EP.06 半端な四大精霊でした
「俺は確執のある人族だから仕方ねぇ。だが、この双子は同族だろ? 何、攻撃してんだ?」
「……裏切り者に攻撃をして何が悪い?」
悪びれもせずハイエルフが言う。
「黙れ! そもそもてめぇらがラキアを見捨てたのだろ? それを棚上げにして語るな!」
「おぉ、それでこそ我が主様なのだ。我は感謝してやるぞ」
威圧を強める。てか、後ろで感激してる奴がいるが、何故偉そうなんだ?
「ぐぬっ! クーリンディア、ラーニャ、エアルリア、ハルラス。やれ」
無視かい。そうですか、そうですか。もう良いや。やってやろうじゃないか。と、思うがやはりあまり争いたくないな。
俺は光陽ノ影と闇夜ノ灯は、折れたので替わりに短剣を出し二刀流で構えた。
相手側は呼ばれた四人が前に出る。
「はっ! 侵入者は私が始末します」
弓を放ってた三つ編みサイドポニーテールのダークエルフか。近くで見ると体の線が男っぽいな。
「ニンゲンを始末するヨ」
槌で攻撃して来たおかっぱドワーフだな。
「はい、族長」
エルフかな? 体の線から女だと思う。歳はこれも十歳くらいだな。金髪ツインテールだ。まだ幼いながらも流石はエルフ。整った顔立ちだ。
服装はエルフらしい緑色を基調としている。クーリンディアと違いタンクトップではないけど。普通のシャツだ。ただ何故にスカート?
そのエルフが、短剣を二刀流に構える。いや、スカートでも良いんだけど、短剣ってスピード重視じゃないの? 動きが阻害されない? ミニスカートならともかくロングスカートだし。
「遂に右手の封印を解く刹那がやって来た」
最後は中二病の槍使いハルラスだな。て言うかエク〇アか? それでは丸で刹那って人がやって来る言い方だぞ。
「メインは若いお前らに任せる。実戦経験の糧にしろ。他の面々は援護してやれ」
この族長と呼ばれたハイエルフの野郎、俺を舐めきってる。めっちゃイラ付くなぁ。
「来い! 火の精霊バルカン」
≪おぉよ!≫
「<霊人一体>」
クーリンディアが精霊を呼び出すと霊人一体を行うと手に持つ弓が燃え盛った。
後ろにスタ〇ドのように付いた炎の魔人と言うべき精霊は上半身裸で皮膚が赤い。髪は逆立っており燃えてるようだ。スーパー野菜人ゴットのようだな。赤いだけではなく燃えてるけど。
「地の精霊グノーム、出番ダヨ」
「ドドンと承知」
「<霊人一体>」
背後に付いた地の精霊グノームとやらは、ゴーレムのようだ。岩の肉体に顔をしている。目の部分は何もない……風穴が空いてるようだ。
そして霊人一体した事で、手に持つ槌が岩で覆われ一回り大きくなった。
「水の精霊ウィンディーネ、行きますわよ」
「承知致しました、エアルリア様」
「<霊人一体>」
エアルリアやらの背後に付いた水の精霊ウィンディーネとやら一言で言えば青い。体も服も目も髪も青い。バルカンは目が黒かったけど。
そして髪が蠢く水流のようだ。体はそれより薄く水色に近い色で、指先が水のようにポツポツと離れて行くような不思議な現象をしている。
にしても火、地、水ね。四大精霊か。となると次は……、
「ククク……今こそ吾輩のライトアァァァムの封印が解かれる時」
「ごたくは良いよ。さっさと出せよ」
つい口を挟んでしまった。
「邪の精霊ドライヤードよ、吾輩の俄然に顕現せよ」
「だ、か、ら~、わたくしは木の精霊って言ってるでしょ~」
「<霊人一体>」
ハルラスの背後に付いた木の精霊ドライヤードは、木とは思えない美しい女性だ。少し神秘的に光っている。薄い金色の髪で服はエルフのように緑。耳は長くないが目はキレ長だな。
ぶっちゃけ何であんな中二野郎と契約してるんだ?
それに本当に右腕の封印が解けたようだ。右腕に巻かれていた包帯が木の根に変化した。丸で木の根が腕に絡み付いてるように。と言うか他の面々は武器だったのに、何でコイツは右腕だけ?
て言うかそれよりも……、
「何故そこで木なんだよ!? 普通は風が来るとこだろ? 金はどうした?」
「「「「はぁ!?」」」」
つい声を荒げて突っ込んでしまった。四人が首を傾げる。
「アーク、何を言ってるのですか?」
「主様よ、何を言ってるのか分からぬぞ」
クッソー、誰も分かってくれない。後ろにいるダメ姉妹すら分かって貰えない。悲しいなぁ。
「四大かと思わせておいて五行かよ。金の精霊がいないけどな」
「訳の分からぬ事を」
クーリンディアにそう返されてしまう。訳が分からないのはこっちだよ。何故最後に風の精霊を出さないんだよ?
名前もその流れからシルヴェストルと分かるだけに残念過ぎる。
「それにしても霊人一体しても驚かいのですね?」
エアルリアが問い掛けて来た。
「仲間に精霊と契約してる奴がいるからな」
「エルフでも、奴隷にしてるんダネ」
ラーニャが何か意味分からない事を言ってるぞ。何故かエルフ限定。
「お前ドワーフだろ? そのドワーフが契約しているのに何故にエルフ限定なんだ?」
「ボクはエルダーダワーフ、ダヨ」
どっちでも良いよ。
「じゃあドワーフを奴隷にしたんダネ? ドワーフで精霊契約できる者は少ないんだけどネ」
「てか、奴隷じゃねぇし。しかも人間だし」
「虚言を吐く輩は、吾輩が断罪しよう」
「事実だっつーの!」
ハルラスがまた意味不明な事を。
「ニンゲン如きが精霊と契約出来る訳ないだろ。戯言も対外にしろ」
「まあただの人間ではなく転移者だから可能なのかね? 知らんけど」
クーリンディアの言葉に相手しやる。
次にエアルリアが、俺を睨むように口を開く。
「聖人ですって? それこそ有り得ませんわ」
「え? 聖人って精霊契約出来ないものなの?」
「いいえ。そうではなく、わたくし達を捕縛しようとする者の仲間に聖人がいる訳がないでしょう?」
勝手言ってくれなぁ。
「なぁキアラ、コイツら世界の中心は自分達だとでも思っているの?」
「そうなりますね」
「まあそれはキアラも同じだけどな」
「何故ウチまで同じなのですか? 失礼が過ぎますよ? ロリコンアーク」
「最初に会った時を思い出せ! 鳥頭妖精が」
「次から次へと失礼な呼び方ばかり」
キアラが目を剥く。
「なら、ロリコンアークとかほざくな」
「では、鬼畜アーク」
もっと悪いわ!
「実際我らは外に出ておらぬからな。他の事は何も分からぬのは当然だ」
「だろうな」
妹のが良く分かってるな。て言うか妹のが頭やっぱ柔らかい。偉そうだけど。
「貴様ら! 先程から私達を無視し、好き勝手良いやがって!!」
「いや、事実だろ」
クーリンディアが激昂しだす。
「もう良いです。此処で倒させて頂きます」
「そうダネ」
「吾輩の解き放たれし右腕でラグナロクへと捧げよう」
クーリンディアにエアルリア、ラーニャ、ハルラスが続く。
は~めんどくさ。霊人一体した四人を相手するのかよ。しかも周りを囲む精霊族から援護攻撃が来るんだろうな……。