EP.11 集落を周りました
族長との話し合いが終わり外に出る。
「本日の案内は、わたくしが務めさせて頂きますわ」
そう言ったのはエアルリアだ。他の二人は何処かへ行ってしまった。ついでにラキアも。なので、現在共にいるのは、エアルリアとキアラだけだ。
「ふむ。有り得ないっ娘、か」
「わたくしの何が有り得ないと仰るの!?」
エアルリアが眉をむむむ……と寄せる
「俺に三回も『有り得ませんわ』と言っていただろ? 良い名じゃないか」
「アークは、変な名を付けるのが趣味みたいなものです。ほっときましょう。ただ鬼畜なだけですから」
「キアラお姉様がそう仰るのでしたら」
「はい。ただの鬼畜外道ロリコンアークなだけです」
「なんでやねん」
全部繋げやがったぞコイツ。
「ろ、ロリコン!?」
エアルリアがパっと離れる。鬼畜と外道よりそこを反応する!?
「あ、君には興味無いから。てか、いちいち反応してキモいわ!」
「失礼ですわね。確かに鬼畜ですわ」
「そんなんで納得するなよ。で、ラキアは何処に行った」
「ウチらの家です。アークが滞在する間、泊まる事になりますので掃除をしております」
「なら、何でお前も行かない?」
「気心が知れたウチかラキアがいた方がアークも安心と言う気遣いが分からないとか、やはりアークは人でなしですね」
コイツは次々に失礼な言い方ばかりするな。
「会って数日で、何が気心知れただ! この自意識過剰妖精が!!」
「自意識過剰妖精!? また変な名を付けますね」
キアラが目を剥く。
「ふふふ……仲がが宜しいのですね」
「どこがだ(ですか)!?」
「ご存じですか? 争いは同レベルのものからしか生まれないと言う事を」
「うっさいわ! 高飛車エルフが!?」
「まぁ! なんて失礼ですの!? これですからニンゲンは」
「高飛車エルフを置いておいて、今は何処に向かっているんだ? キアラとラキアの家か?」
「置いておかないでくださいましっ!!」
「まずは集落をざっと回ろうかと。その間に掃除も終わるでしょうし」
なるほど。
「ところで案内役ってキアラかラキアで良くなかったか?」
「キアラお姉様とラキアお姉様とは既に知己を結んでるようですから、お目付け役にはなりませんわ」
「まあ確かに。ところでキアラ達をお姉様と呼んでるんだな」
「えぇ」
「じゃあクーリンディアとラーニャは?」
「ディアお兄様とラーニャお姉様ですわ」
「なのにハルラスは、ハルラスさん?」
「あのような変わった言動する方を兄と慕いたくありませんわ」
うわ! 同族まで言われてやんの。流石は中二病患者。
「わたくしもお伺いしても宜しいですか?」
「何だ? スリーサイズか?」
「……頭おかしいのですか!? 殿方のなんて聞きませんわ。そもそもわたくしは、そんな破廉恥ではございません」
ジト目で見られた。
「で、何だ?」
「色々手を伸ばし過ぎとはどう言う事でしょうか?」
「え?」
「戦闘中に仰ってました」
「ああ……まんま。色んな魔法の才がありながら短剣やら精霊を使ったりしてたろ? まだ歳が若いのだから、最初はどれか一つに絞るべきだ。半端になっている。と言うか若いうちは魔力を伸ばす為に魔法を中心にした方が良いと思う」
「なるほど」
考え込むように頷く。
「それにお前、何故短剣の刀身を伸ばすんだ?」
「長い方が有利ですわ」
「取り回しが悪くなるだろ? ハルラスのように空飛んでいるならまだ良いが地上で長物を扱うのは、地面を気にしないといけないだろ?」
「取り回しですか?」
コテリと首を傾げる。
「お前は三人の中で一番素早いんだから、短い武器で動き周り翻弄した方が良いと思うがな」
「貴方のようにですか?」
「まあ確かに俺はスピード主体だから、武器もあえて短いのにしている」
「なるほど」
「それと俺の仲間に精霊契約してる奴がいるって言っただろ?」
「仰ってましたね」
「あいつの契約してる精霊は湖の精霊だ。たぶん似たような事できると思うんだよな」
「湖ですか? それなら確かに可能かもしれませんわ」
「で、あいつの戦い方だけど、遠距離攻撃は精霊任せで自分は接近戦をしている。要は役割分担できるんじゃないか?」
「役割……分担」
瞠目したかのように頷く。て言うか、集落には他に精霊使いはいないのか? いても教えてくれないのか? それとも若いうちは伸び伸びとやらせる方針なのかな?
「ともかくお前、三人の中で一番中途半端だったぞ。まあ年齢が一番下なのだから仕方ないと言えば仕方ないが」
「先程から気になっておりましたが、わたくし達の事を良くご存じですね?」
「鑑定したから」
「無許可でするなんて失礼ですわ」
金色の双眸で睨まれる。
「そりゃ戦闘中なんだからするだろ? 手札は切る為にあるんだぞ? あ、ちなみに戦闘が終わってからは誰も鑑定していないぞ」
「……そうですか」
その後も集落を周りながら、あれこれエアルリアを指導し、キアラ達の家に到着した。
「此処がウチの家です。今は家族がラキアだけになってしまったので、部屋は沢山余っています。お好きなとこを使って頂いて構いません」
「じゃあキアラの部屋を」
「何故ですか!?」
キアラが目を剥く。
「え? キアラを抱き枕すると快眠できそうだから?」
「……やはりロリコンです」
顔を赤くしながらしボソっと言う。
「なんか嬉しそうだな」
「そんな訳ないでしょう!? 目が腐ってるのですか?」
腐ってると来たか。ほんと毒舌ばかりだなコイツは。
「冗談はともかく、家に入ろうか」
「どこまでが冗談だったのですか!?」
家に入るとクーリンディアとラーニャもいた。何か食事の用意もしている。
「おお、戻ったか」
「遅いヨ」
「ディアお兄様とラーニャお姉様は、何をしていらっしゃるのですの?」
「は?」
「へ?」
二人が間の抜けた声を上げる。
「それは、わたくしの真似をしてらっしゃるのですか?」
再びエアルリアにジト目で見られる。
「おっほん! エアルリアに慕われてるようだったんでな。で、何をしてるんだ?」
「掃除と食事の用意だ」
「今日はボク達で歓迎会をやるヨ」
「歓迎会? キアラ、良かったな。歓迎してくれるってよ」
ニヒっと笑いキアラを見る。キアラは飽きれた眼差しをして来た。
「アークは、一度頭を開いて雷を流した方が良いですね」
「怖いわっ!! ラキア、キアラをどうにかしてくれ」
「我の姉上は頭がアレなので無理だ」
「頭がアレなのは貴女でしょう!?」
ワイワイ賑やかな事で。
「ところで明日の案内役はボクだヨ。行きたいとことかあるカナ?」
と、ラーニャに話を振られる。
「鍛冶屋」
「即答ダネ」
「ドワーフと言えば鍛冶屋だろ?」
「それは偏見ダヨ。まぁボクの父さんは鍛冶屋してるケド」
偏見じゃないじゃんかよ。
「じゃあそこに行きたい。武器が折れたから修理もしくは新しいのが欲しい」
「あの魔道具武装ですか? 難しいかもしれませんね」
話を聞いてたキアラが口を挟む。
「やっぱりか。なら新しいの手に入れないとな。今日の戦闘で長さの違う武器を使っていたから間合いの取り辛かったんだよな」
「「「………」」」
クーリンディア、ラーニャ、エアルリアがなんとも言えない顔してる。
「どうした?」
「いや、瞬殺だったから」
「ダネ」
「然程苦労してるようにお見受けできませんでしたわ」
それは実力差があり過ぎるからなんだけど黙っていよう。実力差がもっと近かったらクーリンディアは死んでいただろうな。右手に持った短剣の柄で攻撃したが、本来なら小刀の峰だ。
短剣は両刃なので、峰を使う癖で裏返していたら、首を斬り咲いていただろう。
「わかったヨ。じゃあボクの家の鍛冶屋に案内するネ」
「宜しく」
そうしてこの日は、俺の歓迎会と言う事で、六人で御馳走を食べた。いや、御馳走なのかな? 山菜が中心だし、肉もあるけど塩だけの味付けで質素だし。あ、そうそう。スカイドラゴンの肉も美味しく頂きました。