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EP.05 素晴らしい眺めでした

 今日は久々にギルドの依頼をやりに町の外に出る。暇だったので港町キョウで発行しているクエストを受けた。ちなみに俺一人だ。

 これから旅になるし、揃えてなかったキアラとラキアの旅道具を揃える為に二人は港町でお買い物中。獣王国では獣人用しかないので、人族の町で買う事になった。妖精族は人族に近いらしい。

 何が獣人用とか人族用だって? それはアレだ。女性的な物だな。ナフキ……ゲフンゲフン。ナターシャ、ビオサーラはそれに付き合っている。

 骨根(スカル)は、アレだ。ビオサーラから離れたくないようだ。口では何だかんだ言うが、態度で丸分かりなのがマジで笑える


 依頼内容はブタ狩り……もといオーク狩りだ。それもただのオークではなく、最低でもハイオークに強力な個体でオークジェネラル。他にもレアな素早いアーディオーク等の上位オークが大量発生したとかで討伐の依頼である。

 で、ブタ共を始末しに町から東にある草原に来たのだが……ありゃ先客がいるな。漆黒のドレスを着た紺色の髪で、少し目がツンとした美人だ。


 その美女が華麗に刀でオークを殲滅している。丸で踊っているかのように。

 今もオークジェネラルを袈裟斬りにし、刀を振り下ろした勢いを殺さず体を回転。横から迫って来たハイオークを裏拳で撃沈。

 時折キラリと銀色に光る手首や足首にされた漆黒の輪がまた漆黒のドレスと相まって彼女を引き立てる。見た目もさることながら戦い方が、かなり美しい。


 その者は続けて、マジカルオークが唱えた炎魔法を刀で綺麗に斬り咲き、脇差を投げて仕留める。魔法を綺麗に斬れるのは闘気を使いこなしてるって事だ。

 相当強いな。気になるし鑑定してみるか? え? 美女だからって? そうそう……ってちげぇ! はい鑑定ドンっ!!



 名前:トモエ=ヤマザ

 年齢:二十七歳

 レベル:107

 種族:人族

 職業:舞侍

 HP:10200

 MP:2800

 力:3600

 魔力:300

 体力:2800

 俊敏:4100

 スキル:刀術LvMAX、小太刀術LvMAX、投擲LvMAX、格闘術LvMAX、闘気LvMAX、刀ノ舞LvMAX、炎魔法Lv5、水魔法Lv4、風魔法Lv8、隙魔法Lv5、気配察知Lv5、危険察知Lv6、痛覚鈍化、毒無効、麻痺無効、空間把握(小)

 称号:ゴブリンスレイヤー、オークスレイヤー、オーガスレイヤー、ヒューマンスレイヤー、ドラゴンキラー、デーモンキラー、魔族スレイヤー、英雄

 装備:天津舞刀(あまつぶとう) (攻撃力8000、俊敏400) 自動修復

    漆黒のドレス (防御力2000、攻撃力800、俊敏800) 微魅了、自動修復

    漆黒の腕輪 (防御力200、攻撃力600、俊敏200) 自動修復

    漆黒の足輪 (防御力200、攻撃力200、俊敏600) 自動修復

    武踏(ぶとう)の靴 (防御力400、俊敏2000) 自動修復

 セット装備効果:漆黒 (攻撃力600、防御力300、俊敏400)



 ヤバい、マジで強い。俺より遥かに格上だ。

 踊っているかのような華麗な刀捌きは剣ノ舞ならぬ刀ノ舞の能力か? ただ美しく映えているが、あの漆黒ドレスは、動き辛くないのか? まあかなり高性能の装備のようだけど。

 日本人っぽい名前だが転移者ではないって事は子孫が転移者なのかな? ジパーング聖王国は名前から建国に日本人が関わっていそうだしな。


 背後よりアーディオークが素早く這い寄る。それを後ろも見ずにソバットで撃沈。ドレスでそれ良いのか? 今、見えたぞ。にしても後ろに目があるかのようだ。気配察知も持ってるけど、恐らくアレは闘気による空間把握だ。羨ましいぜ。

 そしてソバットの勢いを殺さず、最後に迫って来たオークエンペラーを体を回転させながら下から斬り上げる。つかエンペラーかよ。聞いてないぞ。数十年に一度現れると言われているオークキングを越えるオーク種最強の個体だ。

 今回確認されてる最強の個体は、ジェネラルと言っていたのにな。

 ドラゴン程ではないが俺も倒すのに少し手古摺る。圧倒的なタフ差で、パワー主体ではない俺には天敵に近いものがあるしな。尤も星々の(スターライト)世界での話だ。それに今回相手してるのは俺じゃなくトモエとやらだ。


 エンペラーは、野太刀を大きく振り下ろしギィィィィィィィンッッ!!! と甲高い音を響かせた。トモエの斬り上げを防いだのだ。


「くっ!」


 トモエは苦悶の声を漏らすと、あっさり刀を下ろし地面に突き刺す。先程から思っていたが、力の逃がし方や受け流し方が上手い。かなり戦闘慣れしている事が伺える。

 今のも無理に斬り上げてパワー勝負に持ち込めば、仮に勝ったとしても、かなりの体力を消耗しただろう。


「はぁぁっっ!!」


 続けて裂帛の如く鋭い声を発し、自分の二回りもの巨体のエンペラーを蹴り上げる。この蹴り上げるとは文字通り蹴り上げた。エンペラーは、上空20mの辺りまで吹き飛ぶ。

 トモエとやらが、それだけのパワーがあるのか? それは違う。今のは風魔法だ。俺は風魔法を自分に使い空を飛ぶが、それの応用のような感じで、敵を風魔法で浮かしたのだ。

 こう言えば簡単に聞こえるがそうでもない。地面に刺さった刀で体を支え踏ん張りを効かせ全身をバネのようし、それでいて蹴りはしなやかにエンペラーの顎を捉える。そして、相手が蹴りで浮き上がる刹那に風魔法で勢いを付ける。

 口で言うは易しだが、そう簡単に出来る芸当ではない。


「ふっ!」


 刀を地面から抜くとトモエも追い掛けるように飛ぶ。そして、空中で斬り刻む。エリアルコンボかいな。レアドロップ率が良くなるのか? サトモジャの好きなアレなようのに。

 それにしても絶景絶景。良い光景だ。真っ赤ってとこが素晴らしい。

 やがて、空中でエンペラーを始末したトモエは、地面に降り立つと俺を見詰めて来た。


挿絵(By みてみん)


「何をしているのでありんす?」


 花魁口調かいな。


「いや……何でもない」


 そう言って、俺はすまし顔で立ち上がる。そうあまりに絶景なので座り込んで眺めていたのだ。

 花魁口調のトモエの視線が下へ落ち、蔑みのものへ変わる。イヤン!


「覗いてた訳でありんすか。破廉恥でありんすな」


 はい、そうですよ。ドレスだし覗けらたから、つい眺めてたんですよ。で、ビッグマグナムが完全覚醒してしまった。だってかなりの美女だよ。おっとナターシャがいなくて良かったぜ。

 トモエは背中まである紺色の髪を軽く払う。そう言えば髪を束ねていないな。それなのにあんな舞うような戦いをしていていたのか。漆黒のドレスと同じで邪魔じゃないのか? だが、夜空のように美しい髪だ。


「ドレスで戦うから悪い。見てくださいと言ってるようなものだろ」


 はい、逆ギレです。


「それも一理ありんすね」


 そう言うと矛を収め、倒したブタ共を空間魔法で収納し始めた。

 


 チョロイ!

 


 しかし、彼女の空間魔法ではレベルが低くく容量が小さく全部入らないだろう。なので、ハイオークとか珍しくないオーク種は一ヵ所に集め始める。一気に燃やそうと言うのだろう。死骸を残すのは環境に良くないし。


「なぁ……相談なんだが良いか?」

「何でありんしょう?」

「そのオーク共の半分売ってくれない? 相場は確り払う」


 まあ別にいらんのだけど。どうせ直ぐに処分する事になるのだが、今だけは必要になる。


「何故でありんしょう?」

「ギルドからオーク駆逐の依頼でね。あんたが全部狩ってしまったから、依頼未達成になってしまう」

「……それは虚偽の報告をするという事でありんすか?」


 トモエの目が据わる。ヤバい。こんなのと喧嘩になったらボコされる。


「これでも依頼達成率100%なんだよ。失敗したなら諦めも付くが、先客に掠め取られ達成率に傷が付くのは惜しい気がしてならないんだ」


 そう言うとふっと笑い、目が和らぐ……とは言え、元々ツンとしてるのだけど。妖艶だ。その美しさもあり艶めかしさを感じる。


「そんな事でありんすか。なら、あちきがギルドに共に行きんしょう。事情説明をしんす。それなら達成率に響かないでありんしょう?」

「良いのか? それは助かる。後はギルド側がどう判断するかだな」

「問題無うござりんす。これでもあちきなら多少の融通が効くので。それより何故手を出して来うござりんしたか? 結構前から見ていたでありんしょう? 先に狩ればそんな心配ものうござりんしたのでは?」

「それご法度だろ?」

「あちきより強いのに良い男でありんすね」


 口元を抑え微笑む。それだけの動作で色気を感じドキッとしていまう。

 強い? いやいや、あんたのがどう考えても強いだろ。


「トモエのが明らかに強いだろ?」

(ぬし)さん龍気を持っているでありんしょう? あちきは会得できのうござりんした」


 確かにトモエはLvMAXとは言え闘気だ。それの上位互換らしいからな龍気。てか、良く気付いたな。


「それだけだ。他の能力は軒並みトモエには負ける」

「そうでありんすか………………って、なしてあちきの名を知ってるのでありんすか?」


 気付くの遅っ!! つか、俺も失敗した。鑑定したのバレバレじゃねぇか。ほらほらまたトモエの目が怖くなって行く。


「鑑定でありんすか? 人のステータスを覗くなんて失礼極まりありんせんね」

「いや~目の前に美女がいたら、気になるでしょう?」


 って、事にしておこう。実際は強さが気になったからだよ? ほんとだよ? 美人に惑わされてなんかいないからね。


「口が上手うござりんすね。毒気が抜かれんした」


 そう言ってまた微笑む。美女の笑顔最高!!! なんて考えてないからね?


「では、行きんしょう。港町キョウで良いのでありんすか?」

「ああ」

「その前に死骸を燃やしんしょう」


 空間魔法で収納しきれていないブタが残っていたな。


「手伝うぞ。あ、いや俺の隙魔法で町まで運ぶよ。ギルドに言ってくれるお礼に」

「そう言ってネコババしんせんか?」

「仮にするにしても相手を選ぶ。あんたみたいな美人さんとは仲良くしたいね」

「ほんとに口が上手うござりんすね」


 エドには負けるよ。

 それに俺は口説いてるのではなく、モメない為の処世術だな。トモエとはマジで敵対したくない。獣王程ではないにしろ、かなり強い。獣王国四天王四人がかりで良い勝負かもしれないな。いや、血脈術に対抗出来ないかも?

 まあそれは良いや。それはともかく俺はトモエと港町キョウに戻った。久々のギルドの依頼だったのに稼げなかったな。まあ替わりに良い物が見れたけど。あれはマジで絶景だった。

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