EP.03 イジり甲斐のある姉妖精でした
「姉上ばかり羨ましいぞ」
「じゃあラキアも」
キアラの頭を撫でると、ラキアがイジけたので仕方なしに頭を撫でてやる。
「ふふん! もっと撫でても良いぞ。主様なら許す」
「キアラのが可愛いな」
「何故だぁ!?」
「キアラ、抱っこしたいから来て」
「え?」
俺が腕を広げると、目を丸くし段々頬を染めだす。
「……分かりました」
渋々頷き俺の胸に顔を遠慮がちに寄せて来た。
「ほら~。この反応見たか? 姉のが可愛いだろ?」
「むむむ……確かに今まで見た事ないくらいに姉上が可愛かったのだ」
ラキアが眉を寄せる。
「そんな事の為に恥ずかしい事させないでください!」
更に顔を真っ赤にさせてパッと離れる。
「ラキアのように可愛くないって言われるより良いだろ?」
「アークは、やっぱり幼女趣味なんですね。正直引きます」
やはり毒舌家だ。
「<収納魔法>」
テーブルと椅子と、お茶にお茶菓子を出した。
「ちょっと遊び過ぎたな。まあ座れよ」
「主様の収納魔法は、良い物ばかり入っているな」
「それは同意ですが、いやらしい玩具とかもありそうですね」
「ねぇーよ!」
失礼な奴だな。毒舌も過ぎればウザいぞ。
「ほれお茶と菓子」
「では、頂きます」
「我も頂くのだ」
「ニンゲンの振る舞った物など、口にしないとか言ってなかったか?」
俺がニヤリと揶揄うように笑う。
「根に持つのは最低です」
「毒舌ばかり吐くのは最低です」
「ウチの真似をしないで欲しいですね」
「で、お前らマジで俺の奴隷になるのか?」
「アークが望むなら構いません。命懸けで妹を助けてくれたのです。全てを委ねても構いません」
「我もだ」
「毒舌を吐く奴に偉そうな奴は、いらんな」
「……気を付けます」
「主様が望むなら努力してやるのだ」
どっちもしないとは言わないのだな。絶対これ直さないな。
「そもそも奴隷になんてしないけどな」
「では、ウチらは此処に残ります。ただ、約束通り集落には案内します」
「さっきも言ったが、業腹だが主様に従うぞ」
「いや、何でお前ら極端なの? 奴隷か此処に残るの二択しかねぇじゃんか」
「では、どのようにすれば良いのですか?」
「我は配下でも良いぞ」
「まだ妹のが柔軟だな。残念姉妖精は頭硬いな」
「頭が硬いのは認めますが、残念姉妖精とか不本意な呼び方は、止めて欲しいですね」
「それに配下でも奴隷でもファーレを見習って欲しいな。必要以上の事を喋らない。実に良くできた従魔だ」
そう言ってファーレを撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。
「主上の御心のままに」
「そもそも普通の仲間で良くない? 世界中を周る予定だし、戦力は多いに越した事ないからな」
「アークがそう望むのでしたら。ウチは、妹を見捨てた同族の下には、いたくないので願ってもない事です」
「主様の御心のままに」
「ファーレ、一発かませ!」
「御心のままに」
そう言って火球を吐き出しラキアにぶつけた。が、無傷だ。良い装備してるし、そもそもファーレでは力不足だな。
「ファーレの真似をするなよ」
「今のはラキアが悪いですね」
「主様よ。すまぬ……そう怒らないでくれ」
ラキアがしゅんとした。
「で、普通の仲間で良いって言ってるのに主様呼びか?」
「心は配下でいても良いだろ?」
「まあ好きにしな」
てか、普通逆だろ? 奴隷とかが体は縛れても心までは縛れないって奴。
「同族といたくないロリババァ共を仲間にするのも悪くないか」
「良くそんなに酷い呼び方を次々に思い付きますね」
「はふ~~。もっと罵っておくれ」
だから変な方向に目覚めるなよ。キモいっちゅーねん。
「ロリババァがダメなら合法ロリ?」
「それは、幼女に手を出したい宣言ですか?」
そう切り返すか。まあ確かに手を出してもOKなロリって意味だけどさ。
「冗談はこれくらいにして」
「だから、何処までが冗談なのですか!?」
目を剥く残念姉。もう良いよ、その反応は。
「じゃあ明日、集落に行くから結界解いてくれるか?」
「分かりました」
「構わないぞ」
「それとアーク、これをお返しします」
そう言ってキアラが渡して来たのは、根本からポッキリ折れた闇夜ノ灯だ。
「もうこれ使えないな。気に入っていたのに」
「貴重なアダマンタイトです。それにまだ術式は生きていますので、何かの役立つかもしれません」
「生きて……いる?」
俺は首を傾げてしまう。って事はまだ使える? だけど柄と刀身が完全に分かれているのに使いようがないよな。
「えぇ。もしかしたら腕の良い鍛冶師なら修復が可能かもしれません。出来なくてもアダマンタイトなので、再び武器を作るのも可能かと」
「ふ~ん。なら一応持っておくか。<収納魔法>」
収納魔法を唱え、空間が割れ其処に闇夜ノ灯を突っ込む。
「それとスターディデュラハンの鎧と太刀があちらに。討伐したのはアークなのでお持ちください。あぁ、魔石も確りあります」
「分かった」
キアラが指差す方にスターディデュラハンの鎧と太刀が置いてあった。態々運んだのか。
まああれだけ硬いんだ。何か良い武具が作れるかもな。それか売れば良い金になるかもしれないし。
つか重っ! よく運べたな。妖精族は力ないんだろ? いくら硬くても重いなら武具に出来ないな。
「じゃあ今日は寝るか。岩の家を二人で使いな。俺は外で寝る」
「主様も中で寝れば良いだろ? ベッドも三つあるし」
「キアラが喜んで処理してくれるならな」
「……アークが望むのでしたら」
頬を染め嫌々言われてもな。
「だから、奴隷も配下にもしないって言ってるだろ? 俺が望むかどうかじゃなく、お前が望むかどうかだ」
「…………」
増々顔を赤くしてる。ほんとこっち方面でイジり甲斐があるな。
「我は望でやるぞ。主様と朝までだって」
「いや、ラキアはいらない」
「何故だぁぁ!?」
「このキアラの顔を見ろよ。顔を赤くして可愛いじゃねぇか。こういう方がそそられるね」
「むむむ……確かに」
「揶揄わないでください。では、お言葉に甘えて中で寝ます!」
まくし立てるように言い、さっさと中に入ってしまった。