EP.04 炎=%でした
「アーク、悪かったな。なんか巻き込むみたいになってしまって」
「いや、良いよ。どうせ北上するつもりだったし」
会議後、城門までライコウが送ってくれる。その道すがらで話していた。
「それより襲撃者は全員捕まえたのか?」
「人数を把握してた訳じゃないから分からん。ただ少なくても指揮官は捕まっていないな」
「そうか」
「まぁ外でも暴れてた奴がいたから、アークの判断には助かったがな」
あ~そう言えばライコウには外に行けとか、主の獣王でもないのに指図してたんだっけか。
「そうか」
「……明日発つんだな?」
名残惜そうにライコウが呟く。
「ああ」
「船は本当に良いのか?」
獣王が船を手配すると言ってくれたが、ナターシャがジパーング聖王国の南西にある港町キョウに行った事があるので、転移魔法で飛べるので断ったのだ。
精霊族の集落にいる際にナターシャから伝心が来た時に一週間後に合流と言う話になった。ナターシャは、その一週間何もしないのは勿体無いって事で、船でジパーング聖王国に渡っていたようだ。船旅が天候にもよるが二日~三日掛かるので有難い。更に獣王国の港町トラトラ――ネーミングが酷い――行くのにも馬車で二日とかめんどい。
それはともかくジパーング聖王国側のキョウって名前も酷い。これで王都はオエドか? と、思ったらそこは意表を突いてヤマトだった。王都ヤマトって語呂悪くね? いや、ジパーング聖王国は聖都と呼ぶらしいから聖都ヤマト……どっちにしろ語呂が悪い。
「ああ、平気だ。それより、ジパーング聖王国の返事は、伝心する」
「了解」
獣王国の伝心魔道具の一台は、暫くライコウ預かりと会議で決まった。俺が伝心し易いだろうと言う配慮だ。
ちなみに俺達はジパーング聖王国を越えて更に北上し、ブリテント騎士王国を目指すので、こっちに戻るのではなく伝心で、と言う事にして貰った。まあ戻るにしてもナターシャの転移魔法で、一瞬なんだけど。が、更に厄介事を押し付けられないように更に北上するから、戻らないと言い張ったのだ。当然移魔法の事は隠した。
で、ジパーング聖王国が戦争を望むと言う結論を出すなら、獣王国から攻めるらしい。その合図が俺のからとか嫌だね。
なので、謝罪の使者&白金貨10枚で決着が付くように話を進めたい。と言うか、獣王からもそうなるように上手く調整出来るならしてくれ言われている。
「アークさーん」
ん? 城門に到着すると城の奥から名前を呼ばれた。その者は俺に近付いて来る。
女猫獣人か。何処かで会ったかな? 声に聞き覚えがある。
「えっ!? ライコウ様?」
その者は、近付くとライコウに気付き驚く。
「歓談中でしたか? 大変失礼しました」
頭を垂れる女猫獣人。城門前で話していただけで歓談って言えるのかね。それにしてもマジでライコウは偉いのだな。分かっていても目の当たりすると驚く。
「いや、問題無い」
「あの……少しだけ彼、アークさんとお話しても宜しいでしょうか?」
「ああ、構わない。席を外そうか? いや、それよりも応接室に行くか?」
「いえ、手身近に済みますので」
そう言って俺に向き直る。
「アークさん、Bブロック担当の司会者をしておりましたクインビーと申します」
司会者? あ~、男猫獣人を血祭りに上げていた奴かな?
「準決勝で担当した司会者かな?」
「覚えてくれましたか。嬉しいねぇ。それと優勝おめでとうございます」
艶やかに微笑む。が、直ぐに表情を戻し……、
「それで、アークさんにお詫びをしたいと思い、見掛けたので声を掛けさせて頂きました」
「お詫び?」
なんか合ったかな?
「この度は、Aブロック担当の司会者が大変失礼致しました」
やたら、俺を敵視してた男猫獣人かな?
「別に貴女は悪くないよね?」
「いえ、後輩の教育を怠っていたようですから」
「でも、準決勝でオッズがどうのってやたらフォローしてくれたよね?」
「気付いてらっしゃったのですか?」
女猫獣人が目を丸くする。
「いや、普通に考えてオッズの話をする必要は無いし、話したとしても獣人の国なんだから獣人に賭けが偏るのは当然だよ。なのに態々言及してたから」
「実力だけじゃなく頭も良いとは……。惚れちまいそうさ」
艶やかに微笑む。マジでそういうの良いから。
「って訳で、謝る必要はないと思うぞ。それで十分だから」
「ありがとうございます」
「それにさあの猫獣人は、試合の妨げになってないから良いけど、決勝で司会してた人は最悪だった。しかもケチ付けられる内容じゃなかったのが尚タチ悪い」
あの気持ち悪い笑い方をしていた奴はマジで酷かった。しかし、男猫獣人のような名誉を棄損する発言をしていないので、文句言えない。
「あ~エンプレス先輩ですね」
クインビーが苦笑いを浮かべる。
「力が抜ける笑いをされて最悪だったよ」
「お前、一度隙だらけになったもんな」
ははは、と笑うライコウ。
「それにしてもアークさんの戦いは素晴らしかったです」
「それはどうも」
「出来ればAブロックの司会をしたかったくらいさ」
俺にしなだれるように寄りかかり艶やか笑う。
「良かったら今度遊びに行かないかい?」
上目遣いに何か言ってるよ。
「な~んてね。冗談さ」
何て返事を返そうかと考えてると即座に俺から離れ人差し指を唇の端に当てて悪戯な笑みを浮かべた。
「それじゃあまた縁が有ったらね。出来れば来年も大会に来て欲しいさ」
「ああ」
「ライコウ様もお時間を取らせて申し訳ございませんでした」
そう言ってクインビーは、去って行く。
「さて、来年も出ると決まったようだし次は俺が勝つからな」
「俺は戦闘狂じゃねぇ。もう意味もなく戦わねぇよ。つか社交辞令で返事しただけだ」
「ちぇ……。じゃまたな」
「おお」
俺とライコウは拳を打ち付けた。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
その後、宿屋に戻りナターシャ達とテーブルを囲み会議での事を話した。
「またアークは厄介事を」
ナターシャにめっちゃ呆れられる。いや、そもそも北上する予定だったじゃん。ついでだよついで。
「だからって、引き受けるかなぁ。どうせ神位鍛冶師に釣られたのだろうけどさぁ」
いや、どっちにしろ探さないといけなかったんだし、ついでの仕事を片付けて神位鍛冶師と話を付けてくれるなら有難いじゃん。
「ほんとバカなんだからぁ。まぁそれがアークさぁ」
「厄介アークですからね」
「そこに痺れて憧れてやるぞ」
まだ言うか。つか二人増えているし。それとにラキアさんや、どこでその言葉を覚えたんだ?
あれ? そう言えば元々ジパーング聖王国から戦争してるようだし、それに介入するかもって話だったよな?
「おかしくね?」
俺のボヤきに『何が?』と、全員首を傾げる。
「骨根さ、ジパーング聖王国は戦争してるって言ってたよな?」
「あぁん? アルーク教国とドンパチしてるぜ。今はまだ小競り合い程度だが、いつ本格化してもおかしくねぇ」
「何こっちまで手を出してるの? そんな余裕あんの?」
「奴隷にするっつー話だったんだろ? 大方ドンパチに投入したかったんじゃね? 獣人は頑丈だからな」
「ジパーング聖王国もうんざりね」
骨根の隣に座っているビオサーラは、どうやら元気になったようだ。昨日はずっと寝ていた。尤も辟易とした面で吐き捨てているけど。
「そう言えば、骨根は何したんだ? 炎で回復とか」
「……知らね」
そっぽ向きながら呟く。
「ああ、悪い。ステータス関連とかあまり触れるものじゃねぇよな」
「そうじゃねぇ。てめぇ、鑑定持ってたよな?」
「あるが?」
「してみろ」
「いや、弾かれるだろ? 龍気で」
「抑えてやっからしてみろ」
抑える? そんな真似出来るの? 俺は出来ねぇよ? 闘気の頃だけど、自動で鑑定を弾いていた。その際に抑えれば鑑定されたのか?
まあ良いや。じゃあ鑑定っと!
「……………………………………は?」
「でたらめだろ?」
「いや~……でたらめって言うか……」
意味不明なんですけど。
って訳で、その意味不明な鑑定結果がこれだ。はいドンっ!!
名前:スカル=クレナイ
年齢:十八歳
レベル:72
種族:人族
職業:龍闘士
HP:6600
MP:2700
力:3500
魔力:2200
体力:1800
俊敏:1400
スキル:格闘術Lv7、龍気Lv5、灼熱魔法Lv8
称号:ゴブリンスレイヤー、オーガスレイヤー、デーモンキラー、無炎、炎=%、転移者
無炎
炎魔法なら無詠唱で負担が無く、魔法名破棄でも負担が少ない
これはどうでも良い。それより問題は炎=%だ。
炎=%
炎ㇾω▲ヶ譬谿〇荳#⃣艸譏―、譛荳%〇螳譏〇閾ㇾ▲。
㋮〒~◇龍ヰ無詠唱蜃=~▲炎〇<㋽、迚?判謦ヰ気>〇蜃譚、逋死◇蜉ヶあ▲。
魄〇蛻㋮ㇾ〒蝌竜ヰ閾隕死〒譎〇隕驢▽▲。
文字化けがひでぇ~~~~!!!!
エンプレス先輩はモデルがいたりもします。
ただ気持ち悪い笑いをしてるとこだけですね。
名前もそこから拝借しました。
とは言え、今後また登場するかはまだ未定です