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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十三章 レオン獣王国の武術大会
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EP.08 残念姉妖精がキレました

 気絶したクーリンディアを抱えエアルリアがいるとこにやって来てクーリンディアを降ろした。


「貴様、人質にする気か? 流石ニンゲンだな」


 族長が何か言ってるが無視だ。


「人族の上位種たる吾輩を無視するでない」


 再びハルラスが木の根を伸ばして来るが……、


「<下位火炎魔法(ファイヤー)>」


 炎の魔法剣で斬り咲く。

 その後、ラーニャのとこへ行き抱き上げるとエアルリアとクーリンディアのとこで降ろす。

 ちなみにだが、三人共気絶させた時点で霊人一体(ポゼッション)は解け、精霊は引っ込んでいる。

 沙耶と湖の精霊レイアースから話を聞いたが、余程我が強い精霊以外は事前に命令していないと意識を失った時に引っ込んでしまうとか。

 つまり、気絶した後も暴れろとか命じていなかったって事だな。ちなみに沙耶は時々寝てる間、見張りをしてくれと命令していた事があったので、沙耶の意識がなくてもレイアースが活動している事があった。


「ファーレ、加減はしたけど念の為に回復を頼む」

「御心のままに……<回復魔法(ヒール)>、<回復魔法(ヒール)>、<回復魔法(ヒール)>」


 念の為に俺の魔力を温存。ファーレは三人のとこに飛んで来ると回復魔法を唱え、再びキアラの頭に戻って行った。


「何の真似だ?」


 族長が唸るように言う。


「不毛過ぎる」

「何?」

「何故無駄な争いをしないといけない? 俺はこんな事の為に来たんじゃない」

「貴様らニンゲンはそう言って我等を隷属する」

「だったら、何でこいつらに俺の相手をさせた!?」


 族長を睨み付ける。


「それは……」

「若い者の実戦経験か?」

「そうだ」

「俺らニンゲンを蔑んでいるようだけど、お前らはどうなんだ?」

「何が言いたい?」

「そうやって自分の身に引き籠って(おご)り高ぶってるんじゃないか?」

「なん……だと!?」


 族長が目を剥く。


 『貴様ー』やら『ニンゲン風情が』やら『三人を倒したから良い気になりおって』やら煩いな。周りがめっちゃ騒いでいる。

 ウザいので再び威圧して黙らせた。


「事実だろ? 俺がその気になればこの三人は一瞬で死んでいたぞ。まさか四人で囲めば勝てると思ったか? それで驕っていないと言えるのか?」

「黙れ! ハルラスをやっていないと言う事はハルラスには敵わないと言う事だろ? 殺れ!」

「血塗られた戦いに終わりが来た。ククク……さあ恐れるが良い。万物が放出せし吾輩の力をまだまだ汝に見せよう。そして……」

「そう言うの良いから」


 は~~~。めんどくせー。中二病を相手するのマジでめんどくせー。てか、それが驕ってるって何故気付かないかな?

 まあ確かにハルラスの意識を奪うのは少し時間が掛かるかもしれない。なので、一瞬で三人を意識を刈り取って話し合いに持ち込もうとしたのに逆に増長していない?


「形式美が分からぬものよ。ならばドライヤード、喰い尽くせ」

「お?」


 木の根が体中に巻き付いた。確かにこれ喰い尽くすと言えるのか? 中二病語は分からん。


「ふん!」


 闘気を全身に流し木の根を引き千切った。


「なに!?」


 ハルラスが目を丸くする。


「だから、不毛だって言ってるんだよ。族長さんよ、無駄な事は止めないか?」

「無駄だから大人しく隷属されろと言いたいのか?」

「友好を望んでると最初から言っております。どうか話を聞いてください、族長」

「そうだ! 聞いてやるのだ」


 ここでキアラとラキアも言葉を尽くす。


「それともこの不毛な戦いをまだ続ける? ぶっちゃけハルラスクラスが十人以上いないと俺は止められないぞ」

 『バカな事を言う』やら『ある筈がない』やら『ハッタリだ』やら言ってるな。マジで煩いなこいつら。

 と、そこで三人が目を覚ました。


「私は……一体……」

「どうなったのヨ?」

「わたくしは……」

「よ! 起きたか? 無駄な争いをしたくないんだけどさ。君達も族長を説得してくれない?」

「「「っ!?」」」


 パっと起き上がる。この様子じゃ無理か。


「もういい加減にするです。ウチも頭に来ました。妹と見捨てた時点で決別したかったのですが、アークの頼みで耐えていました。しかし、我慢の限界です」

「姉上よ、我も仕方ない事だって分かってるから、もう少し耐えるのだ」


 ヤバいなー。キアラが我慢の限界のようだ。暴れ出すんじゃね?


「いいから行きますよ、ラキア」

「は~……仕方ないな。我に合わせるのだぞ。<水嵐魔法(ウォーター・ストーム)>」

「誰に言ってるのですか? <感電魔法(スタン・ボルト)>」


 マジか!? 広範囲攻撃かよ。俺も巻き込むのか?

 咄嗟に光陽ノ影(こうようのえい)に闘気を流しバリアを張り、ついでに傍にいるクーリンディア、ラーニャ、エアルリアも守ってやる。

 恐ろしい合体魔法だ。ラキアの広範囲水魔法にキアラの感電魔法を合わせ広範囲を感電させるものだな。水は電気を流すものだし。

 死屍累々状態だ。死んではいないが、精霊族達がその場に倒れる。意識を失っていない者もいるが、痺れて暫く立てないだろうな。


「同胞ながら恐ろしい事をする」


 あ、一人立ってる奴がいる。ハルラスだ。木の根を地面に突き刺しアースにして電気を地面に逃がしたようだ。やるじゃねぇか。中二病だけど。


「何故だ?」

「あ?」


 クーリンディアが俺を睨み付ける。


「どうしてボクらを助けるのヨ?」

「どうして助けないって選択肢になる?」

「質問に質問で返さない頂きたいですわ!」


 ラーニャの問いに答えるとエアルリアが食って掛かる。


「何度も言ってるが、俺は話し合いをしたいだよ。なのに何故全滅させないといけない? 君ら頭大丈夫? 考えれば分かるだろ? 考える頭ないの?」

「それが話し合いをする態度か?」


 クーリンディアが更に睨んで来る。


「俺もいい加減頭に来てるからだよ。話し合いをしたいと散々言ってるのに問答無用で襲って来やがって」

「なら、何故キアラ達をけしかけるのヨ?」

「はぁぁぁ!?」


 呆れて物も言えんな。続けてエアルリアが口を開く。


「何ですの?」

「妹を見捨てられ、助けた俺が話し合いをしたいと言ってるのに聞く耳を持たない。それでキレるなって方が無理だろ? 良くここまで我慢したよ」

「それは我ら同族を守る為……」


 どうでも良いが、この三人何故順番に喋るんだ?


「それはお前らの都合だろ? 見捨てられた方の事を何も考えていない」

「それは……」

「……仕方ないんダヨ」

「えぇ、そうですわ」


 三人が項垂れる。まあ分かってはいるんだろうけどな。一族を守る為に仕方ないと言い聞かせるしかないのだろう。


「にしても参ったな。キアラがブチギレたせいで話し合いどころじゃないな。族長さんも倒れて……」

「どうした?」


 俺の様子の変化に気付いたのだろう。クーリンディアが問い掛けて来る。


「何か大群が此処に来ている。これいつもの事か?」


 気配完知で感じた北の方角を見ながら返す。


「大群?」

「来た!」


 あれは……スカイドラゴンか? なんて数だ。空を埋め尽くすような数だ。


「なっ!?」

「何でこんなに!?」

「有り得ませんわ!?」


 三人は驚愕に目を見開く。


「つまり、あれは害獣か? 此処を襲ったら始末して良いか?」

「……ああ」

「頼むヨ。こんな事言う義理はないのかもしれないけど、今のみんなじゃ戦えないヨ」

「非情に不服ですが、お願い致しますわ」

「了解」


 俺はスカイドラゴンを見据える。たぶん200体はいるな。は~~めんどくせー。と言うか全部処理できるかな? 此処の連中を相手するのに闘気もMPも結構使ってしまった後だしな。

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