EP.18 アサシンズを再結成しました
「さて、うちの職員がすまなかったな」
ギルマスの執務室でギルマスが頭を下げて来た。
「それは良いんですけど。先程察しは付くって仰ってましたが、それを言いふらしたりしませんか?」
「そっちの娘が精霊族って話か?」
「ああ」
「ギルドとしては強い者がいなくなるのは痛手だ。だから不利になるような事は言わない。勿論犯罪とかしていなければな」
「それなら安心ですけど」
それなら良い。いきなり妖精族ってのがバレて追われるのは勘弁だな。
「でだ。今日の登録は誰が?」
「この二人だ」
キアラとラキアを差す。
「じゃあ用紙に記入してくれ。それから今回の詫びも兼ねて俺の権限でCランクからにする」
「Bランクを六人倒したのに、ですか?」
キアラは不服そうだ。でもなぁ、いきなりCランクって俺と一緒なんだよな。今日登録して並ばれるとか俺の達せがないだろ。
「残念ながら実績がない。Bランクには実力は当然ながら実績がないと昇格できないんだよ」
「そうですか。分かりました」
ギルマスにまで食って掛からなくて良かった。
「あと、俺達のパーティーに加えて欲しい。ナターシャ、ギルドカードを」
冒険者パーティー『アサシンズ』のリーダーになっているナターシャのギルドカードを出させる。
「分かった。じゃあ『アサシンズ』のメンバーで登録しておく」
そんな訳でパーティー『アサシンズ』再結成だ。
登録を終えると冒険者ギルドを出た。
「次は何処に行くんだい」
「久々にセイラの店で一泊しよう」
ナターシャに問われたのでそう答える。
「分かったさぁ。<転移魔法>」
景色が変わり、ウルールカ女王国のダレスの町にあるセイラの店の前に一瞬でやって来た。
「……食事処アサシンズ?」
「随分物騒な店名だな、主様よ。しかもパーティー名と同じなのだな」
キアラがサフィーネコーディネートしている店の看板を見て呟き、ラキアが続く。
「死ぬ程美味いが殺し文句の店だ」
「それで死ぬ程不味くて殺される店だったら笑えますね」
笑えねぇよ。
「では我が、味見してやるぞ」
だからお前は偉そうだっての。
そうして中に入った。俺は最近肉と野菜ばかりだったのでアジの開き定食にした。キアラとラキアは、本日のオススメ定食と言うのを選んでいた。
と言うか、そんなメニューが追加されたのか。ちなみに内容はハンバーグとエビフライだった。てか、和食じゃなくない?
「確かに美味しいですね」
「なかなかいけるのだ」
二人は、舌鼓を打ちながら食べている。結局おかわりもしていた。
食べ終わると二階に向かう階段の方へ足を向ける。
「アーク、会計は此方のようですよ?」
「いらない」
「え?」
「此処では必要ない」
「それは何故でしょう?」
答えず階段を上って行く。
「其処は関係者以外立ち入り禁止と記載がありますよ?」
「まさか、主様は関係者なのか?」
「ああ」
やはりラキアのが頭が柔らかい。直ぐに気付いたようだ。
そうして二階に上り、更に三階へ。そして、俺達がこのダレスの町で滞在する時の休む部屋に向かう。
「この部屋はお誂え向きにベッドが四つありますね」
「まさか我等の為に準備したのか?」
「いや、お前らの前にいた仲間の分」
「あぁ、ウチらの前の幼女枠ですね」
「幼女枠言うな。一人は俺の娘だぞ」
「娘ではないでしょう? 似たようなものだけどさぁ」
ナターシャが無粋なツッコミを入れる。
「なぬ!? 我がいながら子供を作ったのか? なら次は我との……」
「有り得ませんわっ!!」
「エアルリアの真似で返された!!??」
「ナターシャの許可を取ったら考えてやる」
「ナターシャや……」
「精霊族の集落まで転移魔法で送るさぁ」
ナターシャがめっちゃニコやかだが、目が笑っていない。マジで怖い。
「それで前の幼女枠の人は今は何処に?」
「キアラ、何度も言うが幼女枠言うな! 二人ならスイースレン公国の学園に通わせた。地道にその国の内部に入る込む為にな」
そんな風にエーコや沙耶の話をしていると……、
「アーク、ナターシャ、ファーレ、久しぶり~」
セイラがやって来た。
「おう。久しぶり。相変わらず盛況だな」
「久しぶりさぁ」
「久しいのぉ。確かセイラだったな」
「え? ファーレが流暢に喋ってる~」
セイラが目を丸くした。そんな訳で神獣は元から知識を持ってる事を話す。
「そうだったんだね~。それで、そっちの娘達は~? アークの新しい愛人~?」
「そうだ。お主は見る目があるな。褒めてやるぞ」
「え? うん、ありがと~?」
ラキアの偉そうな態度に戸惑うセイラ。
「この不遜な奴を愛人にするくらいならセイラを愛人にした方が一万倍良い」
「桁が増えたぞ!?」
「アークの愛人なんて絶対無理~。絶対嫌~。絶対最悪~」
うわ! セイラまで三拍子で言って来やがった。
「良く分かってるではないですか、ニンゲン。アークの愛人になるくらいならオークの愛人になった方がマシですね」
「そこまで言うか!?」
キアラがまた毒吐いてるよ
「なんか、ニンゲンって言葉に悪意があるね~」
セイラは引き気味に言う。
「あ、二人とも羽根を出して。セイラには見せて良いから」
そう言われ、二人とも幻魔法で隠していた羽根を出した。
「え? 妖精族!?」
セイラが驚きで目を剥く。
「そうです」
「うむ。そうだぞ」
「へ~。妖精族なんて初めて見た~」
「見た目はこんなんでも妖精族だけはあり、年上だぞ。年下扱いしたらこの店が吹っ飛ぶから気を付けろ」
「無許可でそんな事はしませんよ。耳がただれているのですか? さっき壊しても良いか確認したでしょう?」
「何があったの~?」
セイラに問われ冒険者ギルドの事を説明したら、当然ドン引きしていた。
その後、一晩『食事処 アサシンズ』で過ごし、次の日レオン獣王国の王都グランザムに転移魔法で転移した。