EP.28 風の四天王がヤバそうでした
開始早々エルダーが動き手に持つ斧を振り上げながら特攻した。
四天王の一人であるメテストは、高く飛び上がる事で距離を取る。
「はぁぁぁっ!!」
ドコンドコンドコンっ!!
メテストが裂帛の声を上げると手に持つ槌が三段階に分けて大きくなった。もう手に持てる大きさとは思えない。打ち付ける面が直径2mにはなっている。
「<メテオ・ストライクっ!!>」
その槌を振り下ろす。その際にまるで隕石が落ちて来たかのような炎が纏わり付いている。
それだけではない遅れて、空から隕石が降り注ぐ。エーコの最強魔法である隕石魔法の下位版と言うべきか。それでも十分凶悪だ。
ズッドォォォォンっ!!
メテストが槌を打ち付け、その部分だけ武舞台が弾け飛ぶ。しかし、大振りだったが故にエルダーには躱されていた。が、遅れて降り注いで隕石群にやられ身代り護符が損壊。
この四天王の場合、隕石を防ぐの勝利の鍵か? 光陽ノ影でバリアを張る? いや、それ以前に空中から放つなら一緒に空中に上がれば良い? うん、土の四天王は攻略出来そうだな。
「今の空魔法と土魔法の複合ですね」
と、キアラが言う。複合? それに空魔法とはなんぞ?
「空魔法って何だ?」
「隕石とか太陽光による攻撃を行う属性ですね。滅多に使用者はいませんが」
「それって天空魔法?」
「はい。空魔法の上位が天空魔法です。しかし、ウチは天空魔法に到達している者を見た事がありませんね」
「俺は二人知ってるけど。もしこっちの世界に連れて来れれば習得しそうなのがもう一人いるな」
「アークが使えないのに偉そうに言う事ではありませんよ」
「うるせー」
キアラなんかに正論を言われた。これは羽根を……、
「触らせませんよ」
やんわり俺の手を弾かれた。
「で、複合とは」
「恐らくですが、土魔法で槌を巨大にしました。これはラーニャもやっていましたね。また重力を操作する事により隕石の落下スピードを速くしたのでしょう」
「そこまで凶悪だったのか」
「だが、飛べる主様がすれば対処は簡単ではないか?」
「まぁな」
ラキアに言われ肯定する。先程シミュレートしてたしな。
「さぁDブロック会場に行くさぁ」
ナターシャに促され移動を開始する。いつまでも此処に残っても仕方ないしな。さて決勝の相手だが、このメテストか、Dブロック勝者のどちらかになるので確り見よう。
そんな訳でDブロックのVIP席にやって来た。
『お待たせしました。只今A~Cブロックの全ての試合が終わった事を確認。Dブロック決勝戦を開始したいと思います。まずは前大会もブロック決勝まで進み四天王一人、メテスト様と善戦した黒猫族のクロネコです。今回も善戦するか!? 注目です。では入場してください』
まんま黒猫の獣人で名前までクロネコね。獲物はナイフの二刀流と。メテストは、こう言ってはなんだが、一番遅そうなので、スピード主体の装備をしているクロネコには有利な戦いだったのだろう。それ故に善戦出来たのかも。
『続けてレオン獣王国が誇る我等が風の四天王、白虎族のライコウ・グリンブラットです。では、入場してください』
入場して来たライコウとやらは、スポーツ刈りと言うこの世界では、あまり見ない髪型をしていた。それと獲物なのだが……、
「ほ~……刀か」
「アークと似た形のものですね」
「実際には刀を短くしたのが俺の小太刀だな」
「聖人が好む刀をケモノ風情が持ってるのは引っ掛かるのだな? 主様よ」
「そうなのかい?」
ラキアとナターシャに問われる。
「引っ掛かるって程じゃないよ。ただ単に珍しいだけだ。今まで見た獣人で刀系を使ってる奴はいなかったからな」
「確かに珍しいさぁ」
『では、試合開始』
と、話してる間に試合開始の合図が入った。
「<紫電一閃っ!>」
「がはっ!」
は?
「何だ今の?」
思わず立ち上がって見てしまう。一瞬だったからだ。俺でもギリギリ追える速さで、クロネコの横を通り抜けてナイフ二振りを破壊。そのまま身代り護符が損壊するダメージを与えた。
「見えなかったさぁ」
「はい。ウチにも見えませんでした」
「我にも見えんかった」
全員見えなかったようだ。俺もギリギリだったしな。
『身代り護符の損壊を確認。勝者ライコウ様です。またまた一撃でした。目にも止まらぬ一撃で全試合勝ち上がって来ました』
全部あれで勝って来たのか?
「まずいな」
「どうしたんだい?」
「アークにも見えませんでした?」
「主様なら同じ速さが出せると思うがな」
「違う。確かにはっきり見えなかったが、問題はそこじゃない」
そう問題はそこじゃないのだ。
「今までの四天王は。それぞれの属性にちなんだ技を持っていた。ここまでは良いか?」
「そうだねぇ」
「えぇ」
「それが?」
「メテストは、土と空の複合らしいけどこれは土の属性を確り使ってたって事だ。複合と言われ納得したが、俺が戦ったデメックは水と氷の複合だ」
「言われればそうだねぇ」
「そうでしたね」
「そうだったな」
全員頷く。
「キアラとラキアが居なかったけど炎の四天王は、恐らく炎と幻の複合。つまりどの四天王は複合とは言え、それぞれ自分が司る属性を使っているんだ」
「もしかしてライコウにはそれがないってのかい?」
「そうだ」
ナターシャの言葉に頷く。
「ライコウは風の四天王だ。なら風が絡んだ技を使う筈だ。もしくは風と何かの複合。しかし、今風と何かの複合だったか?」
「いえ、雷だけだったと思います。ウチには目にも止まらぬ速さでしたが、残留した魔法は雷だけでした」
「つまり主様は、風にちなんだ技を隠した上で、この者はこんなにも強いと言いたいのか?」
「そうだ。ラキアの言う通り風の技を出していない。もしかしたら奥の手、切り札の類かもしれない。そんなもの前情報も無しに出されたら厳しいだろうな。決勝に奴が来たら要注意だ」
ライコウと戦うなら慎重に対応しようと俺は心に決めた。
まあその前にアフロ狐のフォックスが相手なんだけど。なので、Aブロック会場に戻った。Aブロック勝者とBブロック勝者の対戦はAブロックにやる事になっている。
「頼むぞ、ファーレ。フォックスに勝てるかどうかは、ファーレに掛かっている」
「御心のままに。お任せください」
『さぁ準決勝が間もなく開始されます。まずはアーク選手。今大会唯一四天王を倒した猛者。それが認められたのか、今回のオッズは3倍と普通に戻っております。それでも3倍かと思うかもしれませんが、此処が獣王国なので仕方ありません』
なんかフォローされているし。前司会者がオッズがどうのとか言ってたから、この司会者もオッズの話をしないといけなくなったのかね?
『そんなアーク選手ですが、炎の四天王とどう戦うのか注目です。それではアーク選手、出場してください』
そう言われたので武舞台に上がる。ファーレは俺の頭の上だ。
もうアウェイ感はない。俺に野次を飛ばす者はいなくなっていた。
『おや、今回アーク選手の頭の上に……これは神獣ですか? 魔獣使役のスキルがあれば使役はありと言うルールでしたが、まさか神獣が出て来るとはー!! これはアーク選手の隠し玉なのでしょうか?』
正解。フォックス戦専用の隠し玉だ。
『おっとこれでは私まで片方ばかり肩入れしている感じになってしまいますね。失礼しました。では、次に行きましょう。我等が獣王国が誇る四天王の一人であらせられるフォックス・レッドブラット様、入場をお願いします』
アフロ狐のフォックスが武舞台に上がって来た。