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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十三章 レオン獣王国の武術大会
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EP.05 精霊族達と争いました

「ようやく離したか。ククク……そんなに吾輩の右腕が恐ろしいか」


 槍から手を離してやったらやったで、煩いなコイツ。


「それより通してくれよ。集落に用があるんだ。中二病と話す気はない」

「アーク、友好的はどうしました?」

「いや、中二病と話すと疲れそうだし」

「それは分かりますが……」

「ハルラスは面白いだろ? 主様」


 面白くねぇーよ!


「ええーい! 吾輩のホーリーランスにて汝を討滅せん!!」


 連続突きを行って来る。その全てを見切り紙一重で避ける。て言うかさっき漆黒の槍って言ってなかった? 反属性になってるぞ。

 それにしても長い槍だな。こいつの身長が150cmくらいありそうだけど、それより長い。

 それを見切られているとは言え、自在に操っている。これは種族特性通りではない特異な妖精族だな。

 妖精族なだけはあり、空に浮き自分の身長より長い槍を地面に擦らせる事はしないのだな。武闘派妖精だけあり良いチョイスかもしれない。


「やるではないか。洗脳の刻印を刻むだけはある。人はまたその過ちを繰り返そうとしてるのか?」

「洗脳関係ないし。て言うか、そもそも争う気ないんだよ。通してくれない?」

「侵入者を通すものか。吾輩の同胞を誑かしたが故に一番槍で来たのだ」


 それで獲物が槍? またつまらん事を言ってるなこいつは。


「これならどうだ! <幻多魔法(ファントム・メニー)>」


 キアラも使った魔法だな。ハルラスってのが十人に増えて見えた。しかし魔力察知や気配完知の併用でどれが本物か分かる。故に槍の連続突き十倍に増えようが紙一重で避け続けられるな。


「やるではないか。これは吾輩の封印されし……」

「良いから通してくれない?」

「貴様! 形式美と言うのが分からぬのか!?」

「知るかよ。つうか邪魔だし無駄だ」

「だから、友好的にするのではないのですか?」


 中二病はマジで疲れるって。


「ハルラス、止めるのだ。我が主様は、他の人間とは違うのだ」

「そうです。幼女趣味ですが、アークは他のニンゲンとは違います」

「幼女趣味は余計だ!」

「同胞がこうなるとは哀れだ! 吾輩の深淵に抱かれし女神の槍にて救済してやる。待っておれ」


 聞く耳持たずで無駄な連続突きを行って来る。いや、突きだけではなく斬撃も混ぜて来たな。なかなかやるが槍は見慣れてるんだよな。エド、ユキ、サラの獲物だったし。

 つか、漆黒やらホーリーやら女神やら設定をコロコロ変えるなよ。


「……主だと?」


 反応遅くない?


「そうだ! 我は身も心も主様に捧げたのだ」

「貰った覚えねぇーよ」

「禁足地に侵入せし原始的な生物よ、吾輩の同胞に非道な真似を」


 あーなんかややこしくなった。やっぱラキアを連れて来るべきではなかったな。

 そんな事を考えてると頭の中で警報が鳴り響く。これは危険察知?

 咄嗟に右に飛ぶ。


 ブスっ!!


 次の瞬間、矢が地面に刺さっていた。今の何だ? 気配完知に全く反応がなかった。隠密能力が高いのか?

 俺は振り返り、矢を放った奴を目に捕らえる。

 ダークエルフ? 耳が長く肌が黒い。10歳くらいか? ダークエルフも長命種だしもっと歳行ってるかもしれないけど。

 灰色の髪でサイドを三つ編みにしたポニーテール。しかも三つ編みを片側二本、計四本ある。セットが大変じゃね?

 服装は緑のタンクトップに緑のズボン。エルフらしい恰好だな。タンクトップだけど。


 女か? 10歳くらいだと判別が難しいな。ましてや距離にして40mくらい離れている。

 あ、移動した。目で追えるが気配が希薄だ。これは厄介だな。

 ハルラスってのは気配が強いので、余所見しながらでも躱せるが、このまま人数が増えたらヤバいな。

 色んな気配に気を取られてダークエルフの弓矢を躱せないかも? 実際何人もの気配が近付いている。多数戦になるのか。精霊族マジめんどくせー。


 精霊族達の気配が近付く中で、特に近いのは上に感じた。

 そう思った瞬間、俺の中でけたたましい警報が鳴る。危険察知だ。

 つうか分かってるよ。気配完知のが先に察知しただろ? うるせーよ。

 俺は咄嗟に右に飛ぶ


 ズドォォォォォォォォンっ!!


 と、俺が先程までいたとこに巨大なハンマーが打ち付けられる。軽く地響きがする程の衝撃。


「ちっ!」


 それを放った者が舌打ちする。

 これはドワーフだな。羽根もないし耳も長くない。消去法でドワーフだ。武器もそれっぽいし。

 ただ身長が120cm程かな? 小さい。そのせいで年齢が分からない。7歳くらいだけど、ドワーフだから人間より小さいしな

 だが、そんな小さい体躯で打ち付ける面が直径40cmくらいある巨大ハンマーを軽々持ってるのが恐ろしい。

 茶色の髪でおかっぱ頭だ。体の線から、たぶん女だな。


「「ラーニャっ!?」」


 キアラとラキアが同時に叫ぶ。いきなり目の前に現れたので驚いたのだろう。

 やはり女っぽいな。ラーニャって名前からして。


「……裏切ったのダネ?」


 冷徹な眼差しで、底冷えする声音で語り掛ける。こんな小さいのに恐ろしい。背が低いのを考慮しても10歳前後ってとこだろ?


「裏切ったのは、そちらからでしょう?」


 キアラが返す。確かにそうだけど、それだと裏切られたから侵略しに来たと取られそうなのは、気のせいかな?


「邪法にて洗脳を受けているのだ! 吾輩がきゅうさ……」

「今、ボクが話してるのダヨっ!!」

「……はい」


 妖精族のハルラスが攻撃を止め、会話に加わるがバッサリ切られ、しゅんとし出した。

 って言うかボクっ娘かい。


「腹いせにニンゲンを連れてに来たと?」

「違います!」

「我を助けてくれた恩人を案内してやってるだけなのだ」

「やはり連れて来たのでしょうヨっ!!」

「ですが、友好的に話したいと彼が……アークを言うのです。敵対する意思はありません」

「……つまり騙されたんダネ?」

「主様は騙す人間ではないのだ」

「ある……じ、さまぁ!?」


 せっかく説得しようとしてたのにラキアのせいで台無しじゃね? めっちゃドスの効いた声音になったし。


「そうだ」

「ニンゲンを主にしたか? 精霊族の誇りはないんダネ?」

「誇りの為に我を見捨てたのは誰だ?」

「一族を危険に晒す事はできなかったのダヨ。当然それは分かるでしょうヨ?」

「ですが危険を承知で、アークは妹を助けてくれました。信用に値するから連れて来たのです」

「それが騙されていると言うのダヨ」

「違います」

「……って言ってるんダヨ。皆、どう思うヨ?」


 これ会話で引き延ばし仲間の到着を待ってたんだな。なんか囲まれているし。あ~最悪だ。


「裏切りだ」

「そうだ」

「キアラとラキアを追放とする」

「ニンゲンなどを連れて来おって」


 エルフ、ダークエルフ、ドワーフ、妖精、揃い踏みだな。二十人はいるんじゃないか?


「見捨てておいて追放とは良く言えましたね?」


 あーヤバい。キアラさんが怒ってる。怒気を孕んだ声音だ。やっぱコイツは沸点が低い。


「一族の為に仕方ないのだ」


 少し老け気味のエルフが前に出た。かなり歳行ってるな、たぶん。しかも代表で話す気なのか? ならハイエルフ?


「救ってくれた恩人が、話をしたいと言うのに聞く耳を持たないのが正しいのですか?」

「ニンゲンでなければ聞いたさ。ましてやニンゲンなどを主にする同族の言葉等聞くに値しない」


 ここでもラキアの言動が響いてるしー。


「それ以前に同族を見捨てる底辺種族が何を言ってるのですか?」


 あっちゃー! ここでも毒舌かよ。ラキアだけじゃなくキアラも邪魔だったな。


「なんだと!?」


 ハイエルフは目を剥き、他の面々の殺気が増す。


「事実でしょう? 引き籠って同族を助けもしない。それで良くもまぁ一族を危険に晒すなどと言えますね?」

「姉上止めるのだ。我はそこまで怒っていないのだ。主様は友好を望んでいる。抑えるのだ」

「いいえ! こんな底辺種族にもっと言ってやらねば」


 これが開幕の合図となった。問答は(しま)いと言わんばかりに一斉に攻撃が飛んで来た。弓だけじゃなく様々な属性の魔法もだ。それも囲んでいたので四方八方から。


「お前ら防げ!」

「えぇ。<光防御魔法(ライト・シールド)>」

「分かったのだ。<闇防御魔法(ダーク・シールド)>」


 俺は二人に近寄り、正面に光陽ノ影(こうようのえい)によるバリアを展開した。姉妹もそれぞれ後ろで防御魔法を展開し三角形を描くように囲み攻撃を防ぐ。


「てめぇら、いい加減にしろよっ!!」

「ぐっ!」

「ぬっ!」

「っ!」


 攻撃が止んだ瞬間、俺は殺気に闘気を乗せ、辺りを威圧した。ちょっと、いやかなり俺もキレた。

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