EP.16 ギルドでも残念姉妖精はキレました
「……どう言う事だい?」
開口一番何故か怒られている。
「え?」
「後ろの二人さぁ」
ああ。ナターシャには新しい仲間の事を言ってなかったから怒っているのかな?
「新しい仲間だよ。名前はキアラとラキアだ」
「キアラです。宜しくお願いします」
「ラキアだ。宜しくしてやるぞ」
キアラは丁寧に頭を下げたが、ラキアは何故か偉そうに無い胸を張る。
「エーコとサヤがいなくなったからって、新しい小さい子枠かい?」
「は?」
「やはり、ロリコンなのですね。アークは」
ちょっと黙っていようかキアラさんや。
「アークがヨウジョ モトムと同じとは思わなかったさぁ」
ナターシャが頭を抱えるように言う。あのロリコン野郎と一緒にしないでくれ。
「それにしてもアークは、こんな年増にも手を出してるのですね」
「……年増」
底冷えする声が俺の鼓膜を打つ。キアラさんや煽らないでおくれ。
「ナターシャは、こう見えても俺より下だぞ」
「ならやはりアークはロリコンですね」
「アークっ!」
ペッシーンっ!!
久々のビンタ。
「こう見えても?」
「ごめんなさい」
細かいですよ。
「ともあれ新しい仲間だ。それにこう見えて、この二人はナターシャの四倍はババァだぞ」
「ですから、何故アークはそんな失礼な言い方ばかりするのですか? 普通に年上で良いではありませんか?」
「四倍年上? 本当かい?」
ナターシャが胡乱げに見て来る。
「俺が何処に行っていたか知ってるだろ?」
「精霊族の集落……あ! 精霊族かい?」
やっと得心が行ったって感じだな。
「ああ。その中の妖精族だ。毒舌姉妖精と不遜妹妖精を連れて来た」
「そうだったのかい。それは宜しくさぁ」
「毒舌姉妖精!? やはりアークは頭が腐っているのですね? ウチはそんな呼ばれ方をする謂われないです」
「ほら、また毒舌吐いてるじゃねぇか!」
「……仲が良いねぇ。あたいがいない間、随分楽しんでいたようだねぇ」
再び底冷えする声音だ。
「どこがだよ!?」
「どこがですか!? こんなケダモノと楽しくなんてできません」
「本当に毒吐きだねぇ」
ナターシャは顔を引き攣らせながら納得してくれた。
にしても先程からラキアが静かだ。なので、ラキアに視線を向けると眉を寄せ渋面をしている。
「むむむ……このナターシャと言う者と主様からただならぬ気配。まさかデキているのか?」
「主様?」
「ああ。コイツが勝手にそう呼んでいる」
「我は身も心も主様に捧げた。朝はおはようから、夜の床までお供してやってるぞ」
ナターシャが小首を傾げたので、端的に答えた。が、ラキアはとんでもない爆弾を投下しやがる。
「アーク!」
ペッシーンっ!! ペッシーンっ!!
やっぱりこうなった。しかも往復ビンタ。
「だから捧げられた覚えはねぇ! あんまふざけた事を言うとお前だけ置き去りにするぞ」
「すまぬのだ。あまりにも二人の間に甘い空気が流れてたので嫉妬してしまったのだ。許しておくれ、主様よ」
「妹は不遜で頭のネジが飛んでいるので、無視して構いません」
キアラさんや、不遜もネジが飛んでるも俺が言った言葉だぞ。
「は~~。そうみたいだねぇ。アークも良くこんな二人を連れて来たさぁ」
「妹はともかくウチも同じにしないで欲しいですね」
キアラが眉を吊り上げる。本気で言ってるのか? 本気で言ってるのだろうなぁ。
「まあ色々あったんだよ」
「だろうねぇ」
「ナターシャよ、久しいな」
今まで大人しくしていたファーレが、会話が途切れたの見計らって声を上げた。
「ファーレ? で、良いんだよねぇ?」
「妾以外に誰がおる?」
「随分言葉が達者になったねぇ。アークが教えたのかい?」
「何も教えていないのに勝手に覚えて行く」
「妾は神獣よ。神獣とは最初から色々知識を持ってるもの。ただ産まれたてでは、どのような意味なのか理解してないだけだ」
そうだったのか。
「そうだったんだねぇ。あぁ、それと久しぶりだねぇ」
「久しいのぉ」
「それで、これからどうするんだい? レオン獣王国へ直ぐ向かうかい?」
「その前に二人を冒険者登録をさせよう」
そんな訳で冒険者ギルドに向かった。そこには王都スーレンにいた態度悪い受付嬢が何故かいる。飛ばされて来た?
「………」
俺を見た瞬間、顔を顰める。あっちも俺の事を覚えていたようだ。
「この二人を冒険者登録を」
「……分かりました」
つーんとした態度。イラっ! 相変わらずコイツはイラ付く。
「何故こんなに態度悪いのですか?」
キアラも眉を顰める。
「俺の選べる職業に暗殺者とかがあるから、要注意人物扱いなんだよ」
「なるほど。自分の物差しでしか人を見れない、無知なニンゲンなのですね」
「姉上よ、いきなり言い過ぎではないか」
「このような愚か者に言い過ぎも何もないでしょう?」
「分かるのだが、もう少し穏便にしてやっても良いと思うのだ。無能を相手にしやるだけ時間の無駄なのだ」
ラキアも十分酷い事を言っているぞ。受付嬢の眉がめっちゃピクピクしてるじゃん。
「お嬢ちゃん、年上はもっと敬うように親から教わらなったのかしら?」
ピキっ! ヤバい! キアラにキレた気配が……。まあ79歳だしお嬢ちゃんはないだろ。
「生憎、無知で愚鈍で歳だけでいばるような輩を敬うような教育を受けてませんので」
「ふふふ……私の権限でHランクからスタートでも良いのですよ?」
「アーク、Hランクとはなんです?」
「端的に言えば戦力外通告」
「では、此処にいる全員を倒せばHランクより、上になるのですね?」
「まあHとGの差は、魔力量で決まるから、そこまでしなくて良いよ。この受付嬢がいないとこで登録すれば良いだけだし」
と言うかめんどくさい。もうこれ以上モメるなよ。
「いえ、せっかくなので魔力量を測って貰いましょうか? さしずめ此処にいる全員を蹴散らせば済む話でしょう?」
「本当に宜しいのですね? お嬢ちゃん」
「えぇ。構いません。年上にお嬢ちゃんと言ってしまう無知なお嬢ちゃん」
妖精族とバレるような発言をするなよ。
「分かりました。レックスさん、カトリーヌさん、ジョンさん、カバネさん、エリアーヌさん、シンジさん。此方に来て頂けますか?」
「呼んだか?」
呼ばれた六人がやって来た。
「私から緊急指名依頼です。この二人に冒険者の厳しさを教えてください」
「こんな小さい子にか?」
「どうかお気にならさらず。このニンゲンにどれだけ自分が無知か教えるだけなので」
キアラが気にした様子も無しに返す。更に……、
「ウチは此処にいる全員と言いましたが、たった六人ですか?」
「この六人は、現在此処にいる最高ランクのBです。実力を見るに十分ですよ、お嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんと言う相手を本当に理解していないお嬢ちゃん、分かりました。では、この六人を相手にします」
そんな訳で冒険者ギルドの修練場に向かった。どうしてこうなった?