EP.01 ダームエル
FFO時代の話は基本ダーク視点で、ちょいちょいアークの感想が入ると言うものですが、今回だけあえて三人称一元視点にしました
アークが、アークスの体を乗っ取る十七年前に遡る。
アークスが、家で両親を惨殺した所を、玄関開けっぱなしだったので、意味深な男に見られていた。アークスは気配で気付いていたが、害はないと放置。しかし……、
「くくく……見てたぜ」
家の外に出ると男は、笑いながら話し掛けて来た。
「なあお前さん、俺と組まないか?」
「どういう意味だ? 組むって何だ?」
アークスは、五歳から一人で生きて来た。よって当たり前な事や常識を知らない。組むと言う言葉も知らず首を傾げる。
「お前さん、さっきの話から察するに捨てられて常識……いや、色々な事を知らずに生きて来たんじゃないか?」
「そうかもな。俺は五歳の時に森に置き去りにされ、三年かけてやっと帰って来たしな」
「なら、俺がい色々教えてやるぜ」
アークスは無言でナイフを向けた。
「待った待った! いきなりそんな事言われても信用できないってんだろ?」
「だったら?」
「まずは銀行を教えてやる。今奪った金を置いておける場所だ。そうすればお前は俺に取られる物がないから損はしないだろ?」
「……命」
「いらねーよ。お前さんを殺して何の特になるんだ?」
「わかった。じゃあ教えてくれ」
こうしてアークスはこの男に着いて行く事にした。
男はまず服を買って来た。
「盗んだのか?」
「お前さんと一緒にするな! 金さえあれば大抵の物は買える。これは俺からプレゼントだ」
「何の? 俺の誕生日はとっくに過ぎてる」
「何でも良いよ。俺達の出会い記念とかで。それより早く着替えな。返り血がひでぇぞ。これじゃあ銀行に行けない」
「わかった」
言われた通り着替えて、銀行に案内して貰った。家で足と腕を斬り裂いたナニカから貰ったお金を預ける。
「そのカード……えっと銀行で貰った四角い板無くすなよ?」
アークスにわかるように話してくれる。先程も常識とか意味のわからない言葉を言っていたが言い直してくれていた。
「わかった」
「それがあればお金を下ろせる……返して貰える。で、例えば俺がそれを盗んでもお金は手に入らないから安心しろ」
「ああ」
「じゃあメシでも食いに行こう。これも盗むじゃないからな? 今回は俺が出してやる」
「今回は?」
妙な言い回しにアークスは首を傾げる。
「次回があるなら、お前さんも出してくれって意味だ。勿論俺が気に入らないなら今回限りでも良いぜ」
「そうか」
そうしてアークスは、この男に連れられ、食堂に入った。
「森に置き去りなったって言ってたが、どうやって帰って来たんだ? 色々教えるにもお前さんがどこまで知ってるか知りたいからな」
アークスは食事を摂りながら語った。
「……だいぶ偏ってるな」
ポツリそう漏らす。
「で、さっき組まないかって言ったけど、つまり一緒に仕事しないかって事だ。どうだ?」
「必要無い。今まで一人で問題なかった」
「かもな。でも毎回危険だろ?」
「気にしない」
「例えば毎回毎回追われたり危険があるのと、一回だけ危険な事しただけで、一週間はメシ食えるとしたらどっちが良い?」
「一回だな」
「だろ?」
得意げな顔する男。
だけどその為に、この見知らぬ男と仕事をするのか? と、アークスは内心嫌悪感が出ていた。
「それに町を追い出されたのだろ? そのうちどこの町にも入れなくなるぞ? 良いのかそれで?」
「良くない」
「だろ? まあ試しに一度やってみようぜ」
「一度だけな」
一度だけなら悪くない、っと思い直す。
「よし決まりだ。俺はダームエル。お前さんは?」
「アークス=アローラ」
「じゃあアークス。最初に言っておく。もう殺しや盗みはするな。その場だけは良いがあとで面倒になる」
「わかった」
「仕事では殺しや盗みをしたりするが、さっき言った通り一週間はメシ食えたりするから毎回毎回しなくて良いぞ」
「ああ」
「そんじゃメシ食ったらお前の武器を見繕ってやる」
武器? と、再び首を傾げるアークス。
「いるのか?」
「そりゃ仕事によっては殺しとかあるからな。アークスはナイフで毎回殺すのか?」
「問題無い」
「まぁお前さんの腕なら問題ないかもな。でも覚えておきな。仕事するなら、それに見合うものを先に用意するものだ」
「そういうものか」
「そういうものだ」
そうして今度は、武器屋に連れて行かれた。
とりあえず言う事聞いておくが、こいつ何考えてるんだ? 俺のようなガキを連れ回して仕事も一緒にするとか言ってるし。と、内心では警戒を強めるアークス
「お前さんは、俺の直感だが小太刀が良さそうだ。森で気配察知を身に着け、逃げる為に俊敏さを身に着けた。きっと小太刀を活かせるだろう」
「何故二振り?」
「予備にしても良いし、二刀流にしても良い。好きにしな」
「二刀流? 何だそれ?」
「右手と左手両方に一振りづつ持つんだ」
ダームエルは色々教えた。最初に言ってた常識というのを教えてくれるらしい。
「で、仕事は?」
「俺の護衛?」
「護衛って何だ?」
「俺を守れば良いんだよ」
「ダームエルは剣が腰にあるが使えないのか?」
「使えるが、たぶんアークスより弱い」
《何言ってるんだ? ステータス的にかなりお前、強ぇじゃねぇか》
名前:アークス=アローラ
年齢:八歳
レベル:7
クラス:無し
称号:殺人鬼
HP:320
MP:14
力:90
魔力:4
体力:38
俊敏:240
スキル:気配察知Lv5、隠密Lv4、ナイフ使いLv3、小太刀使いLv1、投擲Lv2
プレイヤー補助スキル:鑑定
装備:鉄の小太刀 (攻撃力200、俊敏50)
上等な服 (防御力80)
上等な靴 (防御力50、俊敏10)
名前:ダームエル
年齢:十五歳
レベル:20
クラス:剣士
称号:子供の守護神
HP:2000
MP:0
力:300
魔力:0
体力:330
俊敏:120
スキル:剣使いLv5、鍵開けLv6、ワナ解除Lv6
装備:鋼の剣 (攻撃力500、防御100)
皮の鎧 (防御力200)
手甲 (防御力防御力60)
上等な靴 (防御力50、俊敏10)
「そうか」
「で、今日の夜、とある貴族の屋敷に忍び込む」
貴族? 忍び込む? またわからない言葉だと、首を傾げると、ダームエルは詳しく教えてくれた。
つまり、金持ってる人の家に無断でこっそり入りお金を盗み。その時に危険があればアークスはダームエルを守ると言う仕事だ。
「夜中の仕事だが眠くなったりしないか?」
「問題無い。今まで寝ない時もあった」
「OK……って、わかったって意味な。じゃあ今晩俺達の初仕事だ」
そうして貴族の屋敷に忍び込んだ。
「待て」
「どうしたアークス?」
「そっちの方角から誰か近付いて来てる。殺すか?」
「凄いなお前さん。殺るのは、最終手段だ。なるべく見つからないように盗み出す。もしどうしても殺らないと盗めない時は殺すという事で」
「わかった」
金庫……お金が大量に入ってる箱らしい。
そうしてアークスの気配察知を利用し、人に見つからず金庫がある部屋に来た。
「これ開けるのに時間がかかる。人が来たら教えてくれ」
「わかった」
ダームエルが金庫に付いているダイヤルをカチカチ動かし始めた。
「来た」
「まだ時間かかるな。殺してくれ。なるべく相手に騒がれる前にやってくれ」
「わかった」
プッシューンっ!
言われた通りアークスは、その部屋に来た者が部屋に入った瞬間死角から首を斬り裂いた。
「アークス、凄いな。本当に有無言わさずやっちまうとは」
「有無?」
「一言も喋らせないで……じゃあその調子で頼む。こっちはもう直ぐ終わる」
「わかった」
その後、二人程殺した。
「よし!終わった。アークス逃げるぞ。なるべく人と会わないルート……えっと道を辿って外に出てくれ」
「わかった」
言われた通りアークスは、そそくさと気配がしない方へ走った。しかし……、
「ちょっと待てっ!」
止めらてしまう。
「何だ?」
「あくまでアークスは俺の護衛な。俺より速く行ったらダメだ。俺に合わせて走れ」
「わかった」
そうしてアークス達は屋敷から出た。ダームエルは真っ直ぐロータスの町の宿屋に向かう。
「よし!今日の稼ぎは……」
ダームエルが盗み出したのを調べ出した。
アークスから見ればただのキラキラ光る石だ。それがゴロゴロある。何だこれ?
「換金すれば20000Gだな」
「換金?」
「この宝石……石だな。この石をお金に変える事だ」
「そうか」
「じゃ半分分け前な。本来は換金してから山分けだが、今回は俺が先に払っておく」
10000G渡された。
「今日はやりやすかったぜ。アークスは気配察知が凄い上に殺すのも一瞬だったな」
「いや、この小太刀ってのが扱いやすかった」
「そりゃあ俺の直感もなかなかだったって事だな。で、どうする? これからも俺と組むか?」
「組む……一緒に仕事するかって事か?」
「そうそう」
「ああ……また色々教えてくれるなら頼む」
「それは任しておけ。お前のクソったれな親が教えなきゃいけなかったのは教えて行くつもりだ」
こうしてアークスは、ダームエルと組む事になった。やがて相棒と呼べる存在となり長年連れ添う。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
ダームエルと組むようになって五年が過ぎた。最初の時のように一緒に仕事する時もあるが、ダームエルは、情報収集やバックアップをする事が多くなった。
アークスが表立って実行する。これが基本スタイルになりつつあった。その為、いつの頃からかアークスは顔を隠すようになった。覆面だったり鉄仮面だったりころころ変えてバレなようにしだした。勿論それもダームエルが考えた事だ。
ダームエルは約束通り色々教えた。アークス達がやってる仕事も良いか悪いかで言えば悪い事だともはっきり言う。今更ちゃんとした仕事ができるとも思えないので辞めるつもりはないと、思うアークスなのだが。
ダームエルはアークスにある程度の事を教えると辞める気はないか? 言った。辞めるなら真っ当な仕事を紹介するとも。
不思議だ。何故俺にこんな良くしてくれる? と、いつもアークスは思う。
ある日、エド城で子供を巻き込んだ大虐殺があり、それに加担させられる仕事をした事でダームエルは不貞腐れ飲んだくれた。
気分転換させようとアークスが、仕事を取って来た。その仕事が終わった後の事だ……、
「少しは吹っ切れたか?」
「ああ心配かけたな」
「なら、また仕事を持って来てくれ」
「ラフラカ帝国の仕事は、もう受けないがな」
「それでも良い」
「とは言うものの実は、仕事の話は来てるんだよな」
「………」
アークスは、少しカチンと来て、ダームエルを蹴り飛ばした。
「何だよ?」
「飲んだくれてないで仕事しろ」
「悪かったな」
「で、次は何だ?」
「ひっひっひっひ……」
やたら不気味に笑う。
「反帝国組織だ。これで意趣返しができるぜ」
「……だったら最初からしろっ!!」
「だから悪かったって! フィックス領の王と王子からの直々の依頼だ」
「って、其処ラフラカ帝国の属国じゃねぇか」
「お! 良く知ってるな。だが実は裏では反帝国組織として活動してるんだな。これが」
「そうか。じゃあ次はフィックスのラインバレル国王のとこへ行けば良いんだな?」
「いや、表だって動いてないからフィックス城には行けない」
「じゃあどうするのだ?」
「アジトだよ。まぁ、まだ受けるとは言っていないから場所は知らないがな」
「そうか」
「それとお前さんが表立って行動する事が多くなって来たし、一人でもダークと名乗れ」
「わかった」
ダークとはダームエルとアークスのチーム名だ。
それはともかく、こうしてアークス達の次の仕事はレジスタンスの依頼となった……。