EP.29 アサシンズを解散しました
-1850――――月陸歴1516年4月1日
月日は流れ4月1日になった。
「明日から学園だな」
「ええ」
そう明日は総合学園の入学式だ。今日からライオスは寮暮らしになり、明日から学園に通う。
「確りやれよ」
「ああ、頑張るよ」
「ライオス、確り勉学に励むのだぞ!」
今、声を掛けたのはファーレだ。一月半程で確り喋れるようになった。それだけでなく全長30cmくらいになり、少しの間ならその翼で空も飛べる。また白い羽根が少しずつ紅くなって来ていた。
「ファーレ、勿論だ」
「エーコと沙耶は、まだ時間が掛かるそうだし、途中編入だな」
「行くなら早くが良いなー」
「そうだよね」
「じゃ、ライオス。暫しの別れだ。卒業したら、どれだけ強くなったか見るからな」
「その時は、また宜しく」
こうしてライオスは寮に向かって行った。
「さて、俺達はポロック村に行こうか。王都にいてもギルドとかギルドとかギルドとかギルドとかで気分悪いしな」
「ギルドばかりじゃないのよ」
スルー。
「……また雑よ」
「でだ、ナターシャに大事な話がある」
「なんだい? 愛の告白かい?」
何、クネクネさせてるんだよ? 気持ち悪いぞ。歳考えろ。
「失礼な事を考えてないかい?」
「ソ、ソンナコトナイヨー」
相変わらずエスパーめ!
「で、なんだい?」
「エーコ達が、学園に通い出したら、東周りで色んな国や町に行ってくれ。必要な時に何時でも転移魔法を使えるように」
「西じゃないのかい?」
「………………なんとなく、そっちは嫌」
「邪アークだもんね」
「煩いよ! 永久ペッタンコ」
「ペッタンコ言わないでよっ!! そもそも永久じゃないし」
後半の言葉をボソっと言うとそっぽ向かれた。イジけちゃったかな?
沙耶の言葉に賛同するのは腹正しいが、それを連想させてしまうジャアーク王国と言う名の国だ。
かと言って、東のダンダレス帝国もどうかと思うんだけどな。帝国だよ、帝国。テンプレでは、世界支配を目論むとか、碌な国じゃない。
「西は、ジャアーク王国とクルワーゾ騎馬王国の二ヶ国しかないが、東は、五ヶ国もあるしな」
「分かったさぁ」
「まあとりあえずポロック村に行こうか。其処で暫く冒険者活動だな」
「分かった(さぁ)(ー)(よ)」
そうして、二日掛けてポロック村に到着するとエーコが固まっていた。
「どうした?」
「あれ何かなー?」
エーコが指差すが、森しかない。未開の地と呼ばれる場所だ。
「何が見えるんだ?」
「大きな木が見えるよー」
それは世界樹か? テンプレありがとうございますと言わんばかりのものがあると、ウルールカ女王国の王都メルーシの書庫にあった本に書かれていた。俺が目指すのは場所だ。
「エーコ、左目を閉じて見てみろ」
「あ! 見えなくなったー」
「魔法で隠蔽してるんだな。だが、エーコの魔眼で看破されたようだ」
真南か。方角が分かったのは、有難いな。魔法で隠蔽していなくても、森事態が迷わせる性質があるとかなんとか書いてあったしな。
エーコの左目は魔力完知の魔眼なので関係ないが。それ故に左目は薄紫色で、右目は赤色とオッドアイをしている。
それはともかく、迷わせる性質がある森だってのに、方角も分からず彷徨うのは簡便だ。
それからポロック村を拠点に冒険者活動を数日行った。此処でも奴隷を見かけるので沙耶は、いつも嫌そうにしていたけど。
そして、4月9日。
「アーク、誕生日おめでとうさぁ」
「おめでとー」
「おめでとう」
「ありがとう」
そう、俺の誕生日だ。正確にはナターシャに拾われた日だな。恐らくだがこの日に、俺は異世界転移した。
「これプレゼントさぁ」
木箱を渡される。
「開けて良い?」
「ダメー」
「うん、ダメよ」
「何でだよ!?」
「アークが、前に言った事よ」
「だねぇ」
「そうだよー」
「あっそ。じゃあ開ける」
中は何かな………………コート? しかも真っ黒だ。
「俺、忍なんだけどな」
「問題ないさぁ」
「鑑定してみてー」
どれ。
「なんじゃこりゃーーーーーッッ!!!」
「驚き過ぎよ」
「だって沙耶さんや、これ名前がヤバいって」
「えっ!? そっち?」
三人して目を丸くする。
名前がヤバい。FFOコートだぜ。FFOだぜ。
何の因果だろこれ。なんせ俺がダークになったきっかけは、FFOなんだから。まさか同じような名の物が、自分の手元に来るとは思わなかった。
「ありがとう。名前がめっちゃ気に入った」
「性能を見てよー」
「そうさぁ」
うん、性能もヤバいね。名前の通りだ。
FFOコート (防御力1000、俊敏800) 自己修復、隠蔽機能、属性妨害
能力テンコ盛り。コートの割に防御力は低いが、コートのくせに俊敏能力が高い。俺向きだ。しかも隠蔽や属性妨害が出来るんだから。
「良くこんなの手に入ったな」
「王都スーレンで、競売やってさぁ」
オークションかよ。
「めっちゃ値段が付いただろ?」
「デザインの問題で不評だったさぁ」
うん、まあ真っ黒で地味なコートだしな。
「それでも、それなりの値段したけど仕方ないさぁ」
「何で?」
「一人で未開の地に行きそうだって思ったさぁ。だから良い装備を少しでもして欲しかったさぁ」
泣かせるじゃねぇか。
「それにアークはー、他の人の装備ばかり気にしてるしねー」
「そうよ。何で自分の装備はそのままで、他の人ばかり気にするのよ? 剣君達もそうだったじゃない」
「いや、俺には小刀があるし。この光陽ノ影は、防御特化だぞ」
「抜いていないと意味無いでしょうよっ!!」
そんな怒るなよ。可愛い顔が台無しだぜ。
「何よ!? 最近そんな事ばかり言って」
沙耶が頬を染める。って言うか、心読まれた?
「駄々洩れよ!?」
またやってしまったか。まあ抜いてないと意味ないと言うが、気配完知に魔力察知があるから瞬時に抜けるんだけど。まあ言わぬが花だな。
それから数日過ぎて、サフィーネから連絡が来た。ウルールカ女王国の貴族のでっち上げと、留学による編入手続きが終わったそうだ。
これから、ナターシャの転移魔法で、三人で王都スーレンに行く事になる。俺は南下し世界樹を目指す。
エーコと沙耶は学園編入。ナターシャは、東周りに国や町を巡り転移魔法で行ける場所を増やす事になる。つまり、一旦パーティー アサシンズは、解散だな。ちなみにだが、ファーレは学園に連れて行けないので、俺が預かる事になった。
「エーコ!」
「うわぁ! なーに?」
思わず抱きしめてしまった。
「エーコ、元気にやるんだぞ」
六年はおさらばだ。ナターシャは、時々転移魔法で帰って来るだろうけど、エーコとは、よっぽどの事がなければ再会しない。
「大丈夫だよー」
「寂しくないか」
「平気……じゃないよー」
エーコが泣き出した。珍しいな。
「アーク、アーク……ふぇぇ~~ん……」
「珍しいな。どうした?」
「いつも、何かあってもー、アークがいてくれたからー」
「そうかそうか。可愛い奴め」
最後に頭を撫でて離れた。
「ほれ、ついでだ。沙耶もおいで」
手を広げる。
「私は良いよ」
「遠慮するな」
「遠慮じゃいよ!! 何でアークに抱き着かないといけないのよ!?」
沙耶が目を剥く。
「惚れてるから?」
「勝手に惚れさせないでよっ!!」
「顔が赤くなったぞ。ツンデレめ」
「怒ってるからよ! それにツンデレじゃないって何度も行ってるでしょうよっ!!」
「まあ良い。沙耶も元気でやれよ」
「え?」
頭を撫でてやる。
「あ……」
状況が分かったのか、頬を染め出した。
「……もう、恥ずかしいじゃないのよ」
ボソっと呟く。
「大丈夫よ。エーコちゃんと一緒に確りやるから」
「次は、あたいね」
「じゃあナターシャもバイバイ」
ぞんざいに手を振るだけ。
ペッシーンっ!! と、当然ながらビンタが飛んで来た。
「もっとちゃんとお別れしなさい……ぅん!」
「わたしがいないとこでしてよー」
キスされた。
「おい沙耶が哀れになるだろ?」
「何でよっ!?」
「そうだったねぇ」
ナターシャが頬を赤らめながら言う。
「ナターシャさんも酷いよ」
「じゃあ皆、元気で」
「主、お元気で」
「うん」
「じゃあね」
「じゃ、行くさぁ。<転移魔法>」
転移魔法で、三人が視界から消えた。さてと、俺も世界樹を目指しますか。
ちなみにだが最後の収納魔道具は、エーコに渡した。沙耶と共有で使うようにと。今は、制服姿になるので二人の装備品が入れるので便利な筈だ。
俺とナターシャは、収納魔法が使えるので必要ないしな。