EP.10 滞在を許可されました
俺は族長の家に案内された。
族長は認めてくれたが、他の面々の視線が厳しい。チョロい種族とは言ったが全員が全員そうではないのだな。
そんな視線から庇うようにキアラとラキアが両側に立ち……いや、正確には宙に浮き移動していた。別にそんな気を使わなくて良いんだがな。
ちなみにだが、ファーレは俺の頭に戻って来ていた。
「ひゃあ!」
「はふ~!」
羽根を撫でると見た目に似合わず艶やかな声を上げた。
「妖精族の羽根は敏感なのですよ!? アーク、何をするのですか?」
「主様が触りたいなら、基本的にどこでも触らせてやるぞ。だけど羽根は勘弁して貰いたいぞ」
「お前ら、気を使わなくても良い」
「鬼畜アークなので、触って来たのかと思いました」
「流石は、外道主よ。我等の真意に気付いておったか」
「外道言うなっ!!」
「ふふふ……仲が宜しいのですね」
傍を共に歩いていたエアルリアが柔和な笑みを浮かべる。
「仲が良いと言えるのか?」
「鬼畜とか外道とか呼ばれているネ」
同じく共に歩いていたクーリンディアは顔を引き攣らせ、ラーニャは揶揄うように笑う。
「やはり禁呪の闇の力にて洗脳していたのだな。吾輩には分かっていたのだ。それ故に外道と言われて……」
「煩い!」
なんか中二病患者もいたので、とりあえず一喝して黙らせた。
まあそんな感じで道中騒がしくしながら族長の家の敷居を跨いだ。ログハウスのような家だな。いや、精霊族の集落は全体的にログハウスか、木々の上に家を構えている。
流石はエルフやダークエルフがいるだけあってテンプレ通りだ。
まあそんな中でも、族長だけはあってどの家よりも広い。そして、会議室に使われてるような大広間に通される。直座りのようだ。勿論座布団は用意してくれたけど。
正面に族長、右端に見知らぬ四人。左端にハルラス、クーリンディア、エアルリア、ラーニャ。そして俺の右にキアラ、左にラキアが座った。
「本当に集落にニンゲンを通して宣かったのですか?」
「えぇ。厄介事にならなければ良いのですが」
「カー! たかが一人だろ? いざとなれば潰せば良いんだよ!!」
「貴方は楽観的過ぎます」
と、左端にいた老いたエルフ、ダークエルフ、ドワーフ、妖精が騒いでいる。老いてるとは言え、人間で言う四、五十歳なので、実年齢はかなり行ってるだろう。あ。ドワーフは髭面で見た目年齢も全然分からん。
ここから先は鑑定するのは、失礼になるし控えているので、実年齢は分からない。まあバレなければ良いのだが、鑑定したのがバレたら、余計な不和を生むしな。
「儂が許可したのだ。何かあれば儂が責任を持つ。アーク殿、すまぬな。元老院達が」
族長の一声で四人は大人しくなる。て言うか元老院だったのか。
「さて、アーク殿。我等と友好を望み来たようだが、目的は何だ?」
空気が変わる。族長が俺を値踏みするように見て来る。にしてもエアルリアと同じ金髪なんだな。今更だけど。もしかして血縁者か? 同席もしているし。
「まず、最初に言っておくと俺は転移者だ」
「有り得ませんわっ!!」
噂をすればなんとやら。ご自慢かどうかは分からないがツインテールを揺らし金色の双眸で俺を睨んで来る。
「何が有り得ないんだ?」
「聖人は黒髪黒目と決まっておりますが、たまに金髪もいらっしゃるようですが、貴方は異端です」
異端は酷くね? にしても金髪ってのは外国人かね。
「それって地球の日本から転移して来た連中じゃないのか?」
「えぇ。言い伝えではそうなっておりますわ。約2000年ニンゲン達との関わり断っておりますので、実際はわたくしもお目に掛かれておりませんが」
「じゃあ現在の転移者は、こんな灰色髪の灰色目でおかしくないんじゃないか?」
「それは……」
エアルリアが渋面で閉口する。
「なーんて、今も恐らく基本は、黒髪黒目だけどな」
「なっ!? だ、騙したのですか?」
エアルリアが顔を真っ赤にして目を剥く。
「いや、騙してはいない。『基本は』って言っただろ? 染めてカラーコンタクトをすれば灰色髪の灰色目は可能だ。こっちの世界では厳しいが地球の技術なら自然にそれが出来る」
「では、本当に……」
「とは言え、俺は地球の日本から転移した訳ではないがな」
「先程から揶揄っていらっしゃるのですか?」
やたら突っ掛かって来るな。戦闘中から思っていたがお嬢様口調で高飛車だ。
「人の話をちゃんと聞かないからだろ? 俺は転移者だが地球の日本から転移して来た訳ではない」
「地球の日本以外の転移者?」
「そんなのあるのかナ?」
クーリンディアとラーニャが首を傾げる。
「それは真か?」
族長も疑いの眼差しを向けて来る。
「て言うか、鑑定できる奴いないの? 鑑定すれば一発だろ? 俺の称号に転移者ってあるんだから」
「それが、先の戦闘の最中に鑑定させて貰ったが弾かれた。鑑定遮断を持っておられるのか?」
何か苦いものを口に入れたかのよう言う。
「持ってねぇよ。勿論鑑定を遮断する魔道具もな。鑑定出来ないおたくらの能力不足で疑われても困るんだがな」
「アーク、友好はどうしたのですか?」
「主様は口が悪いからな」
俺の右に座ってるキアラはボソっと呟き、左に座ってるラキアがやれやれというジェスチャーをする。
イラっ! ラキアの態度にちょっとイラっと来た。だが、お仕置きは後にして……、
「これは失礼しました」
一応頭を下げておこう。
「能力不足は事実だしな。他に客観的に転移者と思われる何かはおありか?」
って言われもな……そんなものはないな。沙耶だったら精霊契約してるし証明できそうだけど。
エアルリアが普通の人間に精霊契約なんて有り得ないって言ってたし。まあただ蔑んでるだけとも言えるけど。
「これは証明になる? ファーレ」
「ディスファーレと申します」
俺が名前を呼ぶと頭から一度下りて来て、右手の羽根で顔を隠し頭を下げる。鳥の作法? 確かに優雅さは感じるが教えておらんぞ。挨拶が終わるとまた頭に戻った。
「神鳥ですな」
「俺は、ファーレの卵を見つけ触れた時に、魔獣契約をすっ飛ばして、いきなり霊獣契約のスキルを手にした」
「なるほど。それならとりあえずは認めよう」
やっぱチョロ種族じゃね? 神鳥の卵を偶々見つけるなんてほぼ無いだろ? まあ実際あった事だけど奪ったとかのが、まだ信憑性がある。
「そりゃどうも」
その後、異世界転移の事を掻い摘んで話した。
「なるほど」
族長は唸るように頷き、他の面々もそれぞれ無表情だったり、有り得ないだろと言った感じだったり、考え込んでいたり様々だ。
「俺が望むの二点。一点目、魔王に対抗する秘宝を見せて欲しい。出来る事なら譲って欲しい。もう一点は、世界崩壊を防ぐには何をすれば良いかまだ分かっていないが、それがもし精霊族の力が必要だった場合、それに備えて今のうちに友誼を結んでおきたい」
「アーク殿、確認するが今のとこ魔王を討伐する気はないのですな?」
「ああ。崩壊を防ぐのに必要なら討伐するが、今のところ考えていない」
「ならば、一つ目は無理だな。魔王と戦う転移者のみに授けるものです」
「そうか」
何なのかめっちゃ気になるが仕方ないか。
「もう一つは、此処での滞在を許そう。己の対応を持って他の面々を納得させる良い」
「分かった」
「では、集落を周るに必ず案内を付けよう。アーク殿と戦ったハルラス、クーリンディア、エアルリア、ラーニャだ」
「と言う名目のお目付け役だな」
「端的に言うとそうだな」
あっさり認めたな。
「ククク……吾輩手ず……いや、預言書から案内を。ついでに黄泉の道への案内もしよう」
「宜しく頼むぞ」
「お爺様……いえ、族長の命です。宜しくお願い致しますわ」
「ボクも宜しくネ」
「族長、一つだけ良いか?」
「何でしょう?」
「お目付けは仕方ないので良いが、ハルラスは除いてくれ」
「これは神々の妨害か!? 吾輩の崇高さが伝わらぬとは」
ハルラスが目を剥き何かを言ってるが、意味が分からない。
「こんな感じで言い回しが何を言ってるか分からない」
「分かりました。ハルラスを除いた三人に案内をさせましょう」
よし! 中二病患者を排除できたぜ。