EP.03 エリスと戦いました
真っ直ぐ進むと、本当に外に出たので、其処で待ち構えた。
やがて三百人と、此方の雪だるま一族は、二十体程しかいないので、約三倍の戦力のラフラカ帝国兵達だな。
「我が名はエリス=シャール! ラフラカ帝国の将軍になりっ!!」
「俺が指揮官のガーリンソンだっ!!」
いちいち名乗らないといけない決まりでもあるのか? アホらしい連中。
それにしてもエリスのあの流れるような紫髪はやたら奇麗だな。やたらキラキラしてる。軍人なのに確り手入れしてるのか?
それに俺よりも年下に見えるが、それで将軍が務まるのか? まぁ軍服着てるし、それなりの鍛錬をしているのだろうけど。
《確かにアホらしいな。名乗る前に斬れよ。またプレアブルキャラだし、とりあえず鑑定っと》
名前:エリス=シャール
年齢:十二歳
レベル:50
クラス:聖騎士
称号:女騎士
HP:5000
MP:1400
力:1100
魔力:1100
体力:650
俊敏:1000
スキル:剣使いLv6、闘気Lv4
エクストラスキル:全中位魔法、二刀流、痛覚鈍化、麻痺耐性
ユニークスキル:女帝騎士
《結構強いな》
「道を譲る気はないか? 今なら無駄な血を流す事はないぞ」
「ないっ!!」
指揮官達が問答をしている間に俺は走った。俺は真っ先にアホな名乗りを上げてたエリスとやらに突っ込む。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
はいはい。此処で戦闘モードね。俺が操作して相手するのか。
「<下位氷結魔法っ!>」
おっと! 人の頭くらいのサイズの冷気が飛んで来た。あれに当たると凍り付くな。
てか、魔法を使うのか。まあ人工魔導士を作ってる言われているし鑑定でも中位なら全魔法が使えるらしいしな。
「闘気発動っ!」
俺は最小の動きで躱し、小太刀二刀流にして右手のを上段から、左手のを左から斬り付ける。
「下位氷結魔法っ!」
ギーンっ! ぐさぁっ!
上段からのは剣で、左からのは氷魔法で防いだ。と言うか、闘気を発動していなかったら、左小太刀が凍り付いていたな。危ない危ない。闘気剣と同じで身体能力強化も音声入力だから事前に叫んでいて良かった。
だが、一定時間しか効果がない。それでも無理に使おうとすると体力が一瞬で尽きて動けなくなる。つまりは、早期決着を付けないとヤバい。
にしても剣と魔法を同時に使うとは器用だな。
「やるな……名を聞いておこう」
だから、戦闘に名前が必要かよ。
スッ!
無視して後ろに回り込み小太刀を挟み込むように振るう。
ギーンっ!
振り返らずに、しかも、いつの前にか剣をもう一本抜き二刀流で防いで来た。スキルでも持っていたしな。やるなエリス。
「礼儀を知らぬのか? 名を名乗るものだろう」
だから知らねぇって。それはともかく俺一人突っ込んで、エリスの後ろに回ったせいで囲まれているな。まあ飛べば良いか。
俺はエリスの上を飛び、ついでに小太刀を振るう。
カーンっ! と、弾かれる、まあ何も考えず振るったし簡単に防がれるよな。そのままエリスの前に着地。
「……殺し屋にそんなもの求めるな。だが一応答えてやる。ダークだっ!」
「もう良い……<下位氷結魔法>、下位氷結魔法>、下位氷結魔法>、下位氷結魔法>……」
背中を向けてるのを良い事に連続で魔法を使って来たな。って言うか、短絡的過ぎないか? 名前を名乗らなかった事で、軽く逆上しているように思える。
だが、良い手だ。これを避けると味方に当たるな。面倒だが仕方ない。
ずさぁぁぁ! ずさぁぁぁ!
振り返りざまに最初に飛んで来た冷気を斬り咲いてやった。
ずさぁぁぁ! ずさぁぁぁ! ずさぁぁぁ! ずさぁぁぁ! ずさぁぁぁ! ずさぁぁぁ! ずさぁぁぁ! ずさぁぁぁ!
そして、迫り来る冷気を悉くを斬り咲いた。
にしてもエリスは氷系が好きだな。エルドリアの炭鉱は、寒いから有効と考えたのかね?
こうして俺達は、エリスと帝国兵三百人との戦いが始まったのだが、俺とエリスの戦闘に呆気に取られていたせいか、暫く俺達二人の戦いだった。が、途中から一気にお互いがぶつかり合う。
「うぉぉぉ……」
「おらおら……」
「くらぁぁ……」
そこらかしらから雄叫びが聞こえる。そして、俺もエリスに一気に間合いを詰めた。
カーンカーンカーンカーンカーンカーンっ!! と、小太刀の二刀流と剣の二刀流で斬り結ぶ。
二刀流の経験の差から俺に一日之長があるように思えるがリーチはあっちに分がある。
それに……、
「<下位氷結魔法っ!>」
あっちには魔法がある。
ヒューン……ずさぁぁっ!
投擲用武器を投げて、相殺させる。凍り付いてもう投擲用武器は、もう使えんだろうがな。
この場合どうしてもこっちが遅れる。なかなか厳しいな。更に……、
「後ろ取ったっ!」
プシューンっ! と、斬り咲く。
相手は三百人だ。
後ろを取ったくらいで、いちいち攻撃して来る奴がいる。
「ぐはっ!」
エリス以外雑魚だ。見なくても斬れる。それでも面倒には、変わりない。
「<下位氷結魔法っ!>、<下位氷結魔法っ!>、<下位氷結魔法っ!>、<下位氷結魔法っ!>、<下位氷結魔法っ!>、<下位氷結魔法っ!>………」
そして、その隙に氷系魔法連発される始末。めんどくさい。だが……、
スッスッスッスッスッスっ!
全て避ける。馬鹿め。俺の後ろには味方は今いないぞ。
「ぐはっ!」
「がはっ!」
あ~あ。自滅してる。エリスの拳サイズの冷気が、味方に当たり何人もの体が凍り付く。
「貴様ぁぁぁぁっ!!」
いや、キレられても今やったのお前だろ? 所詮は十二歳の少女か。なんか強さはそれなりにあっても、幼いから萎えて来たな。
「ならこれでどうだ!? <中位氷結魔法>」
「な、何っ!?」
範囲が一気に広がり避けきれず、俺の左腕が凍り付いた。
下位は、拳サイズくらいの冷気だったが、中位となると人間サイズくらいの大きくなったからな。
「これで片腕使えないだろ? 此方は、まだ二振りとも使えるぞ」
カーンカーンカーンギーンギーンっ!!
チャンスと見るや、二刀流で攻め立てて来る。だが、そんなもの一振りの小太刀で十分。
全部受け流した。お粗末な二刀流だ。
魔法を警戒していたから、全力で小太刀を振るえなかったが、相手は片腕を一つ封じた程度で油断してくれたので警戒する必要は無い。全力で小太刀を振るえた。
「ば、馬鹿なっ!?」
馬鹿なのは、お前だよ。
シュっ!
再び後ろに回り上から振り下ろす。エリスは前方に跳び躱す。
「こうなれば……<中位氷結魔法っ!>」
またそれか。俺はそれを躱す。範囲がわかれば完全に避けられる。
「えっ!?」
ラフラカ帝国兵が完全に凍り付いてるよ。こいつ将軍の器じゃないな。
さて、それにしても、また魔法を使いだしたら不利だな。闘気レベル5になった事で、成功率は五分五分アレを。失敗したら負けてデスペナが付くが仕方ねぇ、賭けてみるか。
俺は小太刀を逆手に持ち替える。
「<中位氷結魔法っ!>」
「<スラッシュ・ファングっ!!>」
相手が中位魔法を使うのに合わせて小太刀を振るった。
闘気の斬撃が中位氷結魔法を斬り裂いて突き進む。
闘気剣スラッシュ・ファング。体内エネルギーを圧縮し右腕に集中させ、それを斬撃と一緒に飛ばす。
闘気レベルがカンスト――ダークに取っては――した事で、五分五分で使える切り札だ。発動して良かったぜ。賭けに勝った。
「な、何っ!?」
エリスは剣をクロスにしながら斬撃に備える。
ドーンっ!! っと、エリスの手元で爆発し、直撃は免れたが、剣は一本折れ、エリスは吹き飛ぶ。
ムサシ以上の強敵だったな。十二歳と言う若さで助かったぜ。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
《今回は、最後まで倒して終了か。最近のボス戦は、途中終了だったから不完全燃焼だったんだよな。ん? あれ? 視点がダークじゃないな。ユキの方に行ってる》
「るまるまるまーっ!!」
シャドーウルフに跨る雪だるま達が駆け回り、ラフラカ帝国兵を翻弄する。
個体によって獲物が違うようだ。弓を射る者や鞭を振るう者など。
「そっちルマー」
それも的確にユキが指示を飛ばしていた。ダークネスウルフに跨りながら全体を見るユキ。
「吹雪ルマー」
雪だるまの魔物だけはあり、吹雪での攻撃も可能だ。ユキは、それも的確に指示し、それも味方に損害を出さないように気を配りながら。
「ルマーっ!」
ブスっ! と、時にはユキ自ら槍を巧みに振るい突き刺す。近寄るラフラカ帝国兵を挿しつつ全体に指示を出していた。
「ダーク! 一旦戻れくれ」
《あ、視点がダークに戻った》
雇い主の命令だ。戻るか。
「ダーク、左腕を」
そう言われ凍った左腕を出す。
「ルティナ、溶かしてやってくれるか?」
「はい……<下位火炎魔法>」
抑揚のない声で、呟き炎を出し氷を溶かした。これで、左腕が自由だな。
「っ!」
と思ったら、火が強いぞ。火傷してしまった。まぁ使えないよりは良いか。其処で俺は周りを見渡した。
人数的に約三倍だったが楽勝だな。完全に此方が優勢だ。
「ダーク、相手の指揮官が吹っ飛んだ今がチャンスだ。ガーリンソン指揮官とルティナを連れて先に行ってくれ。ユキ、案内を頼む」
「……わかった」
「わかったルマー」
と、戦場を見ていたらエドにそう言われる。ユキも戦闘を止めここっちに戻って来た。
そして、再び炭鉱に潜り奥へ進んだ。其処では不可思議な力を感じる。これが精霊か?
「ルティナ、精霊はいるか?」
「……はい」
ガーリンソンが聞き、ルティナが抑揚のない声で答える。
「では、頼む」
「……はい」
そしてルティナは、目を瞑る。交信とやらをしているのだろうか?
ゴゴゴゴゴ……と、やがて辺りが揺れ始める。
《ニンゲンが協力しろだと?愚か者がっ!!》
脳内に響くような声が辺りから轟く。これが精霊か。
《ニンゲンには、契約により魔導を授けている。それ以上の事をする道理はない》
「精霊殿、其処なんとか頼む」
ガーリンソンが声を上げた。
《黙れっ!! いくら半分精霊の血が流れているからと言って我らを利用するな》
半分精霊? ルティナは精霊とのハーフなのか?
《我らの存在は世界を形作るもの……決してニンゲンには契約でしか手を貸さないのが星々が定めた理だっ!!》
ドッゴーンっ!! と、けたたましい音が響き、天井が吹き飛び空が開けた。
《理を破ろうとする愚か者よ。消え失せろっ!!》
「なにぃぃ!?」
ガーリンソンが目を剥き空へ吹き飛ぶ。そして、俺も遅れて吹き飛んでしまった。