EP.25 俺が主上になりました
さて、どうしたものか。
エーコと二人して従魔契約したせいで、ファーレが戸惑っている。ここは……、
「俺が主で、エーコを主上にしよう」
「エーコちゃん、天皇じゃなのよ」
やはりツッコミが来たか。ハリセン要る?
「要らないわよっ!!」
「この主上は、天皇と言う意味ではなく主より上って意味だ。グランドマスターでは、長ったらしいしな」
「でもー、それだと私がアークの上だよー?」
「最初に契約したのはエーコだ。それに神託でファーレを見つける事にもなったしな」
「うーん。わたしが上は嫌だなー」
「じゃあ、俺が主上?」
「それが良いよー」
マジか。エーコの下に着くのも悪くないと思ったんだけどな。
「じゃあエーコは俺の命令を聞くのかな? ダレスの町に到着したら、一緒にお風呂に入ろうか」
「もっと嫌だよー」
「アンタほんとサイテーね」
「アークっ!!」
ペッシーンっ!! と、いつものビンタです。
「最近あたいとも入ってくれないじゃないかい。まずはあたいが先さぁ」
「いや、ナターシャと先に入れば、エーコと入って良いのかよ!?」
「構わないさぁ」
「ナターシャお姉ちゃんっ!!」
エーコが目を剥く。
「別に良いじゃないかい。エーコなら変な気を起こさないさぁ」
「そう言う問題じゃないよー」
エーコが顔を真っ赤にする。
「まあそもそもナターシャと風呂に入ったら絶対欲情されるな。浴場だけに」
「つまんないわよ」
ともかくそれを避ける為にナターシャと一緒に風呂の入らないようにしてるし。
「アークだってその気になるじゃないかい?」
「だとしても沙耶があまりに惨めだ」
「何でよっ!!」
「沙耶には一生縁の無い事をするんだからな」
「アンタ、何処までサイテーなのよっ!! ほんと嫌いよ」
さいですか。
「そうさねぇ。サヤに悪い気もするさぁ」
「ナターシャさんまで酷いよ」
「と言うかー、わたしの事も考えてー」
「ああ、エーコも欲情するか。だけど、今の歳じゃ慰める事も出来ないもんな」
「はっきり言わないでー」
エーコが増々真っ赤にし出す。
「で、何の話だっけ? エーコと、お風呂に入るって話だったよな?」
「違うわよ! あんたが主上かエーコちゃんが主上かって話だったでしょうよ」
ああ、そうだった。
「俺が主上で良いのか?」
「だってー、今までだってー、方針決めてたのアークだよー」
「そっか」
俺はファーレを軽く撫で俺に意識を向けさせる。
「お前は、ディスファーレ」
「でぃす、ふぁーれ?」
「主」
エーコを指差す。
「アルジ?」
「主上」
続けて俺を指差す。
「シュ、ジョウ?」
「覚えたか? お前はディスファーレ。エーコが主。俺が主上」
「オ、ボエ、タ。アルジニシュ、ジョウ」
まだ雛だしあまり上手く喋れないな。言葉が拙い。それでも頭良いな。
「じゃあお前は?」
「ディス、ファーレ」
「頭良い子さぁ」
「そうね」
「そうだねー」
俺は、エーコの頭にファーレを乗せる。
「自由に動けるようになるまで、エーコの頭の上にいろ」
「アルジノ、ウエ、ニ、イル」
「エーコも暫くそうして一緒に行動な」
「ほらー、方針はアークが決めるー。やっぱ主上だよー」
「それより、雛を乗っけたエーコ、最高に可愛いぞ」
「知ってるー」
「あ、俺のエーコが自意識過剰に……」
態とらしく肩を落としてみる。
「違うよー。アークがそれしかー、言えないのは知ってるー。それとわたしはアークのじゃないよー」
二日後、ダレスの町に入り、セイラのお店に到着した。
普通の客と同じように並びお店で注文を行った。俺のメニューは天婦羅定食で、天婦羅にマヨネーズを付けて食べるのが最近のこだわりだ。
食べ終わると、当然お金なんて払わず、関係者以外立ち入り禁止にしている階段を登る。なんせ俺はオーナーだしな。
二階は、貴族のパーティーの内装のままだが、今は使っておらず。其処をスルーして三階へ。
「今日、セイラと別れの挨拶して、明日ライオス君を引き取ってスイースレン公国に行くって事で」
「わかった(さぁ)(よー)(よ)」
「とりあえず、お店が終わるまで暇だし、エーコお風呂入るぞ」
「何でー!?」
エーコが目を剥く。
「主上命令」
「嫌だよー」
「乳揉みしたくらいんだから良いだろ?」
「勝手に触ったんでしょー? この歳だとまだ真っ平だ、とかなんとか言ってー」
「やっぱりアンタ、ロリコンじゃないのよ!」
「エーコたん専用ロリぶへっ!!」
ペッシーンっ!! と、当然ビンタを喰らう。
「何であたいのを揉まないのさぁ」
「そう言う問題?」
「最近構ってくれないじゃない」
「いや、離宮の俺の部屋にたまに押し掛けて来たじゃないか」
「アークからは、全然来ないじゃないさぁ」
「いや、だからナターシャから来るからだよ」
「アークから来ないからさぁ」
いや何で俺、責められているの?
エーコを揶揄った内容が気に入らなくてビンタは良いけど、それ以降おかしな話になってるぞ。
「何か痴話喧嘩が始まったよ」
「だねー」
我関せずとエーコと沙耶がお茶をすすってる。
「分かった。じゃあ今日はナターシャとエーコとお風呂に入る。これで文句ないだろ?」
「分かったさぁ。今日はそれで収めるさぁ」
「何でよー!?」
「エーコも九歳なんだし良いじゃないかい? その歳なら父親と一緒にお風呂に入るものさぁ」
ナイス援護。
「父親じゃないしー」
「父親代わりじゃないかい」
「そうだけどー」
「下着でうろつけるんだから、裸も変わらないさぁ」
「変わるよー」
エーコが顔を真っ赤にしている。
さて言い合いをしている今のうちに、一人で一番風呂だー。
「アンタ、何処までサイテーなのよ!?」
沙耶だけは俺の真意に気付いてるがスルー。
ちなみにだが、お風呂は火属性の魔獣の魔石を使うので、一瞬で温まる。これに関しては日本より便利かもな。
たっぷり一人、しかも一番風呂を堪能した。戻って来たら往復ビンタを喰らったが、ご愛嬌だな。
エーコはファーレと入り、洗って上げたとか。そして最後に沙耶が入る。
「風呂で変な事しなかったか?」
「しないわよ」
「いや、そろそろ一人で慰めるようになったのでは?」
「なってないわよっ!! アンタのそう言うとこ、ほんと嫌いよ!」
さいですか。その2。
まあそう言う気分になっても年齢的に、まだ出来ないだろうけど。だが、元の年齢になったら反動が凄そう。
「反動も何も興味ないわよっ!!」
あ、また声に出てたか。