EP.19 獣王国武術大会が開始しました
王都グランザムは一言で言えば人でごった返していた。お祭り騒ぎなのだ。なんでもこの時期になると各国から腕自慢が集まるとか。
王都中、人だらけで目が回りそうだ。実際キアラとラキアは目を回し倒れそうになっていた。
「仕方ない。俺が抱えてやるよ」
「アーク菌がうつるので触れないでください!!」
キアラを抱き寄せてやるとそんな事を言われる。アーク菌ってなんやねん!?
「お前さ、どんどん俺に対して辛辣になってない?」
「最初からです」
「姉上などより我を支えさせてやる」
ラキアが俺にしな垂れて来る。
「ラキア菌がうつるから、くっ付かないでくれる?」
「ラキア菌!? 姉上と同じ事を!!」
「あたいなら良いかい?」
ナターシャまでもか。
「お前は目を回していないだろ」
「バレたか」
そんなこんなで、武術大会の受付所に辿り着く。
「ところで出場するの俺だけか?」
「あたいは弓だしねぇ」
「ウチは接近戦が苦手ですので」
「我も同じだ」
三人して遠距離専門だった。だが……、
「昨日ギルドの修練場で暴れた奴が良く言う。接近戦でも行けるだろ? 空飛べるんだし、逃げながら魔法をぶっ放せよ」
「あれはウチを舐めていたからです。手の内がバレて来たら厳しいですね。これだから空っぽアークは困ります」
「つまり無能妖精って事か」
「無能妖精!? 次から次へと失礼な事ばかり」
「お前こそ空っぽとは何だ?」
「事実でしょう?」
ともかくキアラは、どうしても出ないようだ。まあ良いけど。
受付所で待つ事二時間。かなり待たされたな。そんなに出場者多いのか?
「お待たせしました。何人出場されますか?」
「俺だけだ」
「身分証明書はお持ちですか?」
ギルドカードを渡す。
「アーク様ですね。では、ルールをご説明させて頂きます。まず本選と予選に分かれております」
何でも出場者が毎年1000人を超えるとか。よって予選で約20人による武舞台でのバトルロワイアルを行う。場外は即失格。
そこで残った一人が本選出場。本選はA~Dのブロックに分かれており、抽選で1ブロックに付き15人が振り分けられる。
残り一人は、予選免除されているレオン獣王国の四天王とやらが混ざり16人で一対一で戦って行くものらしい。
装備は特に指定はない。何を使っても良いとか。ただし本選から必ず護符と言う固定装備を渡される。
ちなみに観客は席数のせいで本来抽選での取り合いだが、出場者の関係者四人までなら無抽選で席を取れる。ただしそれでもお金は掛かる。
つまり、応援するにも金払えって事だな。
しかし、それも準々決勝までらしい。準々決勝からVIP席で無料になるとか。ていうか準々決勝ってブロック決勝戦じゃね?
あー、あと死んでも責任は持ちませんって内容の書類にサインさせられた。
「受付も終わったし宿を取るさぁ」
「でも、こんな人でごった返していると宿も埋まってそうだな」
「問題無いさぁ。先に大金を預けているから、優先的に部屋を回してくれるさぁ」
「準備良いな」
「アークが出場するって言ったから直ぐに抑えたさぁ」
そんな訳で、その宿屋に行った。
其処で、ナターシャは二人部屋を二部屋頼んだ。四人部屋で良いんではないかと思ったがナターシャがゴリ押した。
ラキアはめっちゃ不服を申し立てたが笑顔で却下される。
まあ理由は分かるけどね。たださ、約一ヶ月ぶりだし、ガッツリ絞り取られた。
あとにして思う…………
武術大会のが楽だったんじゃね!!??
それから数日過ぎ、6月2日予選が開始された。
『さぁ今年もやって参りました。獣王国恒例武術大会!! 今年はどんな覇者が残るのか? そして今年こそ獣王様に勝てる者が現れるのか? さぁそれでは予選の第一試合行って見ましょう!!』
司会の人が快活に話している。俺は第十二試合なのでまだまだだ。
時間は流れ。やがて俺の番が回って来る。
『さぁ予選の第十二試合です。こちらは出場者は18名。生き残るの誰だ!?』
武舞台に18人の選手が登る。武舞台は、半径30mある円形のものだ。結構広い?
武舞台の端から20mのところにグルリと観客席。とは言え左右に、――円形の武舞台なので、立ち位置によって変わるが――それぞれ入場口、正面に三階建ての建物が見える。
つまり、建物と入場口以外が観客席って事だな。建物一階では猫獣人のおっちゃんがアナウンスしている。
観客席は、奥に行くと一段上がり、全部で十五段くらいありそうだ。一番後ろの席の者は高い位置から見ろ下せる作りだな。コロッセオの作りに近い? 10万は入るんじゃないか?
それと観客席には屋根のようなものがあるが、武舞台の上にはない。雨が降っても戦えって事か。
『さぁでは、試合開始!!』
開始の合図ともに一斉に動き出す。獣王国だけはあり、獣人が多いな。
猫族、犬族、狐族、果ては像族なんてのもいる。
「ぅおおおお!!」
流石は獣人。豪快に暴れているな。ジャイアントスイングで次々に弾き飛ばす。
「があああああ!!」
それを別の獣人が獣化して止める。獣人固有のスキルだ。獣人の本能を呼び覚ますとかなんとか。ぶっちゃけ動物に近くなるだけだな……とは言え、この世界に動物はいない。
毛むくじゃらになった狸獣人がジャイアントスイングしていた獣人をワンパンで沈める。
その狸獣人を猫獣人がネコキックで倒す。ほう獣化していないのに良い蹴りだ。ついつい感心して見惚れてしまう。
しかし猫獣人も狼獣人と力比べになり押し負けた。
「ワォォォォォォォンっっ!!」
狼獣人がガッツポーズを上げる。
『これは試合終了か!? 勝者は……』
「はい、お疲れさん」
俺は小太刀の峰で狼獣人の首筋を叩き気絶させる。
実は俺は、ずっと隠密スキルで気配を消しFFOコートの隠蔽機能を使い隠れていた。獣人なんだから鼻が良いだろと思うが18人もいたら嗅ぎ分けるのも大変だろう。
『おっとー! これは漁夫の利を狙った人族がいましたー!! 勝者はアーク選手ーー!!!』
「ふざけんなー!!」
「こんなの認められるかー!!」
「まともに戦えー!!」
「金返せーーー!!!」
めっちゃアウェイだ。
「「「「「「「「「「帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ!」」」」」」」」」」
帰れコールが始まっちゃったよ。まあ帰るけどね。試合終わったし。
そんな訳で、皆と合流した。
「あれは無いさぁ」
ナターシャも呆れているし。
「流石ビビリアークですね」
「ビビリアークだと!? 出場すらしなかった口先妖精が!!」
「口先妖精!?」
「流石は我が主様。素晴らしい戦いであったぞ。褒めてやる」
ラキアは味方だな。ただやっぱり偉そうだ。
「お疲れ様です、主上」
普通に労ってくれるのはファーレだけか。
そして、本選入りが決まったので明後日から本選だ。その前に明日、何ブロックの何戦目かを確認しないとな。
ってな訳で、見に来たのだが……、
「え?」
これはないっしょ~~~~~!!!!
Aブロック一戦目……つまり一番最初。
それとルール説明を聞かないとな。本選に行けたら詳しく説明すると言ってたし。
「本選通過おめでとうございます。では、本選のルールを説明します」
本選開始からずっと身代り護符を胸に付けておく。外した時点で失格。
一試合一時間で、決着付かずの場合は判定勝負。
一日の間に準決勝までやるので、体力などの配分も考えないといけない。
武舞台の場外に10秒出ると失格。
また武舞台が破壊されても武舞台があった場所にいれば10秒ルールは適用されない。
命に係わる攻撃を受けると身代り護符が砕け、その時点で敗北。
オーバーダメージの場合は最悪死ぬ事もある。
勝敗は、身代り護符が砕けるか、場外10秒以上か、降参の有無か、判定で決まる。
関係者にも護符が配られる。これを外すと優先して観客席に行けない。
また身代り護符、護符を付けている間は他のブロックの観戦は禁止される。
ただしブロック決勝まで進めば二度まで外して観戦しても良い。
また身代り護符は、鑑定阻害機能がある。
相手の身代り護符を損壊させれば鑑定は自由。
優勝すると獣王様と戦える権利が貰える。
決勝と獣王様との対戦に試合時間に決まりはない。
以上!
とりあえず温存がめんどくさそうだな。決勝&獣王とのエキシビションマッチは次の日と言うのは有難いけど。