EP.12 武器を新調する事にしました
次の日はラーニャの父親が鍛冶師をやっている鍛冶屋を訪れた。
お目付け役でラーニャ。それとラキアがいる。キアラは今日は他にやる事があるとかでいない。
「カー! おめーは集落にやって来たニンゲンじぇねぇか」
って、この人は元老院と呼ばれていた一人じゃねぇか。
「こんにちは」
「なんでー? 鍛治に興味があんのか?」
「まあ。ところでラーニャ? お前の父親は元老院でエアルリアの祖父は族長って、二人揃って偉かったんだな」
「偉いのはボクじゃないけどネ。でも、それいったらクーリンディアの父親とハルラスの母親も元老院ダヨ」
マジかよ。若い――ハルラスは微妙に思えるけど――って、言われ俺と戦わされた四人って七光りだったのかよ。
「じゃあ、キアラとラキアも?」
「父上が元元老院だったぞ」
「これからはラキア様と呼ぼうか?」
「主様よ、それでは主従あべこべではないか」
主人になった覚えはないがな。にしても……、
「ラキアがまともな事を言ってるよ。あのラキアが!」
「我をなんだと思ってるいるのだ!?」
「これキアラが聞いたら、お姉ちゃん感動したとか言って泣き出すだろうな」
「姉上がそんな玉か? と言うか我を無視するでない。そ、そ、それともこれが放置プレイってやつなのか? はふ~~」
クネクネさせるなキモいわ。
「ラーニャ、コレは前からこうなのか?」
「違うヨ。明らかにアークのせいダヨ」
「えーーー!!」
ラーニャが顔を引き攣らせながら言って来るが、俺のせいにされても困るぞ。
「カー! 駄弁りに来ただけなら、けぇれ! 仕事の邪魔だ」
「おっと、悪い。できれば武器を直すか、新たに新調して欲しいんだけど?」
「ニンゲンなんか作れっかよ!」
ですよねー。元老院連中の初対面で警戒されていたしな。
「ラーワンよ、頼むのだ。主様は、我を助ける為に武器をダメにしたのだ。直してやるのだ」
「父さん、ボクからも頼むヨ。アークは敵対したボクらに手加減してくれた上に回復してくれたんダヨ」
回復したのはファーレだけどネ。
ラキアとラーニャが助け船を出してくれる。ラーニャパパは、ラーワンと言うのか。めっちゃどうでも良い情報が手に入った。
「ちっ! わーったよ。見せてみー?」
「これを」
チョロい。精霊族はやっぱチョロ族。
俺は折れた闇夜ノ灯をラーワンに渡す。
「なっ!」
ラーワンは目を見開き固まる。ややあって……、
「無理だ」
吐き捨てるように言い闇夜ノ灯を返して来る。
「まず、こんなこまっけー術式を組めるのは神位鍛冶師くれぇなもんだろうよ。次に此処らで取れるのはピュア・オリハルコンだ。アダマンタイトはねぇぜ。最後に俺はこんな細けぇ武器は作れねぇ」
神位鍛冶師? めっちゃ気になる。そいつに会えば闇夜ノ灯が復活できるのか? まあその前にアダマンタイトを探さないといけないだろうが。
で、此処らで取れるのは純度の高いオリハルコン……ピュア・オリハルコンなのか。なら良い武器が作れるかもしれないな。
「なら新調してくれないか?」
「同じもの作れねぇぞ」
「出来る限りのもので良い」
「獲物は? 小刀か? そいつも残念だな? 俺は短けぇものは作れねぇ」
「なら、小太刀は?」
「それくれぇなら行けるな。エアルリアの短剣を打ったのは俺だしな」
「じゃあ二振り頼む」
まあ次善になってしまったが、小太刀も扱えるから問題無い。スピードが落ちるのが難点だが。
「にしてもマジで聖人って感じだな」
しみじみとラーワンが呟く。
「え?」
「聖人は剣より、刀系を好むからな」
「それは聖人と言うより、日本人だからだろうな。外国……あーたまに金髪の聖人もいるらしいけど、そいつらは剣を好みそうだな」
なんせSAMURAIの時代があったからな。まあ日本人被れの外国人も変な憧れを抱いていそうだけど。
「聖人の国とか俺には良く分からねぇがな。にしてもおめぇは運が良いな。スカイドラゴンの素材を使って良い物が作れそうだ」
「スピード重視で頼む」
「わーったよ。にしてもおめぇ……」
「ん?」
「良いコート着てるのに、その下と靴が貧弱だな」
「そうだな」
「呉服屋の方にも頼んでやる」
「それは有難い」
実際スピード主体の戦いをしている俺が、いつまでも普通の靴なのはどうなのかと思ってたんだよな。
そんな訳で鍛冶屋の用事が終わったので外に出た。
「さて、今日の予定は終わっちまったな。あとは何しようか」
「なら我と戯れ……」
「却下!」
「何故だぁ!? せめてさい……」
「ラキアの事だから、キモい事しか言わなそう」
「だからせめて最後……」
「ならボクに稽古を付けてヨ」
ラーニャにまで無視されてやんの。
「稽古?」
「アークは指一本でボクの攻撃を止めたからネ。良ければ色々教えて欲しいナ」
「ラーニャの場合、稽古の前に自己鍛錬のが良いと思うけどな」
「自己鍛錬?」
ラーニャが小首を傾げる。
「ああ。実戦に勝る鍛錬は無いって言うけど、ラーニャの場合は闘気のレベルを先に上げた方が良いと思うんだけど」
「闘気? 戦闘中も言ってたネ。実戦じゃレベルが上がらないの?」
「うーん。上がるとは思うけど、実戦はレベルを上げた闘気を扱えるようにするって意味でする方が良いと思うだよな。経験則から」
「そうかナ?」
頭を悩ましてるな。まあ普通は実戦こそが良い鍛錬なんだけどな。
「ラーニャはその歳で、闘気を覚えているのが凄いんだよな。ドワーフだからか? 種族差なのか分からないけど、そのレベルを先に上げまくっていれば後々、かなり強くなると思うぞ。まあ扱いが難しいから、レベルを上げたら何度も実戦で試す必要があるけど」
「そのなの? なら、もっと闘気の事をボクに教えて欲しいナ」
そうして、この日はラーニャに闘気について教えた。闘気抗議は夜まで掛かってしまう。ラーニャが貪欲に学ぼうとした結果だな。ラキアは途中で飽きて舟を漕いでいたけど。
その夜、集落を上げて俺の歓迎会が行われた。キアラはその準備に取り掛かってようだ。
たださ、歓迎されていない歓迎会だったんだよね。
俺を取り囲んで来た連中は、スカイドラゴンとの戦いから、大半は歓迎してくれていた。しかし、集落に残ってた連中のほとんどが人族だからって全く歓迎してくれない。
ほんと、何の為の歓迎会だよ。
で、キアラがブチギレて魔法を俺に連射しまくって来た。何で俺になのかって? ラキアがそう提案しやがったからだ。提案する前に止めろよ。
本当は集落の連中にぶっ放したかったのだが、ラキアが『主様が全ての魔法を蹴散らし歯が立たないとこを見せ付けてやれば良い』と、ほざいたのだ。
ラキア的に、強者なので簡単に集落の連中を攫えるが、それはしませんって言うアピールをしろと言う意図なんだけどさ。釈然としないわ。
俺の歓迎会で俺が余興を見せるとか、まさに『有り得ませんわっ!!』って感じだし、それに何より武力で脅してるだろソレ。




