情報屋。これだけでも何か俺の知らないとこで、不穏な物が動いて気がする。よって、アルーク教国の銃製造工場を見付け次第潰したいと考えている。まあそれだけで、この異常な技術革新が止まるとは思えないけど。


 そして、一番腑に落ちないのはトモエだ。美人を遠くにやったからだって? だからちっげー!!

 そうではなく、俺が銃の弱点を言ったら、あっさり信じた。転移者だからって、あっさり信じるとは思えない。

 転移者より、今まで国の為に働いてくれていた忠臣の言葉を信じるだろ。なのにトモエの言葉は切って捨て、同じ事を言った俺の言葉は、受け入れた。どう考えてもおかしいだろ。

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