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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十三章 レオン獣王国の武術大会
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EP.39 獣王は強過ぎました

 互いの拳を打ち付ける。それだけで獣王の恐ろしさが分かる。最初に言った通り軽く流していると言うのにだ。

 お互い格闘で攻める。獣王は知らんが俺はせいぜい20%くらいだろう。獣王も緩やかなパンチや蹴りなので、相当手を抜いてるのが分かった。

 獣王の攻撃を躱し、往なし、時に食らった。痛みが走る。食らった部分は当然として往なした手が、軽く痺れる。別に我慢できない程でもない。闘気を集中して痛みを消す程ではない。

 ただ、こんな軽い殴り合いで痛みが走る意味が分かんねぇ。別に痛みが走ってるとこが、赤くなってる訳でもないのに。更に言えば痛覚鈍化のスキルがあるのにだ。


「ガハハハハハ……良いぞ! 良いぞ!」


 攻撃を行いながら獣王が豪快に笑う。


「試合を見ていた通り格闘のスキルレベルが高いな。余と同レベルはあるな」

「それはどうも」


 同レベルって獣王もレベル8なのか? そうは思えない。何故ならその同レベルで獣王の攻撃に痛みが走る? 謎過ぎる。

 いや、仮に獣王の格闘レベルがMAXでも説明付かない。たったレベル1の差で、こんな差が出来るとは思えないからだ。


「だが、不思議だ。其の方が我が四天王三人を下したのが……」


 獣王が考え込む表情をした。だからと言って攻撃の手は緩めない……いや、元々緩い攻撃ではあるんだけど。


「そんなに俺が弱く感じるか?」

「余との差を瞬時に見抜いた時点で、それなりの強さはあるのは分かる。言ったであろう? 一定の力を持つ者ではないと分かぬ事よ、とな。うぅん?」


 左目を瞑り問い掛けて来る。


「ああ。言っていたな」

「不思議なのは、其の方が持つのは闘気であろう?」

「ああ」

「闘気では四天王を下すのは、少々骨が折れる」

「実際ギリギリだった」


 会話を続けながら確り殴り合いを続ける。とは言え徐々に苛烈差を増して行く。俺は40%まで引き上げた。


「それよ。ギリギリとは言え下してる。其の方の潜在能力は相当なものよ」

「それはどうも」


 ちょっと打ち合っただけで見透かれている気分だぜ。まあ試合を見ていたと言う事は、その時点でバレバレだったのだろう。それを拳を打ち付ける事で確信に変わったっと言ったところか。


「そろそろ腰の獲物を抜いてはどうだ?」

「なら」


 俺は小太刀を二振り抜き、斬り掛かる。


「ふん」


 獣王は腕で平然と弾く。


「試合を見ていた時から思っていたが、その獲物は物足りなそうよのぉ。うぅん?」


 左目を瞑り問い掛けて来る。


「小刀が一番好む武器でね。ただ損壊してしまい、修復できる鍛冶師が見つかるまで、これで我慢だな」

「なのるほどのぉ」


 話ながらでもひたすら、斬り掛かるが全て腕で弾かれた。どんだけ強度がある腕なんだよ。ちょっと本気で斬り掛かるか。そう思い俺は小太刀に闘気を集め斬り掛かった。


 ギーンっ!!


 と、鈍い音が響き渡る。

 気付くと獣王は自分の獲物を出していた。モーニングスターと鎖鎌を合わせたような獲物だ。鎌と棘付き鉄球が鎖で繋がれている。

 その鎖部分を持ちピーンと張り、俺の小太刀を防いだのだ。闘気を籠めたので、鎖くらい斬れそうなのに、そんな気配が全くしない。


「そろそろペースを上げて行くかのぉ」


 そう言って棘付き鉄球を直接握り、それで殴り掛かって来た。先程とは打って変わって速い。咄嗟にバックステップで躱す。


「ちぃぃ!!」


 が、そのまま鉄球を投げられる。首を左に曲げなんとか躱す。右頬を掠り生温かいものが流れるのを感じる。頬が軽く切れたようだ。それだけでジンジンする。丸で直撃を食らったような痛みだ。

 痛覚鈍化のスキルを完全に無視していやがる。何故こうも痛みが来るのか。それに殴り合いをしていた時も思ったが、どうもガワではなく内部に痛みが走っているのを感じた。


「ふん」


 獣王が鎖を引く。頬を掠り通り過ぎて行った棘付き鉄球が、帰って来る気配を感じる。それだけでなく危険察知の警報が頭の中にやかましく響く。

 俺は咄嗟に空に逃げた。空中から様子を見ながら手を考えよう。


「甘い」


 棘付き鉄球が手元に戻る前に鎖鎌の方を俺に投げ付けて来る。この距離なら鎖の長さを考えれば届かないだろう。

 しかし、グングン鎖が伸びる。確かに甘かった。鎖鎌が足に絡み付く。あの武器は魔道具武装アーティファクト・ウエポンだったか。まあ考えれば当然か。なんせ獣王が持つ武器が普通な訳がない。


「ふん!」

「がはっ!」


 地面に叩き付けられる。武舞台もヒビが走り全身に痛みが来る。ただ痛いは痛いが、痛覚鈍化のスキルで、直ぐに痛みを抑えているのを感じる。

 やはり直接殴られた方が痛い気さえする。痛覚鈍化のスキルが無効化されている感じがあるのだから。


「余は魔法は一切使えぬが、この鍛え抜かれた肉体がある」


 そう言って深紅のマントと黄色を基調したガウンを脱ぎ去り上半身裸になる。確かに筋肉ムキムキだな。ただそれより気になるのが…………、






 胸毛すごっ!!!!






 金色の胸毛ふさふさだ。フォックスのアフロ並みにモジャってしてるんじゃないか?


「では行くぞ」

「速っ!」


 一瞬で距離を詰められた。そして腹に掌打。獲物は肩に掛けているので素手だ。


「くっ!」


 腹の内部どころか全身に響く感じだ。かなり痛てぇ。

 続けて獣王は両腕通しがくっ付きそうな距離まで持って来て、十本の指を立て俺に向ける構えを取った。

 やばい! 危険察知のやかましい警報が鳴り響くが、そんなのなくても直感で分かる。だが、掌打を先に食らった影響で、直ぐに回避出来ない。そうこしてるうちに…………、























            

            

             「<秘殺苦十之王来音拳ひゃくじゅうのおうらいおんけん>」

























「がはっ!」


 何だよ、そのヤンキーの夜露死苦みたいな技名は? とか考えてしまいながら後方に吹っ飛んだ。

 腹に十の穴が空く。指を差し込まれたからだ。当然血がダラダラ流れ、痛みが強烈に来る。闘気を集中させ、痛みを和らげようとするが、全く効果がない。闘気で出来たのは、多少の止血程度だ。


『なんとアーク選手、獣王様の必殺秘殺苦十之王来音拳ひゃくじゅうのおうらいおんけんに耐えたーっ!! 四天王でも直撃すれば一発OKの技を耐えました。流石は優勝者! 伊達ではない』


 司会者が称賛してくれるが、そうじゃない。直撃ではなかったから耐えられたのだ。


「今ので身代り護符(タリスマン)を損壊させる予定だったものよ。食らった瞬間、後方に飛ぶとは、なかなか良い判断だった。が、余計に苦しむ事になったのではないか? うぅん?」


 左目を瞑り問い掛けて来る。

 確かにそうかもな。完全に直撃していれば身代り護符(タリスマン)が損壊して、ダメージも傷も残らなかっただろうに。体が自然と動いてしまったのだ。


「<中位回復魔法(ギガ・リカバリー)>」


 バックステップを踏み更に距離を取ると直ぐに回復魔法を唱える。咄嗟なのであっちの世界の魔法を使ってしまう。


「っ!?」


 全く治らない。何故だ?


「余の知らぬ魔法よな。今のは回復魔法だろ? いや、それよりも不思議に思っているようだな。全く回復しない、とな」


 確かにその通りだ。俺の無言を肯定と受け取ったのか解説してくれる。


「余の持つ力は龍気よ。龍気は、闘気の上位互換と言ったところか。其の方が四天王を下したのを不思議に思ったのは、この龍気を持っていなかったからだ」


 骨根が言っていたなスキルだな。確かにこれがあればもっと四天王戦が楽だったかもしれない。それと痛覚鈍化のスキルを無視して痛みがあったのは龍気のせいなのかもしれない。


「龍気でダメージを与えると暫く回復魔法を受け付けない特性がある。尤も生命魔法で覚える上位の回復魔法を使用すれば回復は可能だがな」


 生命魔法は、療魔法の最上位だな。俺は残念ながた中位の治癒魔法しか持っていない。

 にしても龍気か。痛覚鈍化を無視し、ダメージを暫く回復できないとか、思った以上に厄介だな。























            

            

《龍気を体内に流された事で、龍気のスキルが解放されました》























            

            

 は?




《闘気レベルが上がりました》




 え?




《闘気のレベルがMAXになりました》




 えぇぇぇ!?




《闘気LvMAXは龍気Lv1に変化しました》




 ここで?

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