EP.13 精霊族はネジが一本足りませんでした
精霊族の集落にやって来て三日目。
今日のお目付け役はクーリンディアだ。キアラとラキアも一緒にいる。
「さて、今日は何処に案内する? とは言え、見るべきとこはないと思うがな」
「狩り」
クーリンディアの言葉に即答した。
「狩り?」
「妖精狩りとか良さそうだな。近くに二人いる事だし」
ニヒっと悪い笑みを浮かべる。
「やはり外道アークですね」
「我は構わぬぞ。だが、朝からベッドに誘い込むのか?」
その狩りじゃねぇよっ!!
「貴女は慎みを持ちなさい!!」
俺もだがキアラも目を剥く。
「妖精の羽根をもぐのとか楽しそうじゃんか」
「………………それは止めて貰えないでしょうか?」
「主様よ。腕や足なら、もいでも構わぬが羽根は勘弁して貰えぬか?」
キアラが半泣きで後退りながら言う。そんなに嫌なのかな? ラキアもなんか凄い事言ってるな。
「腕や足は良いのかよ!?」
「妖精族の羽根は魔力の源だぞ。羽根をもがれたら、ただの無力な存在だ」
へえー、そうだったのか。書物ではそんな事を書いてなかったな。
「まあ冗談はここまでにして」
「どこまでが冗談だったのですか!?」
キアラが再び目を剥く。
「……いつもこうなのか?」
クーリンディアは目を引き攣らせていた。
「いつもと言うか最近会ったばかりだぞ」
「アークは最初から鬼畜外道ロリコンでした」
「主様は、こう言うプレイが好きなのだ」
「お前ら言いたい放題だなオイ!」
「おかしなニンゲンだ」
そう言ってクーリンディアは笑う。
「って訳で今日は狩りだ。穴場教えてくれ」
「本当に狩りなのか?」
目を丸くする。
「タダ飯ばかり食ってるからな。少しは働きたいし体も動かしたい」
「体なら昨日動かしたではありませんか?」
「オ・マ・エ・の・せ・い・で・な!」
キアラが魔法をぶっ放しまくったせいで。
「体なら、ほれ我を使わせてや……」
「いらん! 小さい! 不味そう!」
「三拍子!? しかもまた最後まで……」
「分かった。狩りだな。穴場に連れて行こう」
クーリンディアにまでスルーされてやんの。
「宜しく。ディアお兄様」
「止めろ! エアルリアの真似をするな。しかもお前のが歳は上だろ?」
俺のが十歳上だもんな。
そんな訳で穴場まで連れて行って貰った。ちなみに狩り中、キアラ達は空から獲物を見付ける役目をして貰う。
そして、キアラが指差す方向へ行きラック鳥を発見。運が良い鳥かと思いきや、骨が棚に使い易いからそう呼ばれている。つまりLackではなくRuckだな。
気配を消し近付く。投擲でも仕留められるが、それでは芸がない。それに傷をあまり付けない方が高く売れる。まあ集落に渡すだけなんで金を稼ぐ訳じゃないけど。
ゆっくりゆっくり気付かれないように……。
どうやら二羽いる。番なのか、地面でお互いに毛繕いならぬ羽根繕いをしている。
そして……、
「ふん!」
「「くぎゃ!」」
後ろから二羽まとめて首を絞める。鳥の活き締めだな……って意味が違うか。
「流石ですね。アーク」
キアラが空から下りて来た。
「やるな。これは私も負けておれんな」
「いや、お前は負けてろよ」
「ん? こういうのは勝負するから盛り上がるのだろ?」
クーリンディアが眉を寄せる。マジで言ってるのか?
「お前お目付け役だろう? 役目放り出して勝負に興じるのか?」
「あ、そうだったな」
「キアラ、一つ良いか?」
「予想付くので止めてください」
キアラが渋面で返して来る。なんかテンプレになりつつあるな。
「精霊族ってのは、頭のネジが一本飛んでるのかーーーっ!!!」
「だから、止めてくださいと言ってるでしょう!!?? 耳無しアーク」
耳なら有るけど?
と、そこで上を見るとラキアが無い胸を背一杯張ってる。
「どうした? 無い胸を自慢したいのか?」
「はふ~~。もっと罵っても良いぞ」
だからクネクネさせるな。キモいっちゅーねん。これもテンプレ化してるな。
「それより特大の獲物を見付けてやったぞ」
そう言われラキアが差す方へ向かった……って、熊じゃねぇか。
確かハウリングベアーとかって名の魔獣だったな。獲物が近付くと鼓膜が破れる程の鳴き声を発する。それは勿論襲撃者に対しても同じだ。
なので、気付かれたらアウト。俺は気付かれないように近付く……、
「ふん!」
「ぎゃふ!」
いきなり正面から姿を現し胸に掌打一撃。そのまま左脇をすり抜け……、
「はっ!」
振り返る反動で背中に肘鉄。両方心臓がある位置だ。脳震盪ならぬ心臓震盪で、心臓破りを行う……って、意味が違うけど。
その後も順調に獲物を狩る。収納魔法があるので、持ち運びも問題ない。そんな訳で大量に狩りを行えた。
「やるな」
「お前と同じ隠密のスキルがあるからな」
クーリンディアが称賛してくれる。
「そうだ。その事で言いたい事があったんだが」
「何だ?」
「仲間を囮に姿をくらますのは、どうかと思うぞ」
またか。エアルリアとラーニャに戦闘の時の事を問われたので予想はしていた。
「そのまま逃げるのはどうかと思うが、お前の場合は隠れて援護が真骨頂じゃねぇの? 仲間もそれを分かっていれば問題ない。それがチームプレイだと思うけどな」
「そんなものか?」
「それにお前さ、百中の称号が宝の持ち腐れだ」
「何!?」
クーリンディアが眉を寄せる。気に障る事だったようだ。
「あれって同格以下の相手に必ず当てる称号だろ?」
「そうだが?」
「つまり、当たらなかった場合は同格以上って事が分かる称号じゃないか」
「逆説的にはそうなるな」
「なら、同格以上の相手にそう言った小細工をしないで、どうやって勝つんだ? 何かしらの対策をしないと勝てないって分かる良い称号を持ってるのにさ」
「はっ!?」
クーリンディアが目を見張る。やっぱり気付いてなかったのか。まあ自分のスキルや称号を使いこなすのって難しいよな。俺も苦労しているし。
闘気とか闘気とか闘気とか。アルみたいな事をしたいと思うけどできないんだよな。