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EP.10 銃の弱点を語ってやりました

「宰相のデブータだ」

「摂政のガリガリンクだ」


 聖王の後ろにいた宰相と摂政が少し青い顔で名乗りを上げる。こっちも名前ひでぇ。しかもだ、宰相はデブって名前なのにガリガリかよ。ガリ宰相と呼ぼう。で、逆に摂政はガリって名前なのにでっぷりお腹が出ている。デブ摂政と呼ぼう。


「アークだ」


 そう言って応接間の椅子に適当腰掛ける。ナターシャは無言で俺の右に、ラキアも無言で俺の左に座る。


「陛下の前で、何と言う態度だ?」

「それにお付きは立つのが礼儀」

「あぁん!?」


 ガリ最初とデブ摂政が、なんか言って来たので睨み付けた。すると顔が一層青冷めて行く。デブ摂政なんて、汗が噴き出て手拭いで必死に拭き始める。

 聖王の方は、打って変わってふてぶてしい。水戸黄門のような長い顎髭を撫でながらどっしり椅子に腰を掛けていた。


「いきなり喧嘩売って来ておいて恭しくする訳ねぇだろ!」

「ふん! 弾丸を一発弾いた程度で調子に乗るでない。新型が完成すれば貴様など……」


 憤慨を示すように吐き捨てる聖王。新型ねぇ~。今と大きく変わらないだろ。まさかいきなりロケットランチャーとかミサイルランチャーとか出て来たりする訳ないだろうし。

 あ、核なんて出て来たらほぼ確実に負けるだろうな。それこそ俺自身が核にならないと。アイアム・アトミックと、あの陰の有力者のように。


「ガトリング砲でも持ち出さない限り無駄だと思うがね」


 それとガトリング砲が出て来たら厳しいかもしれない。毎秒何十発も撃ち出されたら対処しきれない。


「ガトリング砲? 何を言ってるのだ?」

「分からんのなら良いさ。ともかく決定的な弱点を理解していない時点で、お話にならない」

「弱点? 分かっておるわ! 今はまだ弾数を込められない。が、いずれ何発もの弾を一度に込められるようになる」

「はぁ~~~!!?? マジ、はぁ~~~!!?? だわ」


 呆れ返るしかないわ。


「何が言いたい?」

「やっぱ理解していないな。今後リボルバーでも作って六発、オートマチックを作ってマガジンにそれ以上籠められるようになっても弱点は変わらんよ」

「き、貴様……何故そんな詳しい!? リボルバーなるものが何か知らんが、今は六発の弾丸を込める銃を開発中だ」

「陛下、それは機密です」


 聖王が目を剥き内部情報を漏らすとガリ宰相が苦言を言う。


「それも丸い奴か? クルクルと回転して銃本体に取り付けるみたいな?」

「ぬ!?」


 再び聖王は目を見開く。当たりか。それをリボルバーと言うのだが、名前までは知らないようだな。


「まあ何にしても弱点がある限りお話にならんな」


 肩を竦めてオーバーに蔑んでやる。


「そこまで言うなら、弱点とやらが何か言ってみろ。どうせ言えんのだろ? 対応されるとか言い訳をごねて、実際はブラフと言ったとこ……」

「直線攻撃しか出来ない」


 顎鬚を撫でながら、何かダラダラ語ってるな。めんどうなので遮ってやる。


「ぬ!?」

「あんなの銃口の向きと相手の指に注力していれば、どこにどのタイミングで飛んで来るか分かる。それなら変幻自在な動きが出来る既存の武器のが技量によっては、対処が厳しい」

「ハッタリを言うでない」

「ハッタリと思うならそれでも良いさ」


 最初は銃にビビってしまったが、慣れれば銃口の向きを気にすれば大した事はない。後は気配察知で、トリガーを引く指が動くタイミングを察知すれば良いだけだ。


「ぶっちゃけ発動をある程度任意に出来る魔法のが怖かったりするな」

「き、貴様は銃なんて使い物にならんと言いたいのか? そう言って貴重な戦力を捨てろと言う魂胆なんだろうが……」

「誰もそうは言ってないだろうが!」


 まだダラダラと語ろうとしたので、遮ってやる。


「例えば六発の弾のうち五発を囮にし、本命の一発当てる駆け引き出来るなら使えるだろう。他に銃を撃ちながら相手の攻撃躱す身体能力や、捌く剣術なんかもあった方が良いかもな。どっかの断髪ハゲみたいに片手で銃、もう片手で両手持ち(・・・・)の刀を持つアホな事せんで、片手で自由に扱える武器が良いな」

「なん……だと」


 出入口に控えていた断髪ハゲが怒り心頭って感じで顔を真っ赤にする。てか事実だし。両手持ちの刀で攻撃するから、真剣白刃取りが簡単に出来てしまった訳だ。まあ銃弾よりトロいってのも大きいが。


「ハゲだしねぇ」

「ハゲだしな」

「き、貴様らー!! 好い加減にしろ! ハゲハゲ言うな!!」


 ナターシャとラキアが追従してハゲと言ったらぶちキレ、怒鳴り散らした。


「黙れ!」

「はっ! 陛下失礼しました」


 聖王の一喝で断髪ハゲが黙る。


「そんな訳で、所詮一定レベルまでしか力を引き上げられないんだよ。それ以上は、それ相応の訓練をしないといけない」

「う~む」


 そうかも? と言う感じの納得顔で聖王が顎鬚を撫でる。つうかその長い顎鬚にリボン付けない?


「これって結局、『鉄の剣を持った剣士がオリハルコンソードがあれば勝てたのにー!!』って、言い訳ゴネてるのと同じだぞ。格好悪っ!!」


 再び肩を竦めて嘲笑ってやる。


「ぬっ!」


 聖王も羞恥なのか怒りなのか顔を真っ赤にした。


「それに今回のお前らの失敗はそれだけじゃない。何で戦力の大半を獣王国に送り込んでるんだ?」

「は?」


 心底分からないって感じで首を傾げる聖王。何で分からんの?


「四天王対策してたろ? あの四天王の相手してた連中は、そこの断髪ハゲより遥かに強かったのにさ。聖都守護に少し回せよ。大方銃に頼りきった結果だろ? アホくさ」

「先程から貴様一言余計だ! 好い加減にせい!!」


 流石に聖王もキレる。ちょっと言いたい放題だったかもな。


「そして最大の失敗……何でトモエを聖騎士長から外した? こんな断髪ハゲじゃなくトモエのままにしておけよ」

「トモエは……」

「銃の弱点を具申したんだろ? それが気に入らなかったから聖騎士長を下ろしたとか、大方そんなところだろう」


 内部情報だし言い淀んでいるので、はっきり言ってやった。


「何故それを? トモエから聞いたのか」

「いいや。トモエとは会ったが、そんな事は言ってなかった。元聖騎士長だと成り行きで知ったから、そこから推測した」


 そう言っておこう。内部情報を漏らしたって事で、罰せられるのは可哀想だしな。それじゃなくても国の為を思っていたのに左遷とか可哀想なのに。


「そんな訳で、トモエがいたら戦うずして降参してただろうな」

「むぅ! 貴様、何故そんなペラペラと教える。獣王国に取って不利になるだけだろ」


 聖王が唸るように絞りだす。まあそうなんだけどね。一番の目的は恩を売っておきたいんだよね。今後ジパーング聖王国に何か頼るかもしれない。

 今のままでは、お話にならないがトモエがいれば全然違うだろう。だがそれは今は言わない。

 え? 美人がいて欲しいって? っちげーよ!! そう言う意味じゃねぇよ!!


「勿論この後の交渉を恙なく進める為。何せ俺は獣王国の使者だしな。それと不利になる? ならねぇよ。あっちには転移者と同じ世界に暮らしていた転生者がいる。銃の知識は確りあるっつーの」


 ライコウが確り銃の特性を知っていれば、そこまで不利にならない筈だ。


「なら何故貴様は詳しい? ま、まさか貴様獣王国の使者と言いながら、アルーク教国の者か?」


 な、訳ないだろ。ボンクラ聖王が。


「俺が転移者だから」

「ば、馬鹿な!? 灰色の髪に灰色の瞳をした転移者など聞いた事ないぞ」

「「!?」」


 聖王達が目を丸くする。またそれか。ガリ宰相とデブ摂政は何か固まってるし。


「鑑定も出来る奴もいないのか? まあ良い。話を進めよう。はっきり言うが銃の弱点を放置したまま銃に頼ってるようじゃ、この国に未来はないぞ」

「待て! 鑑定するから、待つのだ」

「ん? 出来るならどうぞ。今まで何故か弾かれいたからな」

「鑑定遮断持ちか? それとも闘気の部類か?」

「後者だな」

「なら問題無い。突破する魔道具(アーティファクト)がある。ガリガリンク摂政よ」

「はっ!」


 マジで? 突破出来るの? なんか聖王がデブ摂政の名を呼ぶとデブ摂政が、何処かへ行ってしまう。


「少しまっておれ」


 長い顎鬚を撫でながら言う聖王。話が進まないな。そうして数分待たされるとデブ摂政が戻って来た。手には50cm×30cm、厚さ3cmの大きなガラス板のような物を持って来た。


「どうぞ、陛下」

「確認するが、鑑定するが良いな?」

「ああ」


 聖王に問われ頷くとガラス板のような物を俺に向けてかざすと、ガラス板に文字が浮かぶ。ただ俺の方からだと鏡文字状態な上、字が小さ過ぎて見えない。

 聖王は何やら文字を触りイジり始める。するとズラ~~と一気に文字が増えた。ステータスが表示されたのか?


「ぬっ! 殺人鬼、ヒューマンスレイヤー……」

「「ヒィ!」」


 聖王が俺の持つ称号を呟く。一緒にガラス板を覗いてガリ宰相とデブ摂政が顔をまた青白くして俺を見ると怯え始める。

 そう言えばそんな称号があったな。これがあるから見られるの今まで嫌だったんだよな。闘気のお陰で幸い弾いて来たから、つい忘れていた。

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