EP.09 スカイドラゴン戦を開始しました
最強生物の一角ドラゴン。
それは星々の世界でも月光の世界でも変わらない。
ただ、ドラゴンと一口に言っても種類は様々だ。
例えばソイルドラゴンは、非常に硬く守りに長けているが攻撃力は低い。ファイアードラゴンは、炎のブレスや鍵爪の威力が高いが守りが薄い。
そうなると通常のドラゴンの方が、バランスが取れていて厄介だったりもする。かつてフルダイブ型MMORPGのFFOで苦労させられた魔物だ。
さて、ではスカイドラゴンは?
守りも薄いし、攻撃力も無い。しかし、空を飛んでいる事から厄介極まりなかった。魔法系キャラやボーガンを扱うエドをプレイキャラにしていれば苦労しなかっただろうが、ダークではかなり厳しかった。
とは言え、背中に乗れれば簡単に処理出来た。複数いても一体倒した瞬間に次のスカイドラゴンに飛び移れば問題なかった。まあ上手く飛び移れるかタイミングが重要視されたが。
そうこの世界でワイバーンを相手にしたようにすれば良いだけだ。まあワイバーンより遥かに強いが。
それとこの世界はワイバーンを何故か飛竜なんて呼ばれていたが、本来の飛竜はこっちだ。
さて、問題は今回200体もいる事だ。空中戦に関してはまあ問題ないだろ。何故ならこの世界で、俺は魔力で空を飛ぶ事が出来るようになったのだから。
しかし、200体もいるとなるとMPが保たない。早く処理しようとすれば闘気も多く使うだろう。MPは枯渇しても問題ないが、闘気は枯渇してしまうと意識を保てなくなる。
悩みどころだな。
まあ一番有難いのは、此処を通り掛かったってだけだ。しかし、200体もの大群が偶々通り掛かるか?
精霊族の反応から、そんな事はないようだし。
「ちっ! やっぱりか」
スカイドラゴン達が一斉にブレスを吐き出した。
「ラキア!」
「分かっているのだ。<水結界魔法>」
ラキアが広範囲のドーム状の結界を張る。スカイドラゴンの吐き出したのは炎なので反属性により防げた。
「ラキアは全員を守っていてくれ。キアラは上で処理するぞ。ファーレは不服だろうがラキアの頭にいろ」
そう言って俺は飛び発つ。
「分かりました。ウチも戦います」
「我が守ってやるのだ。安心して戦っていろ。だが、不服とは何なのだ!?」
「御心のままに」
キアラも追い掛けて来た。
「<ライト・ファング>、<レフト・ファング>」
闘気剣を飛ばし二体を倒すと適当なスカイドラゴンの上に乗る。
「<炎槍魔法>、<炎槍魔法>、<炎槍魔法>、<炎槍魔法>」
キアラは流石は妖精族ってとこか。空中で次々に魔法をぶっ放しスカイドラゴンを処理して行く。
「吾輩の神々に祝福されし槍を受けるが良い」
なんか中二病患者も空を飛び槍を突き刺しまくってるな。
「何でお前もいるの?」
「吾輩は妖精で……」
「うっさいよ」
言わせないよ!!??
猫じゃなきゃOKって訳じゃないぞ。
「<バインド>、<加重魔法>」
ハルラスは木の精霊の力により、数体のスカイドラゴンをまとめて木の根を巻き付かせる。俺の時は『食らい尽くせ』とか言ってなかった?
次にたぶん加重を上げたのだろう。一気に落下して行った。危ねぇ~、あの魔法は俺に使われていたらスピードが失われていた。
やはり、長年生きてるだけはあって色んな戦法を持っているんだな。
「ククク……ハーハッハハハ! 冥府の手より深淵へ誘おうぞ」
加重を上げて落としただけだよね? 深淵って言うか普通に地上だよな? 途中まで感心していたのに最後の中二病台詞で台無しだ。
「<炎嵐魔法>」
キアラは広範囲炎魔法で複数体のスカイドラゴンを焼き尽くす。こっちも順調に倒してるようだ。
俺一人じゃ厳しいし助かる。
ちなみに俺も横目で二人を見ながらスカイドラゴンの背中を斬り咲き、次のスカイドラゴンの背中へ飛んで移動してを繰り返しながら倒している。
ワイバーンみたいに闘気を籠めて踏んだだけで倒せる程、簡単な相手ではないな。めんどくさいが、風魔法で空を飛べるので多少楽出来ている。
プスプス……!
何か気の抜ける音がしたので、そっちに目を向けると炎の矢がスカイドラゴンに刺さっていた。
クーリンディアがいつの間にか再び霊人一体して、炎の矢を放ったのだろう。だが、悲しいかな。クーリンディアの能力じゃ簡単には倒せない。まあそれでも確実にダメージを与えているので、いずれ一体は倒せるだろう。
「水剣」
続けて空中に上がって来た霊人一体しているエアルリアが短剣の刀身を伸ばしスカイドラゴンに斬り掛かるが、此方も表面を傷付けるだけで、倒せていない。まあ確実にダメージは与えているが。
そして、一度斬り掛かると下に落ちて行く。
「行くヨっ!」
下で待ち構えていたのはラーニャだ。ラーニャは落ちて来たエアルリアを槌で打ち上げる。こりゃ時間掛かるな。
そうして六人がかりで、スカイドラゴンを処理して行くが、やはり数が多い。当然と言えば当然だが、最初にラーニャとエアルリアが脱落。疲れ切って動けなくなる。
次にクーリンディア。
「吾輩は妖精であ……」
と、言い掛けてハルラスも落ちて行く。霊人一体は、かなりMPを消費すると沙耶が言っていたな。飛んでるだけで消費しているのだから尚更きついだろう。
「<炎刃魔法>、<炎刃魔法>、<炎刃魔法>」
キアラはMP消費が炎槍魔法より少ない炎刃魔法に切り替えているとこを見るに限界が近いのだろう。
そう言う俺もだ。精霊族と争っていたせいで結構な闘気やMPを消費してしまい、それが響いていた。
「はぁぁぁっ!」
それでも気合で斬り咲き、次のスカイドラゴンの背中に移動する。
あれからどれくらい残っているのだろうか? 残り数十体に減ってはいるが。そろそろ限界が近い。
そう思っていたらクラっと来て、足を滑らしスカイドラゴンの背中から落ちてしまう。もうMPも無いな。これじゃ空も飛べない。参ったな。
「アーク、大丈夫ですか?」
「良く耐えたのだ、主様よ。感謝してやるぞ」
両側からキアラとラキアが支えてくれる。
「お疲れ様です、主上」
ファーレは、ラキアの頭からキアラの頭に移動しつつそう言う。余程ラキアの上は嫌なのだろう。
「まだ残っている」
「もう大丈夫ですよ、他の精霊族達が重い腰を上げました」
確かに炎、氷、雷、風など様々な魔法が飛び交う。それに妖精族の何人かが空を飛んでいる。
「腰を重くしたのは誰だ? 姉上が感電なんてさせるからだろ」
「貴女もさせたでしょう? それにあんな底辺種族には良いお灸です」
「いや、姉上がキレるから我も協力してやったのだぞ」
「貴女も怒っていたから協力したのでしょう?」
「いや、我は仕方ない事だと分かってやってたぞ。姉上と同じにするでない」
「なら、アークが攻撃されてるのは頭に来なかったのですか?」
「それは……。いや、それとこれは別なのだ」
左右でやいやいやりながら地上に降り立つ。久々の地上だーー!!
「ニンゲンよ、集落の者達を守る為に戦い感謝する」
族長が頭を下げて来た。
「の、割には『ニンゲン』って悪意ある言い方だな」
「これは失礼しました。確かアーク殿でしたな。我等は貴殿を歓迎しよう」
「キアラ、一つ良いか?」
「予想付くので止めてください」
キアラが渋面で返して来る。
「精霊族ってのはチョロいのしかいないのかーーーっ!!!」
「だから、止めてくださいと言ってるでしょう!!?? 外道アーク」
キアラが目を剥く。
「外道!?」
「外道主? 格好良いではないか?」
「どこがだよ!?」
とまぁわいわいやりつつではあるが、当初の目的は果たされそうだ。