EP.27 他ブロックを観戦しました
『え~~……デメック様の身代り護符の損壊を確認。勝者アーク選手』
私情挟み過ぎだろ。テンション駄々下がりじゃねぇか。
『見所の一切無いつまらない試合でしたね。と言うか、今度はどんな不正をしたのやら』
おいおい不正まで言い出したぞ、コイツは。
『それにしてもデメック様が黒焦げです。容赦無いですね。やり過ぎとは思わないのですかね? 人でなしとは、まさにこの事ですね』
どこまでケチ付けるんだよ?
『まぁ勝ちは勝ちで……ふぎゃぼあぁっ!!』
どうした?
『同僚が大変失礼致しました』
声が変わった。司会者がいる建物を見ると女猫獣人に変わってる。と言うか男猫獣人が血だらけだ。
『あんた首ね。獣王様に恥を搔かせるじゃないさ』
声入ってるぞ。
『おっと失礼しました。オホホホ……本来なら公平な実況をしないといけないのですが、同僚は私情を挟み、片方を肩入れした実況をしました。大変失礼しました。謝罪はここまでにして。素晴らしい試合でした。アーク選手がなんと獣王国が誇る水の四天王を下しました。準決勝にも期待ですっ!!』
今度はまともに司会をしてくれそうだ。
まあそれはともかく準決勝に当たる相手と決勝に当たるかもしれない相手を見に行かないとな。
そんな訳でナターシャ達と合流する。しかし……、
「あれ? ラキアは?」
「ブロック決勝は賭博は無しと言う話でしたのに愚妹は一口購入してしまいました」
キアラが教えてくれる。たった一人俺に賭けた奴がいるとか司会の人が言っていたがラキアだったのかよ。ブロック決勝では賞金貰えるし荒稼ぎする必要無いと思ったんだけどな。
「それにより一人しかビビリアークに賭けていなかったので目立ってしまい、ケモノ共に連れて行かれました」
ケモノ共とかひでぇ言い方だな。まあ俺もビビリアークとか言われてるけど。
「助けなくて良いの?」
「アレも周りを巻き込まないように考えて着いて行ったようです。なので、お仕置きが終わった頃を見図って憲兵を連れて行きます」
キアラも対外ひでぇな。お仕置きする時間を与えるのかよ。まあラキアはキアラのように沸点低くくないから、半死半生状態にはしないと思うけど。
「じゃあそっちはキアラに任せるな。俺とナターシャとファーレは、Bブロック決勝でも見に行くか」
「分かりました」
「分かったさぁ」
「御心のままに」
そんな訳でBブロック会場に向かう。その前にAブロック会場の受付の人に身代り護符を預ける。代わりに護符を貰った。
これはVIP席で観戦する為の目印。これを身に付けていればBブロック会場の係員が案内してくれると言う訳だ。
ちなみにだがブロック決勝まで進むと二回まで身代り護符を外して良いってルールだが、俺には半分関係無い。一度外せば事足りる。
ブロック決勝は、A~Dと順番に試合が行われる。俺、と言うかAブロック決勝に進んだ者は、試合後外し、B~Dを観戦する。そしてBブロック勝者と対戦する為にもう一度身代り護符を身に付ける。
そして、それが終わると身代り護符は回収され、明日の決勝の際にまた渡される。つまり、回収された後、Cブロック勝者とDブロック勝者の対戦を見に行けば良いだけだ。
しかし例えばBブロック決勝まで進んだ者は、一度身代り護符を外しAブロック決勝戦を観戦。その後、身代り護符を付けてBブロック決勝戦を行う。
再び身代り護符を外しCブロックとDブロックの決勝戦を観戦。身代り護符を付けてAブロック勝者と対戦と言う流れで二度外さないと他のブロックの対戦を見れないと言う訳だ。
少々めんどくさいルールだが、4ブロックもの観戦を記録する為の対処のようだ。観戦料は重要なレオン獣王国の収入源なのだから。
とは言え、観戦料はブロック決勝に進んだ時点で免除なのだが、それまでがブロックを跨いでまで観戦されると精査が大変になるとか。それに身代り護符の有無が勝敗に影響するのも理由に一つだ。
まあそんな訳でBブロックの建物の中にあるVIP席に向かう。Aブロックと同じでお茶とちょっとしたつまみがある。
Bブロックでは、Aブロックの俺とデメックの対戦が終わるのを待っていたようで直ぐに開始するよいうだ。対戦は四天王の一人、紅狐族のフォックス・レッドブラットやらとコビー族のチョメだ。
コビー族って初めて見たな。普通の人族より身長が低いのが特徴で、魔獣使役のスキルを持ってる事が多いとか本で読んだな。勿論上位の霊獣使役や神獣使役を持ってる者もいるとか。
フォックスは何故か頭がアフロだ。この世界にアフロなんて髪型があったんだな。まあそれはともかく……、
「あれアリなのか?」
「魔獣使役のスキルで使役してるならアリなんじゃないかい?」
チョメとやらが、オーガの上位種のオーガ・ナイトを五体連れている。
「なら、俺もファーレを連れて出ても良かったかもな」
「主上が望むのであれば妾は構わぬが、妾の力ではお役に立てないかと思われます」
まあそうだな。生後四ヶ月だもんな。
『それではBブロック決勝、始めっ!!』
アナウンスが入り両者動き出す。と、思いきや動いたのはオーガ・ナイトだ。肉壁にする気か?
「<陽炎漣衝っ!!>」
対するフォックスは槍を突き出し叫ぶ。すると陽炎の如く人影が地面から這い出て来た。それがフォックスと丸っきり同じ姿になる。
それが本人も含めオーガ・ナイトと同じ五人。そしてそれぞれオーガ・ナイトを槍で突き刺す。
つまり実体を持った分身のような感じか。
「そこ!」
オーガ・ナイトを肉壁にしていたチョメが弓を放つ。矢はフォックスに当たるが、それが蜃気楼の如く揺らめいて消える。つまり実体分身した時に本人と分身の位置を入れ替えたと言う事か。厄介だな。
「<共鳴爆破魔法>」
ドカドカドカドカドカーン……っ!!
赤い色の玉がシャボン玉のように出て来て、それが一気に爆発した。恐ろしい魔法だな。恐らく紅蓮魔法クラス。当然ながらチョメの身代り護符が損壊した。
『やはり勝者はこの方だーっ!! 炎の四天王、フォックス様!! 準決勝進出です』
次の相手はコイツか。
「ファーレ、炎魔法耐性が高いよな?」
「はい」
「今の魔法に耐えられそうか?」
「残念ながら今は、まだ一度だけです」
「一度でも耐えられれば十分だ。次の試合は出てくれ」
「御心のままに。遂に妾も主上のお役に立てるのですね」
心なしかファーレが喜んでいるな。たぶんこのフォックスとの試合ではファーレの力が必要だ。
まあ必要になる場面まで耐えられるかが問題なんだけど。できる限り俺が守るが、油断はできない。攻撃を受けるかもしれないしな。
「さっきの魔法をキアラに聞いておきたかったけど戻って来なかったな」
「キアラは炎属性が得意だしねぇ」
「あれは紅蓮魔法です」
炎魔法について言及すると、ファーレが教えてくれた。
「上位を詠唱破棄か」
「特殊な称号持ちならまだ良いのですが、下手すると獄炎魔法まで習得してるかもしれまぬ」
獄炎魔法って、極稀に上位の紅蓮魔法を越えて更に上のスキルに行けるとか。となると紅蓮魔法を詠唱破棄でポンポン使って来るかもな。厄介な。
「まあやれるだけやるだけな。さて、Cブロックの観戦でも行くか」
「だねぇ」
そんな訳でCブロック会場のVIP席に向かう。が、まだ試合が続いており、ブロック決勝まで進んでいないらしい。その場合は待たされる事になる。ブロック決勝以外は見せられないと言うのがルールだしな。公正を期す為のものだから仕方ない。
待つ事暫くしてVIP席に係員が案内してくれた。部屋の感じや出してるお茶やつまみは同じようだな。
ちなみに待ってる間にキアラとラキアが合流した。今頃おせぇよと思った。フォックスとらやら魔法の解説して欲しかったと思うのは贅沢かな。
『Cブロック決勝戦を始めたいと思います。まずは今大会唯一のブロック決勝進出者のドワーフ族、エルダー選手。このエルダー選手の振るう斧が凄まじく、武舞台に当たってもいないのに風圧だけで武舞台が壊れる程の怪力の持ち主です。では、入場してください』
エルダードワーフじゃないエルダーさん……なんか可哀想な名前。って言うかブロック決勝進出唯一のって、八人しか進出できないんだから、そんな大げさに言わなくても良いと思うけどな。
『続けて、我等が獣王国が誇る四天王が一人、茶猫族のメテスト・イエロブラット様です。メテスト様も四天王一の怪力と言われています。怪力通しの試合です。さぁどうなるのか~。私、興奮で鼻血が止まりません。ぐびべべべ……』
大丈夫か? Cブロックの司会の人は女の人のようだけど、女としては有り得ない笑い方していないか?
どうでも良い事だが、メテストとやらはボウズ頭なのだな。
『ぐべべびび……あ~鼻血が止まらん。ぐひひげぇへへ……失礼しました。それでは試合開始!』
酷い始まり方だ。