EP.24 ヴァ〇ファーレが爆誕しました
月日は流れ二月中旬、俺達は旅発つ事にした。王城の書庫の目ぼしい物は、全て読み尽くしたからだ。
まあ本を読むだけでは、体が鈍るので、王都を中心に冒険者活動も偶に行った。他にもセイラの店を手伝ったり、ライオス君の鍛錬をしたりとか。
ちなみにだが、職業がいくつか追加されていた。
まず俺は、魔獣使いと霊獣使い。当然スルー。
ナターシャは無し。
エーコは、魔獣使いと霊獣使いと更に閃光の巫女が出て来ていた。今まで『巫』だったのに『巫女』に変化していたが、これは巫系が中位クラスに到達したからだとか、書庫の本に書かれていた。
当然エーコは、閃光の巫女を選ぶ。クスィーを呼び出し、最終的に銃殺刑にならない? 縁起悪そうだけど。
今は、女王様の執務室に別れの挨拶に来ていた。
執務室には、女王様とサフィーネの他に幾人かの護衛と侍女がいる。謁見の間とかじゃなく良かった。あれは気疲れが余計に来るしな。
「もう行くのじゃな?」
「今まで、大変お世話になりました。女王陛下のご配慮により、何不自由なく。そして、この世界の事を色々学べました。格別の感謝を申し上げます」
そう言って俺は、お腹に右手を添えて頭を垂れる。
「良い良い。お主らには世話になったのじゃ」
「そう言って頂き幸甚にございます」
「時に、冒険者ギルドから面白い報告が上がって来たぞ。サヤは、今まで確認されていない霊侍なるものになったそうじゃな」
「ははは……はい。珍しい職のようですね」
沙耶が苦笑いを浮かべる。ギルドでの事を思い出したのだろう。
そう沙耶は、霊侍と言うのが追加されていた。これにはギルドの人間もビックリ。今まで確認されていないとか。
尤も神殿でも職業を変更できるので、其処では確認出来ていたおり、それが冒険者ギルドまで情報共有されていなかった可能性もあるとの事だが。
ともかく騒ぎになった。まあ精霊術師は、魔法系なのに侍である物理系職に就く者等、滅多にいないだろう。
魔法系と物理系を両方を納めた魔法剣士や魔侍、魔忍などもあるのだが……。
まあ精霊術師自体が稀な職なので、当然のかもしれない。ともかく沙耶は、その霊侍を選んだ。
「お主らは、やはり特別な転移者なのじゃな。流石は神が自ら選んだと言ったところかのぉ」
正確には星々の世界の精霊が。その精霊は星々の指示で。そして星々に言って来たのは神々だろう。まあそこまで詳しく語る必要はないが。
「ところで、アーク」
「はい」
「この国に何かあれば、馳せ参じると申しておったが、あれは真か?」
女王様が真意を探るように水色の双眸でジっと俺を見詰める。
「無論です」
「実はな、メハラハクラ王国との関係が、きな臭くなって来ておるのじゃ」
「と、仰いますと?」
「お主も知っておろう? サフィを襲った転移者二人を」
「コタロウとシップウですね」
「彼奴等の言い分では、ケンが我が国に攫われたと」
「確かにそう言ってましたね」
「メハラハクラ王国に、再三に渡りケンは自ら我が国に在籍したと申しているのじゃがな」
疲れたように言う女王様。
実際疲れているのだろう。少しやつれ美しい顔に陰りが見える。言い掛かりも良いとこだしな。
「場合によっては、戦争になると?」
「そうなっては、民が苦しむからのぉ。現時点で国境沿いは被害が出ておるのじゃ。下の者が勝手に動いたと主張しておるがな……。おっと、これはお主らに言っても詮無き事じゃな」
「いえ」
「ともかくじゃ、話し合いは続けておるのじゃが、いつ戦端が開かれてもおかしくないのじゃ」
「しかし、あの国はクルワーゾ騎馬王国と小競り合いが続いているとか。此方に回す戦力があるとは思えませんが……」
「転移者達じゃ」
「あ……」
沙耶を召喚した国と同じか。召喚者を戦争の道具にするクソみたいな国だったな。
「その顔、何か覚えがあるじゃな?」
「ええ。ただ、世界が違うので、此方の常識と照らし合わすとどうなのかな? と、思いまして」
「良い。申して見よ」
俺はサフィーネにも話した事があるルシファー大陸のデビルス国の事を話した。
「なるほどのぉ。確かに常識が違う。故に表立って戦争の道具にはせんじゃろう」
「ええ」
「しかしじゃ、大義名分があればどうじゃ? 例えば我が国が転移者を三人攫う悪しき国じゃと」
「それも外交次第にどうとでもなるのではないでしょうか? 仮にその大義名分を掲げ戦争になっても、今の転移者達ではケン達の足元にも及びません。故に簡単に蹴散らせるかと存じます。そして、蹴散らした後に濡れ衣を着せられたと触れ回るのです」
「お主は、頭の回転が本当に良いのぉ」
俺を見る女王様の目が愉快そう笑う。
「女王陛下は、そう簡単な事ではないと仰るのですね?」
「そうじゃ。妾の顔色でそう判断するとは、真に頭の回転が良い。褒めてつかわすのじゃ」
「いえ、直ぐに女王陛下の真意に気付かぬ愚者でございます。今も分かりかねております」
「お主の素直なとこも好ましく思うのじゃ。話を戻すが、今戦端が開けばアークの申すようにすれば良い。しかしじゃ、相手もそれを承知しておる。故に転移者を鍛えてから仕掛けると予想されるのじゃ。流石に十人以上もの転移者が育ったとなれば厳しいのじゃ」
「なるほど」
確かにきっちり育った転移者は、相手にするのは面倒だ。
それはケン達を見ていれば分かる。あの転移者達に出会い、鍛えたのは二ヶ月にも満たない。それなのにあの成長速度は異常だ。これが数年単位ならどうなる?
「数年後仕掛ける可能性があるのじゃ」
女王様も同じように考えていたようだ。
「でだ、お主の言葉が真なら、その際に来ては貰えぬか?」
「無論です」
「感謝するのじゃ。代わりにと言っては何じゃが、何か困った事があれば、お主らも気兼ねなく言って来るのじゃ。王族の力があって困るものじゃあるまい?」
「ははっ! 女王陛下の格別のご配慮痛み入ります。その際には是非お願い申し上げます」
そう言って頭を垂れた。
有難い話だ。それに戦争となればケン達も巻き込まれる。縁が出来た以上、無碍にはしたくない。何かあれば助けに行くつもりだったしな。
その後、サフィーネやケン達への別れも済まし、徒歩でゆっくりダレスの町を目指す。
別に急いでるわけではないので、馬車は必要無い。こう言う徒歩も良い鍛錬になる。そう言った理由で、王都メルーシまで馬車を使わなかったしな。それにダレスの町まで徒歩で、たかが二日だ。
「あ……」
「どうした? エーコ」
いきなり声を上げたエーコ。そのエーコは、巫女装束の袖に手を入れ、モソモソを動かす。
まあ和服の袖は広いので何かを入れておくのに丁度良いしな。そうして神託で呼ばれた時に見つけた卵を取り出す。
「何か動いたー」
確かにグラグラ動いている。生まれるのか?
「早いけど野宿にするか。エーコ、蔵」
「だから言い方が雑ー。<上位大地魔法>」
上位大地魔法で、蔵型の家を作り出す。
「光源魔法」
続けて光源魔法で、中を明るくする。
その後、ナターシャが、布団やテーブルを収納魔法から取り出す、俺と沙耶も手伝い並べて行った。
一通り終わるとテーブルに座りお茶を啜る。そのテーブルの中央に卵が置いた。
「名前どうしよー?」
そう言えば名前決めてなかったな。
「ヴァ〇ファーレ」
「何だい?」
ナターシャが首を傾げる。
「だから、ヴァ〇ファーレ」
「伏字じゃないのよ!」
「沙耶、メタ発言禁止」
「「めた、発言?」」
ナターシャとエーコが小首を傾げる。
「実際伏字じゃないのよ! 名前に出来る訳ないでしょう!!」
「沙耶がクソ煩いので、ファーレで」
「煩いのはアンタよっ!!」
「分かったー。じゃあファーレねー」
あ、マジでファーレで決まりなんだ。
「でも、神鳥だろ? もっと長い名前にしようぜ。愛称でファーレにするとか」
「なるほどねぇ」
ナターシャが頷き腕を組む。
「エレメントファーレ」
「何の成分だよ?」
「成分?」
「エレメントって、エレメントアローから取ったんだろ? そのエレメントは日本語で成分って意味だ」
「灯台成分……希望成分」
「ファーレをイタリア語にしてるじぇねぇか」
沙耶の言う灯台、もしくは船乗りに取って希望とは、ファーレをイタリア語にしたものだ。
エレメントは英語で、ファーレはイタリア語って、どっかの凶真さんみたいな事をするなぁ。
「煩いよ」
「そもそもエレメントって、この世界や星々の世界において、属性を与える前みたいな意味合いがあるよな。もしくは属性」
「だねぇ」
「神鳥ってどんな属性になるか分からないし却下だな」
何よりダサい。
「じゃあディスターブファーレ。どっちもイタリア語で通じるよ」
「希望を乱してどうする? と言うか、薙刀術の技の中で大好きな乱から、取りましたね。分かります」
「分からないでよ。恥ずかしいじゃない」
沙耶にしては珍しく、しおらしく頬を染め俯く。
「サヤにしては珍しいさぁ。煩いよって言わないのかい?」
揶揄うようにナターシャが笑う。
てか、同じ事を思ったか。
「ナターシャさんまで酷いよ」
「じゃあディスファーレだな」
「えっ?」
沙耶が目を丸くする。
まさか自分が言ったのが元になるとは思わなかったのだろう。
「そもそも俺達は、世界崩壊の要因は乱す為にいる。この乱すとは沙耶が言ったディスターブだな。そして、ディスに縮めると否定するって意味になる」
「つまり、世界崩壊の要因は乱し否定する事を希望にすると言いたいのかい?」
「まあネーミングセンスなんてないから、沙耶の言葉から取って付けただけだけどな」
そう言って肩を竦める。
「でもさ、この神鳥がその希望になる?」
「沙耶、煩いよ!」
「何よ!? と言うか今、私の真似したでしょう?」
「そんなの願掛けのようなものだろ。別に神鳥にやらせる訳じゃねぇ」
「なら、普通にそう言いなさいよ」
「じゃあディスファーレで良いー? 愛称はファーレ?」
エーコがまとめる。反対意見はないようだ。
そうして丸で名前が決まるのを待ってたかのように神鳥の雛が卵の殻を破り始める。
「生まれそー」
ヴァ〇ファーレ爆誕の瞬間だな。
だが、其処からがまた長かった。ニ十分くらい掛けてやっと顔を出した。全長20cm程度かな? 美しい真っ白な翼をした雛だ。
「可愛いねー」
「だねぇ」
「エーコより可愛い訳ないだろ!?」
「親バカは黙ってなよ」
「サヤさん、何言ってるのー!? 親じゃないよー!!」
エーコが頬をプク~と、膨らましそっぽ向く
「あ、エーコちゃんごめんね。怒らないでよ。あんたのせいで怒られたじゃないのよ!」
「理不尽だ」
「ア、ア、アル、ジ?」
「「「えっ!?」」」
「喋ったー?」
そう神鳥は俺を見て『主』と言って来たのだ。しかし、直ぐに首を傾げる。
「アルジ? ドッ、チ?」
今度はエーコを見て『主』と言い首を傾げる。
「あ~、これ二人して従魔契約したからだ」
「じゃーどうするのー?」
どうしたものか……。
ユ〇ナネタを3話引っ張ってみましたw