EP.22 遂に四天王の一人が登場しました
『お待たせしました。第一回戦のメインイベント。第八試合にはこのお方が登場します。レオン獣王国が誇る四天王!! その一人、デメック=ブルーブラット様っっ!!!』
司会の人のボルテージが上がって行く。
四天王とやらがどれ程か知らんが、Aブロックで一番の強敵と思われた奴だ。まあ今じゃスカルとやらが現れたので、どっちが俺とぶつかるかは分からないが。
狼の獣人デメックとやらは、切れ長の目をしており、青い色の髪を首の後ろで束ねている。
獲物は双剣二振りか。対する緑の毛皮をした狐獣人は長めの剣を構えている。と言うか今度は蕎麦ですか!?
『それでは第八試合始めっ!!』
真っ先に狐獣人が動き出した。とは言え、単純な特攻だ。剣を振り上げ迫る。
「はぁぁぁ!」
「ふっ!」
それを確実に捌く。
狐獣人は、追撃を掛けるように横一文字に剣を振る。しかし、それも確実に受け流す。
なんと言うか地味だ。デメックとやらの剣は堅実で実直差を感じる。いや、違うな。そう見せかけているのかもしれない。
地味に対処し、本来の力を隠す。そんな戦い方だ。
ダメだ。参考にならん。デメックとやらと当たった時のシミュレートをしようと思ったが全くできん。
「ならば! がぁあああ!!」
はい、お決まりの獣化ですね。狐獣人が獣化を開始する。
そこでデメックが動く。今まで受けに徹していたのにいきなり動き出したのだ。
「<雪月水華>」
詩を謡うかのように呟かれる。
まるで花が散ったかのような美しい光景だ。まあ花は花でも雪の花なので、その花は相手の全身を凍らせた。
「獣化は獣人の切り札だが、隙が大きくなります。その隙を作らずに獣化する事を覚えてから出直してください」
穏やかに囁かれた瞬間、氷が砕ける。
死んではいない。五体満足だ。が、身代り護符が砕けた。
『流石は四天王!!! やはり……や・は・り圧倒的です。今大会でこの四天王を止められる者はいるのかーっっ!!! おっと熱くなってしまいすみません。まずは勝敗を言わないといけなかったですね。勝者は四天王デメック様だーーーっ!!!!』
テンション上がりっぱなしだな、司会の人。
「じゃあそろそろ控室に行って来るわ」
「頑張るさぁ」
「次はどんな外道っぷりの戦いをするのですか?」
「主様よ、応援してやるのだ」
「主上、お気を付けて」
皆に声を掛けられ控室の方へ向かう。
「こんなの間違っている!!」
「知らねぇよ」
「何でこんな事にスカルが付き合わないといけないの!?」
「仕方ないだろ!」
何か男女が言い合ってるのが聞こえる。痴話喧嘩か?
「私がお父様に掛け合うわ」
「だから、俺様がやったって証拠が出たんだ。いくら言っても無駄だ」
「だけど、あの日のアリバイは確りあるでしょう?」
「ねぇよ」
ん? 証拠? アリバイ? 話が不穏だな。このままノコノコ出て行って目の前を通るのは気が引けるな。かと言って、このまま盗み聞きするのもどうかと思うけど。
でもなぁ、あの二人がいるとこを通らないと控室に行けないんだよな。
「あの日、私に付き合って寅の道場に行ったじゃない」
「ああ、確かに目の前まで行ったさ。てめぇ一人じゃ心配だしな」
「なら……」
「だが、入口までだ。中には入ってねぇ」
「それでも十分なアリバイよ!」
「転移魔法があんだろ」
「スカルには使えない」
「使える仲間がいるかもしれない。だから言ってるっつんだ! 無駄だって」
モメてるのは、あの未知の力を使ったスカルか。何をやらかしたんだか。いや、何もしていないのに疑われたのだろう。
「でも、何故何も言わないのよ!?」
「寅の道場へ行くのは禁止されている。お嬢は特にそうだ。だからお嬢がそんなとこ行ってたなんて言える訳ないだろ!?」
「関係ないわ! 勝手にお父様と寅の道場の師範が仲悪いだけだわ。私まで制限される謂われはないわよ」
「ともかく、俺様は破門されたんだ。もう戻れない」
「だから、それを撤回させる為に大会に出たって?」
「そうだ」
「四位以内に入るなんて出来ると思ってるの? スカルが」
「無理だろうな」
「だったら!!」
「それでも他に道はないんだ。お嬢、いい加減諦めてくれ」
「ねぇ、何でこんな時までお嬢なの? 普通に名前で呼んで。今までだって呼んでくれた事なかったのに」
「……呼ばね」
そっぽ向きボソっと呟く。俺の耳にギリギリ聞こえるくらいの声量だ。この暗殺者の肉体じゃなかったら聞こえなかっただろうな。いや、聞こえたから何だって話だけど。
「で、さっきから聞き耳立ててるのは誰だ?」
え? 気付かれていた? 仕方ないので顔を出す。
「あ、悪い。通り掛かったら深刻な話をしていたんで、出るに出られなかったんだ」
「てめぇは、俺様と同じAブロックの人族か」
「一つ聞いて良いか?」
「何だ?」
「お前、転移者か?」
そう問い掛けるとスカルは一瞬目を丸くした。
「ああ、そうだっつたら?」
「いきなり会ったばかりで何言ってるんだと思うかもしれないし、お前に何が出来るんだと思うかもしれない」
「回りくどいな。何が言いてぇんだ?」
「もし、俺がお前に勝ち四位以内に入ったら、手伝おうか? 尤も何の問題を抱えてるのか知らんけど」
「はぁ!? 何を手伝うってんだ?」
スカルが呆れた声を出し怪訝そうな顔をした。
「今、抱えてる問題とか? 今、聞こえた限りだと道場とやらに戻れるようにとかになるのかな?」
「何でてめぇが手伝うっつう話になるんだ?」
「あ~、同じ転移者の好ってやつ? まあ考えておいてくれ。尤もそれ以前の話で、俺がお前に勝てるとは思えないんだけどな」
なんせ未知の力を秘めてるしな。自虐的に笑い肩を竦めてしまう。
「ああ。俺様が負けるような事があれば考えてやるよ」
期待していないが好きにしろと言わんばかりに投げやりに言って来る。
「じゃあ、そう言う事で」
そう言って、俺は二人の前を通り控室に向かった。
前を通った時に見た女の子は、赤い髪の三つ編みツインテールに赤目で眼鏡をしている。なんか委員長って感じだな。年の頃はスカルと同じくらいか。
そして何よりもデカい! めっちゃデカい! ナターシャよりデカいのでは? 何がって?
二つのお山に決まっているっしょ。Hカップくらいあるんじゃないか?