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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十三章 レオン獣王国の武術大会
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EP.17 残念姉妖精が大暴れしました

「ラキア、手を出さないでください」

「仕方ないのだ。姉上の好きにするが良い」


 何故かキアラは一人でやるらしい。


「ルールは相手を気絶もしくは降参させる事。殺すのは禁止です」


 受付嬢がルール説明をする。


「一つ質問です」

「何ですか? お嬢ちゃん」

「此処を破壊しても問題ないですか? お嬢ちゃん」


 なんか二人してムキになってお嬢ちゃんって言ってるな。


「えぇ。魔法を拡散させる作りになっていますので、出来るものならどうぞ。お嬢ちゃん」

「では、壊してもウチには責任がないのですね? 愚鈍なお嬢ちゃん」

「はい、そうなります。無知なお嬢ちゃん」


 そんな訳で一対六の戦いが始まる。


「<噴火魔法(ボルケーノ)>」


 ブッシャーーっっ!!!


 真っ先に動いたのはキアラだ。六人との間に炎の壁を勢い良く立ち上がらせる。


「<悠久の時より始まりし炎が広がる……>」


 どうやら、六人がキアラに迫って来る前に詠唱を完成させるつもりだな。

 だが、六人も馬鹿ではない。正面が炎の壁で通れないなら、周り込めば良いと判断した。


「<焼かれろ、焦がされろ、爆ぜろ! 厄災の業火に包まれ……>」

「おらっ!」

「はっ!」

「<水槍魔法(ウォーター・ランス)>」

「<雷槍魔法(サンダー・ランス)>」


 キアラの目の前に迫った者が、そのまま攻撃する。魔法職の者も炎の壁を周り込んで、キアラを射程に収めた瞬間、魔法を放つ。

 が、キアラは飛んで躱す。そう文字通り飛んでだ。例え幻魔法で羽根が隠れていても空は飛べる。


「「「「「「なっ!」」」」」」


 六人の開いた口が塞がらない。空を飛ぶなんて発想は、この世界の大半の人間にはないからな。それでも風が渦巻いていれば、風魔法で飛んでると気付けるかもしれないが、それすらない妖精なら余計に驚くのは必然だ。


「<灰塵とかせ!>」

「何なのよ!? この魔力は」


 キアラの周りで蠢く魔力に受付嬢が恐れおののく。


「<災害猛火魔法インフェルノ・ディザスター>」


 そして詠唱が完成し魔法が放たれた。


 ドゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!!!!


 爆炎の竜巻が上がる。それは天井を破壊する……と言うより一瞬で溶けた。地面も溶けて抉れて行く。

 この魔法は、長い詠唱から予想するに本来はもっと範囲が広いんじゃないか? 狭くしないと六人に当たり骨すら残らないだろう。つまり殺して反則負けになってしまう。

 で、その六人は完全に腰が抜けて座り込んでいる。失禁までしている奴がいる始末。

 更に……、


「<炎槍魔法(ファイアー・ランス)炎槍魔法(ファイアー・ランス)炎槍魔法(ファイアー・ランス)炎槍魔法(ファイアー・ランス)炎槍魔法(ファイアー・ランス)炎槍魔法(ファイアー・ランス)……ッッ!!>」


 ドッゴン! ドッゴン! ドッゴン! ドッゴン! ドッゴン! ドッゴン! ドッゴン! 


 炎槍魔法(ファイアー・ランス)を連発し、周りを破壊しまくる。相当キレてたんだろうな。もう滅茶苦茶だ。


「<百炎槍魔法ハンドレッド・ファイアー・ランス>」


 ダメ押しと言わんばかりに百の炎槍を展開し、六人に刃先を向ける。


「まだやりますか?」

「「「「「「降参します!!!」」」」」」

「結構」


 百の炎槍を消す。キアラは、すっきりした顔をしていた。いや、こんな滅茶苦茶にしておいて、自分だけすっきりするなよ。ラキアも顔が引き攣ってるし。

 だが、流石は紅蓮妖精と言うべきか。恐るべき魔法を使う。


「キアラは、強いんだねぇ」


 しみじみと呟くナターシャ。

 まあエーコには及ばないだろうけど、相当な火力があるだろうからな。


「一体なんの騒ぎだ! ……って、何だこりゃ!!??」


 中年のおっさんが飛び込んで来て、更に惨状を見て目を剥く。

 そりゃ修練場は原型を留めていないし、対戦した六人は泡拭いてる奴や気絶してる奴、半泣きの奴、失禁してる奴と死屍累々だしな。


「俺の仲間を冒険者登録させようとしたら、この受付嬢の態度が悪くHランクからスタートさせるとか脅して来たので、仲間がキレてこうなりました」


 この状況で飛び込んで来るのは、恐らく一人しかいないだろう。従って一応敬語を使っておこう。


「何!?」


 ギロリと受付嬢を睨む。


「あ、いや……こんな事になるとは思わなくて……」


 ボソボソと喋る。


「こんな事になる予想以前にHランクからとか脅すのはどうなのかな?」


 こうなったら俺もとことん追い込むか。俺も相当頭に来ていたからな。前に会った時に。


「何故そんな脅しをした?」

「あのお嬢ちゃんがそんなに強いとは思わなくて……」

「まだお嬢ちゃんと言いますか? 失礼なお嬢ちゃんですね」


 キアラも口を挟む。


「見た目で判断するじゃねぇよ。そのせいでお前は公都から飛ばされたんだろ?」

「……はい」


 やっぱり飛ばされたんだ。


「しかも、この娘はお前や俺より年上だぞ」

「えっ!?」


 受付嬢が目を丸くする。もしかして……、


「鑑定しました?」

「するまでもねぇよ。この惨状で、その見た目を考えれば察しは付く」


 嘆息しながら言う。流石ギルマスをしているだけはあるな。


「なのにどうせお前の事だ。お嬢ちゃん、お嬢ちゃんって連呼したのだろ?」

「……はい。申し訳ございません」

「謝る相手が違うだろ」


 そう言われて苦虫を嚙み潰したよう顔でキアラを見る。


「申し訳……ご、ざいません」


 不服そうに言う。


「やっと自分が無知で愚鈍と言うのが分かりましたか?」

「……はい」


 キアラも更に追い込む。えげつないな。


「そもそも何で態度悪く対応した?」

「それは……」

「俺の選べる職業に暗殺者とかがあったので、要注意人物扱いで公都で出会った時から態度悪かったですね」

「……はぁあああ! 呆れて物も言えんな」


 溜息が凄いな。


「もう良い。お前、明日から来るな」

「そんな……」


 受付嬢が絶望的な顔をしだした。


「それと修繕費は全てお前が負担だ」


 あ、灰になっちゃった。これは我に帰るのに時間が掛かるだろうな。


「さて、名乗るのが遅くなったが、俺はこのギルドのマスターをしているリリカッシュだ」


 やっぱり、ギルマスか。


「話はギルマスの執務室で聞く。登録もそこでしよう」

「分かりました」


 そんな訳でギルマスの執務室に移動する事になった……。

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