EP.30 妖精族に会いました
未開の地に入り南下した。が、気持ち悪い。魔力の流れがおかしいのだ。これが人の感覚を狂わし迷わせると言うものだろう。そのおかしな流れに、魔力察知が反応しまくる。それ故、気持ち悪いのだ。
それでも魔力察知は便利だ。魔力の層が薄いような――感覚的な事なので言語化できない――感じがする方へ進む。
「主上、こっちです」
それに俺の頭の上で、神鳥であるファーレが方向を示す。俺も時々間違えそうになるが、ファーレのお陰でちゃんと進めている……と、思う。魔力察知のレベルが5しかないので、ファーレの方が正確ではないかと感じる。
それと気配完知も働き、うざい。そこらじゅうに魔獣がいるからだ。それの対処もしないといけない。
ああ、そう言えば危険察知のレベル4に上がった事で、頭の中で警報が鳴る。あのロリコン野郎が俺と対峙していた時、こういう感覚で危機を脱しようしていたのだと、今更に気付く。
ともかく、魔力察知、気配完知、危険察知のフル動員でマジで気持ち悪いな。闘気レベルが8なんだから、アルみたいな事ができれば、もっと簡単に進めそうなのに……。
色々試したが結局できなかった。アルは闘気解放と言うユニークまで達したがレベル8の時点でアレの方は出来ていた。なのに俺に、出来ないのはゲームと現実で違うせいか、それとも……、
「は~~」
溜息が出てしまう。たぶん俺が馬鹿なせいだろうな。ダームエルと戦った時もそうだ。結局死に掛けないと闘気に扱いを理解できなかった。
結局俺は何時になってもダークの肉体頼りなんだと思う。もっと闘気を上手く扱えるだろうと、思うがどうしても出来ない。
「今日は、もう休むか。ファーレ」
「御心のままに、主上」
どんだけ賢いんだよ。二月近くで『御心のままに』とか覚えているし。と言うか、そもそも俺もエーコもそんな言葉は教えていない。勝手に覚えて行く。
しかもだ。いつの間にか羽根が全て鮮やかな紅色に変わっていた。
「<収納魔法>」
俺は収納魔法で、エーコ作の岩の蔵型の家を取り出す。今はもう魔石を組み込み明かりも灯るし、ベッドやテーブルも用意している。
「ファーレは、何が食べたい? とは言え、俺には焼き料理しかできないけどな」
「妾は、ラック鳥を所望します」
妾って、ウルールカ女王国女王と被ってるぞ。って、それより……、
「共食いかよ!?」
「共食い? 妾を魔獣と同列する等、主上でも看過できませぬぞ」
「あ~はいはい。神獣様の御心のままに」
って訳で、先程襲って来たラック鳥を始末し、収納魔法でしまっていたので、取り出し焼いて食べた。
まあそんな感じで五日は彷徨ったかな? で、その五日後だが……、
「っ!? ファーレ、確り頭にしがみ付いていろ!」
「御心のままに」
危険察知で、けたたましい警報の音が頭の中に鳴り響く。それに魔力察知で右から強力な魔力を感じた。俺は咄嗟に左に飛ぶ。
そうすると俺のいたとこに炎槍魔法らしき矢が数本刺さっていた。
《避けられましたか。なら……<炎嵐魔法>》
今度は炎の嵐か。俺は森の木の枝に飛び乗り、木々を飛んで移動し避ける。と言うか、何処から声がするのだ? 森中から木霊する感じだ。
《すばしっこいですね。<雷追魔法>》
今度は追尾式か。俺は木の陰に隠れるように移動するが、木を貫いて更に追尾して来た。
「はっ!」
小刀 光陽ノ影に闘気を流しバリアを展開し防いだ。
《魔道具武装ですか》
「って言うか、質問。森を焼いたりして良いのか?」
炎嵐魔法の時点で、相当焼き焦がしていた。
《この森は魔力に溢れています。直ぐに元に戻るので問題ありません》
「だからって、やり過ぎだろ?」
《なら、この森から出て行ってください。<ファントム・メニー>、<炎槍魔法>》
今度は連続で魔法を使って来たか。しかも、最初に聞こえた魔法名は知らない。それに声は聞こえるが姿が見えない。やり辛いな。
てか、物凄い数の炎の矢が飛んできた。丸で百重展開したような感じだ。静の魔導を使いこなせばこうなるのだろうな。
だが、魔力察知でどう言うトリックか見抜いた。
「はっ!」
本物の炎槍魔法を斬り咲く。恐らく最初に使った魔法は幻影だろう。それで数を増やしたと誤認させた。
《くっ! 手強いですね。だけど、まだこちらの居場所もわからないでしょう?》
「いや、もう分かってるよ?」
「いつの間に!? 今まで、あっちにいたでしょう?」
「あれは、俺の分身だ」
気配完知で、居場所は途中から分かっていた。なので、炎槍魔法を斬り咲くと同時に分身魔法を使い、その場にいると見せ掛けて、そいつの後ろに回り込んで小刀を突き付けた。
刺客の主は憎悪と驚愕の顔で、俺を見詰める。
「にしても……」
「何ですか?」
「お前、可愛いな」
見た目は幼女。十歳にも満たない。が、整った容姿でめっちゃ可愛い。赤い髪で耳が隠れるくらいのショートカットを7:3で分けている。セイラのような転生者じゃないとしたら、この種族の習慣だろう。
髪の7の方の髪――右側の髪――を白木蓮の花飾りをしている。服装は……何故にセーラー服? しかもラインが赤い。膝上10cmくらいのスカートは赤のチェック。
目は桃色よりの赤……牡丹色と言うべきものだな。赤ばっかし。通りで炎系を好む。この種族は、髪や瞳の色で得意属性が左右されるとか書物に書いてあったな。
そして何よりも特徴的なのが羽根だ。背中から上下に二股に分かれた羽根が二枚生えている。
上の羽根は大きく下の羽根は小さい。丸で蝶のようだが、蝶は四枚羽根。しかし、この幼女は二枚羽根がそれぞれ途中から上下に分かれるように生えているのだ。
初めて見るが、羽根が生えてるって事は、この幼女は妖精族だな。
「だから、ウチを捕まえると?」
「捕まえないよ。攻撃されたから止めただけ」
「ニンゲンは、いつもそうやって騙す」
憎悪の目が強まる。
「それより、いくつか聞いて良いか?」
「えぇ。武器を突き付けられていたら、答えるしかないでしょう。本当の事を言うとは限りませんけど」
「あ、忘れてた」
俺は小刀をしまう。
「何故引っ込めるのですか?」
「いや、だってそんな憎悪の眼差しをしていても、もう戦意はないだろ?」
「えぇ。ウチには、勝てそうにありませんから」
「じゃあ質問。何故にセーラー服?」
「は?」
妖精族が間の抜けた声をあげる。
「だから何故にセーラー服?」
「質問って、そんな事ですか?」
呆れたように言う。だが、憎悪の目は薄れた。
「え? 悪い? それとも答えたくない?」
「これは昔にニンゲンが製法を教えてくれたものです。もう2000年くらい前だそうです。服の名前まで知りません」
あ、答えてくれるんだ。って、2000年前にセーラー服があったのかよ。もうこれは完全に時間の流れが地球と違うな。
「次の質問。君は妖精族だよね? 何で羽根をパタパタさせてないのに飛んでるんだ?」
そうさっきから地上より30cmくらい上の中空にいる。
「妖精族を初めて見る口ぶりですね? 見た事あるから捕まえに来たのでしょう?」
「だから、捕まえないって。それを言い合ってったら、話が進まないから、それは置いておこうぜ」
「とりあえず分かりました。ウチら妖精族は、羽根を媒体にして魔力で浮いています。よって羽根をバタつかせる事はないです」
「ふ~~ん。でもさ、スカートで飛んでるとか、パンツ見られるぞ」
「え? この下は下着ではありませんよ?」
目を丸くし、スカートを捲り始める。水色のパンツだ。
「はしたないなぁ」
「ですから、下着ではありません。シャツと一体になったもので、下着はこの下です」
レオタードっぽいものかいな~。まあ確かにセーラー服の下に見えてるシャツは水色だ。下と繋がっていてもおかしくないな。って言うかそれって……、
「セーラー〇ーンかよ!?」
「せぇらぁ〇ぅん?」
「いや、良い」
「貴方は良くわからないニンゲンですね」
また呆れた眼差しをされた。