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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十三章 レオン獣王国の武術大会
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EP.30 CとDブロックの勝者が対戦しました

「いや~負けた負けた。我を倒すとはやるではないか」


 ファックスは立ち上がり飄々と言う。今回はオーバーダメージもなく綺麗に身代り護符(タリスマン)損壊で済んだようだ。


「こいつのお陰だ」


 俺は頭に乗っているファーレに手を伸ばし首の辺りを撫でる。すると自ら擦り寄り俺の指に首筋を擦り付けて来た。


「神獣で我の居場所を特定するとはな。だが、気を付けろ。ライコウはヤバい」


 少々声を潜めて来た。


「やっぱライコウは強いのか」

「その様子だと気付いていたか」

「紫電一閃とやらで全試合に勝ち、その紫電一閃は、ギリギリ見えたって感じだしな」

「見えたってだけで、てーしたもんだ。今年は恐らくあいつが四天王最強だ」

「今年は?」

「去年はデメックが優勝したからな」

「なるほど」

「ライコウは異端だ」


 フォックスが難しい顔で語る。アフロで難しい顔とか笑えるから止めて。どんな顔もギャグにしか思えないのは俺だけかな?


「異端? 獣王国に反意でも?」

「あ、いやいや違う違う。獣王様へ忠誠が偽りとか四天王としての責務を果たさないとか、そう言う意味じゃないぞ」

「じゃあ、どう言う意味だ?」

「戦いに対する考えってのかな? 我や他の四天王の知らぬ理論とやら持ち出して研究して、今の強さになった。しかも四天王の中で一番若いのにだ」

「なるほど」


 獣人は見た目で年齢分からんのよね。このアフロもまさか三十後半とは思わなかったし。ライコウが若いって言われもピンと来ない。

 まあ獣耳が付いた人族って感じで、別に毛むくじゃらって訳じゃないんだが――獣化しなければ――、人族より精根な感じなんだよね。武人ならそれは顕著だ。


「我に勝ったのだ。どうせなら優勝しろよ」


 潜めてた声を通常の声量に戻し、俺の肩をバシバシ叩いて来た。いてぇーよ!!

 フォックスと話が終わると俺はVIP席に向かう。


「お疲れさぁ」

「お疲れ様です」

「またまた勝利だな。褒めてやるぞ」


 皆が出迎えてくれた。


「正直疲れた。闘気を消費し過ぎた」

「ブリザー・ファングを連続使用してるからさぁ」

「これで負けたらファーレに力を借りた意味がないですがね」

「それでも勝ちは勝ちだ」

「さて、Cブロック会場に行くか」


 Cブロック勝者とDブロック勝者の対戦がCブロックの武舞台で行われる。つまり決勝の相手が決まるわけだな。

 そんな訳でCブロック会場に向かう。俺達が到着を見計らったのかのように対戦が行われる。いや、正確には時間だな。B~Cブロック決勝でもそうだったが、前の試合が終わってからニ十分後に試合が開始されるようになっている。

 つまり移動も考慮された時間だな。それにCブロック勝者メテストとDブロック勝者ライコウも恐らく俺の試合を見ている。時間をずらさないと俺の試合を見た後に自分達の試合が出来ないしな。

 去年はデメックが優勝したらしいが、それを破った俺は大番狂わせを行った事になる。入念にチェックさせれていそうだ。


『四天王通しの対戦始まろうとしています。今大会は、人族が四天王を破り四天王通しの対戦がこれだけになってしまいました。故に注目度ナンバーワンの対戦カードではないでしょうか? 私も楽しみですね。ぐへへひひ……』


 だから、女にあるまじき笑い方じゃないのか? 口から変な汁出ていないか?


『ぐびぐび……では、まず土の四天王メテスト様。土だけに槌を使う……なんちゃって。ぐひひひ……』


 つまらないし、笑い方がマジでヤバい。


『メテスト様の肉体美は最高に良いですね。ぅうう、鼻血が……ぐひひひ』


 まあ確かにマッチョ系だな。猫なのに。そして何故かボウズ。


『では、入場をお願いします。続きまして風の四天王ライコウ様。四天王最年少にして最強と噂される方です。引き締まった細身の肉体が……ぐひひべべ。堪りません。また鼻血が……』


 肉体の紹介しかできんのか? まあ最年少で最強とか言ってるが、そっちがオマケに聞こえてしまうのは気のせいかな? 気のせいかな?


『ぐへへぐびび……では、ライコウ様。入場をお願いします。それでは四天王最年長と最年少の対決。そして、四天王随一のマッチョな肉体と引き締まった肉体の対決!』


 いや、最年長と最年少は良いとして、肉体はどうでも良いだろ? 年齢の方がマジでオマケに聞こえるっつーの。


『では、始めっ!!』


「ヒョロっちぃってよ」

「そりゃ先輩と比べたら、大半の人がヒョロくなると思うけど」


 まずは言葉で軽いジャブか? ニヤニヤ笑い揶揄うメテスト。先輩と呼んでるくらいだし、開幕速攻紫電一閃とやらはしないか。


「ところで先制を貰って良いか?」

「どうぞ」


 ライコウの紫電一閃は、先制だと有利だと言うのに、先制を渡すのか。それだけ自信があるのか。それとも先輩を立ててるのか。いずれにしろメテストから攻撃が開始するらしい。


「じゃあ有難く。<鉄塊壁魔法(アイアン・ウォール)>」


 メテストとライコウの間に鉄の壁が出来る。これってあれか? この壁で自分の方へ来られなくして、その間に土になろうと言うのか? フォックスが俺にやったように。


「ほ~。岩石魔法を詠唱破棄ですか。やりますね」


 横でキアラが感嘆の声を漏らす。

 岩石魔法って土系の上位だよな。それを詠唱破棄って相当レベル高いんじゃね?


「<紫電一閃>」


 来た! ライコウの十八番紫電一閃だ。


 スッパーンっ!!


 一瞬だった。雷が走ったかのように鉄壁をすり抜けた。いや、斬り咲いた。が、早過ぎて最初はすり抜けたようにしか見えない。後から斬れる音が響く。

 二回目だけはあり、最初よりは確り見れたけど、やはり速い。俺の最大スピードより速いかもしれない。

 で、メテストだが、既にいなかった。ライコウが鉄壁を斬り捨てている間に空に飛んでいたからだ。


「<メテオストライクっ!!>」


 メテストの槌が一回り二回り三回り大きくなり、炎を纏ったかのようになり、その槌を振り下ろす。


 ズッドォォォォオオオンっ!!


 大振りなだけはあり、これは簡単に躱され武舞台が破壊される。が、問題はここからだ。メテオストライクは、槌で打ち付けた直後、無数の隕石が落ちて来る。全てを躱すのは至難の業だ。


「<紫電一閃……」


 先程より深く集中しているのか、目を閉じ静かに技名を口にする。だが動かない。


「連閃ッッ!!>」


 カッと目を開け鋭く声を発すると動き出した。紫電一閃は今まで見た所、雷を纏って直線に超スピードで移動すると言った技だ。その際に刀で障害物を斬り捨ててはいるが。

 しかし、連閃と言った通り連続使用のようだ。直線に走り、止まったと思えば違う角度に一直線に突き進む。そして、また止まったら違う角度に突き進む。

 そうして隕石群を躱し躱し躱し、時に雷を纏った刀で斬り捨て。それが暫く繰り返された。


「<全てを崩壊させし、無窮の揺れ。我が敵を呑み、虚無の果てに誘え。驀進し大地を狂えッ! >」


 メテストは、ただライコウを見てるだけではなく長い詠唱を行う。


「ま、まさか土壌魔法ですか!?」

「間違いないのだ!!」


 キアラとラキアが泡を食ったように立ち上がる。土壌魔法? 何だそれは? 聞いた事ないな。字面から推測するに土系の上位である岩石魔法の更に上って事か?


「<狂気地震魔法(クレイジー・クエイク)>」


 キアラ達に聞く暇も与えず魔法が発動される。


 ドォォォォォォォォォォオオオオオオオオっっ!!!!!


 地面が狂ったように暴れる。地震、地割れ、果ては杭のように盛り上がり、その全てがライコウを襲う。

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