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EP.28 沙耶にハリセンは似合い過ぎました

「は? すまん。理解が追い付かん。王に会った?」


 ナターシャ達も目を丸くする。


「はい」

「それで総合学園に通う事を許された?」

「はい」


 何、してくれちゃってるの~~? まあ要人と言うか、国の上層部とコネを作るのを目的の一つとしていたけど、それをライオスがしたの?

 まあ良い。起きた事は良い。問題はこれからだ。


「で、お前はどうしたい?」

「通いたい」

「貴族が行く学園だろ? お前は孤児だったんだぞ? 扱いが酷いと思うぞ?」

「それでも、もっと色々学びたい」

「そうか」

「通っても良いか?」


 一人じゃ心配なんだよな。


「エーコ、沙耶。お前らも行く気ないか? それとなくライオスを見守って欲しいんだ。それとなくだけどな」

「良いけどー……」

「通うかって、簡単に通えないでしょうよ?」

「通えるとなったら?」

「良いよー」

「私も良いよ。アークは、必要な事だと思っているのよね?」

「ああ。もし通えるなら、上層部とコネができるかもしれない。まあ一番はライオスと、これで『はい、さよなら』って別れるのは、どうかと思うし」

「やっぱ優しいじゃないのよ?」


 ジトーっと沙耶に見られる。

 それを見たナターシャとエーコが小首を傾げる。

 沙耶は無視だ。俺が優しいわけないだろ。それより伝心魔道具(スマートシーバー)を取り出し連絡だ。


「うっす。ケンか?」

『もしもし。アークか? 久しぶり……でもないか』


 まあ半月ぶりくらいだしな。


「サフィは、近くにいるか?」

『ああ。代わるな』

『アーク? 如何しましたか?』

「エーコと沙耶をスイースレン公国の総合学園に通わせたい。ウルールカ女王国からの留学生って事にできないか?」

『可能だと思いますが、調整に時間が掛かると思います』

「じゃあ頼む」

『ふふふ……』


 サフィーネの笑い声が漏れる。


「何だ?」

『いいえ。まさかそんな話をされるとは、思いませんでしたので。学園に通うなら、ウルールカ女王国でも良いかと思うのですがね』

「まあこっちで色々あってな」

『でしょうね。ただ我が国で、貴族としてでっち上げるので、家名が必要ですね』


 でっち上げるとか言っちゃったよ。


「それなら、エーコはアローラ。沙耶は笹山だ」

『あら、家名をお持ちでしたか。もしかして異界では貴族でしたの?』

「いや、平民でも家名がある世界だ」

『そうでしたか。では、エーコはアローラ、サヤはササヤマと、貴族としてでっち上げます』

「宜しく頼む」

『それと学園での料金は、払って頂きますわよ?』

「分かった」

『それでは、失礼致しますわ』


 伝心魔道具(スマートシーバー)が切れる。


「時間が掛かるが可能だってよ」

「分かったー」

「あんたコネを簡単に使い過ぎよ」

「コネは、あれば誰でも使う素晴らしきものかな」

「格言みたいに言わないでよ!?」


 沙耶が目を剥く。


「ナターシャ、早速あの魔法を明日使用するぞ」

「分かったさぁ」


 そんな訳で次の日。


「じゃあ使うさぁ。<転移魔法(テレポート)>」


 一瞬で景色が変わる。此処は『食事処 アサシンズ』だ。

 ナターシャは、遂にル〇ラを覚えたのだ。覚えそうと思ってスキルレベルを上げて貰った。

 これで行動の幅が広がるから有難い。


「どうだ? 使用感とか」

「MP800も持って行かれたさぁ」


 何それ? まあ便利だから良いけどさ。それでも800は多くない? 俺が使ったら速攻MP枯渇するな。

 その後、ダレスの町を拠点に冒険者活動を行った。奴隷をあまり見ないってだけで気分が良いな。沙耶もそれで辟易する事が無くなった。

 それにギルドの対応も悪くない。

 そうして3月8日を迎えた。


「沙耶、誕生日おめでとう」

「おめでと(うさぁ)(ー)(~)(うございます)」

「ありがとう」


 今日は沙耶の誕生日だ。『食事処 アサシンズ』を貸し切り――とは言え、無料(タダ)だが――にして祝う。

 セイラもいる。料理を作り、運ぶと参加した。勿論ナターシャとエーコも手伝った。


「<収納魔法(ストレージ)>。はい、これプレゼント」

「何よ? これ」

「ハリセン」

「何でこれなのよ!?」


 目を剥く沙耶だが、ちゃんと受け取っていたりもしている。


「似合うぞ」

「煩いよ」


 皆がクスクス笑う。


「それ性能良いぞ。攻撃力200ある」

「何で無駄に良いのよ!?」

「脇差とハリセンの二刀流にするため?」

「しないわよっ!!」

「じゃあ真面目に。<収納魔法(ストレージ)>。はい」

「今度は何よ!?」

(サヤ)、だけど?」

「何処が真面目なのよ!?」


 パッシーンっと小気味良い音を鳴らす。ハリセンではたかれました。


「痛い」

「ふざけてるからでしょう!」

「それ攻撃力200あるんだぞ? マジで痛いって」

「あははははは~~~」


 何かセイラが大爆笑してるぞ。


「やはり沙耶専用と言うべき武器だな。超似合ってる」

「煩いよ!」

「ほんと似合ってるねぇ」

「だねー」

「確かに似合ってる」

「あははははは~~~」


 まだ爆笑してる奴がいるし。そんなにツボにハマったか?


「<収納魔法(ストレージ)>。はい、今度こそ正真正銘プレゼント」

「何よこれ? 何処が正真正銘なのよ?」

「良いから受け取れよ。かなり高価な品だぞ」

「ただの布じゃないのよ」


 そう言いつつ受け取る。確かに布だ。ただやたら細長い。4cmの細さで2mある。


「綺麗な布ね。何か神秘的な力を感じるような……」


 真っ白な布だが、微妙に光っていた。


「それな、織物の精霊ってのが織ったものだ」

「へえ~~。そんな精霊もいるのね」

「あまりにも高価で、それしか買えなかったのが残念だな。出来る事なら着物とか買いたかったけど」

「大金貨したさぁ」

「えっ!?」


 ナターシャが補足すと、沙耶が目を丸くした。

 まあ当然だろう。単純に日本円で一億円だもんな。簡単には買えない。その細長い布ですら小金貨二枚した。日本円で200万だな。


「それで、この布をどうするのよ? 着物を織る際に混ざるとか? 私、着物に織るなんて出来ないわよ?」

(たすき)掛けしろよ」

「あ~」


 沙耶は今の襷を解くと、精霊が織った襷を掛けた。


「これなんか魔力が沸いて来るわね」

「本人の資質で、上がる魔力が変動する代物だ。沙耶が成長すれば、その恩恵が大きくなる」

「へえ~~」


 感心するが直ぐに俺を睨んで来た。


「最初からこれ渡しなさいよ! 何で変なの渡すのよ?」

「って、言いながら最初に渡したの早速愛用しただろ?」

「煩いよ」


 パッシーンっ! と、また小気味良い音が響く。だから、そのハリセン痛てぇよ。


「あははははは~~」


 またセイラが大爆笑してるし。それに吊られてか、皆して笑い出した。

 ちなみにだが、この襷の能力は……、


 聖霊の襷 (魔力300、俊敏100) 能力変動


 となっている。ちなみにだが、精霊との相性が良い者ではないと、真価を発揮できない。つまり、沙耶専用だな。

 そうして沙耶の誕生日を終え、数日ダレスの町で過ごす。その間、皆で田植えなんかもした。泥塗れとかガキの頃以来だな。だが、六人いたので直ぐに終わった。

 そして、再びナターシャの転移魔法(テレポート)で、スイースレン公国の王都スーレンに戻る。


 サフィーネに学園の事をお願いしてから、制服を仕立てて貰っていたので、受け取りに行き、エーコと沙耶とライオスに着て貰う。

 紺色のブレザータイプだ。男はネクタイに女はリボンである。流石は転移者が頻繁に現れるだけあって日本で良く見掛けるものだな。

 ただ、500年起きに召喚を行うようだけど、500年前の日本に、こんな制服あったのか? と言う疑問は残る。やはり時間の流れがおかしいのだろう。

 更に驚くべく事に、女のスカートはファスナーだった。星々の(スターライト)世界では、ゴムで腰に固定させていたのに。

 日本人の知識から開発されたのだろうな。


「にしてもええのぉ」

「あんた、何してるのよ!?」


 煩いのが目を剥く。


「煩いのって何よ!?」

「見て分からない? 下から覗いてるんだよ。スカートなんだから当然だろ?」

「当然じゃないわよ!! 変態!」

「あ~~沙耶のは、見る気ないから」

「エーコちゃんのを見ようとしてるじゃないのよ!?」

「そうだよー! 普段から下着姿を見てるのにー、何で態々覗くのー?」

「制服だと、また違った(おもむ)きがあるからな」


 ペッシーンっ! はい、いつものビンタです。


「あたいのを覗きなぁ」

「じゃあ制服着ろよ」

「サヤ、制服貸しなぁ」

「ナターシャさんには着れないでしょうよ!!」


 沙耶が目を剥く。まあ九歳の制服を十八歳が着れるわけないわな。

 って訳で、下から覗くの続行。お~~絶景絶景。当然だがライオスは、ドン引きしている。


「恥ずかしいよー」


 エーコがスカートを抑え出した。


「普段下着姿を見てるのにって言ってなかったか?」

「覗かれるはー、恥ずかしいよー」


 エーコが頬を染める。


「しょうがない」


 エーコを覗くのは止めて、沙耶の方に行こうとするが……、


「は~~~」


 何故か溜息が出てしまい、興が削がれた。


「何よ? その態度は。それはそれでムカ付くよ!!」

「沙耶の見ても、つまらなそうだし」


 パッシーンっ! と小気味良い音が響く。


「だから、そのハリセンは痛てぇって言ってるんだよ」

「なら、くれなければ良かったじゃないのよっ!!」

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